その醜い姿はスパーダの物ではなく、アーカム本人の心の闇が生み出したのだろう。
あふれるパワーを受け止められず、膨れ上がって丸い肉塊のようになっていると見てとれた。

そんなアーカムの中央目掛けて、ダンテのスティンガーが炸裂する。
しかし、硬くはないのだがずぶずぶと剣が入り込んでいき、大したダメージは与えられていないようだった。

「ちっ、長丁場になりそうだ」

長くなればそれだけ自分はもちろん、ディーヴァにはキツいだろう。
今だって魔界という場所にいる、それだけでつらそうなのだ。
早く戻らねば、そう思う。

複数ついた触手や腕、それを緩急つけて振り回してくるのをうまく避け、ダンテは連続でたくさんの攻撃を見舞った。

しかも、この姿のアーカム……ラッキーな事に動きだけはとても遅い。
ダンテは楽々背後をとると、思いきり殴り付けた。

「こいつはレディの分だ！続いてオレのかっこいい顔を踏みつけた分！そして……」

殴り続けて、最後にゾディアックを纏わせた強烈な右ストレートを繰り出す。

「これはディーヴァの分だあああっ！！さらって襲うなんて絶対に許さん！！うらやまけしからん！」
「ぎゃああああ！ケツがぁ！！」

渾身の右ストレートはちょうどアーカムが人間なら尻付近であろう場所にクリーンヒット。
触手や腕で殴られた場所をおさえ、アーカムは上空へ逃げた。

ダンテの一連の言動に、ディーヴァは無言になるしかなかった。

そして上空からは得体の知れない悪魔が降り注いで、ダンテの周りを取り囲む。
アーカムの一部のようだ。

「置き土産ってやつかよ！」

ただ突進してくるのみだったが、その軍団並みの大量さに、相手にするのも辟易する。
ダンテは借りたカリーナ＝アンを使い、大量の悪魔をまとめてしとめた。

しばらく雑魚を相手にしていると本体たるアーカムが、上空から降りてきた。
そのまま近くにいたディーヴァの体を触手で掴んでの登場だ。

「え……。い、いやぁぁぁぁ！」
「私は神になるのだ！」

ハーハッハッハッと高笑いをあげてディーヴァを持ち上げるアーカムに、ダンテが青筋を立てて叫ぶ。

「てめっ！一度ならず二度までもオレのディーヴァを……！！」

そして取り返そうと手を伸ばすも、素早く振るわれた触手によってダンテは弾き飛ばされてしまった。

「ぐっ！！」

乱立する柱に叩きつけられるダンテ。
そんなダンテを放っておいて、アーカムは捕まえたディーヴァをギリギリと締め付ける。
悪魔の触手だからだろうか、それはソウルイーターの能力と同じように締め付けた場所からディーヴァの力を奪っていった。

ディーヴァの体からは徐々に力が抜けていく。

「ぁ……やぁ、やめて……」
「おお……。あふれる、あふれるぞ！力があふれるゥゥゥ！！」

天使の力を得続けるアーカムの体は、さらに膨張をつづけた。
どこまで大きくなれば気が済むのだろうか。
そのまま力の吸い過ぎで破裂して、風船みたく飛んで行ってしまえ。

「やめろぉっ！！」

叫ぶダンテが近づこうとするも、アーカムは体から弓矢のような魔弾を撃って攻撃してきた。

「貴様は……死ね！！」

追尾性が高い上に連続で放たれたそれをダンテは回避もせず、体に受けながらディーヴァの元へと急いだ。
自分が傷つこうともディーヴァが無事ならそれでいい。

上手くアーカムの懐へ飛び込んだダンテは、ディーヴァを掴む触手を痛めつける。
拘束がゆるみ重力に従って落ちてきたところを、キャッチし顔を覗き込んだ。

ぐったりとダンテの胸に体を預けるディーヴァだったが、すぐにエメラルド色の双眸にダンテを映した。

「大丈夫か？」
「ありがと、なんとか大丈夫……」

力なくもへらりと笑ってみせてくれたディーヴァに、ようやくホッとした。