幕間 ノ 壱
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私のポニーテールの先を指でくにくにと遊ばせ、匂いを嗅がれた。
「短時間の割には石鹸までしっかり使って、長時間川に浸っていたのではないか?」
「だから嗅がないで!?」
そりゃ、荷物の中に石鹸入れてたけど。
でも鬼に気がつかれないために、普段家で使っていた藤の香りではなく、無臭のやつだったのに。……ああ、鬼殺隊に所属するなら、もう藤の石鹸は使えないなあ。鬼が来なくなっちゃう。
うーん。無臭でも至近距離だと石鹸の匂いは気がつかれてしまうのだろうか。炭治郎なら気がつくだろうけど、杏寿郎さんも気がつくなんて知らなかった。
あっだから鬼は寄ってきた?いや違う、鬼が寄ってきたのは私が稀血だったから。そして獪岳が鬼を引き連れて押し付けてきたからだ。
断じて石鹸のせいではない。
私の髪は未だ杏寿郎さんの手の中だ。リードか何かのようにゆるく引っ張ったり、指にくるりと巻き付けてみたり。
指で遊ばせたまま視線をこちらにまっすぐ向けてくる。その目はうっそりと細められていて、またも胸が高鳴った。
「朝緋の湯浴みの後にまた、髪を俺に結わせて欲しい。だめだろうか?」
ああまるで、閨のお誘いの言葉のよう。
表向き兄妹だし、恋仲でもないのでそんな気はないけれど。
ちなみにやたら耳年増なだけで、令和の時代も大正の世でもそういう経験はひとっつもない。ないけど知識だけは一丁前。
あわわ。考えるだけで鼻血がブバッと飛び出そうだ!……稀血だから鼻血くらい我慢しなくちゃ。
『愛いな』
だなんて自然と口にしてくれたその口に。
貴方は『前』の最期と同じように、私を好きだと言ってくれるんですか?
そんなことをつい、聞きたくなる。
あの時の杏寿郎さんと、目の前の杏寿郎さんは共に過ごした思い出も、記憶もが違う。
同じ人だけど、同じ人じゃない。
どちらの杏寿郎さんのことも私は大好きだ。家族としても、師としても……異性としても。
煉獄杏寿郎という個人だけではなく、その肉体、心、魂、貴方を構成するすべてを愛おしく想う。
「杏寿郎『兄さん』のお願いですから、だめなわけないじゃないですか。またあとでかわいく結えてくださいね」
でも相思相愛なんて、望んではいけない。
目の前の杏寿郎さんが、同じ気持ちとは限らないのだから。
私は『妹』の顔で笑った。
「短時間の割には石鹸までしっかり使って、長時間川に浸っていたのではないか?」
「だから嗅がないで!?」
そりゃ、荷物の中に石鹸入れてたけど。
でも鬼に気がつかれないために、普段家で使っていた藤の香りではなく、無臭のやつだったのに。……ああ、鬼殺隊に所属するなら、もう藤の石鹸は使えないなあ。鬼が来なくなっちゃう。
うーん。無臭でも至近距離だと石鹸の匂いは気がつかれてしまうのだろうか。炭治郎なら気がつくだろうけど、杏寿郎さんも気がつくなんて知らなかった。
あっだから鬼は寄ってきた?いや違う、鬼が寄ってきたのは私が稀血だったから。そして獪岳が鬼を引き連れて押し付けてきたからだ。
断じて石鹸のせいではない。
私の髪は未だ杏寿郎さんの手の中だ。リードか何かのようにゆるく引っ張ったり、指にくるりと巻き付けてみたり。
指で遊ばせたまま視線をこちらにまっすぐ向けてくる。その目はうっそりと細められていて、またも胸が高鳴った。
「朝緋の湯浴みの後にまた、髪を俺に結わせて欲しい。だめだろうか?」
ああまるで、閨のお誘いの言葉のよう。
表向き兄妹だし、恋仲でもないのでそんな気はないけれど。
ちなみにやたら耳年増なだけで、令和の時代も大正の世でもそういう経験はひとっつもない。ないけど知識だけは一丁前。
あわわ。考えるだけで鼻血がブバッと飛び出そうだ!……稀血だから鼻血くらい我慢しなくちゃ。
『愛いな』
だなんて自然と口にしてくれたその口に。
貴方は『前』の最期と同じように、私を好きだと言ってくれるんですか?
そんなことをつい、聞きたくなる。
あの時の杏寿郎さんと、目の前の杏寿郎さんは共に過ごした思い出も、記憶もが違う。
同じ人だけど、同じ人じゃない。
どちらの杏寿郎さんのことも私は大好きだ。家族としても、師としても……異性としても。
煉獄杏寿郎という個人だけではなく、その肉体、心、魂、貴方を構成するすべてを愛おしく想う。
「杏寿郎『兄さん』のお願いですから、だめなわけないじゃないですか。またあとでかわいく結えてくださいね」
でも相思相愛なんて、望んではいけない。
目の前の杏寿郎さんが、同じ気持ちとは限らないのだから。
私は『妹』の顔で笑った。