二周目 肆
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『前』と同じように蜜璃は修行開始から約半年後、無事に選別を突破して隊士になった。
私はまだ階級戊。甲までの先は長いし、修行開始から半年で隊士になんて、私には到底無理な事だったろう。
やはり、そんなところまで出来が違うのかと、少しだけ悔しさを覚える。
獪岳にその事を文で話したら、あらびっくり。彼も似たような心の状態だった。
弟弟子とは断固として認めてないらしいが、その子のことで頭にきてるそうだ。出来は悪いのに先生に認められてるだのなんだの憎たらしいらしい。ちなみにその弟弟子は善逸だった。なるほどねぇ。
でも、私は別に蜜璃にちょっぴり嫉妬しただけで、憎いと思ったことはないんだけどなぁ。
獪岳は大変そうだ。あの人はプライドも高いし、自分の心との折り合いをつけるの下手くそそう。
「桃の花のいい匂い……」
獪岳から送られる手紙はいつも桃の花の匂いがする。時期になれば、お腹が空くほど甘やかな桃の香りもするくらいで。
今は春なので、それはもう桃の花の芳醇な香りで満ちている。杏寿郎さんがその匂いを嗅ぎつけて、一時期「匂い付きの恋文ではなかろうな!」としつこいくらい聞いてきたっけ……中身を見せたら納得して引き下がっていたけれど。
獪岳と私の間にそんな甘酸っぱいやり取りが発生するわけないじゃーん。杏寿郎さんたら、まるで父親ね!
槇寿朗さんの代わりなのかもしれない。
さてさて。蜜璃が隊士になった祝いは、桜が満開に咲く下で行った。花見だわっしょい!うん、春だから我ながらなかなかいいチョイスだわ。
蜜璃の大好物の桜餅に、ちょっと早いけど柏餅、それから大量のお団子。そしてお重箱にみっちり詰め込んだお料理の数々。
作る予定の日が、任務のない日でよかった〜!
とはいえ、作るだけでは足りなさそうなので近所の甘味処にも発注して、お弁当がやたらと豪華なお花見にしてみた。
桜とかわいい着物を着た妹弟子という最強コラボレーションの映像が見れて、感無量の思いだわ〜〜〜。
ここに簡単に写真が撮れる機械があるなら、ぜひ蜜璃のご実家にも写真データを送りたいくらい。時を超えて!きたれ我がスマホ!!
それが全員揃った時の最後の記憶。
鬼殺隊に所属してると、なかなか行き合うことは少ない。各地を飛び回るし、階級によっても任務はバラバラ、場所もバラバラ。
そんなこんなで数週間経った。
杏寿郎さんが帰ってきている事だし、保存してあるさつまいもを消費したいなと思っていた、桜が散り始める春の日。
蜜璃が久しぶりに修行をつけてもらいに、煉獄家を訪れた。
嬉々として、打ち稽古に励む杏寿郎さんと蜜璃。
「お腹と背中がくっつきそうです!甘味休憩を所望します!」
「あと千回だ!がんばれ!」
「嘘でしょ〜!!」
頑張りたまえわが妹弟子よ……君が来る前に私も朝から打ち稽古でぼろぼろにされたから。いやしかし、そのあとでもまだまだやる気満々元気いっぱいの杏寿郎さんはおかしい。体力無尽蔵めっ。
私?もう稽古はお腹いっぱいなので、昼餉作りと休憩用の菓子作りで千寿郎と一緒に厨に篭ってた。
ぐううー、蜜璃がお腹の音で杏寿郎さんの言葉に返事する。
その様子があまりに可哀想で、私と千寿郎は顔を見合わせて声をかけた。
「お菓子を作ってきましたので、一息入れてはどうですか?」
「焼きたてほかほかですよー」
菓子という言葉を聞いた瞬間、蜜璃はこれまでで一番の速さを見せた。私と千寿郎によだれを垂らしながら飛びつく。
ああこんなに空腹になってかわいそうに。
休憩はまだだ!と注意してくるもさつまいもの菓子もあることを言えば、杏寿郎さんは迷うことなく休憩を言い渡してきた。
誰も好物には敵わない。
蜜璃は好物の桜餅を。杏寿郎さんは焼きたてのスイートポテトを美味しそうに頬張りながら、のんびりと休憩タイム。うーん。キレのある良い「わっしょい」が今日も炸裂ッ!
