幕間 ノ 壱
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ちゅ。
熱い空気と柔らかい感触が一瞬だけ首筋に当たり、ぱちりと目を開ける。
「…………ン。今何かしました?」
「いいや、何も。
よし、結いあげるぞ」
髪を上げられたことで、首筋が涼しくなる。
心地よい強さで髪が引っ張られる感覚に、襲う眠気は綺麗に霧散してくれた。
括られたと同時、杏寿郎さんの指の感覚が私の髪から名残惜しくも離れていった。
「出来た。ひきつれたりなどしてないか?」
「んんん……大丈夫ですね」
ふりふりと首を振るも違和感はない。
「よく似合う。揃いの髪紐だな」
振り向けば杏寿郎さんが満足そうに笑っていた。うん、お揃いなのはとても嬉しい。街を並んで歩けば、もしかして恋仲だなんて思われたりしてくれないかな。
……そんなことは思うだけしか出来ないけれど。
「あずまもだが君も女の子だからな。かわいくしてあげたかった。
だが、巷で流行っているようなもだんでかわいらしい結び方は全くわからん。結局はいつもと同じ高い位置で括るだけになってしまった。申し訳ない」
モダンガールというやつか。そんな流行りの髪型より、なによりも貴方と揃いの方がよほど嬉しい。けれど、その気持ちはもっともっと嬉しかった。
鬼殺隊士などではなく、鬼狩りを生業とする煉獄家のひとりでもなく、まるでただの町娘にでもなったかのような気分。はしゃげるならはしゃぎたいし、誰かに自慢したい。
「慣れた髪型の方がお料理しやすいし、これでいいんですよ。ありがとうございます。
さ、お料理の仕上げに戻るとしましょうかね」
嬉しさに笑みを浮かべれば、立ち上がろうとした私の腕を取り、また座布団の上に逆戻り。
金環のような目が、じっと顔を見つめてくる。その太陽に焼かれてしまいそう。
「わ、私の顔に何かついてますか?
傷は仕方ないにしても、帰ってから土や泥などはしっかり落としてぬぐったはずなのですが」
「そうだな、可愛らしい口と目と鼻がついているぞ。愛いな……」
「ぎゃわっ!」
口説かれた!
そしてあろうことか!
あろうことか、杏寿郎さんがわた、私の髪の毛を掬い上げ!唇をつけたぁぁ……っ。
「や、やめてくださいよ〜!まだ帰ってからきちんとした湯浴みもしてないのに……髪を綺麗に洗ってないのはおわかりでしょう?
これ以上はおやめくださいっ」
好きな相手には櫛でとかしただけの血と汗と埃まみれの髪なんかに、そう度々触れて欲しくはない。髪を結いたいというから、触るのを渋々了承しただけで。
「はっはっは!綺麗にしたあとだったらやってもよかったのか?」
「ひぃぇー!そうじゃありません〜〜〜!」
嘘だ。
否定しつつも、本当は触れて欲しいと思っている。それでも口から出るのは、拒否の言の葉。
でもねでもね!好きな人の前では綺麗にしていたいという乙女の気持ちもわかって欲しい〜〜〜!
「今のままでも汚くない。君の髪は綺麗だし、匂いも悪くない。
それに既に髪以上の場所に俺は……いや、これは言わないでおこう」
言いかけた言葉も気になるけどそれよりも今は目の前のことだ。
頼むから嗅がないで。私の尻尾髪を嗅がないで離して。
「そんなわけない。七日もろくに湯浴みができてないんですよ?こっそり川の水で洗い流すくらいしかできてない……」
あの川の水は凍るように冷たかった。
けれど、こちとら一応は女ですもん。体をみ綺麗にしたいし、匂いだって落としたいじゃない?
