「あら、どうかしたの？何か悩み？」

ディーヴァがテーブルに突っ伏したところを、タイミングよく来た彼女に見られてしまった。

「まあちょっとな。…注文を頼む。マルゲリータピザＬサイズと、シュリンプサラダな」

またピザなの、と言ってはいけない。
ディーヴァの食事教育の賜物か、ダンテはピザだけでなくなるべく一緒に野菜を摂取するように心がけている。

「えーと、ディーヴァはビーフシ「チーズ入りのハンバーグセット！あと紅茶！！」…は？」

ディーヴァがダンテの言葉を遮った。

「おい、ビーフシチューが偶然にもあるみたいだがいいのか？ポタージュは？」
「あ、忘れてた。でもチーズ入りハンバーグの気分になっちゃったから今回はいいや」
「コロコロ変わるやつだな…。それでよろしく」

あたたかな食事を摂りたいと言っていたはずなのに、ディーヴァの今の胃袋はハンバーグの気分らしい。
なんと心変わりの激しい胃袋だ。

まあ、チーズ入りということで、ディーヴァらしいといえばらしい…か。

少しして注文をキッチンに伝えたシンディが、あたたかい紅茶を持ってきた。

目の前に置かれた紅茶を見ると、ハウスキーパーの仕事をしていたことを思い出す。
あんな仕事がまたあれば…。

「あ、そだ。悩みの事なんだけどちょっと聞いてもらえます？」
「いいわよ」

シンディなら何かいい就業場所を知っている気がする。
ダンテとディーヴァは、今ディーヴァが勤める場所を探しており、なかなかいい場所が見つからないのだと話した。

「ははあ、なるほど。そういうことなのね。ならちょうどウチ、今募集してるわよ」
「「え？」」

と、その時キッチンから注文の品が出来たとの呼び声が。

「ハンバーグセットとピザが出来たから運んでくれー！」
「はーい。…ちょっと待ってて」

シンディは料理の乗った皿を取りに行きながら聞く。

「マスター、まだアルバイト募集してたわよね？」
「ああ。ホールもキッチンも出来る人材をな」

彼は店と同じ名前…フレディというマスターだ。
豊かな顎髭を生やした、人の良さそうな男である。

シンディはホカホカと湯気をたてて美味しそうなハンバーグセットとピザを、２人の目の前に置いた。

「はいお待たせ」
「うーん、いい匂い！美味しそう！！」

好物を目の前にキラキラ輝くディーヴァの瞳。
それが見られただけでも幸せである。

「よかったな」
「うん、いただきまーす！」

ぱくん、もぐもぐ。
トロゥリとハンバーグから出てくる濃厚チーズが口の中いっぱいに広がる。

ディーヴァ、至福のひととき。

と、ダンテがピザを頬張り、ディーヴァがハンバーグを食べる横にシンディが浅く腰かけてきた。
仕事も一段落ついているのかもしれない。

「食べながらでいいから教えてほしいんだけど」

もぐもぐ、ごっきゅん。

「はい？何でしょう？？」
「ディーヴァ、貴女料理は出来る？」
「まあ、それなりには」
「ディーヴァの料理は美味い。それは太鼓判を押すぜ」

ダンテがピザを咀嚼しながらさらっと答えた。

「ダ、ダンテ…」

ほんのり頬を朱に染め、ディーヴァが嬉しそうにしている。
そんなディーヴァをほほえましく思いつつシンディは立ち上がったかと思うと、キッチン方面へ行ってしまった。

「ならいいわ。マスター！いい人材見つけたわよー！」