二周目 参
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杏寿郎さんとやけに対立していた鋼鐵塚さんが無事に帰った後、私達は今度は隊服を受け取りに外へと出ていた。
はぁー!杏寿郎さんと二人で出るなんて、久しぶりじゃないのさ!
まるでデートみたい!
惜しむらくは、杏寿郎さんが隊服である事くらいか。まあ、任務と任務の合間に帰ってきたたんだから仕方ないよね。
「ところで朝緋、なぜ隊服を取りに行くんだ?あちらの手違いですぐに渡せなかったと言うなら、被服担当の隠が自ら持ってくるべきだろう」
「あー、なんか運ぶのが大変なほどいっぱいあるらしいです」
『前』はすぐ渡されたような気がする。戦闘でボロボロになった時に交換した隊服が、短いスカートタイプに変わってて驚いてたっけ。主に杏寿郎さんが。
蜜璃ちゃんで慣れていたとはいえ、あの時の杏寿郎さんはなかなか怖かった。渡してきた隠を視線で射殺す勢いだった。
「隊服がたくさんとはどういうことなんだろうな!」
「わかりません。そんなに遠いわけでもありませんし、行ってみるしかありませんね」
呉服屋と書かれた地図に則ってしばらく街を歩く。こっちの方角には大した用事もなく、あまり来たことはなかったなあ。
江戸の香りを未だに残した活気ある街並み、その一角に藤花の暖簾を小さく掲げた呉服屋があるのに気がついた。
『前田』呉服屋、と書かれていた。
「ここのようだな!」
「えっ前田呉服屋……?前田?」
「む?何か問題でもあるのか」
「なんでもありません」
隊士達からゲス眼鏡って呼ばれている、被服担当の隠のご実家って事だよね。『前』の時に私の替えの隊服を短いスカートに変えてきた張本人だ。
「たのもう!!」
気にせず先に入っていってしまう杏寿郎さん。仕方なしにそのあとに続けば、まぁるい眼鏡の奥をニヤつかせたゲス眼……隠の前田さんがやはり待っていた。
ああうん、今日伺いますって言ってあったもんね。顔を見た瞬間、私は覚悟した。
「って!こんなにたくさん……?」
隊服の種類は本当に多かった。それ以外に普通の服もちらほらと見かけるが、隊服だけで八種類もあるってどういうこと。
「朝緋隊士の御御足を見たら素晴らしいひらめきが降って湧いたんですよ!さあさあさあ!ぜひ!ここから着たい隊服をお選びください!!」
「ええー」
一応これでも女なので服を見るのは好きだし、令和の記憶を持つ身としては少しばかり足が出ていてもなんとも思わない。
だがここは大正時代だということを、多少は念頭に入れなくてはいけない。
前田さんの服は前衛的だ。胸元の空いた蜜璃ちゃんのあの隊服のデザインをしたのが彼だということからもわかるだろう。
私が手に取った隊服も、露出度が高いものだった。普通の服すら足がもう……丸出しって感じである。
前田さん、君は生まれる時代を間違えているよ。
「これとか、防御の面で大丈夫なんですか?鬼の爪が擦れば大怪我は免れないのでは……」
「朝緋隊士が鬼の攻撃をすべてかわせば問題ありませんよ!」
「そりゃそうだろうけど!?」
その時、ずっと黙っていた杏寿郎さんが、鶴の一声よろしく大きな声を出した。
「よし片っ端から燃やそう!火種と庭先を借りるぞ!!」
言うが早いか、燃やしやすくするためか先ず服を破こうとしている。
でも杏寿郎さんやい。隊服はそこらの鬼の攻撃は通らない上、水にも火にも強いんですよ。杏寿郎さんの力で破くことなんて、
ビリリィ!
……できるんだねすごいや。
「アーッ!なんてことを!!
