mission 0:lost mankind heart ~双子の片割れ~
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……もういい、傷も完治した」
悪魔から受けた傷は、バージルからすればかすり傷のような物ですでに完治している。
この聖地にいたことで体も怪我を優先的に癒したため、全く傷が残っていない。
「お前はこの中にいればいい。やつらは任せておけ」
「え、でも……」
ディーヴァは危険だと注意するが、バージルは聞かなかった。
返答代わりにディーヴァの頭を一撫でし、結界を出て悪魔達と相対した。
野犬にとりついた、というよりは元からこの形態をしている悪魔のようだ。
ずいぶんと魔力値と統率力の高い悪魔である。
下級悪魔ばかりしかいないはずの人間界にしては珍しいことだ。
群れということはどこかにいるであろうボスさえ仕留めてしまえばこちらの物である。
だが、バージルはそうしなかった。
再び悪魔達が一斉に飛びかかるようにと、バージルは挑発した。
それを結界の中から見ていたディーヴァはまたも目を覆い、ギュッとつぶった。
再びバージルがやられてしまう、と思ったからだ。
挑発を受けて怒り状態となった悪魔達は大きな咆哮と共に、先ほどと同じく飛びかかってくる。
バージルはニヤリと笑い、自身を本来の悪魔の姿に変化させた。
青い爬虫類を思わせるような体躯と、背中に生えた四枚の翼が、彼が悪魔の血族だと証明できる。
魔人化をしたことで、爆発的に上がった能力を使い、バージルはあっという間に悪魔達を全滅させた。
その中にはボスらしき悪魔もいたかもしれないが、全てがレッドオーブと砂に変わり果てた今となってはわからない。
倒し終えたことで、バージルは魔人化していた己の体を元の姿へと戻し、結界の外からディーヴァに呼びかけた。
「もういいぞ、大丈夫だったか」
「えっ」
ディーヴァはその言葉を聞いてゆっくりと目を開けた。
周りには魔の気配をもう感じられない。
安心感から結界が自然と解かれると、バージルの力を借りて立ち上がる。
「はい、なんともないです。ありがとうございました」
ほっとしたような表情でディーヴァは柔らかく笑った。
ああ、そうなのだ。
あの男の言うままにディーヴァを攫わなくてもいいではないか。
利用したり、傷つけなくたっていいではないか。
自分は他人に命令されて従うなんて無縁だったのだから、素直に聞いてやることもなかったのだ。
「早めにスラムから出て違う場所に行け。ここはもうじき悪魔の巣窟になる」
「え?」
バージルはそれだけ伝えると、またも一瞬にしていなくなった。
ディーヴァにはその意味がよくわからなく、ただ、じきにダンテが帰ってくる事務所へとゆっくり戻っていった。
***
夜になって依頼から帰って来たダンテにその話をしようと思ったが、結局やめた。
必然的にバージルと会ったことまで話さなくてはならなくなるからだ。
ダンテは帰ってきてそうそう、ディーヴァの右腕に巻かれた包帯に気がついた。
夕食を口に運びながらダンテは聞いた。
「その怪我はどうしたんだ?血の匂いがかなりきついぜ……」
思わず襲いたくなっちまう、とこぼすダンテにふと思う。
ダンテがこの状態だということはバージルだってかなり欲しかったろうに我慢をしてくれたのだ。
実はダンテより我慢強くて、相手を思いやることもできる出来た人なんじゃなかろうか。
ディーヴァは悪魔のせいで怪我をしたことを言わないことにした。
ダンテのいない間に悪魔に襲われたと知ったらこの男は「もう依頼に行かない!」とか抜かしそうだからである。
嘘も方便というものだ。
「ちょっと学校で怪我しちゃった!」
「危ねぇな……体は大切にしろよ?」
「ダンテに言われたくないなー」
悪魔のせいであると気がつかず、ダンテは心配そうな顔をする。
ディーヴァは、バージルと会った時思った疑問をダンテに向けた。
「ね。この間の話なんだけど、バージルさんって本当に恐い人なの?」
「そりゃもうおっかないのなんの……って、ディーヴァ、いつから『バージルさん』なんて呼ぶようになった?」
「え!?あー……『お兄さん』だと、あたしのお兄ちゃんとかぶるじゃない?だから……」
焦って若干早口になるディーヴァを疑問に思うこともなく、ダンテは「ふーん」と口をもごもごさせながら答えた。
ダンテが単純で良かったと思えた瞬間である。
夕食も終盤になった頃、ダンテはそこでようやく気がついた。
ディーヴァの周りに薄く纏わせておいたはずの自分の魔力がきれいさっぱり消え失せている。
その代わりに自分の魔力とすごくよく似ている魔力がやはり微量、まとわりついている。
ディーヴァに何かあって、自分の魔力が変質したとでもいうのだろうか……。
「なあ、オレがいない間なんかあったか?」
「ん?何もないよ」
「ならいいや」
おかしいとは思ったが、使っていたのはごくごく微量の魔力だったし、ディーヴァが何も言ってこないのでその質問もそこで終わりにした。
そしてダンテは食後のストロベリーサンデーを美味そうに頬張るのだった。
●あとがき
バージルがいくら冷酷非道無慈悲とか言われてても、やっぱり根っこにはエヴァさんの死があるから力を欲しくなったわけで、人間の心って捨てきれてないと思うんです。
だからこそ、恋だってするし、笑うし、情けもかける。
というわけで、双子は同じ人に惹かれるというのを実証していただきました!
