ディーヴァは、ため息を吐き出しながら再び雑誌に目を向けた。

「日本ではバレンタインに女性が男性にチョコを贈る習慣があるみたいなんだけど、そのお返しを男性がする日。それがホワイトデーらしいよ？
どっちもお菓子会社の販売戦略から始まったみたいだけどさ…」
「なんだ、ぶっかける日じゃないのか…」
「ぶっかけるって？」
「おっと！それこそまだまだディーヴァには早いな。オレ本人は早くそういう事もしたいんだが」

ダンテは慌てて口を閉じる。
確かにそれはアウトな表現ですよ、ダンテさん…。

「じゃあ早くダンテに教えてもらえるように大人にならないとね！」
「そうだな、大人にな！」

大人になったその瞬間食べられることも知らず、子羊は狼の前で笑う。
狼は子羊の肉がおいしい食べごろになるのを今日も舌なめずりをして待つのだった。

「お返しにはマシュマロや飴が貰えるんだって。いいな～、マシュマロいいな～」
「なんだ、ディーヴァはマシュマロ食べたいのか」
「うん、食べた～い。お肌にいいコラーゲンも入ってることだし」

まだピチピチな華の１６歳という年齢ではあるが、２０歳を過ぎればお肌も曲がり角にぶつかる。
今から手入れをしないとと、ディーヴァは考えているのだ。
ディーヴァは自分の肌をむにゅ、と引っ張って感触を確かめてみた。

それを見たダンテもディーヴァの頬に手をやって引っ張る。
おお、結構伸びる、もちもちでやわらけー…。

ついつい触っていたくなる滑らかな肌の感触を楽しみながら、ダンテは言った。

「今アップルパイ食べてるじゃねーか。…って。もしかしてπとパイ、かけてんのかコレ？」
「あ。今頃気が付いたー？πは円周率のことなんだけど、それとかけてパイを焼いてみたの！」

ぱちくりと、ダンテの目が白黒する。
何を言われたのかわかっていないようだった。

「あのーディーヴァサン？円周率って何でしょうか？」
「えっそこからなの？…うーん、あたしの大嫌いな数学の…記号、いや、公式みたいなもの？」

いざ説明するとなるとディーヴァにもできなかった。
眉尻を寄せて考えても答えは出ず…結局「みたいなもの」と語尾につけてしのいだ。

そんなディーヴァは数学が嫌いなだけではなく、とても苦手だ。
ましてや中々理解してくれなさそうなダンテの先生役などどうやったってできやしない。

「みたいな、とかはっきりしねぇな。そんなんで試験があった時とかどうすんだよ」
「あはは」
「あははじゃねーし。オレに説明できるくらいになれ」
「はーい」
「…あと食いすぎるなよ？」

アップルパイをもりもり食べるディーヴァに、釘をさすことも忘れない。

「大丈夫大丈夫」
「あとで太ったーッとか言っても、オレ知らねー」
「ダンテこそいっつも食っちゃ寝してるから気を付けてね？『ダンテ、生活習慣病に倒れる！』とかになったらＤＭＣ界の大恥になるよ」
「メタ発言するなって」

ダンテは小さくチョップしてメタ発言を止めさせた。