一周目 壱
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それから私と禰󠄀豆子ちゃんは、何度も三人を起こそうとした。
筆があればこの寝坊助どもにいい感じの制裁を加えたのに。
残念ながら万年筆しかないから、落書きはできない。あっ、制裁が落書き固定なの言っちゃった。
「起きて!起きてください!師範!!
朝じゃないけど!起きて!師範の分のお芋食べちゃうよ!」
大きく揺さぶるけれど、眉間に皺が寄っただけで起きない!
お芋大好き杏寿郎さんがお芋を話題にしても起きないなんて、この血鬼術ほんっと強固だな〜!
「む〜!」
「禰󠄀豆子ちゃ、えっ!」
禰󠄀豆子ちゃんが隣で伊之助を無遠慮に燃やした。
ま、丸焼き!猪の丸焼きだ!?
赤というよりも濃い桃色に燃えるその炎は、しかし伊之助を燃やすことはなく、彼が握りしめていた何か、そして未だ残っていた縄の端だけを燃やし尽くしたようだった。
ぴくり、伊之助の手が動いた。
もしかして、鬼に関するものだけが燃えるとかだったりーー?
そう思った瞬間、伊之助が飛び起きて飛んでいった。
「オラァァ!!セイッ!
ついてきやがれ子分どもがぁ!爆裂覚醒猪突猛進!伊之助様のお通りじゃあ!!」
……天井に穴を開けて。
「うそーん」
ぽかーん。空いた口が塞がらないとはこの事。
爆裂するほどの覚醒って寝起きよすぎない?というか天井に穴……。いや、それくらい日輪刀使えばなんとかなると思うけどさ。
やっぱり元気な子だなあ!?
上で炭治郎と伊之助の声がする。
鬼を切った……にしては様子が変だ。今度はどうしたんだろう。何があった?
汽車の全体が、鬼になってるって聞こえない?
ええええ……すごく嫌な予感がするんだけど。
その瞬間、ぬめっとする肉のようなものが、湧いて車両の中を覆い始めた。
ずるずると、長い触腕まで生えてこちらに伸びてくる。
「なっ!?ナニコレ!?
なんか臭い!まるで大きな蚯蚓じゃないの!
きもちわるっ!!もしかしてこれが鬼の一部!?」
鬼の一部ならば、乗客にも危険が及ぶ。
寝ている人たちは鬼の触腕を斬って助ければまだなんとかなる。けれど起きているこの二人は恐怖で騒いで逃げ出そうとしてしまうかもしれない。
「これ!あげますから袋を開けた状態で持っていてください!鬼が嫌う藤花の匂い袋です!!」
「鬼が嫌うなら貴女が必要な物では?」
懐から取り出したのは、厳重に包まれた藤の匂い袋。それを、私と繋がっていた男性にしっかりと握らせる。
「あなた方のような人に渡す為持ち歩いているだけで私には本来要らない物!鬼を狩る戦いに身を投じる以上、鬼が寄ってこないのでは本末転倒です」
本来ならば、稀血の私にこそ必要な物だった。
だがそれは私が、鬼殺隊に所属していなかった場合だ。鬼がいる世でも、ただの女として杏寿郎さんの隣にいた場合に必要な物。
あの夢のように……。
杏寿郎さんの唇が触れた首が、今でも熱く感じる。
そこを愛しむようにそっと押さえ、私は檄を飛ばした。
「いいですか!昏倒させちゃったそこの人達と一緒にじっとしてれば、きっと大丈夫です!」
与えた物は、袋を開けなければ周りに匂いが広がらない藤花の香だ。
これまでの任務先で民間人に渡していてもう残り一個だったが、それでもあってよかった。
あれもまた、下弦や上弦の鬼に対しては気休めかもしれないけれど、ないよりマシなのだから。
ヒュウ、鋭い風が吹いた。
起きた伊之助に触発されたのだろうか、善逸が刀を手にして居合いの構えをとっている。
しかし、その顔は……眠ったままだった。
眠ったままの善逸が動く。
気がつくと、伸びてきた触腕が見事に千切れ飛んでいた。
眠ったままの剣撃?
え、酔拳ならぬ、睡剣ってこと!?いや誰が上手いこと言えと!
けどこの子は雷の呼吸の使い手か。
目にも留まらぬ斬撃の中、善逸の刀に映る雷の文様が残像として目に残った。
技の速さだけで言えば、私なんかより速いかもしれない。
……あとは杏寿郎さんに起きてもらわないと。
後輩が起きたのに柱の貴方が起きないんじゃ示しがつかないでしょ。寝顔も素敵だけど!!
「師範!周りがなんかとーっても気持ち悪いことになってるの!!頼むから起きてえー!
起きないなら燃やしますよ!
禰󠄀豆子ちゃん!こっちにも火!!もうこの人の事思いっきり燃やしちゃって!!」
「むー!!」
着火ぁー!
禰󠄀豆子ちゃんの放った炎が、杏寿郎さんを包み込む。
火だるま方式は当たっていたし、思いっきり杏寿郎さんに火をつけてしまえ〜!
大丈夫、杏寿郎さんだし!!炎の呼吸使うし燃やされてもへっちゃら!!……だと思う!
「多分これで起きる……はず!