私と千寿郎もご相伴に預かり、スイートポテトを口に運ぶ。
今日のスイートポテトは、蜜璃に教わったレシピで千寿郎が一から十まで作った。
さすが我が弟!めちゃくちゃ美味しい!良い塩梅の味と風味に、スイートポテトとして完璧な成形。
店に出せる!いや、いいお嫁さ……お婿さんになるね。
そのあと、鬼殺隊士になった祝いにと、今更ながら煉獄兄妹弟から蜜璃へ羽織を贈らせていただいた。
シンプルに真っ白なそれは、未だ蜜璃自身の呼吸の土台ががしっかりしていないからこその純白無地の羽織だ。
白いそれならば、これから自分で何色にも染まれる。蜜璃のあの呼吸の色にだって染められる。
欲を言えば炎の呼吸を一人でも多くの剣士に継承したいし蜜璃にも継いでほしいけれど、最悪は蜜璃のそれが炎の呼吸でなくてもいい。
『前』と同じなら、蜜璃は自分だけの素晴らしい呼吸に目覚めるのだから。
それにしても、蜜璃の隊服はどうにかならないもんかねぇ。隊服共々今回は初めて目の前で着てもらったんだけど……。
「なんだその格好は!あられもない!!」
こんなところまで『前』と同じじゃなくても良いと思う。
胸がこぼれ落ちそうなほど前が空いている。風邪ひきそう!スカート短すぎる。私より短いってどーゆーことだ!
杏寿郎さんが大声を出して当然だった。
「隠の人がこれが公式だって〜……」
「それ、瓶底眼鏡かけた人じゃなかった?他に隊服はないの?」
「よくわかったわね、眼鏡かけてたわ!他にかぁ、残念ながら隊服はこれしかないの〜〜」
「あのゲス眼鏡……私の時みたいに予備を用意しなかったのね。確実に着せる為に一択にしたのかあ」
困ったわと、頭を悩ませる蜜璃に、私の隊服を……と思ったけれど、私と蜜璃は上背がちがうし、その……胸部もかなりの差がある。
うん!無理ね!!
乳がこぼれそうで私としては見ていられないけど、最終的に蜜璃がいいならそれでいいか!ということになった。
ええ〜!杏寿郎さん、私の時はあんなに反対したくせに……!
とりあえず前田隊士には、蜜璃やまだ見ぬこれからの女性隊士のためにもたぁっぷりと仕返ししておくことに決めた。
その時、槇寿朗さんの鎹烏が伝令を伝えにきた。
半年に一度の柱合会議が行われるようだ。
杏寿郎さんがそのことを槇寿朗さんへと伝えに行ったけども、行きたかったらお前がいけと言われて終わった。
酒瓶を投げつける音がここまで響いていたので、また酩酊して癇癪を起こしているのだろう。困ったものだ。
代わりに行くも何も、杏寿郎さんは鎹烏から伝えられたお館様のお言葉で、自ら柱合会議へと出向かれていった。
「ところで、さっき師範に何か言いかけてたよね。蜜璃ちゃん、何かあったの?」
今日来たのは、稽古をつけてもらうためだけが理由ではないと、言い淀んでいた様子からわかった。
「うん……。
あのね、私の呼吸って炎の揺らぎが発生しないじゃない?熱風のような暖かい感じはするけど、それだけで。
私が鬼殺隊に所属するのは相応しくない、炎の呼吸は合っていないんじゃないかって思ってしまって……。
それについて相談があったの。師範にも聞いてもらおうと思ったから」
それは仕方ないんじゃないかな。蜜璃の呼吸は炎の派生の、燃えるような恋なのだから。
分かっていても、私からは言えない。真に自分に合う呼吸は自分自身で見つけ、そして理解するもの。
「うーん、早合点が過ぎるんじゃないかな?
