一周目 壱
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そして私は、戻り方がわからないままに、いつのまにか目覚めていた。
「むー!」
「あっ!朝緋さん起きましたか!!よかった!」
女の子と竈門君が私の顔を揃って覗き込んでいた。
「禰󠄀豆子がこの人と朝緋さんを繋いでいた鬼の縄を燃やしたんです。
気分はどうですか?」
「……大丈夫、なんともない。良い目覚めだよ」
禰󠄀豆子……。
竹筒を口に食む姿。瞳孔の割れた目。長い爪……。
ああ、この子が。
「貴女が禰󠄀豆子ちゃん、ね」
「はい!妹の禰󠄀豆子です!」
「むー!むぅん!」
竹筒のせいか、それとも他のせいか。喋れないようだが、なんとなく言っていることはわかる。
「私は煉獄朝緋。よろしくね」
そう言えば、にこにこ笑顔で頭を撫でてほしいのかぐりぐりと顔を押し付けてきた。
鬼なんだろうけど、恐怖は感じないし鬼の気配も希薄で……鬼相手だけどでも……!
「……かわいいっ」
「はいっ!うちの禰󠄀豆子は日本一可愛くて日本一の別嬪さんなんです!!」
「むーむー」
気がついたらその頭を撫でていた。
殺伐としたこの世の中でなんと癒されることか……。相手は鬼なのに……。
「はっ!みんなは!?」
竈門君達兄妹と一緒にぽわーっとしている場合じゃない。そんな和やかな空気に浸るのは無事に帰ってから!!
「って!みんな寝てる……」
「縄は禰󠄀豆子の血鬼術で燃やしたんですけど起きないんです!」
なるほど、禰󠄀豆子ちゃんの血鬼術は炎にまつわる物なのか。炎の呼吸とも相性良さそう〜〜。
確かに杏寿郎さんや善逸、嘴平君の方を向くと、縄は結び目を残して燃え尽きていた。
が!全員が気持ちよさそうにまだ眠っている。呑気だな。
「師範!起きてください!!善逸!!こら、起きろ!嘴平君も!!」
竈門君と二人、酔いそうなほどゆさぶってみても、ぐでんとしたまま、起きなかった。
筆があったら落書きしたくなるくらい、気持ちよく寝ている……!
「みんな起きないね……師範なんて寝起きめちゃくちゃ良い方なのに」
「そんな感じします!」
「でしょ?
もう一回禰󠄀豆子ちゃんにまるごと燃やしてもらえばその衝撃で……うーん」
丸ごと火だるまという、ちょっと危ない考えをしていたところで。
「あの!」
「……うん?なに?竈門君」
「善逸と同じく、俺のことも君なんてつけないでいいですから!伊之助もきっと、嘴平君より伊之助って呼んだ方が喜びます!」
「そうだね、じゃあ炭治郎に禰󠄀豆子ちゃん、それに伊之助だ」
「はい!」
「ふふ、伊之助〜って呼べば起きるといいんだけどね。それはもう炭治郎が試したんだろうし」
私達の他に目を覚ましている人物二人をチラ、と盗み見る。
私と繋がれていた男性と、炭治郎と繋がれていたのであろう、顔色のよくない青年だ。
「貴方達は、夢から冷めて起きる方法を何か知っている?」
「いや、僕は起き方まではわからない。眠る時は縄で繋いで眠れと言われたのみで、貴女を現実に返したい、起きたいと願っただけなんだ……そして気がついたら貴女共々起きていた。力になれずすまない」
「僕の方も、よく知らない…………ごめんなさい。けほけほっ、」
「ううん、いいんですよ。それよりよかったら飴どうぞ。喉に効きます」
「ありがとう……」
どこかご病気なのかな。気休めにしかならないだろうけど、普段から持ち歩いている飴を数個渡した。
鬼の形相の女が錐のような物を振りかぶってきたのは、炭治郎が振り向いた時だった。
「なんだっ!?」
「あらま。殺気がだだ漏れだ。けどそんなんじゃ人ひとり傷つけられやしないよ」
炭治郎は、間一髪で避けていたようだから及第点。
この人も鬼と取引していた子なのだろう。錐を持っているのは何よりの証拠。
「邪魔しないでよ!あんた達が来たせいで夢を見せてもらえないじゃない!」
他の人間も立ち上がり、こちらを睨みつけている。
このちゃちな殺気を放っているのは、女性が二人、男性が一人か……。
「何してんのよ、起きたら加勢しなさいよ!
不幸なのは自分だけと思わないで!」
「僕はもう、夢を見る必要はないから」
「なんですって!?