朝緋隊士の御御足は他の人間にも見せなくてはもったいない!全人類の宝です!「宝というほどのものではないと思いますけど」
せっかくのカモシカの如きすらっとした足!「カモシカは言い過ぎですね」太すぎず細すぎない魅惑の太もも!挟まれたい挟みたい!「挟まれたいとか挟みたいって何!?」だがそれは妄想の中でだ!!ぶらぼー!足!!「は?ぶらぼー?横文字??」
そのための隊服を、隊服を……アンタなんばしよっとね!?」
この店構えをみればわかるけど、前田さんは生粋の東京人のはず。いつから福岡の人になったのやら。
いつからで思い出した。そういえば『前』はいなかったのに、藤襲山を降りた時に前田さんがいたような……?変な視線を感じたの、多分だけど前田さんだ。
あれからけっこう経つけど、ずっとデザイン考えたり隊服やら何やら作っていたのだろうか。もしそうならその執念にぞっとすると同時、熱意に感心するわ。
「よもや君はうちの朝緋にこんな……こんっな、破廉恥極まりない隊服を着させようというのか!もっとまともな隊服をよこすのが君の仕事だろう!!」
「こちとらまともに考えてこの服を作ってますよ!煉獄の旦那、貴方は朝緋隊士の御御足の素晴らしさがわかる隊服姿を見たくないんですか!?」
「見たいに決まっておろう!ただし誰かに見られるのは嫌だ!!」
「独り占めしたい気持ちはわかる!けど隊士なんですからそういうわけにもいきますまい!」
何か言い合いしてるけど放っておこう。私はこんもりと山ぼっちになっている残りの隊服や、普段着になりそうなそれらを手に取って眺めていた。
あ、この隊服ならまだましかも。こっちの服はかわいいから欲しいなぁ。着る暇はあまりなさそうなのが残念だけど。
これだけたくさん作ってくれた労力は評価するべきだし、こちらも妥協はしないと。
「師範。私は隊服としての機能が果たせればどれ着ても良いと思います。スカートタイプは動きやすいし……」
『前』よりさらに短くなっている気がするけど。
「これか?
俺はこんな無防備な格好をしている朝緋の姿を、他の男に見せたくはないのだがな」
手渡した隊服は普通の隊士とほとんど変わらない。ミニスカートがミニすぎる点を除いては。
足が出過ぎているのが、杏寿郎さんは気になるようだ。それも、他の人に見せたくないという動機で。
「でも袴とか洋袴でもしももつれたり絡んで転んだら、鬼にやられて命取りです。
私は鬼に食べられてはならない。血を流してはならない。忘れましたか?」
稀血であること。それは私にとって、どこまでもついて回る嬉しくない呪いだ。
「肌が出ている方がよほど怪我を負うだろう。
それに足捌きを容易にするためにこそ脚絆がある。俺と同じ炎の意匠のものを送るから履くといい」
「……私は剣の強さでなく速さが命です。ズボンでは風の抵抗が大きくなります。少しも遅くはなりたくない」
物理的にも精神的にも、貴方に追いつきたい。
「なら靴下を履いてはどうでしょう!靴下留めと合わせるのは、最近の主流のようですよ!」
打開策として前田さんから渡されたそれは、どうみてもロングの靴下と、ガーターベルト。確かに大正時代の人気商品だね!でもちょっと使い方が違うし、刺激が強いかもね!!
普通は、シュミーズやズロース、下着スカートの中に履くものだろうし。
一度隊服を着、ロング靴下にガーターベルトを着用して杏寿郎さんの前に出てみると、案の定彼は真っ赤な顔をしていた。
「よもっ!?余計破廉恥になった!その靴下は無しだっ!!」
「んー、……じゃあストッキング?」
この頃にはすでに、女利安屋も出ているからなんと、ストッキングは売っているのだ。
人絹製品は結構高いけれど、鬼殺隊に所属するならそこまで痛い出費じゃないはずだ。
「破けると肌に張り付いて余計に破廉恥ですよねぇ。最高じゃないですか」
「「えっ」」
「……長い靴下を履いて、長い洋物のブゥツを履いてくれると助かる。靴下留めは無しにしてくれ」
「わかりました……」
隊服が決まった。
その後しばらくして。隊服の上に纏うための私だけの羽織を渡された。
淡い桜に青い炎。『前』も纏っていた、私の炎。
杏寿郎さんと千寿郎がニコニコと笑いながら渡してきたものだけれど、私は知っている。
これは槇寿朗さんの手も加わっていると。私の刀の色を確認して仕立てた物だと。
ありがとうございます。けどほんと素直じゃないね!