蜜璃ちゃんはまだ鬼殺隊に入ったばかりだし、使う呼吸が途中から違うものに変わる人もいる。
きっとこれからだよ。これから真に自分に合う呼吸が見つかるって」
「朝緋ちゃん〜〜〜!」
「ほら、それより残ってる桜餅食べて?じゃないと私が食べちゃうよ」
「待って待って!食べるからぁ!」
桜餅に手を伸ばすそぶりをすれば、蜜璃は慌てて残りを食べ始めて喉に詰まらせそうになるので私と千寿郎は、笑いながら新しくお茶を注ぎなおした。
……それにしても柱合会議に槇寿朗さんの代わりにと杏寿郎さんが参加って。そんなことをして大丈夫なのだろうか。
階級は甲と、柱まではあと一歩のところまで来てる杏寿郎さんだけど、現柱たちにとって喰われやしないかと不安だ。特に風柱なんて手が早いし。
不安に思いながら待っていたけれど残念、時間切れ。
私の鎹烏・あずまがこれから任務だと伝えに来てしまった。
あとのことは、まだ待機の蜜璃、それから千寿郎にお任せしよう。
私は自分の戦いへと、気持ちを切り替えた。
私はまだ階級戊。甲までの先は長いし、修行開始から半年で隊士になんて、私には到底無理な事だったろう。
やはり、そんなところまで出来が違うのかと、少しだけ悔しさを覚える。
獪岳にその事を文で話したら、あらびっくり。彼も似たような心の状態だった。
弟弟子とは断固として認めてないらしいが、その子のことで頭にきてるそうだ。出来は悪いのに先生に認められてるだのなんだの憎たらしいらしい。ちなみにその弟弟子は善逸だった。なるほどねぇ。
でも、私は別に蜜璃にちょっぴり嫉妬しただけで、憎いと思ったことはないんだけどなぁ。
獪岳は大変そうだ。あの人はプライドも高いし、自分の心との折り合いをつけるの下手くそそう。
「桃の花のいい匂い……」
獪岳から送られる手紙はいつも桃の花の匂いがする。時期になれば、お腹が空くほど甘やかな桃の香りもするくらいで。
今は春なので、それはもう桃の花の芳醇な香りで満ちている。杏寿郎さんがその匂いを嗅ぎつけて、一時期「匂い付きの恋文ではなかろうな!」としつこいくらい聞いてきたっけ……中身を見せたら納得して引き下がっていたけれど。
獪岳と私の間にそんな甘酸っぱいやり取りが発生するわけないじゃーん。杏寿郎さんたら、まるで父親ね!
槇寿朗さんの代わりなのかもしれない。
さてさて。蜜璃が隊士になった祝いは、桜が満開に咲く下で行った。花見だわっしょい!うん、春だから我ながらなかなかいいチョイスだわ。
蜜璃の大好物の桜餅に、ちょっと早いけど柏餅、それから大量のお団子。そしてお重箱にみっちり詰め込んだお料理の数々。
作る予定の日が、任務のない日でよかった〜!
とはいえ、作るだけでは足りなさそうなので近所の甘味処にも発注して、お弁当がやたらと豪華なお花見にしてみた。
桜とかわいい着物を着た妹弟子という最強コラボレーションの映像が見れて、感無量の思いだわ〜〜〜。
ここに簡単に写真が撮れる機械があるなら、ぜひ蜜璃のご実家にも写真データを送りたいくらい。時を超えて!きたれ我がスマホ!!
それが全員揃った時の最後の記憶。
鬼殺隊に所属してると、なかなか行き合うことは少ない。各地を飛び回るし、階級によっても任務はバラバラ、場所もバラバラ。
そんなこんなで数週間経った。
杏寿郎さんが帰ってきている事だし、保存してあるさつまいもを消費したいなと思っていた、桜が散り始める春の日。
蜜璃が久しぶりに修行をつけてもらいに、煉獄家を訪れた。
嬉々として、打ち稽古に励む杏寿郎さんと蜜璃。
「お腹と背中がくっつきそうです!甘味休憩を所望します!」
「あと千回だ!がんばれ!」
「嘘でしょ〜!!」
頑張りたまえわが妹弟子よ……君が来る前に私も朝から打ち稽古でぼろぼろにされたから。いやしかし、そのあとでもまだまだやる気満々元気いっぱいの杏寿郎さんはおかしい。体力無尽蔵めっ。
私?もう稽古はお腹いっぱいなので、昼餉作りと休憩用の菓子作りで千寿郎と一緒に厨に篭ってた。
ぐううー、蜜璃がお腹の音で杏寿郎さんの言葉に返事する。
その様子があまりに可哀想で、私と千寿郎は顔を見合わせて声をかけた。
「お菓子を作ってきましたので、一息入れてはどうですか?」
「焼きたてほかほかですよー」
菓子という言葉を聞いた瞬間、蜜璃はこれまでで一番の速さを見せた。私と千寿郎によだれを垂らしながら飛びつく。
ああこんなに空腹になってかわいそうに。
休憩はまだだ!と注意してくるもさつまいもの菓子もあることを言えば、杏寿郎さんは迷うことなく休憩を言い渡してきた。
誰も好物には敵わない。
蜜璃は好物の桜餅を。杏寿郎さんは焼きたてのスイートポテトを美味しそうに頬張りながら、のんびりと休憩タイム。うーん。キレのある良い「わっしょい」が今日も炸裂ッ!