あ、あんたはどうなのよ!結核だかなんだか知らないけどちゃんと働かないなら、あの人に言って夢を見せてもらえないようにするからね!」
結核……やっぱり病気だったんだ。結核は不治の病なんて呼ばれてる……夢のひとつでも見たくなるよね。
炭治郎と繋がっていたらしいその子には、戦う意思はひとつもない。
炭治郎の夢の中で、気持ちが変わる何かがあったんだろう。
鬼より鬼の形相をしている三人は、操られているわけではなく自分の意思でここにいるようだ。
ならこのまま意識を刈り取るだけでよさそう。
改心してこっちの二人と同じようになってくれたら楽なんだけど……難しそうね。
ちらり。炭治郎に目配せする。
「ごめん、戦いに行かなきゃならないから……」
錐を持ったままタタラを踏む二人の意識を刈り取る炭治郎。
さらにがむしゃらに向かってきた最後の女の子には、私が羽交い締めにして。
「あのね、夢なんかじゃお腹は膨れないし、本当の幸せは得られないんだよ」
無理やり昏倒させた。
「……幸せ、か。
幸せな夢の中にいたいよね。わかるよ、俺も、夢の中にいたかった。
これが夢だったらよかったのに……」
炭治郎……貴方が見た夢もまた、幸せででもとても辛い残酷なものだったんだね。
私も、あの夢の中にずっとずっといたかったよ。
扉を開けて連結部位がある外へと出る。
開けた瞬間に、刺すような冷たい空気で気分爽快!というわけでもなく、炭治郎は逆に鼻を押さえ辛そうに呻いていた。
「うっ……!」
「あー、と。匂い的にやばい感じ?」
「すごい匂いです……。
重たくて、濃い……。この風の中なのに、鬼の匂いがここまで届いてきます!
こんな状態で眠ってた自分が情けない。客車が密閉されていたとはいえ、信じられない……」
「うーん。あの血鬼術は、匂いすら遮断して昏睡させてしまう物なのかもしれないね」
自分が得意にしていた嗅覚が利かなかったのが相当悔しいようだ。
名誉挽回だとばかりに傍から顔を出して鼻をひくつかせ、前方車両を見つめている。
「鬼は風上、戦闘車両の方にいるかもしれません」
言うが早いか、炭治郎は扉の縁に手をかけ、列車の上へと上がった。
鬼がいるなら走行中なのに危ないとかは言っていられないけれど……。
「足元ぐらついたりしない?私も行こうか!?」
「いえ!俺が行きます!俺の鼻はこの先に鬼を感知していますので!それより皆を起こさないと!」
「……わかった。君の力を信じる。
私は引き続き、みんなを起こしてから向かうよ。…………気をつけて」
「はい!
禰󠄀豆子も来るな、待ってろ!」
「むー!」
「むー!」
「あっ!朝緋さん起きましたか!!よかった!」
女の子と竈門君が私の顔を揃って覗き込んでいた。
「禰󠄀豆子がこの人と朝緋さんを繋いでいた鬼の縄を燃やしたんです。
気分はどうですか?」
「……大丈夫、なんともない。良い目覚めだよ」
禰󠄀豆子……。
竹筒を口に食む姿。瞳孔の割れた目。長い爪……。
ああ、この子が。
「貴女が禰󠄀豆子ちゃん、ね」
「はい!妹の禰󠄀豆子です!」
「むー!むぅん!」
竹筒のせいか、それとも他のせいか。喋れないようだが、なんとなく言っていることはわかる。
「私は煉獄朝緋。よろしくね」
そう言えば、にこにこ笑顔で頭を撫でてほしいのかぐりぐりと顔を押し付けてきた。
鬼なんだろうけど、恐怖は感じないし鬼の気配も希薄で……鬼相手だけどでも……!
「……かわいいっ」
「はいっ!うちの禰󠄀豆子は日本一可愛くて日本一の別嬪さんなんです!!」
「むーむー」
気がついたらその頭を撫でていた。
殺伐としたこの世の中でなんと癒されることか……。相手は鬼なのに……。
「はっ!みんなは!?」
竈門君達兄妹と一緒にぽわーっとしている場合じゃない。そんな和やかな空気に浸るのは無事に帰ってから!!
「って!みんな寝てる……」
「縄は禰󠄀豆子の血鬼術で燃やしたんですけど起きないんです!」
なるほど、禰󠄀豆子ちゃんの血鬼術は炎にまつわる物なのか。炎の呼吸とも相性良さそう〜〜。
確かに杏寿郎さんや善逸、嘴平君の方を向くと、縄は結び目を残して燃え尽きていた。
が!全員が気持ちよさそうにまだ眠っている。呑気だな。
「師範!起きてください!!善逸!!こら、起きろ!嘴平君も!!」
竈門君と二人、酔いそうなほどゆさぶってみても、ぐでんとしたまま、起きなかった。
筆があったら落書きしたくなるくらい、気持ちよく寝ている……!
「みんな起きないね……師範なんて寝起きめちゃくちゃ良い方なのに」
「そんな感じします!」
「でしょ?
