mission 0:lost mankind heart ~双子の片割れ~
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年が明けてしばらく経ち、町のニューイヤーパレード気分も下火となった頃の休日。
ダンテは今日も今日とて、相棒のエボニーとアイボリーの清掃にいそしんでいた。
命……というよりは、怪我するかしないかを左右するのだから当たり前と言えよう。
ディーヴァは怪我して帰ってくると泣きながら怒る。
それは心配してくれているということなのだ、非常に嬉しさを感じるが、泣き顔を見たいわけではない。
だが啼き顔は見たい。
それを抜きにしても、内部掃除はダンテの日課だ。
ディーヴァは紅茶を片手にダンテの日課を眺めるのが好きだった。
ところが、今日はダンテの手元ではない箇所をじっと見つめているようだ。
ダンテはいつもよりも手早く作業を終わらせると、ディーヴァを後ろから抱き込んだ。
「オレの胸元になんかついてるか?
お前がそうやって見つめてくるからオレのハートはすでに穴ぼこだらけだぞ。お前で埋めてくれよ」
ダンテの髪が頬をかすめてくすぐったい。
ディーヴァは笑みをこぼしながら優しくダンテの髪をすいてやった。
ダンテは飼い犬よろしく気持ち良さげにされるがままで聞いていた。
「ダンテってそのアクセサリーをいつもぶら下げてるなぁって思っただけ。重そうだよね」
そう言ってダンテの胸元を指でつん、とつついた。
全身をディーヴァにくったり預けたまま、ダンテはゆっくりとした動きで指された物を取り出した。
「アミュレットか?」
シャラン……。
金属同士のこすれ合う音が響く。
ディーヴァにあげたネックレスの宝石と同じで赤い色をしている。
だが、それは更に色濃いガーネット色をしていた。
「アミュレットってことはお守り?」
「ああ」
ディーヴァはよく見たことがなかったそれを手にとって、形を覚えるかの如く、じっくり観察した。
誰にも触らせたことがない大切な物だが、ディーヴァはダンテにとって今この世で一番愛し、信頼している人物だ。触られようと問題はない。
ダンテはディーヴァがアミュレットに触れるのを黙って見守っていた。
「あれ……?」
アミュレットを裏返して見たディーヴァは文字が掘られているのに気がついた。
そして書かれた文字を指でなぞる。
「ダンテの名前と……あ、お兄さんの名前ね」
アミュレットにはDANTEとVERGILという名前が彫られていた。
「母さんがオレ達の誕生日にくれたものだからな。……今じゃ形見になっちまった」
当時を思い出して、ダンテはゆっくり目を閉じてまぶたの裏に再生した。
「そっか……じゃあたまには磨いてあげないとね!金属部分が曇っちゃってるよ」
「そうだな」
先程まで銃の清掃に使っていた道具……その中の柔らかく清潔な布切れを取り出したダンテは、優しい手付きでアミュレットを磨いた。
抱き締められたまま、ディーヴァはキュキュッと磨くダンテを覗き込んだ。
ダンテの手の中でアミュレットは本来の輝きを取り戻していく。
金属部分だけでなく、真ん中の赤い宝石が光を反射してキラキラ美しい。
それには通常の宝石にはない、触れたら火傷するような危うい美しさを感じた。
「綺麗……でもルビーとかガーネットじゃないみたい」
「最初は親父がおふくろにやった物らしいから、魔界の品じゃねぇかな」
なるほど、それならば納得できる。
魔界の物だからディーヴァの天使の部分が反応したのだろう。
見ているだけなら綺麗だが、どこか肌がざわざわする感覚がある。
「『オレ達』ってことはお兄さんも持ってるんだね」
「オレは銀の鎖のアミュレットを、あいつは金の鎖のやつを持ってるぜ」
「ふーん、そうなんだ。二つあるんだ。
……これ、売ったら高そうだねー」
「げ。借金返済の足しにするとか言わねぇよな?」
「それはないよ」
アミュレットはダンテの手により宝石店に並べられた商品のような輝きを放つ。
その「売ったら高そう」の一言にダンテはあわててディーヴァから離れ、アミュレットを隠そうとした。
そんなダンテにディーヴァは可笑しそうに笑うと続けた。
「そう言えばお兄さんの話はちゃんと聞いてなかったね。あたし、名前と見た目の事しかほとんど知らないや……ダンテのこともっと知りたいから教えて?」
ディーヴァはダンテから兄であるバージルについて、名前と見た目くらいしか教えられていなかった。
髪を下ろしているダンテと違い、髪を父であるスパーダの真似をしてかきあげ、眉間にしわを寄せたようなそんな男だ、と。
「オレのこと知りたいっていうけどな、兄貴のことなんぞまで知ってどうすんだよ」
ダンテは不貞腐れたような表情でディーヴァを見た。
ディーヴァに限って有り得ないとはいえ、自分からバージルに乗り替えてしまうのではないかと不安がよぎる。
やつは冷徹で非情な性格だが、ディーヴァに惹かれたとしたらオレ以上の紳士ぶりを発揮するだろう。
女ってのは自分を女性として扱ってくれる紳士的な男を好きな生き物だ。
ディーヴァがときめく姿が目に浮かぶ。
「あ。ダンテ、もしかしてあたしがお兄さんの方を好きになるとか考えてる?」
ダンテの顔が「何でわかった!?」と言いたげな表情で止まる。
「そんなことあるわけないでしょ。ふふ、おバカさん」
ディーヴァは再度可笑しそうに笑った。
「そうだな!」
笑うディーヴァに、ダンテも笑顔になる。
そして抱きしめる力を強くした。
「きゃっ!潰れちゃう〜」
「潰してるんだよ」
ダンテは『恋人』になってからは遠慮がなくなった。
もともと遠慮なんてしてくれていなかった気もするけれど、ほんのちょっぴり対応が変わった。
けれども触れてくる時、手に感じるその優しさだけは変わらない。
それがどうにも嬉しくて堪らなかった。
「ふ。最近さ、……やっと、やっと心から笑ってくれるようになったな」
「え?」
「そりゃあ、何度か笑顔は見た。けど、最初の頃は心の底から笑った笑顔は見られなかったからな。安心したぜ」
「そう、かな?あたし笑ってなかった?」
「笑ってはいたさ。でも家族のこともあったから心のどっかがセーブされてたんだろ。
笑えるならいいことだ」
そういってダンテはグニグニとディーヴァの頬を引っ張って遊ぶ。
こういう時は手がそこまで優しくない!
