二周目 参
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刀が届く日がわかり、杏寿郎さんを呼んだ。
自分の日輪刀が届く……!期待と不安が半分ずつで、その日は朝からソワソワして杏寿郎さんと二人、門前で刀匠の到着を待っていた。
千寿郎も色変わりするところを見たがったが、残念かな。近所の子が迎えに来て学校に登校してしまった。
「あ、来たみたいですよ」
「あれか……、いや、あれか!?」
遠くからなんとも怪しげな人間が近づいてくるのが見てとれる。
笠を目深にかぶる旅装束の姿はいい。ただ、その笠の周りにはこれでもかという量の風鈴が下がっていた。
相変わらず珍妙な格好。でも『前回』のこともあるから私は杏寿郎さんと違い、もう慣れた。どちらにせよ刀鍛冶のみなさんは、火男のお面もかぶってるから、周りから変な目で見られるのだし。ほら今も、近所の人がびっくりしてる。
というかまたあの刀匠が担当なのね。悪い人じゃないけれど少し我が強い。
「俺は鋼鐵塚という者。煉獄朝緋はいるだろうか」
「私です」
「煉獄朝緋の刀を打った。これだ」
そう言うと背中に背負っていた刀袋をおもむろにおろし、その場でいきなり広げ始めた。包みから刀の鞘がコンニチハしてる。
「ちょ、やめてください!こんなところで広げないで!?」
「なんだと!お前らから頼んでおいて俺の刀をろくに見もしないで受け取るつもりか!いいからこの俺の渾身の出来の刀を見ろ!」
「見ますけど!ここじゃないところで!中でお願いします!」
ほーら、刀至上主義の我の強さがこんなところで出てきてる。私は杏寿郎さんに目配せして、このわがまま刀匠を家の中に運んでもらうことにした。
「うむ!失礼する!」
「な、何をする!俺は大人の男だぞ!」
「大人の男というなら、駄々をこねないでください。
今の世の中は廃刀令が出てるんですから。ほら、入った入った」
運んだ座敷でよくやく大人しく刀を取り出すまでに機嫌を回復した鋼鐵塚さんだけど、相変わらず大人とは思えない態度だ。
「炎の呼吸を使うなら日輪刀も赤い刀身に変わるところが見られるんだよな?早く見たい!見せろ!!」
けれどこれがこの人。
会わせることになったのがある程度寛大である程度大人の杏寿郎さんだけでよかった。槇寿朗さんなら相性が悪すぎて大喧嘩になりそうだし、千寿郎には悪い大人のお手本すぎて会わせたくない。
「さっさと刀を抜けぇぇ〜」
くねくねと蛸のようにまとわり付いて刀を押し付けてくる姿に、杏寿郎さんでさえ呆れている。杏寿郎さんの周りにはいないタイプだもんね。わかる。
よし、喝を入れよう。
「お行儀が悪い!危ないので急かさないでくれます?見せませんよ!」
笑みを浮かべてピシャリと言い放てば、途端に大人しくなった。
杏寿郎さんが固まったほどだった。
静かになったところで日輪刀を手に取る。どこまでも真っ白な鞘からゆっくりと刃を抜いて刀身を顕にすれば、手元から徐々に色が変わった。
「は、おまっ、青……っ!?」
「よもやっ、なんで青なんだ!?」
そう、青に。
しかしそれだけでは終わらなかった。終わらない事を私は知っていた。
切っ先まで青く変わった刀身が、白く変わり、次に黄色、そして朱に限りなく近い橙へと変わる。刀身に浮かぶ刃文は、白い火花が散ったかのよう。
青が残るのはほんの先端のみでその殆どが炎の呼吸に適した朱だった。
あー、やっぱりこの色に変わったか。見慣れた刀身がやっと私の元に戻ってきた。
見れば青に驚いていた杏寿郎さんも、ホッとしたように私の日輪刀を見ている。
「びっくりしたが綺麗な焔色だな!おめでとう朝緋!」
「ありがとうございます。綺麗な刀身で私も嬉しいです」
おかえり、私の炎。『また』よろしくね。
しかし『前』も思ったけど、なぜ切先だけが青いのだろう。不思議に思っていると、ぶんどるようにして横から奪われた。
「よく見せてみろ!
