エンツォから紙を渡されたダンテ。
彼と受け取った紙とを交互に見比べてから、紙の内容を読み始めた。
隣ではディーヴァもダンテの手元を覗いている。

「そこに書いてある通りだが、大家から家賃が滞納されてるって連絡来たぞ？
紹介したのは俺っちだからな！連絡が俺っちのとこに来たんだよ」

なぜ、大家本人が来ないかというと、ダンテを初めて見た時に何かを感じ、関わり合いになりたくないと思ったからに他ならない。
よくわからない職業、変わった服装…それに関わるディーヴァすら、ふつうの人間ではないかもしれない。
少し悲しいがその考えは的を射ている。

しかし、本人達には言わないでおいたほうがいいだろう。

エンツォの言ったその言葉に、ディーヴァは厳しい表情でダンテを見た。

「どういうことなの、ダンテ！」
「あ、忘れてたぜ！あっはっは！！」

怒りに目のつりあがるディーヴァに、軽く謝るダンテ。
全然反省していない。

「「……」」

一同、白い目。

「ダンテ、あたしじゃなくてエンツォさんに謝りなさい！」
「え、やだね。なんで謝らなきゃならな」
「謝りなさい！」

そこで鶴の一声。
ダンテは口を尖らせながら、エンツォに謝った。

「…悪い、エンツォ」
「『悪い』じゃなくて？」

更に訂正。

「…申し訳ありませんでした」

ジャパニーズ謝罪の姿勢として、ディーヴァの指示のもと、ダンテは相手に頭を下げた。
その角度、きっかりナナメ４５度。
下げたというか、少ししか下がっていなかったダンテの頭を、手で押さえつけてその角度にしたというべきか。

「い、いや別にそこまで…」

謝罪された本人はというと、苦笑するしかなかった。

したくもない謝罪を無理やりさせられて、ぶすったれたダンテがそっぽを向く。
ディーヴァはそれを無視してエンツォに応接ソファーへの着席を勧めた。

「こちらにお話がよく見えてない部分もありそうですね。お茶を淹れてきますので、おかけになってお待ちくださいね？」

ダンテにはいささかぷりぷりとした静かな怒りをあらわにし、客であるエンツォには愛想よく振る舞いながら、ディーヴァはキッチンの方へと消えていった。