五周目 陸
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それにしても怠い。体が怠くて動けない……。
「あー、いたた。動けない、動きたくない……。しばらく休んでていい?」
「時間はあるから休むのは構わないが……。
朝緋、人間だった時より弱くなっていないか?基礎的な部分は鬼になった分強くなっているようだが、体力が今一つな気がするぞ。行為に及んで早々に気絶するとは情けない」
今までそんなことなかったけど、私は杏寿郎さんとの行為ですぐに気絶した。これは鬼になってからだ。気絶させられても直後に強い刺激と快感で起こされるのだけども。でもこれは、
「杏寿郎さんが私を鬼だからと、無茶させてくるだけでは」
「いいや、そんな事はない。行為の程度は今までと同じはずだ」
「そーぉ?」
「……朝緋は何か心当たりがありそうだが、違うか?」
「あー、うん。まあ……ちょっとある。けど、こればかりは仕方ないかなぁ」
「言いなさい」
「やだ、言いたくない」
プイッ。杏寿郎さんから顔も体も逸らし、あさっての方角を向く。
でもすぐに体を元の位置に戻された。わーお、杏寿郎さんの厚い胸板が目の前に。むぎゅりと体に押し付けられ、至近距離で見つめられる。
「言いなさい朝緋!俺は君の事は、」
「なんでも知りたい、でしょ?わかったわかった。ただ単に、基本的に鬼としての力の源が足りてないだけだよ」
「源……ああ、そういうことか。君はあまり血を飲みたがらないからなぁ」
「いいの。我慢できるならした方がいい」
そう、私が弱いのは単純に血が足りていないから。食事を摂らないから。お腹は空くけど、私はこれ以上血を摂取することで鬼になりたくないのだ。
「いいや、それでは駄目だ。人は水を飲まなくては三日ほどで死んでしまうのだぞ」
「私人じゃないもの」
「屁理屈を言うな」
「イタタタ」
ほっぺたを思い切りつねられた。伸びたままの形になったらどうしてくれる。
「……そういえばあいすくりんの味の血を飲ませるのをすっかり忘れていたな」
「杏寿郎さん、アイスの味がする血なんて病気だよ。要らないよ」
「そういうわけにいかん。俺が満足したように君にも満足してもらわねばあるまい!」
このままだと飲まされる。今度こそ逃げなくちゃ。
なのに、固定されていようといなかろうと、私の体は血を求め、杏寿郎さんを求め、全く動いてくれない。
牙がうずく。
「朝緋、……ん、」
自分で唇を噛んだのか、血の匂いと味がふんだんにしてくる口付けが送られた。
「杏寿郎さんやめて、血なんて私要らない……要らな……ん、んむ。じゅる、」
駄目。舐めちゃ駄目。飲んじゃ駄目。
だけど無理。美味しい。
唇からのほんの少しの出血だろうに、血の味を覚えた悪鬼の私はそれに飛びつく。唇を貪り、自分から舌を出して全て奪おうと口づけに答える。
「は、ぁ……。要らないと言いながら吸い付いて啜っているのは朝緋、だな」
「んん、体が勝手に……」
「仕方なきことだ。ほら噛みなさい。俺の首を噛んで血を飲め」
唇を離し、太く走る頸動脈を目の前に提示される。どくどくと脈打つ血管。赤き血潮が巡る場所。
大好きな人のあたたかくて美味しい血を前に我慢が利かない。
「ん、ふ、っん……ごめんなさ、」
中途半端な強さで噛めば逆に痛い。一言謝罪したあと、一思いに勢いよく噛みつく。
皮膚がプツリと破れ、血の芳醇な香りと味が先ほどより一気に広がってくる。
「普段は飲まずにいられようと、血を目の前にしては鬼である以上抗えぬよなぁ。
どうだ、あいすくりんの味はするか」
「アイスの味はしないよ……お稲荷さんの味も……。でも美味しい。杏寿郎さんの味がする。強くて逞しくて優しくて、とろりとしてあったかい味」
「俺の味か!」
もう、我慢できない。
「もっと……もっとちょうだい」
気がつくとそんな言葉が出ていた。
「ああいいぞ。気が済むまでどんどん飲むといい」
私が噛んだ傷口に顔を、唇を押し付けられ、撫でられる。心地よい抱擁と心地よい撫で摩り。猫でないけれどゴロゴロと甘え、思う存分に吸い尽くしてしまいそう。
「あり、がとう……、んむ、」
「……ただし俺以外の人間の血は飲むなよ」
「私、そんな……人を襲うような真似しないよ」
だってまだ、自我ははっきりしている。私はまだ人を襲う悪鬼じゃない。
いつそうなるかわからないだけで。
「違う。君の体を巡るのは俺の血だけでいい。他の人間の血なんて流れてほしくない。ただ俺が朝緋を独り占めしたいだけだ」
強く、強く後頭部を押さえて傷口に押し付けられ言われる。
その瞳には強く強く、どろりとした独占欲という感情が乗っていた。
私も他の人に杏寿郎さんを盗られたくない。他の鬼にこのおいしい血を奪われたくない。
もし、この血が他の鬼に盗られでもしたら。そう考えるだけで殺してしまいたくなる。
ううん、奪われてしまう前に、杏寿郎さんの血を一滴残らず吸い尽くして私のものにしてしまおうかな。
それがいい。