最初は青くてガッカリしたが、その後から赤くなったな!いい意味で裏切られた!この青い部分はどうしてこうなっ、あっつ!?なんだこれ熱いぞ!」
「え、熱いのですか?」
「一瞬な!焼いた鉄瓶にでも触ったのかと思った!」
青い部分は火傷しそうなほど熱かったらしい。
刀鍛冶だから火には強いのか本物の火傷にまでは至らなかったようだが、手のひらが赤くなっているのが見える。
返してもらい、恐る恐る触ってみる。少し冷めたようで火傷は免れたが、確かに熱い。杏寿郎さんも触って確かめていた。
「炎の呼吸だから?杏寿郎兄さんの時も、熱くなってましたっけ?」
「いや、そんなことはなかったと思うが」
鋼鐵塚さんは思い当たる節があったようだ。
「なるほど。炎は熱ければ熱いほど青い炎に変わると聞く。
刀を打つ時に青い炎は見たことがないが、その手前の白い炎に変わったところは何度か見た経験がある」
「あー……摂氏千度以上の炎のことだった気がするけど……」
「千度とは恐れ入った!」
「お前よく摂氏千度なんて知っていたな。大学に通っていたわけじゃないんだよな?」
おっと、令和の時代の理科やら化学で習うものだったけど、この時代の女性はよほど長く学校に通わないと学べないような内容だったか。
変なところで学があるなんて、悟られないように気をつけないとだ。
「あっ。うん、まあ!つまりとにかく普通より熱い炎ってことですよね!火傷するどころか溶けちゃう、みたいな?まるで煮えたぎる溶岩だぁ〜あはは」
前は色変わりしたてで触ったりしなかったからわからなかったけど、そういうことだったのね。……こわ!青い刀身、こっっっわ!!
「よもや……恐ろしいな!」
流石の杏寿郎さんも、私の刀身の色の真実に口元を引き攣らせていた。
ここ最近でいろんな杏寿郎さんの表情を見ている気がする。ちょっと新鮮。
「お前の存在は炎の呼吸に適性がというより、炎そのものだな。お前どれだけ炎に適正あるんだ?
俺の元でその炎使って刀が打ちたい。隊士をやめたらうちに来い!」
刀鍛冶、それも刀を愛し刀を打つことに命を賭けた鋼鐵塚さんらしい、すんごいプロポーズだな。本人にはその気ないだろうけど。
「ついでに嫁にしてやるよ!!」
「えっ!」
違った。普通にプロポーズかましてきた。いやついでって。ついでって……。
「うむ!?それはだめだな!断らせてもらおう!!」
判断が早い。私ではなく杏寿郎さんが即座に断っていた。
「オメーに言ってねーわ!」
「いやあの、私からもお断りします。
実際技を放つ時に炎が出てるわけじゃないので刀を鍛える時にお力添えするのは無理です。鍛冶場は女人禁制でもありますでしょう?」
「でも縁起は良さそうだ。朝緋お前、みたらし団子は作れるか?」
なぜにみたらし??
「縁起はわからないからともかく、みたらし団子?作れますけど……」
「俺の好物が作れるなら大丈夫だ!鬼殺隊に飽きたら嫁に来い!!」
「むむ!うちの朝緋は俺の好物を作る方が得意だ!貴方の好物は作らん!!」
みたらし団子は鋼鐵塚さんの好物かー。他の人に作ってもらってほしい。
でも杏寿郎さん、変な事で張り合わないでよ。
「ウォッホン!
好物はともかく、どっちにしても憎き鬼がこの世から消えるまでは隊士をやめる気はありません」
「そうだぞ!ましてや嫁など……絶対に許可できん!!」
わかったけどさ。さっきから杏寿郎さん、なんで額に青筋浮かぶほど怒ってるの。
好物食べたいから?今夜さつまいもの味噌汁作ろうか??