私と千寿郎もご相伴に預かり、スイートポテトを口に運ぶ。
今日のスイートポテトは、蜜璃に教わったレシピで千寿郎が一から十まで作った。
さすが我が弟!めちゃくちゃ美味しい!良い塩梅の味と風味に、スイートポテトとして完璧な成形。
店に出せる!いや、いいお嫁さ……お婿さんになるね。
そのあと、鬼殺隊士になった祝いにと、今更ながら煉獄兄妹弟から蜜璃へ羽織を贈らせていただいた。
シンプルに真っ白なそれは、未だ蜜璃自身の呼吸の土台ががしっかりしていないからこその純白無地の羽織だ。
白いそれならば、これから自分で何色にも染まれる。蜜璃のあの呼吸の色にだって染められる。
欲を言えば炎の呼吸を一人でも多くの剣士に継承したいし蜜璃にも継いでほしいけれど、最悪は蜜璃のそれが炎の呼吸でなくてもいい。
『前』と同じなら、蜜璃は自分だけの素晴らしい呼吸に目覚めるのだから。
それにしても、蜜璃の隊服はどうにかならないもんかねぇ。隊服共々今回は初めて目の前で着てもらったんだけど……。
「なんだその格好は!あられもない!!」
こんなところまで『前』と同じじゃなくても良いと思う。
胸がこぼれ落ちそうなほど前が空いている。風邪ひきそう!スカート短すぎる。私より短いってどーゆーことだ!
杏寿郎さんが大声を出して当然だった。
「隠の人がこれが公式だって〜……」
「それ、瓶底眼鏡かけた人じゃなかった?他に隊服はないの?」
「よくわかったわね、眼鏡かけてたわ!他にかぁ、残念ながら隊服はこれしかないの〜〜」
「あのゲス眼鏡……私の時みたいに予備を用意しなかったのね。確実に着せる為に一択にしたのかあ」
困ったわと、頭を悩ませる蜜璃に、私の隊服を……と思ったけれど、私と蜜璃は上背がちがうし、その……胸部もかなりの差がある。
うん!無理ね!!
乳がこぼれそうで私としては見ていられないけど、最終的に蜜璃がいいならそれでいいか!ということになった。
ええ〜!杏寿郎さん、私の時はあんなに反対したくせに……!
とりあえず前田隊士には、蜜璃やまだ見ぬこれからの女性隊士のためにもたぁっぷりと仕返ししておくことに決めた。
その時、槇寿朗さんの鎹烏が伝令を伝えにきた。
半年に一度の柱合会議が行われるようだ。
杏寿郎さんがそのことを槇寿朗さんへと伝えに行ったけども、行きたかったらお前がいけと言われて終わった。
酒瓶を投げつける音がここまで響いていたので、また酩酊して癇癪を起こしているのだろう。困ったものだ。
代わりに行くも何も、杏寿郎さんは鎹烏から伝えられたお館様のお言葉で、自ら柱合会議へと出向かれていった。
「ところで、さっき師範に何か言いかけてたよね。蜜璃ちゃん、何かあったの?」
今日来たのは、稽古をつけてもらうためだけが理由ではないと、言い淀んでいた様子からわかった。
「うん……。
あのね、私の呼吸って炎の揺らぎが発生しないじゃない?熱風のような暖かい感じはするけど、それだけで。
私が鬼殺隊に所属するのは相応しくない、炎の呼吸は合っていないんじゃないかって思ってしまって……。
それについて相談があったの。師範にも聞いてもらおうと思ったから」
それは仕方ないんじゃないかな。蜜璃の呼吸は炎の派生の、燃えるような恋なのだから。
分かっていても、私からは言えない。真に自分に合う呼吸は自分自身で見つけ、そして理解するもの。
「うーん、早合点が過ぎるんじゃないかな?
蜜璃ちゃんはまだ鬼殺隊に入ったばかりだし、使う呼吸が途中から違うものに変わる人もいる。
きっとこれからだよ。これから真に自分に合う呼吸が見つかるって」
「朝緋ちゃん〜〜〜!」
「ほら、それより残ってる桜餅食べて?じゃないと私が食べちゃうよ」
「待って待って!食べるからぁ!」
桜餅に手を伸ばすそぶりをすれば、蜜璃は慌てて残りを食べ始めて喉に詰まらせそうになるので私と千寿郎は、笑いながら新しくお茶を注ぎなおした。
……それにしても柱合会議に槇寿朗さんの代わりにと杏寿郎さんが参加って。そんなことをして大丈夫なのだろうか。
階級は甲と、柱まではあと一歩のところまで来てる杏寿郎さんだけど、現柱たちにとって喰われやしないかと不安だ。特に風柱なんて手が早いし。
不安に思いながら待っていたけれど残念、時間切れ。
私の鎹烏・あずまがこれから任務だと伝えに来てしまった。
あとのことは、まだ待機の蜜璃、それから千寿郎にお任せしよう。
私は自分の戦いへと、気持ちを切り替えた。