だって。杏寿郎さんも好きなだけ飲んでいいって、そう言っているんだもの。
私は貴方の血しか飲みたくない。
「あー、いたた。動けない、動きたくない……。しばらく休んでていい?」
「時間はあるから休むのは構わないが……。
朝緋、人間だった時より弱くなっていないか?基礎的な部分は鬼になった分強くなっているようだが、体力が今一つな気がするぞ。行為に及んで早々に気絶するとは情けない」
今までそんなことなかったけど、私は杏寿郎さんとの行為ですぐに気絶した。これは鬼になってからだ。気絶させられても直後に強い刺激と快感で起こされるのだけども。でもこれは、
「杏寿郎さんが私を鬼だからと、無茶させてくるだけでは」
「いいや、そんな事はない。行為の程度は今までと同じはずだ」
「そーぉ?」
「……朝緋は何か心当たりがありそうだが、違うか?」
「あー、うん。まあ……ちょっとある。けど、こればかりは仕方ないかなぁ」
「言いなさい」
「やだ、言いたくない」
プイッ。杏寿郎さんから顔も体も逸らし、あさっての方角を向く。
でもすぐに体を元の位置に戻された。わーお、杏寿郎さんの厚い胸板が目の前に。むぎゅりと体に押し付けられ、至近距離で見つめられる。
「言いなさい朝緋!俺は君の事は、」
「なんでも知りたい、でしょ?わかったわかった。ただ単に、基本的に鬼としての力の源が足りてないだけだよ」
「源……ああ、そういうことか。君はあまり血を飲みたがらないからなぁ」
「いいの。我慢できるならした方がいい」
そう、私が弱いのは単純に血が足りていないから。食事を摂らないから。お腹は空くけど、私はこれ以上血を摂取することで鬼になりたくないのだ。
「いいや、それでは駄目だ。人は水を飲まなくては三日ほどで死んでしまうのだぞ」
「私人じゃないもの」
「屁理屈を言うな」
「イタタタ」
ほっぺたを思い切りつねられた。伸びたままの形になったらどうしてくれる。
「……そういえばあいすくりんの味の血を飲ませるのをすっかり忘れていたな」
「杏寿郎さん、アイスの味がする血なんて病気だよ。要らないよ」
「そういうわけにいかん。俺が満足したように君にも満足してもらわねばあるまい!」
このままだと飲まされる。今度こそ逃げなくちゃ。
なのに、固定されていようといなかろうと、私の体は血を求め、杏寿郎さんを求め、全く動いてくれない。
牙がうずく。
「朝緋、……ん、」
自分で唇を噛んだのか、血の匂いと味がふんだんにしてくる口付けが送られた。
「杏寿郎さんやめて、血なんて私要らない……要らな……ん、んむ。じゅる、」
駄目。舐めちゃ駄目。飲んじゃ駄目。
だけど無理。美味しい。
唇からのほんの少しの出血だろうに、血の味を覚えた悪鬼の私はそれに飛びつく。唇を貪り、自分から舌を出して全て奪おうと口づけに答える。
「は、ぁ……。要らないと言いながら吸い付いて啜っているのは朝緋、だな」
「んん、体が勝手に……」
「仕方なきことだ。ほら噛みなさい。俺の首を噛んで血を飲め」
唇を離し、太く走る頸動脈を目の前に提示される。どくどくと脈打つ血管。赤き血潮が巡る場所。
大好きな人のあたたかくて美味しい血を前に我慢が利かない。
「ん、ふ、っん……ごめんなさ、」
中途半端な強さで噛めば逆に痛い。一言謝罪したあと、一思いに勢いよく噛みつく。
皮膚がプツリと破れ、血の芳醇な香りと味が先ほどより一気に広がってくる。
「普段は飲まずにいられようと、血を目の前にしては鬼である以上抗えぬよなぁ。
どうだ、あいすくりんの味はするか」
「アイスの味はしないよ……お稲荷さんの味も……。でも美味しい。杏寿郎さんの味がする。強くて逞しくて優しくて、とろりとしてあったかい味」
「俺の味か!」
もう、我慢できない。
「もっと……もっとちょうだい」
気がつくとそんな言葉が出ていた。
「ああいいぞ。気が済むまでどんどん飲むといい」
私が噛んだ傷口に顔を、唇を押し付けられ、撫でられる。心地よい抱擁と心地よい撫で摩り。猫でないけれどゴロゴロと甘え、思う存分に吸い尽くしてしまいそう。
「あり、がとう……、んむ、」
「……ただし俺以外の人間の血は飲むなよ」
「私、そんな……人を襲うような真似しないよ」
だってまだ、自我ははっきりしている。私はまだ人を襲う悪鬼じゃない。
いつそうなるかわからないだけで。
「違う。君の体を巡るのは俺の血だけでいい。他の人間の血なんて流れてほしくない。ただ俺が朝緋を独り占めしたいだけだ」
強く、強く後頭部を押さえて傷口に押し付けられ言われる。
その瞳には強く強く、どろりとした独占欲という感情が乗っていた。
私も他の人に杏寿郎さんを盗られたくない。他の鬼にこのおいしい血を奪われたくない。
もし、この血が他の鬼に盗られでもしたら。そう考えるだけで殺してしまいたくなる。
ううん、奪われてしまう前に、杏寿郎さんの血を一滴残らず吸い尽くして私のものにしてしまおうかな。
それがいい。
だって。杏寿郎さんも好きなだけ飲んでいいって、そう言っているんだもの。
私は貴方の血しか飲みたくない。