冷たくても我慢して洗いましたとも。長襦袢が乾くまでも、これまた寒かったっけ。よく風邪ひかなかったな。
「川の水で湯浴みの真似事を?よもや藤襲山の鬼や同期にその身体を見られてはいないだろうな」
「短時間で浴びましたし見られるようなへましませんし、してませんので」
気配を私以上に隠せるような鬼や人がいたから話は別だが。自信過剰?なんとでも言いなさい。
私には『前』の分の経験がたんまりある。初めて最終選別に挑む人間とは一緒にしないでほしい。
熱い空気と柔らかい感触が一瞬だけ首筋に当たり、ぱちりと目を開ける。
「…………ン。今何かしました?」
「いいや、何も。
よし、結いあげるぞ」
髪を上げられたことで、首筋が涼しくなる。
心地よい強さで髪が引っ張られる感覚に、襲う眠気は綺麗に霧散してくれた。
括られたと同時、杏寿郎さんの指の感覚が私の髪から名残惜しくも離れていった。
「出来た。ひきつれたりなどしてないか?」
「んんん……大丈夫ですね」
ふりふりと首を振るも違和感はない。
「よく似合う。揃いの髪紐だな」
振り向けば杏寿郎さんが満足そうに笑っていた。うん、お揃いなのはとても嬉しい。街を並んで歩けば、もしかして恋仲だなんて思われたりしてくれないかな。
……そんなことは思うだけしか出来ないけれど。
「あずまもだが君も女の子だからな。かわいくしてあげたかった。
だが、巷で流行っているようなもだんでかわいらしい結び方は全くわからん。結局はいつもと同じ高い位置で括るだけになってしまった。申し訳ない」
モダンガールというやつか。そんな流行りの髪型より、なによりも貴方と揃いの方がよほど嬉しい。けれど、その気持ちはもっともっと嬉しかった。
鬼殺隊士などではなく、鬼狩りを生業とする煉獄家のひとりでもなく、まるでただの町娘にでもなったかのような気分。はしゃげるならはしゃぎたいし、誰かに自慢したい。
「慣れた髪型の方がお料理しやすいし、これでいいんですよ。ありがとうございます。
さ、お料理の仕上げに戻るとしましょうかね」
嬉しさに笑みを浮かべれば、立ち上がろうとした私の腕を取り、また座布団の上に逆戻り。
金環のような目が、じっと顔を見つめてくる。その太陽に焼かれてしまいそう。
「わ、私の顔に何かついてますか?
傷は仕方ないにしても、帰ってから土や泥などはしっかり落としてぬぐったはずなのですが」
「そうだな、可愛らしい口と目と鼻がついているぞ。愛いな……」
「ぎゃわっ!」
口説かれた!
そしてあろうことか!
あろうことか、杏寿郎さんがわた、私の髪の毛を掬い上げ!唇をつけたぁぁ……っ。
「や、やめてくださいよ〜!まだ帰ってからきちんとした湯浴みもしてないのに……髪を綺麗に洗ってないのはおわかりでしょう?
これ以上はおやめくださいっ」
好きな相手には櫛でとかしただけの血と汗と埃まみれの髪なんかに、そう度々触れて欲しくはない。髪を結いたいというから、触るのを渋々了承しただけで。
「はっはっは!綺麗にしたあとだったらやってもよかったのか?」
「ひぃぇー!そうじゃありません〜〜〜!」
嘘だ。
否定しつつも、本当は触れて欲しいと思っている。それでも口から出るのは、拒否の言の葉。
でもねでもね!好きな人の前では綺麗にしていたいという乙女の気持ちもわかって欲しい〜〜〜!
「今のままでも汚くない。君の髪は綺麗だし、匂いも悪くない。
それに既に髪以上の場所に俺は……いや、これは言わないでおこう」
言いかけた言葉も気になるけどそれよりも今は目の前のことだ。
頼むから嗅がないで。私の尻尾髪を嗅がないで離して。
「そんなわけない。七日もろくに湯浴みができてないんですよ?こっそり川の水で洗い流すくらいしかできてない……」
あの川の水は凍るように冷たかった。
けれど、こちとら一応は女ですもん。体をみ綺麗にしたいし、匂いだって落としたいじゃない?
冷たくても我慢して洗いましたとも。長襦袢が乾くまでも、これまた寒かったっけ。よく風邪ひかなかったな。
「川の水で湯浴みの真似事を?よもや藤襲山の鬼や同期にその身体を見られてはいないだろうな」
「短時間で浴びましたし見られるようなへましませんし、してませんので」
気配を私以上に隠せるような鬼や人がいたから話は別だが。自信過剰?なんとでも言いなさい。
私には『前』の分の経験がたんまりある。初めて最終選別に挑む人間とは一緒にしないでほしい。