はぁー!杏寿郎さんと二人で出るなんて、久しぶりじゃないのさ!
まるでデートみたい!
惜しむらくは、杏寿郎さんが隊服である事くらいか。まあ、任務と任務の合間に帰ってきたたんだから仕方ないよね。
「ところで朝緋、なぜ隊服を取りに行くんだ?あちらの手違いですぐに渡せなかったと言うなら、被服担当の隠が自ら持ってくるべきだろう」
「あー、なんか運ぶのが大変なほどいっぱいあるらしいです」
『前』はすぐ渡されたような気がする。戦闘でボロボロになった時に交換した隊服が、短いスカートタイプに変わってて驚いてたっけ。主に杏寿郎さんが。
蜜璃ちゃんで慣れていたとはいえ、あの時の杏寿郎さんはなかなか怖かった。渡してきた隠を視線で射殺す勢いだった。
「隊服がたくさんとはどういうことなんだろうな!」
「わかりません。そんなに遠いわけでもありませんし、行ってみるしかありませんね」
呉服屋と書かれた地図に則ってしばらく街を歩く。こっちの方角には大した用事もなく、あまり来たことはなかったなあ。
江戸の香りを未だに残した活気ある街並み、その一角に藤花の暖簾を小さく掲げた呉服屋があるのに気がついた。
『前田』呉服屋、と書かれていた。
「ここのようだな!」
「えっ前田呉服屋……?前田?」
「む?何か問題でもあるのか」
「なんでもありません」
隊士達からゲス眼鏡って呼ばれている、被服担当の隠のご実家って事だよね。『前』の時に私の替えの隊服を短いスカートに変えてきた張本人だ。
「たのもう!!」
気にせず先に入っていってしまう杏寿郎さん。仕方なしにそのあとに続けば、まぁるい眼鏡の奥をニヤつかせたゲス眼……隠の前田さんがやはり待っていた。
ああうん、今日伺いますって言ってあったもんね。顔を見た瞬間、私は覚悟した。
「って!こんなにたくさん……?」
隊服の種類は本当に多かった。それ以外に普通の服もちらほらと見かけるが、隊服だけで八種類もあるってどういうこと。
「朝緋隊士の御御足を見たら素晴らしいひらめきが降って湧いたんですよ!さあさあさあ!ぜひ!ここから着たい隊服をお選びください!!」
「ええー」
一応これでも女なので服を見るのは好きだし、令和の記憶を持つ身としては少しばかり足が出ていてもなんとも思わない。
だがここは大正時代だということを、多少は念頭に入れなくてはいけない。
前田さんの服は前衛的だ。胸元の空いた蜜璃ちゃんのあの隊服のデザインをしたのが彼だということからもわかるだろう。
私が手に取った隊服も、露出度が高いものだった。普通の服すら足がもう……丸出しって感じである。
前田さん、君は生まれる時代を間違えているよ。
「これとか、防御の面で大丈夫なんですか?鬼の爪が擦れば大怪我は免れないのでは……」
「朝緋隊士が鬼の攻撃をすべてかわせば問題ありませんよ!」
「そりゃそうだろうけど!?」
その時、ずっと黙っていた杏寿郎さんが、鶴の一声よろしく大きな声を出した。
「よし片っ端から燃やそう!火種と庭先を借りるぞ!!」
言うが早いか、燃やしやすくするためか先ず服を破こうとしている。
でも杏寿郎さんやい。隊服はそこらの鬼の攻撃は通らない上、水にも火にも強いんですよ。杏寿郎さんの力で破くことなんて、
ビリリィ!
……できるんだねすごいや。
「アーッ!なんてことを!!