引きちぎれるとかはないが、なかなかに力入ってる!!
「ちょ、痛い!ほっぺた伸ばさないで!」
「悪い悪い!
っと、えーと?バージルのことだっけか?」
「そうだよ!もうっ!!」
***
それからダンテはバージルのことも交えて小さいときのことを話して聞かせた。
小さな頃に泥だらけになって遊んで母親に叱られたこと、普段は優しいが剣術を教える時の父親は恐ろしかったこと、見分けるためかダンテは赤でバージルは青の服ばかり着ていたことなどを話す。
服を交換してしまえば、両親すら区別がつかないほどあの頃は姿も声もそっくりだった。
たまに両親を驚かすためにと、服を交換したことが懐かしい。
「……と、まあ、こんなところだ」
「あ。青い服は自分のイメージじゃないからいやなんだね」
「まあな」
「それでかぁ……理由がようやくわかったよ。
バージルとまた仲良くなれるといいね」
自分とバージルは殺し合いをしたような仲だ。
仲良くなど無理な気がしたが、ディーヴァの言葉にダンテはゆっくりと頷いた。
ダンテは今日も今日とて、相棒のエボニーとアイボリーの清掃にいそしんでいた。
命……というよりは、怪我するかしないかを左右するのだから当たり前と言えよう。
ディーヴァは怪我して帰ってくると泣きながら怒る。
それは心配してくれているということなのだ、非常に嬉しさを感じるが、泣き顔を見たいわけではない。
だが啼き顔は見たい。
それを抜きにしても、内部掃除はダンテの日課だ。
ディーヴァは紅茶を片手にダンテの日課を眺めるのが好きだった。
ところが、今日はダンテの手元ではない箇所をじっと見つめているようだ。
ダンテはいつもよりも手早く作業を終わらせると、ディーヴァを後ろから抱き込んだ。
「オレの胸元になんかついてるか?
お前がそうやって見つめてくるからオレのハートはすでに穴ぼこだらけだぞ。お前で埋めてくれよ」
ダンテの髪が頬をかすめてくすぐったい。
ディーヴァは笑みをこぼしながら優しくダンテの髪をすいてやった。
ダンテは飼い犬よろしく気持ち良さげにされるがままで聞いていた。
「ダンテってそのアクセサリーをいつもぶら下げてるなぁって思っただけ。重そうだよね」
そう言ってダンテの胸元を指でつん、とつついた。
全身をディーヴァにくったり預けたまま、ダンテはゆっくりとした動きで指された物を取り出した。
「アミュレットか?」
シャラン……。
金属同士のこすれ合う音が響く。
ディーヴァにあげたネックレスの宝石と同じで赤い色をしている。
だが、それは更に色濃いガーネット色をしていた。
「アミュレットってことはお守り?」
「ああ」
ディーヴァはよく見たことがなかったそれを手にとって、形を覚えるかの如く、じっくり観察した。
誰にも触らせたことがない大切な物だが、ディーヴァはダンテにとって今この世で一番愛し、信頼している人物だ。触られようと問題はない。
ダンテはディーヴァがアミュレットに触れるのを黙って見守っていた。
「あれ……?」
アミュレットを裏返して見たディーヴァは文字が掘られているのに気がついた。
そして書かれた文字を指でなぞる。
「ダンテの名前と……あ、お兄さんの名前ね」
アミュレットにはDANTEとVERGILという名前が彫られていた。
「母さんがオレ達の誕生日にくれたものだからな。……今じゃ形見になっちまった」
当時を思い出して、ダンテはゆっくり目を閉じてまぶたの裏に再生した。
「そっか……じゃあたまには磨いてあげないとね!金属部分が曇っちゃってるよ」
「そうだな」
先程まで銃の清掃に使っていた道具……その中の柔らかく清潔な布切れを取り出したダンテは、優しい手付きでアミュレットを磨いた。
抱き締められたまま、ディーヴァはキュキュッと磨くダンテを覗き込んだ。
ダンテの手の中でアミュレットは本来の輝きを取り戻していく。
金属部分だけでなく、真ん中の赤い宝石が光を反射してキラキラ美しい。
それには通常の宝石にはない、触れたら火傷するような危うい美しさを感じた。
「綺麗……でもルビーとかガーネットじゃないみたい」
