幕間 ノ 壱
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どこに連れて行かれるのかと不安に思っていたが、呆気なくもすとんと部屋の前に降ろされた。
「来なさい」
静かな声で言われ、共にその部屋に入る。
って、ええぇ〜。
杏寿郎さんがいる時には決して立ち入らないようにしてる、杏寿郎さんのお部屋じゃあーりませんかー。お掃除やお布団干の時は勝手に入らせてもらってるけど、部屋の主と一緒にって初めてかも……。
色んな意味でドキドキして心臓まろび出そう。
こんな時こそ呼吸を整えておこう。ふぃー、全集中炎の呼吸法。常中常中。
「ここに座るんだ」
「は、はい……」
座布団に促されそっと座ると、杏寿郎さんから髪紐を握らされた。
「髪結いの、紐……?」
「そうだ。髪紐だな」
杏寿郎さんとお揃いの赤く細い組紐が、私の手の中にある。ドキドキしてたのに、ちょっぴり拍子抜け。
「なんだ、怒られるのかと思った」
「ん。朝緋は怒られるようなことを仕出かしたのか?」
「何もしてませんが……やけに静か〜になったからさあ……」
「むっ俺だって静かな時くらいある」
「そ、うですけど。
というか、兄さんが話を遮っちゃってましたが、髪紐なら千寿郎がくれると言ってましたよ……?」
「そうだな。だが俺の髪紐を使ってくれると助かる。予備がたくさんあって困っているのだ」
「そんなにいっぱいあるんです?」
変なの。煉獄家は良い物を長く大事に使うから、余計なものを余分に買ったりなんてしないはずなのに。でもまあ、髪紐はある意味消耗品か。
鬼殺の際に激しく動いたり髪に攻撃が飛んできたら、髪紐が千切れ飛んでしまうこともないとは言えないもんね。
そんな事を考えていたら、私の手に渡った髪紐が再び杏寿郎さんの手に渡った。
「朝緋。よければ俺に髪を結えさせてほしい」
「……自分で結えますが?」
「ん?」
目が見開かれた。ビームでも出そうなくらい、ギンッと大きな目で見られる。有無を言わさない目だ……こわっ!!
「うっ……わかりました。お願いします」
「うむ」
わぁーいすごく嬉しそうですねー。
大人しく後ろを向き、杏寿郎さんに髪の処理を任せる。
まだ湯浴み前だからあまり弄ってほしくないんだけどなあ。
「…………触れるぞ」
常人の物より明らかに温かな指が、ふと髪でなくうなじに触れた。
剣を握り続けた事で少しカサついた杏寿郎さんの指腹が首筋を滑り降りていく。男の人だとわかるその指に、体がびくりと震え胸の奥が高鳴る。
常中を忘れるな。体の変化を悟らせてはいけない。
なのに、ちょっぴり触れただけの指の熱さを思い出してしまい、呼吸が一瞬だけ乱れた。体の中心がぞくりと、熱くなった気がした。
「こら、全集中の呼吸が乱れたぞ。……集中だ」
「ごっごめんなさい……!でもあの、耳元で言わないで……っ」
余計に呼吸が乱れてしまいそうだ。
「それはすまなかった。櫛を入れるから、痛かったら言ってくれ」
くつりと喉の奥で笑った杏寿郎さんが、普段ご自身の髪を解かしているであろう櫛を私の髪に入れた。
下の方から少しずつ丁寧に、丁寧に。
自分の髪を解かす時はそんなに優しくしてないはずだろうに、まるで壊物でも扱うようにゆっくりと梳かしゆく。
中心が熱くなるような不思議な感覚はなりを潜め、その代わりにふわふわと温かい空気に包まれて満たされているような気持ちになる。
ゆぅるりとした動きが眠気を誘い、ほんの少しかくんと首が傾いだ。
「どうした。痛かったか」
「んー全然痛くないですよー……」
「ははは。痛みではなく眠気で動いたようだな」
ふわふわした空気と同じように、ふわふわとした動きで髪を撫でられた。