ここは起きたあとの師範や善逸に任せて、今のうちに他の車両も見に行こう……!乗客を助けなくちゃ」
「むむー!」
禰󠄀豆子ちゃんの小さな手をひき私は飛び出した。
筆があればこの寝坊助どもにいい感じの制裁を加えたのに。
残念ながら万年筆しかないから、落書きはできない。あっ、制裁が落書き固定なの言っちゃった。
「起きて!起きてください!師範!!
朝じゃないけど!起きて!師範の分のお芋食べちゃうよ!」
大きく揺さぶるけれど、眉間に皺が寄っただけで起きない!
お芋大好き杏寿郎さんがお芋を話題にしても起きないなんて、この血鬼術ほんっと強固だな〜!
「む〜!」
「禰󠄀豆子ちゃ、えっ!」
禰󠄀豆子ちゃんが隣で伊之助を無遠慮に燃やした。
ま、丸焼き!猪の丸焼きだ!?
赤というよりも濃い桃色に燃えるその炎は、しかし伊之助を燃やすことはなく、彼が握りしめていた何か、そして未だ残っていた縄の端だけを燃やし尽くしたようだった。
ぴくり、伊之助の手が動いた。
もしかして、鬼に関するものだけが燃えるとかだったりーー?
そう思った瞬間、伊之助が飛び起きて飛んでいった。
「オラァァ!!セイッ!
ついてきやがれ子分どもがぁ!爆裂覚醒猪突猛進!伊之助様のお通りじゃあ!!」
……天井に穴を開けて。
「うそーん」
ぽかーん。空いた口が塞がらないとはこの事。
爆裂するほどの覚醒って寝起きよすぎない?というか天井に穴……。いや、それくらい日輪刀使えばなんとかなると思うけどさ。
やっぱり元気な子だなあ!?
上で炭治郎と伊之助の声がする。
鬼を切った……にしては様子が変だ。今度はどうしたんだろう。何があった?
汽車の全体が、鬼になってるって聞こえない?
ええええ……すごく嫌な予感がするんだけど。
その瞬間、ぬめっとする肉のようなものが、湧いて車両の中を覆い始めた。
ずるずると、長い触腕まで生えてこちらに伸びてくる。
「なっ!?ナニコレ!?
なんか臭い!まるで大きな蚯蚓じゃないの!
きもちわるっ!!もしかしてこれが鬼の一部!?」
鬼の一部ならば、乗客にも危険が及ぶ。
寝ている人たちは鬼の触腕を斬って助ければまだなんとかなる。けれど起きているこの二人は恐怖で騒いで逃げ出そうとしてしまうかもしれない。
「これ!あげますから袋を開けた状態で持っていてください!鬼が嫌う藤花の匂い袋です!!」
「鬼が嫌うなら貴女が必要な物では?」
懐から取り出したのは、厳重に包まれた藤の匂い袋。それを、私と繋がっていた男性にしっかりと握らせる。
「あなた方のような人に渡す為持ち歩いているだけで私には本来要らない物!鬼を狩る戦いに身を投じる以上、鬼が寄ってこないのでは本末転倒です」
本来ならば、稀血の私にこそ必要な物だった。
だがそれは私が、鬼殺隊に所属していなかった場合だ。鬼がいる世でも、ただの女として杏寿郎さんの隣にいた場合に必要な物。
あの夢のように……。
杏寿郎さんの唇が触れた首が、今でも熱く感じる。
そこを愛しむようにそっと押さえ、私は檄を飛ばした。
「いいですか!昏倒させちゃったそこの人達と一緒にじっとしてれば、きっと大丈夫です!」
与えた物は、袋を開けなければ周りに匂いが広がらない藤花の香だ。
これまでの任務先で民間人に渡していてもう残り一個だったが、それでもあってよかった。
あれもまた、下弦や上弦の鬼に対しては気休めかもしれないけれど、ないよりマシなのだから。
ヒュウ、鋭い風が吹いた。
起きた伊之助に触発されたのだろうか、善逸が刀を手にして居合いの構えをとっている。
しかし、その顔は……眠ったままだった。
眠ったままの善逸が動く。
気がつくと、伸びてきた触腕が見事に千切れ飛んでいた。
眠ったままの剣撃?
え、酔拳ならぬ、睡剣ってこと!?いや誰が上手いこと言えと!
けどこの子は雷の呼吸の使い手か。
目にも留まらぬ斬撃の中、善逸の刀に映る雷の文様が残像として目に残った。
技の速さだけで言えば、私なんかより速いかもしれない。
……あとは杏寿郎さんに起きてもらわないと。
後輩が起きたのに柱の貴方が起きないんじゃ示しがつかないでしょ。寝顔も素敵だけど!!
「師範!周りがなんかとーっても気持ち悪いことになってるの!!頼むから起きてえー!
起きないなら燃やしますよ!
禰󠄀豆子ちゃん!こっちにも火!!もうこの人の事思いっきり燃やしちゃって!!」
「むー!!」
着火ぁー!
禰󠄀豆子ちゃんの放った炎が、杏寿郎さんを包み込む。
火だるま方式は当たっていたし、思いっきり杏寿郎さんに火をつけてしまえ〜!
大丈夫、杏寿郎さんだし!!炎の呼吸使うし燃やされてもへっちゃら!!……だと思う!
「多分これで起きる……はず!
ここは起きたあとの師範や善逸に任せて、今のうちに他の車両も見に行こう……!乗客を助けなくちゃ」
「むむー!」
禰󠄀豆子ちゃんの小さな手をひき私は飛び出した。