ディーヴァを諦めたバージルはアーカムと共に先へ進んだ。
華もなくなり、ら気持ちの悪い男と二人きりということがここまで苦痛なことだったろうか。

「あの娘はいなくていいのか？より強くなったスパーダの力が手に入るぞ」
「強くなかろうが力が手に入るならそれでいいだろう」
「……君がいいなら止めんがね。さて、もうすぐ着く」

持っていた本を読みながら、この塔について話していくアーカム。
随分この塔に陶酔しているようだった。

「人々はこの塔をこう呼んだ。テメンニグル…『恐怖を生み出す塔』と。恐怖……」

笑うアーカムをバージルは横目でいぶかしげに見つめた。

「感じるか？怨念を、怒りを」

ゴゴゴゴゴ……と大きな音と共に扉が開いていく。

「この地に封じられた哀れな者達……魔の力を求めた彼らと共に、スパーダは魔界への道を封じたのだ」

完全に開いた扉を潜り抜けながら、アーカムは背後……いや、はるか遠く離れた位置にいるであろう『誰か』を気にした。
バージルは前を歩きながら、その様子を不審に思う。

「どうした？」
「……何も」

相変わらず何を考えているのかわからない男だ。



＊＊＊



地下水脈を抜けたディーヴァは単身、地底御苑に来ていた。
足をもつれそうなほど急がせていたためか、大きな段差で狙いすましたかのようにこけてしまった。

「あっ、うにゃ、ぷぎゅっ！！」

血の出るような怪我こそしなかったが、ダイナミックに転んだディーヴァは一回転しながら水場に転がった。

バシャーン！
盛大に水に浸かってしまったため、上から下まで濡れ鼠状態。

「うあ～びちょびちょ…服が張り付いて気持ち悪いよぉ～」

制服の上着が水を含んでものすごく重い。
ディーヴァは着ているもの全体を、上から下までよく絞った。
こっそり下着もだ。
そして絞りなおした上着は、腰に回して結んだのだった。

こうなると髪も邪魔くさい。
ネクタイを解いたディーヴァは、それを髪をしばるリボン替わりに細く折り曲げ、太い一本の三つ編みにして垂らした。

「これでいい…かなぁ？」

水面に映る自分をよく見てからディーヴァは引き続きダンテを探すため、次の扉を開けた。