自分の日輪刀が届く……!期待と不安が半分ずつで、その日は朝からソワソワして杏寿郎さんと二人、門前で刀匠の到着を待っていた。
千寿郎も色変わりするところを見たがったが、残念かな。近所の子が迎えに来て学校に登校してしまった。
「あ、来たみたいですよ」
「あれか……、いや、あれか!?」
遠くからなんとも怪しげな人間が近づいてくるのが見てとれる。
笠を目深にかぶる旅装束の姿はいい。ただ、その笠の周りにはこれでもかという量の風鈴が下がっていた。
相変わらず珍妙な格好。でも『前回』のこともあるから私は杏寿郎さんと違い、もう慣れた。どちらにせよ刀鍛冶のみなさんは、火男のお面もかぶってるから、周りから変な目で見られるのだし。ほら今も、近所の人がびっくりしてる。
というかまたあの刀匠が担当なのね。悪い人じゃないけれど少し我が強い。
「俺は鋼鐵塚という者。煉獄朝緋はいるだろうか」
「私です」
「煉獄朝緋の刀を打った。これだ」
そう言うと背中に背負っていた刀袋をおもむろにおろし、その場でいきなり広げ始めた。包みから刀の鞘がコンニチハしてる。
「ちょ、やめてください!こんなところで広げないで!?」
「なんだと!お前らから頼んでおいて俺の刀をろくに見もしないで受け取るつもりか!いいからこの俺の渾身の出来の刀を見ろ!」
「見ますけど!ここじゃないところで!中でお願いします!」
ほーら、刀至上主義の我の強さがこんなところで出てきてる。私は杏寿郎さんに目配せして、このわがまま刀匠を家の中に運んでもらうことにした。
「うむ!失礼する!」
「な、何をする!俺は大人の男だぞ!」
「大人の男というなら、駄々をこねないでください。
今の世の中は廃刀令が出てるんですから。ほら、入った入った」
運んだ座敷でよくやく大人しく刀を取り出すまでに機嫌を回復した鋼鐵塚さんだけど、相変わらず大人とは思えない態度だ。
「炎の呼吸を使うなら日輪刀も赤い刀身に変わるところが見られるんだよな?早く見たい!見せろ!!」
けれどこれがこの人。
会わせることになったのがある程度寛大である程度大人の杏寿郎さんだけでよかった。槇寿朗さんなら相性が悪すぎて大喧嘩になりそうだし、千寿郎には悪い大人のお手本すぎて会わせたくない。
「さっさと刀を抜けぇぇ〜」
くねくねと蛸のようにまとわり付いて刀を押し付けてくる姿に、杏寿郎さんでさえ呆れている。杏寿郎さんの周りにはいないタイプだもんね。わかる。
よし、喝を入れよう。
「お行儀が悪い!危ないので急かさないでくれます?見せませんよ!」
笑みを浮かべてピシャリと言い放てば、途端に大人しくなった。
杏寿郎さんが固まったほどだった。
静かになったところで日輪刀を手に取る。どこまでも真っ白な鞘からゆっくりと刃を抜いて刀身を顕にすれば、手元から徐々に色が変わった。
「は、おまっ、青……っ!?」
「よもやっ、なんで青なんだ!?」
そう、青に。
しかしそれだけでは終わらなかった。終わらない事を私は知っていた。
切っ先まで青く変わった刀身が、白く変わり、次に黄色、そして朱に限りなく近い橙へと変わる。刀身に浮かぶ刃文は、白い火花が散ったかのよう。
青が残るのはほんの先端のみでその殆どが炎の呼吸に適した朱だった。
あー、やっぱりこの色に変わったか。見慣れた刀身がやっと私の元に戻ってきた。
見れば青に驚いていた杏寿郎さんも、ホッとしたように私の日輪刀を見ている。
「びっくりしたが綺麗な焔色だな!おめでとう朝緋!」
「ありがとうございます。綺麗な刀身で私も嬉しいです」
おかえり、私の炎。『また』よろしくね。
しかし『前』も思ったけど、なぜ切先だけが青いのだろう。不思議に思っていると、ぶんどるようにして横から奪われた。
「よく見せてみろ!
