五周目 陸
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俺はこれまで任務に出ていたという、鬼となった朝緋さんを探し続けていた。
彼女を探すのが、御館様から言われた指令の一つだ。
「煉獄さん!」
「やあ、竈門少年!あの時の任務以来だな!元気にしていたか?」
「はい、この通り元気に任務へ出ています」
「そうかそうか、それは良かった!」
無限列車の任務以来、久しぶりにお会いできた煉獄さん。彼が俺を撫でてきた瞬間、鬼化した朝緋さんの匂いがふわりと漂ってきた。
ああなんだ、彼女は煉獄さんの元にいたのか。在るべき場所に帰ったんだ。
好き合っている者同士なのだし、共にいるのならよかった。これで良い報告ができそうだと、最初はそう思った。
けれど、煉獄さんからは血の匂いもしていた。肩付近かな……怪我をしている。
その場所から重点的に香るのも、朝緋さんの気配の匂いだった。
それにこの匂いは……。
朝緋さん……煉獄さんを噛んだんだ。血や肉を喰らった鬼の匂いになっている。
「煉獄さんは朝緋さんのこと……その後どうなったか知っていますか」
「知らんな。俺も知りたいくらいだ」
少し誘導尋問で真意を確かめてみたが、瞳も声も全くブレない。表情を揺らさずに回答している。これが柱か……。
ただ俺には、それが嘘だとわかっている。
嘘の匂いがする。
煉獄さんは朝緋さんが自分の元にいることを隠している。
御館様が俺に朝緋さんを探すよう言ってきたということはだ、煉獄さんが御館様にすら秘密にしていることは確か。
煉獄さんには悪いけれど、これも任務だ。俺は朝緋さんがどこにいるのかを、御館様に報告する義務がある。
***
私が杏寿郎さんを噛み、藤の檻に囲われるのと時を同じくして。
「ごめんくださーい!」
炭治郎が炎柱邸を訪ねてきた。杏寿郎さんが終日任務で出かけていていない、昼間の時だった。
えっえっ、どうしよう!?居留守、使うしかないよね……?
焦った、それはもう焦った。
今の炎柱邸のほとんどの部屋は藤の花で囲まれている。陽の光の届かぬ範囲、花のある内側が私が行動できる場所。狭いようで結構広い。
けれどなるべく表には。他の部屋には出るなと言われていた。自分の部屋に閉じこもっておけと。
なら、私はここでじっとしておけば良いだけ。大丈夫、強い藤の匂いが鬼としての私の匂いを。そして私がここにいる匂いを掻き消してくれる。炭治郎の鋭い嗅覚からも隠してくれる。
それに炭治郎は礼儀正しい子だ。返事がなければ留守と思って炎柱邸から出ていくはず……、
「失礼します!」
……だ?
スパーンと音を立てて目の前の障子戸が開く。市松模様の特徴ある羽織、隊服姿の炭治郎がそこにたっていた。
「ひえっ!?た、……炭治郎……っ!」
見下ろしてこられて少しびくついた私のため、炭治郎は部屋の前でしゃがんでくれた。
「やはりここでしたか、藤の花の匂いがきついので嗅ぎ間違えてしまいそうでした!あまりに強い匂いなので、禰󠄀豆子の箱は玄関先に置かせてもらいました!!」
「それは……もちろんいいけど」
炭治郎の鼻が勝ったらしい。ここはいつから藤襲山に?ってくらい、こんなにも藤をしきつめてあるのになあ。
「入ってよろしいですか!!」
「……、どうぞ」
「ありがとうございます!お邪魔します!!」
杏寿郎さんみたいなハキハキした声だけど炭治郎を前にすると……居心地悪いなぁ。
真正面に座り、私を探るように見てくる炭治郎。
その目線の先には、私の体に穿たれたクナイに繋がれた長い鎖、そして私を囲む藤の花。
「こんな状態だから少し時間がかかるかもしれないけど、急いでお茶を淹れてくるから待っててね」
「いえ!お茶は要りません!結構です!!」
「そう……?」
「はい!どうか座っていてください!!」
居心地の悪さに席を立とうとしたけれど、止められてしまった。やっぱり刃物が体に刺さったままの人に、お茶を淹れられるのは気が引けるのかな。人じゃなくて鬼だけど。
「杏寿郎さ、間違えた……炎柱は不在よ」
「そう呼んでいるんですね。貴女方は好い仲なのですから、そのままの呼び名でいいですよ」
今はね、もう継子という括りじゃなくなってる気がするし、つい杏寿郎さんって呼んじゃうのよね。
すごく微笑ましい感じに、にこにこの笑みを向けられてしまった。ちょっと恥ずかしい。
「あー、えっと…………もしかして杏寿郎さんに何か用かな?継子にしてほしいとか、修行をつけて欲しいとか」
「継子にしてもらうのはいいですね!ぜひ頼みたいです!!
でも、今回の俺は朝緋さんに用事があって来たんです。煉獄さんのいない時に、と狙って来ました」
「え……」
あえて杏寿郎さんを避けてだなんて、どうして……?