髪の毛を触られるとこんなに気持ちよくて眠たくなるのか。なんだか猫にでもなった気分。私が杏寿郎さんの飼い猫なら、撫でられなくてもずっとゴロゴロ喉を鳴らしてそばに居座りそうだ。
「来なさい」
静かな声で言われ、共にその部屋に入る。
って、ええぇ〜。
杏寿郎さんがいる時には決して立ち入らないようにしてる、杏寿郎さんのお部屋じゃあーりませんかー。お掃除やお布団干の時は勝手に入らせてもらってるけど、部屋の主と一緒にって初めてかも……。
色んな意味でドキドキして心臓まろび出そう。
こんな時こそ呼吸を整えておこう。ふぃー、全集中炎の呼吸法。常中常中。
「ここに座るんだ」
「は、はい……」
座布団に促されそっと座ると、杏寿郎さんから髪紐を握らされた。
「髪結いの、紐……?」
「そうだ。髪紐だな」
杏寿郎さんとお揃いの赤く細い組紐が、私の手の中にある。ドキドキしてたのに、ちょっぴり拍子抜け。
「なんだ、怒られるのかと思った」
「ん。朝緋は怒られるようなことを仕出かしたのか?」
「何もしてませんが……やけに静か〜になったからさあ……」
「むっ俺だって静かな時くらいある」
「そ、うですけど。
というか、兄さんが話を遮っちゃってましたが、髪紐なら千寿郎がくれると言ってましたよ……?」
「そうだな。だが俺の髪紐を使ってくれると助かる。予備がたくさんあって困っているのだ」
「そんなにいっぱいあるんです?」
変なの。煉獄家は良い物を長く大事に使うから、余計なものを余分に買ったりなんてしないはずなのに。でもまあ、髪紐はある意味消耗品か。
鬼殺の際に激しく動いたり髪に攻撃が飛んできたら、髪紐が千切れ飛んでしまうこともないとは言えないもんね。
そんな事を考えていたら、私の手に渡った髪紐が再び杏寿郎さんの手に渡った。
「朝緋。よければ俺に髪を結えさせてほしい」
「……自分で結えますが?」
「ん?」
目が見開かれた。ビームでも出そうなくらい、ギンッと大きな目で見られる。有無を言わさない目だ……こわっ!!
「うっ……わかりました。お願いします」
「うむ」
わぁーいすごく嬉しそうですねー。
大人しく後ろを向き、杏寿郎さんに髪の処理を任せる。
まだ湯浴み前だからあまり弄ってほしくないんだけどなあ。
「…………触れるぞ」
常人の物より明らかに温かな指が、ふと髪でなくうなじに触れた。
剣を握り続けた事で少しカサついた杏寿郎さんの指腹が首筋を滑り降りていく。男の人だとわかるその指に、体がびくりと震え胸の奥が高鳴る。
常中を忘れるな。体の変化を悟らせてはいけない。
なのに、ちょっぴり触れただけの指の熱さを思い出してしまい、呼吸が一瞬だけ乱れた。体の中心がぞくりと、熱くなった気がした。
「こら、全集中の呼吸が乱れたぞ。……集中だ」
「ごっごめんなさい……!でもあの、耳元で言わないで……っ」
余計に呼吸が乱れてしまいそうだ。
「それはすまなかった。櫛を入れるから、痛かったら言ってくれ」
くつりと喉の奥で笑った杏寿郎さんが、普段ご自身の髪を解かしているであろう櫛を私の髪に入れた。
下の方から少しずつ丁寧に、丁寧に。
自分の髪を解かす時はそんなに優しくしてないはずだろうに、まるで壊物でも扱うようにゆっくりと梳かしゆく。
中心が熱くなるような不思議な感覚はなりを潜め、その代わりにふわふわと温かい空気に包まれて満たされているような気持ちになる。
ゆぅるりとした動きが眠気を誘い、ほんの少しかくんと首が傾いだ。
「どうした。痛かったか」
「んー全然痛くないですよー……」
「ははは。痛みではなく眠気で動いたようだな」
ふわふわした空気と同じように、ふわふわとした動きで髪を撫でられた。
髪の毛を触られるとこんなに気持ちよくて眠たくなるのか。なんだか猫にでもなった気分。私が杏寿郎さんの飼い猫なら、撫でられなくてもずっとゴロゴロ喉を鳴らしてそばに居座りそうだ。