「最初は親父がおふくろにやった物らしいから、魔界の品じゃねぇかな」
なるほど、それならば納得できる。
魔界の物だからディーヴァの天使の部分が反応したのだろう。
見ているだけなら綺麗だが、どこか肌がざわざわする感覚がある。
「『オレ達』ってことはお兄さんも持ってるんだね」
「オレは銀の鎖のアミュレットを、あいつは金の鎖のやつを持ってるぜ」
「ふーん、そうなんだ。二つあるんだ。
……これ、売ったら高そうだねー」
「げ。借金返済の足しにするとか言わねぇよな?」
「それはないよ」
アミュレットはダンテの手により宝石店に並べられた商品のような輝きを放つ。
その「売ったら高そう」の一言にダンテはあわててディーヴァから離れ、アミュレットを隠そうとした。
そんなダンテにディーヴァは可笑しそうに笑うと続けた。
「そう言えばお兄さんの話はちゃんと聞いてなかったね。あたし、名前と見た目の事しかほとんど知らないや……ダンテのこともっと知りたいから教えて?」
ディーヴァはダンテから兄であるバージルについて、名前と見た目くらいしか教えられていなかった。
髪を下ろしているダンテと違い、髪を父であるスパーダの真似をしてかきあげ、眉間にしわを寄せたようなそんな男だ、と。
「オレのこと知りたいっていうけどな、兄貴のことなんぞまで知ってどうすんだよ」
ダンテは不貞腐れたような表情でディーヴァを見た。
ディーヴァに限って有り得ないとはいえ、自分からバージルに乗り替えてしまうのではないかと不安がよぎる。
やつは冷徹で非情な性格だが、ディーヴァに惹かれたとしたらオレ以上の紳士ぶりを発揮するだろう。
女ってのは自分を女性として扱ってくれる紳士的な男を好きな生き物だ。
ディーヴァがときめく姿が目に浮かぶ。
「あ。ダンテ、もしかしてあたしがお兄さんの方を好きになるとか考えてる?」
ダンテの顔が「何でわかった!?」と言いたげな表情で止まる。
「そんなことあるわけないでしょ。ふふ、おバカさん」
ディーヴァは再度可笑しそうに笑った。
「そうだな!」
笑うディーヴァに、ダンテも笑顔になる。
そして抱きしめる力を強くした。
「きゃっ!潰れちゃう〜」
「潰してるんだよ」
ダンテは『恋人』になってからは遠慮がなくなった。
もともと遠慮なんてしてくれていなかった気もするけれど、ほんのちょっぴり対応が変わった。
けれども触れてくる時、手に感じるその優しさだけは変わらない。
それがどうにも嬉しくて堪らなかった。
「ふ。最近さ、……やっと、やっと心から笑ってくれるようになったな」
「え?」
「そりゃあ、何度か笑顔は見た。けど、最初の頃は心の底から笑った笑顔は見られなかったからな。安心したぜ」
「そう、かな?あたし笑ってなかった?」
「笑ってはいたさ。でも家族のこともあったから心のどっかがセーブされてたんだろ。
笑えるならいいことだ」
そういってダンテはグニグニとディーヴァの頬を引っ張って遊ぶ。
こういう時は手がそこまで優しくない!
引きちぎれるとかはないが、なかなかに力入ってる!!
「ちょ、痛い!ほっぺた伸ばさないで!」
「悪い悪い!
っと、えーと?バージルのことだっけか?」
「そうだよ!もうっ!!」
***
それからダンテはバージルのことも交えて小さいときのことを話して聞かせた。
小さな頃に泥だらけになって遊んで母親に叱られたこと、普段は優しいが剣術を教える時の父親は恐ろしかったこと、見分けるためかダンテは赤でバージルは青の服ばかり着ていたことなどを話す。
服を交換してしまえば、両親すら区別がつかないほどあの頃は姿も声もそっくりだった。
たまに両親を驚かすためにと、服を交換したことが懐かしい。
「……と、まあ、こんなところだ」
「あ。青い服は自分のイメージじゃないからいやなんだね」
「まあな」
「それでかぁ……理由がようやくわかったよ。
バージルとまた仲良くなれるといいね」
自分とバージルは殺し合いをしたような仲だ。
仲良くなど無理な気がしたが、ディーヴァの言葉にダンテはゆっくりと頷いた。