もう一回禰󠄀豆子ちゃんにまるごと燃やしてもらえばその衝撃で……うーん」
丸ごと火だるまという、ちょっと危ない考えをしていたところで。
「あの!」
「……うん?なに?竈門君」
「善逸と同じく、俺のことも君なんてつけないでいいですから!伊之助もきっと、嘴平君より伊之助って呼んだ方が喜びます!」
「そうだね、じゃあ炭治郎に禰󠄀豆子ちゃん、それに伊之助だ」
「はい!」
「ふふ、伊之助〜って呼べば起きるといいんだけどね。それはもう炭治郎が試したんだろうし」
私達の他に目を覚ましている人物二人をチラ、と盗み見る。
私と繋がれていた男性と、炭治郎と繋がれていたのであろう、顔色のよくない青年だ。
「貴方達は、夢から冷めて起きる方法を何か知っている?」
「いや、僕は起き方まではわからない。眠る時は縄で繋いで眠れと言われたのみで、貴女を現実に返したい、起きたいと願っただけなんだ……そして気がついたら貴女共々起きていた。力になれずすまない」
「僕の方も、よく知らない…………ごめんなさい。けほけほっ、」
「ううん、いいんですよ。それよりよかったら飴どうぞ。喉に効きます」
「ありがとう……」
どこかご病気なのかな。気休めにしかならないだろうけど、普段から持ち歩いている飴を数個渡した。
鬼の形相の女が錐のような物を振りかぶってきたのは、炭治郎が振り向いた時だった。
「なんだっ!?」
「あらま。殺気がだだ漏れだ。けどそんなんじゃ人ひとり傷つけられやしないよ」
炭治郎は、間一髪で避けていたようだから及第点。
この人も鬼と取引していた子なのだろう。錐を持っているのは何よりの証拠。
「邪魔しないでよ!あんた達が来たせいで夢を見せてもらえないじゃない!」
他の人間も立ち上がり、こちらを睨みつけている。
このちゃちな殺気を放っているのは、女性が二人、男性が一人か……。
「何してんのよ、起きたら加勢しなさいよ!
不幸なのは自分だけと思わないで!」
「僕はもう、夢を見る必要はないから」
「なんですって!?
あ、あんたはどうなのよ!結核だかなんだか知らないけどちゃんと働かないなら、あの人に言って夢を見せてもらえないようにするからね!」
結核……やっぱり病気だったんだ。結核は不治の病なんて呼ばれてる……夢のひとつでも見たくなるよね。
炭治郎と繋がっていたらしいその子には、戦う意思はひとつもない。
炭治郎の夢の中で、気持ちが変わる何かがあったんだろう。
鬼より鬼の形相をしている三人は、操られているわけではなく自分の意思でここにいるようだ。
ならこのまま意識を刈り取るだけでよさそう。
改心してこっちの二人と同じようになってくれたら楽なんだけど……難しそうね。
ちらり。炭治郎に目配せする。
「ごめん、戦いに行かなきゃならないから……」
錐を持ったままタタラを踏む二人の意識を刈り取る炭治郎。
さらにがむしゃらに向かってきた最後の女の子には、私が羽交い締めにして。
「あのね、夢なんかじゃお腹は膨れないし、本当の幸せは得られないんだよ」
無理やり昏倒させた。
「……幸せ、か。
幸せな夢の中にいたいよね。わかるよ、俺も、夢の中にいたかった。
これが夢だったらよかったのに……」
炭治郎……貴方が見た夢もまた、幸せででもとても辛い残酷なものだったんだね。
私も、あの夢の中にずっとずっといたかったよ。
扉を開けて連結部位がある外へと出る。
開けた瞬間に、刺すような冷たい空気で気分爽快!というわけでもなく、炭治郎は逆に鼻を押さえ辛そうに呻いていた。
「うっ……!」
「あー、と。匂い的にやばい感じ?」
「すごい匂いです……。
重たくて、濃い……。この風の中なのに、鬼の匂いがここまで届いてきます!
こんな状態で眠ってた自分が情けない。客車が密閉されていたとはいえ、信じられない……」
「うーん。あの血鬼術は、匂いすら遮断して昏睡させてしまう物なのかもしれないね」
自分が得意にしていた嗅覚が利かなかったのが相当悔しいようだ。
名誉挽回だとばかりに傍から顔を出して鼻をひくつかせ、前方車両を見つめている。
「鬼は風上、戦闘車両の方にいるかもしれません」
言うが早いか、炭治郎は扉の縁に手をかけ、列車の上へと上がった。
鬼がいるなら走行中なのに危ないとかは言っていられないけれど……。
「足元ぐらついたりしない?私も行こうか!?」
「いえ!俺が行きます!俺の鼻はこの先に鬼を感知していますので!それより皆を起こさないと!」
「……わかった。君の力を信じる。
私は引き続き、みんなを起こしてから向かうよ。…………気をつけて」
「はい!
禰󠄀豆子も来るな、待ってろ!」
「むー!」