彼女を探すのが、御館様から言われた指令の一つだ。
「煉獄さん!」
「やあ、竈門少年!あの時の任務以来だな!元気にしていたか?」
「はい、この通り元気に任務へ出ています」
「そうかそうか、それは良かった!」
無限列車の任務以来、久しぶりにお会いできた煉獄さん。彼が俺を撫でてきた瞬間、鬼化した朝緋さんの匂いがふわりと漂ってきた。
ああなんだ、彼女は煉獄さんの元にいたのか。在るべき場所に帰ったんだ。
好き合っている者同士なのだし、共にいるのならよかった。これで良い報告ができそうだと、最初はそう思った。
けれど、煉獄さんからは血の匂いもしていた。肩付近かな……怪我をしている。
その場所から重点的に香るのも、朝緋さんの気配の匂いだった。
それにこの匂いは……。
朝緋さん……煉獄さんを噛んだんだ。血や肉を喰らった鬼の匂いになっている。
「煉獄さんは朝緋さんのこと……その後どうなったか知っていますか」
「知らんな。俺も知りたいくらいだ」
少し誘導尋問で真意を確かめてみたが、瞳も声も全くブレない。表情を揺らさずに回答している。これが柱か……。
ただ俺には、それが嘘だとわかっている。
嘘の匂いがする。
煉獄さんは朝緋さんが自分の元にいることを隠している。
御館様が俺に朝緋さんを探すよう言ってきたということはだ、煉獄さんが御館様にすら秘密にしていることは確か。
煉獄さんには悪いけれど、これも任務だ。俺は朝緋さんがどこにいるのかを、御館様に報告する義務がある。
***
私が杏寿郎さんを噛み、藤の檻に囲われるのと時を同じくして。
「ごめんくださーい!」
炭治郎が炎柱邸を訪ねてきた。杏寿郎さんが終日任務で出かけていていない、昼間の時だった。
えっえっ、どうしよう!?居留守、使うしかないよね……?
焦った、それはもう焦った。
今の炎柱邸のほとんどの部屋は藤の花で囲まれている。陽の光の届かぬ範囲、花のある内側が私が行動できる場所。狭いようで結構広い。
けれどなるべく表には。他の部屋には出るなと言われていた。自分の部屋に閉じこもっておけと。
なら、私はここでじっとしておけば良いだけ。大丈夫、強い藤の匂いが鬼としての私の匂いを。そして私がここにいる匂いを掻き消してくれる。炭治郎の鋭い嗅覚からも隠してくれる。
それに炭治郎は礼儀正しい子だ。返事がなければ留守と思って炎柱邸から出ていくはず……、
「失礼します!」
……だ?
スパーンと音を立てて目の前の障子戸が開く。市松模様の特徴ある羽織、隊服姿の炭治郎がそこにたっていた。
「ひえっ!?た、……炭治郎……っ!」
見下ろしてこられて少しびくついた私のため、炭治郎は部屋の前でしゃがんでくれた。
「やはりここでしたか、藤の花の匂いがきついので嗅ぎ間違えてしまいそうでした!あまりに強い匂いなので、禰󠄀豆子の箱は玄関先に置かせてもらいました!!」
「それは……もちろんいいけど」
炭治郎の鼻が勝ったらしい。ここはいつから藤襲山に?ってくらい、こんなにも藤をしきつめてあるのになあ。
「入ってよろしいですか!!」
「……、どうぞ」
「ありがとうございます!お邪魔します!!」
杏寿郎さんみたいなハキハキした声だけど炭治郎を前にすると……居心地悪いなぁ。
真正面に座り、私を探るように見てくる炭治郎。
その目線の先には、私の体に穿たれたクナイに繋がれた長い鎖、そして私を囲む藤の花。
「こんな状態だから少し時間がかかるかもしれないけど、急いでお茶を淹れてくるから待っててね」
「いえ!お茶は要りません!結構です!!」
「そう……?」
「はい!どうか座っていてください!!」
居心地の悪さに席を立とうとしたけれど、止められてしまった。やっぱり刃物が体に刺さったままの人に、お茶を淹れられるのは気が引けるのかな。人じゃなくて鬼だけど。
「杏寿郎さ、間違えた……炎柱は不在よ」
「そう呼んでいるんですね。貴女方は好い仲なのですから、そのままの呼び名でいいですよ」
今はね、もう継子という括りじゃなくなってる気がするし、つい杏寿郎さんって呼んじゃうのよね。
すごく微笑ましい感じに、にこにこの笑みを向けられてしまった。ちょっと恥ずかしい。
「あー、えっと…………もしかして杏寿郎さんに何か用かな?継子にしてほしいとか、修行をつけて欲しいとか」
「継子にしてもらうのはいいですね!ぜひ頼みたいです!!
でも、今回の俺は朝緋さんに用事があって来たんです。煉獄さんのいない時に、と狙って来ました」
「え……」
あえて杏寿郎さんを避けてだなんて、どうして……?