話を戻そう。

「で。ディーヴァが参加すんのか？」
「しないよ。あたし走るの好きじゃないもん」

ディーヴァは運動があまり得意ではない。
走るのも球技も。
走れば息はすぐきれるし、球技をやれば見当違いの場所へと球が飛んで行く。
しいて言えば水泳に多少の自信があるくらいか。

「サラの応援。結構前に応募したらしいんだけど、抽選で当たったんだって」
「ふーん」

サラと言えばディーヴァの一番仲良しといえる友人だ。
一番仲が良かろうと、天使やら悪魔の話はいまだ打ち明けずにいるが。

ダンテの記憶の中のサラは、とても明るくさっぱりした性格でポニーテールのイメージが強い。
マラソンもやるということは、見た目通りのアクティビティな女子なのだろう。

「お前も参加したらどうだ？今から体力つけとかねーと」
「抽選だから無理だってば。それに走りたくないよ」

さっき走るの好きじゃないって言ったばかりでしょ？
そう追加するディーヴァ。

「確かにな。でも、体力つけとかないと後悔するぞ」
「…なんで？体力はまぁまぁある方だと思うよ。ダンテと一緒にいるから悪魔から逃げたりするのに体力使ってるし」

それはダンテ本人から逃げる時も含まれている。
いや、むしろそっちが全体の八割方を占めていると言っていい。

ふう～。
突如、耳に息を吹き掛けられた。

「ひえぇ！」

生暖かい息がくすぐったさと共に耳孔を刺激して、なんとも言えないぞわぞわした快感を背筋に走らせる。
そして、そのまま耳元でダンテが吐息混じりに囁いてきた。

「…オレとベッドでえっちなことして楽しむ時のためだよ、体力ないとツラいぜ？」

その言葉だけでディーヴァの体からは力が抜け、ふにゃら～とソファーに沈み込む。

「はふぅぅぅ…」

涙目になり、ディーヴァはその刺激をなんとかやり過ごした。