悪魔から受けた傷は、バージルからすればかすり傷のような物ですでに完治している。
この聖地にいたことで体も怪我を優先的に癒したため、全く傷が残っていない。
「お前はこの中にいればいい。やつらは任せておけ」
「え、でも……」
ディーヴァは危険だと注意するが、バージルは聞かなかった。
返答代わりにディーヴァの頭を一撫でし、結界を出て悪魔達と相対した。
野犬にとりついた、というよりは元からこの形態をしている悪魔のようだ。
ずいぶんと魔力値と統率力の高い悪魔である。
下級悪魔ばかりしかいないはずの人間界にしては珍しいことだ。
群れということはどこかにいるであろうボスさえ仕留めてしまえばこちらの物である。
だが、バージルはそうしなかった。
再び悪魔達が一斉に飛びかかるようにと、バージルは挑発した。
それを結界の中から見ていたディーヴァはまたも目を覆い、ギュッとつぶった。
再びバージルがやられてしまう、と思ったからだ。
挑発を受けて怒り状態となった悪魔達は大きな咆哮と共に、先ほどと同じく飛びかかってくる。
バージルはニヤリと笑い、自身を本来の悪魔の姿に変化させた。
青い爬虫類を思わせるような体躯と、背中に生えた四枚の翼が、彼が悪魔の血族だと証明できる。
魔人化をしたことで、爆発的に上がった能力を使い、バージルはあっという間に悪魔達を全滅させた。
その中にはボスらしき悪魔もいたかもしれないが、全てがレッドオーブと砂に変わり果てた今となってはわからない。
倒し終えたことで、バージルは魔人化していた己の体を元の姿へと戻し、結界の外からディーヴァに呼びかけた。
「もういいぞ、大丈夫だったか」
「えっ」
ディーヴァはその言葉を聞いてゆっくりと目を開けた。
周りには魔の気配をもう感じられない。
安心感から結界が自然と解かれると、バージルの力を借りて立ち上がる。
「はい、なんともないです。ありがとうございました」
ほっとしたような表情でディーヴァは柔らかく笑った。
ああ、そうなのだ。
あの男の言うままにディーヴァを攫わなくてもいいではないか。
利用したり、傷つけなくたっていいではないか。
自分は他人に命令されて従うなんて無縁だったのだから、素直に聞いてやることもなかったのだ。
「早めにスラムから出て違う場所に行け。ここはもうじき悪魔の巣窟になる」
「え?」
バージルはそれだけ伝えると、またも一瞬にしていなくなった。
ディーヴァにはその意味がよくわからなく、ただ、じきにダンテが帰ってくる事務所へとゆっくり戻っていった。
***
夜になって依頼から帰って来たダンテにその話をしようと思ったが、結局やめた。
必然的にバージルと会ったことまで話さなくてはならなくなるからだ。
ダンテは帰ってきてそうそう、ディーヴァの右腕に巻かれた包帯に気がついた。
夕食を口に運びながらダンテは聞いた。
「その怪我はどうしたんだ?血の匂いがかなりきついぜ……」
思わず襲いたくなっちまう、とこぼすダンテにふと思う。
ダンテがこの状態だということはバージルだってかなり欲しかったろうに我慢をしてくれたのだ。
実はダンテより我慢強くて、相手を思いやることもできる出来た人なんじゃなかろうか。
ディーヴァは悪魔のせいで怪我をしたことを言わないことにした。
ダンテのいない間に悪魔に襲われたと知ったらこの男は「もう依頼に行かない!」とか抜かしそうだからである。
嘘も方便というものだ。
「ちょっと学校で怪我しちゃった!」
「危ねぇな……体は大切にしろよ?」
「ダンテに言われたくないなー」
悪魔のせいであると気がつかず、ダンテは心配そうな顔をする。
ディーヴァは、バージルと会った時思った疑問をダンテに向けた。
「ね。この間の話なんだけど、バージルさんって本当に恐い人なの?」
「そりゃもうおっかないのなんの……って、ディーヴァ、いつから『バージルさん』なんて呼ぶようになった?」
「え!?あー……『お兄さん』だと、あたしのお兄ちゃんとかぶるじゃない?だから……」
焦って若干早口になるディーヴァを疑問に思うこともなく、ダンテは「ふーん」と口をもごもごさせながら答えた。
ダンテが単純で良かったと思えた瞬間である。
夕食も終盤になった頃、ダンテはそこでようやく気がついた。
ディーヴァの周りに薄く纏わせておいたはずの自分の魔力がきれいさっぱり消え失せている。
その代わりに自分の魔力とすごくよく似ている魔力がやはり微量、まとわりついている。
ディーヴァに何かあって、自分の魔力が変質したとでもいうのだろうか……。
「なあ、オレがいない間なんかあったか?」
「ん?何もないよ」
「ならいいや」
おかしいとは思ったが、使っていたのはごくごく微量の魔力だったし、ディーヴァが何も言ってこないのでその質問もそこで終わりにした。
そしてダンテは食後のストロベリーサンデーを美味そうに頬張るのだった。
●あとがき
バージルがいくら冷酷非道無慈悲とか言われてても、やっぱり根っこにはエヴァさんの死があるから力を欲しくなったわけで、人間の心って捨てきれてないと思うんです。
だからこそ、恋だってするし、笑うし、情けもかける。
というわけで、双子は同じ人に惹かれるというのを実証していただきました!