最初は青くてガッカリしたが、その後から赤くなったな!いい意味で裏切られた!この青い部分はどうしてこうなっ、あっつ!?なんだこれ熱いぞ!」
「え、熱いのですか?」
「一瞬な!焼いた鉄瓶にでも触ったのかと思った!」
青い部分は火傷しそうなほど熱かったらしい。
刀鍛冶だから火には強いのか本物の火傷にまでは至らなかったようだが、手のひらが赤くなっているのが見える。
返してもらい、恐る恐る触ってみる。少し冷めたようで火傷は免れたが、確かに熱い。杏寿郎さんも触って確かめていた。
「炎の呼吸だから?杏寿郎兄さんの時も、熱くなってましたっけ?」
「いや、そんなことはなかったと思うが」
鋼鐵塚さんは思い当たる節があったようだ。
「なるほど。炎は熱ければ熱いほど青い炎に変わると聞く。
刀を打つ時に青い炎は見たことがないが、その手前の白い炎に変わったところは何度か見た経験がある」
「あー……摂氏千度以上の炎のことだった気がするけど……」
「千度とは恐れ入った!」
「お前よく摂氏千度なんて知っていたな。大学に通っていたわけじゃないんだよな?」
おっと、令和の時代の理科やら化学で習うものだったけど、この時代の女性はよほど長く学校に通わないと学べないような内容だったか。
変なところで学があるなんて、悟られないように気をつけないとだ。
「あっ。うん、まあ!つまりとにかく普通より熱い炎ってことですよね!火傷するどころか溶けちゃう、みたいな?まるで煮えたぎる溶岩だぁ〜あはは」
前は色変わりしたてで触ったりしなかったからわからなかったけど、そういうことだったのね。……こわ!青い刀身、こっっっわ!!
「よもや……恐ろしいな!」
流石の杏寿郎さんも、私の刀身の色の真実に口元を引き攣らせていた。
ここ最近でいろんな杏寿郎さんの表情を見ている気がする。ちょっと新鮮。
「お前の存在は炎の呼吸に適性がというより、炎そのものだな。お前どれだけ炎に適正あるんだ?
俺の元でその炎使って刀が打ちたい。隊士をやめたらうちに来い!」
刀鍛冶、それも刀を愛し刀を打つことに命を賭けた鋼鐵塚さんらしい、すんごいプロポーズだな。本人にはその気ないだろうけど。
「ついでに嫁にしてやるよ!!」
「えっ!」
違った。普通にプロポーズかましてきた。いやついでって。ついでって……。
「うむ!?それはだめだな!断らせてもらおう!!」
判断が早い。私ではなく杏寿郎さんが即座に断っていた。
「オメーに言ってねーわ!」
「いやあの、私からもお断りします。
実際技を放つ時に炎が出てるわけじゃないので刀を鍛える時にお力添えするのは無理です。鍛冶場は女人禁制でもありますでしょう?」
「でも縁起は良さそうだ。朝緋お前、みたらし団子は作れるか?」
なぜにみたらし??
「縁起はわからないからともかく、みたらし団子?作れますけど……」
「俺の好物が作れるなら大丈夫だ!鬼殺隊に飽きたら嫁に来い!!」
「むむ!うちの朝緋は俺の好物を作る方が得意だ!貴方の好物は作らん!!」
みたらし団子は鋼鐵塚さんの好物かー。他の人に作ってもらってほしい。
でも杏寿郎さん、変な事で張り合わないでよ。
「ウォッホン!
好物はともかく、どっちにしても憎き鬼がこの世から消えるまでは隊士をやめる気はありません」
「そうだぞ!ましてや嫁など……絶対に許可できん!!」
わかったけどさ。さっきから杏寿郎さん、なんで額に青筋浮かぶほど怒ってるの。
好物食べたいから?今夜さつまいもの味噌汁作ろうか??