朝緋隊士の御御足は他の人間にも見せなくてはもったいない!全人類の宝です!「宝というほどのものではないと思いますけど」
せっかくのカモシカの如きすらっとした足!「カモシカは言い過ぎですね」太すぎず細すぎない魅惑の太もも!挟まれたい挟みたい!「挟まれたいとか挟みたいって何!?」だがそれは妄想の中でだ!!ぶらぼー!足!!「は?ぶらぼー?横文字??」
そのための隊服を、隊服を……アンタなんばしよっとね!?」
この店構えをみればわかるけど、前田さんは生粋の東京人のはず。いつから福岡の人になったのやら。
いつからで思い出した。そういえば『前』はいなかったのに、藤襲山を降りた時に前田さんがいたような……?変な視線を感じたの、多分だけど前田さんだ。
あれからけっこう経つけど、ずっとデザイン考えたり隊服やら何やら作っていたのだろうか。もしそうならその執念にぞっとすると同時、熱意に感心するわ。
「よもや君はうちの朝緋にこんな……こんっな、破廉恥極まりない隊服を着させようというのか!もっとまともな隊服をよこすのが君の仕事だろう!!」
「こちとらまともに考えてこの服を作ってますよ!煉獄の旦那、貴方は朝緋隊士の御御足の素晴らしさがわかる隊服姿を見たくないんですか!?」
「見たいに決まっておろう!ただし誰かに見られるのは嫌だ!!」
「独り占めしたい気持ちはわかる!けど隊士なんですからそういうわけにもいきますまい!」
何か言い合いしてるけど放っておこう。私はこんもりと山ぼっちになっている残りの隊服や、普段着になりそうなそれらを手に取って眺めていた。
あ、この隊服ならまだましかも。こっちの服はかわいいから欲しいなぁ。着る暇はあまりなさそうなのが残念だけど。
これだけたくさん作ってくれた労力は評価するべきだし、こちらも妥協はしないと。
「師範。私は隊服としての機能が果たせればどれ着ても良いと思います。スカートタイプは動きやすいし……」
『前』よりさらに短くなっている気がするけど。
「これか?
俺はこんな無防備な格好をしている朝緋の姿を、他の男に見せたくはないのだがな」
手渡した隊服は普通の隊士とほとんど変わらない。ミニスカートがミニすぎる点を除いては。
足が出過ぎているのが、杏寿郎さんは気になるようだ。それも、他の人に見せたくないという動機で。
「でも袴とか洋袴でもしももつれたり絡んで転んだら、鬼にやられて命取りです。
私は鬼に食べられてはならない。血を流してはならない。忘れましたか?」
稀血であること。それは私にとって、どこまでもついて回る嬉しくない呪いだ。
「肌が出ている方がよほど怪我を負うだろう。
それに足捌きを容易にするためにこそ脚絆がある。俺と同じ炎の意匠のものを送るから履くといい」
「……私は剣の強さでなく速さが命です。ズボンでは風の抵抗が大きくなります。少しも遅くはなりたくない」
物理的にも精神的にも、貴方に追いつきたい。
「なら靴下を履いてはどうでしょう!靴下留めと合わせるのは、最近の主流のようですよ!」
打開策として前田さんから渡されたそれは、どうみてもロングの靴下と、ガーターベルト。確かに大正時代の人気商品だね!でもちょっと使い方が違うし、刺激が強いかもね!!
普通は、シュミーズやズロース、下着スカートの中に履くものだろうし。
一度隊服を着、ロング靴下にガーターベルトを着用して杏寿郎さんの前に出てみると、案の定彼は真っ赤な顔をしていた。
「よもっ!?余計破廉恥になった!その靴下は無しだっ!!」
「んー、……じゃあストッキング?」
この頃にはすでに、女利安屋も出ているからなんと、ストッキングは売っているのだ。
人絹製品は結構高いけれど、鬼殺隊に所属するならそこまで痛い出費じゃないはずだ。
「破けると肌に張り付いて余計に破廉恥ですよねぇ。最高じゃないですか」
「「えっ」」
「……長い靴下を履いて、長い洋物のブゥツを履いてくれると助かる。靴下留めは無しにしてくれ」
「わかりました……」
隊服が決まった。
その後しばらくして。隊服の上に纏うための私だけの羽織を渡された。
淡い桜に青い炎。『前』も纏っていた、私の炎。
杏寿郎さんと千寿郎がニコニコと笑いながら渡してきたものだけれど、私は知っている。
これは槇寿朗さんの手も加わっていると。私の刀の色を確認して仕立てた物だと。
ありがとうございます。けどほんと素直じゃないね!