五周目 陸
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軟禁生活が始まった。
逃げることは出来ない。
杏寿郎さんがいない時は、藤のクナイで体を貫かれ、部屋にある鎖に繋がれる。鬼の力を持ってしても壊れない鎖だから、鬼殺隊製のものだろう。
そして用意周到にも周りを囲むは藤の花という檻。藤襲山で藤の花に慣らしたこの体だけど、藤の毒で弱っているところにこれはキツい。どうやっても逃れることはもちろん、動くことも出来やしない。
あれっ?これって軟禁じゃなくて監禁かな?
ここだけ聞くとそんな気がするけど、杏寿郎さんがいる時はそうじゃない。
クナイも藤も片付けてくれるし、炎柱邸の中なら自由に歩き回らせてもらえる。
『前回』、杏寿郎さんが鬼になった時、私は杏寿郎さんを煉獄家から出してあげられなかった。その存在を隠すが為、杏寿郎さんを煉獄家に閉じ込めてしまっていた。
それと変わらない。私は今、同じことをされているだけ。
だからこそ、逃げる気はない。
それにそんな気、とうに失せた。
昼間に庭に飛び出して死のうとしたら物凄い剣幕で怒られたし、隙をついて逃げようとしたらしばらく繋がれっぱなしでお仕置きと称して抱き潰されたし。
鬼も足腰立たなくなるんだね。気絶するんだね。初めて知ったよ。
ただ、私が危険視しているのは、私が血を摂取したことでいつか悪鬼と成り果てることだ。
いつかがいつなのかはわからない。明日かもしれないし、一ヶ月後かもしれない。
私はいつかを恐れながら、杏寿郎さんと共にいる。離れられない。
だって、私も杏寿郎さんと一緒にいたいんだもの。大好きなんだもの、愛しているんだもの。
好きすぎてどうしようもない。
きっと私は貴方の血しか飲めない。
他の人の血も飲んでないから比べようがないけれど、そこも愛の力が大きい。
好きな人の血ほど嬉しくて美味しくて幸せなものはないって、鬼となった今だからわかる。
美味しくて全て飲み干したくなる。けれどなるべくなら飲みたくない。血を啜りたくないとも思っていて。
ちなみに。毎回断られるけど万が一の時には私の頸を刎ねるよう言ってある。断られるけど。
でもきっと、杏寿郎さんならやってくれる。
だって杏寿郎さんは人間を守る存在。鬼殺隊の柱だもの。優先すべき者はわかるはずだ。
やる事もないので繕い物をしていれば、
「朝緋、いい加減に食事にしよう」
杏寿郎さんが私の作業を遮り、顔を覗き込んでくる。
……来たか。血をなかなか摂りたがらない私に、杏寿郎さんは時折こうして血の摂取を勧めてくる。
せっかく戻ってきた私が飢餓で死んでしまってはと、気が気じゃないのだ。
「要らない。水で十分です」
鬼には水分もあまり必要がないようだったけど、飲めるなら気を紛らわせるのに飲んだ方がいい。幸いなことに私の体は水を受け付けてくれたので、こまめに水を飲んで空腹を紛らわせていた。
「要らない、ではなかろう。君は数日間血を飲んでいない……飢えているはずだ。
腕に傷をつけるから飲みなさい」
「飢えてない。傷つけたら痛いからいいです。杏寿郎さんに余計な傷を負ってほしくない」
言った瞬間、血の香りが飛んできた。えっ早い。
「残念、もう傷をつけてしまった。こぼれてはもったいないぞ。下に落ちたら床が汚れるぞ。早く飲みなさい」
「もぉぉぉ勝手なことして!!馬鹿、杏寿郎さんの馬鹿馬鹿馬鹿ば、か…………、ん、でもおいし……、」
ぷりぷり怒りながらも流れるような動きで傷口に吸い付き、一滴も取りこぼさんと血を啜る。
ああ、甘い。美味しい。この世のどこを探したって、こんなに美味しいものはないだろう。
「結局飲むのではないか!」
「だって勿体無いし床を汚したくないんだも……」
ガブッ!
「いっっっ!?」
血に吸い付いていたらつい、歯を立ててしまった。肉を喰むまではいかなかったけれど、杏寿郎さんの声で思い切り噛んだとわかるはず。
「あっ!ごめんなさい!噛んじゃった……!」
鬼だから牙はもちろん鋭い。人間の八重歯どころではない鋭さと危険さを兼ね備えている。絶対痛いよね。
唇をどかせば、そこにあるのは血が滲む私の歯形。かなり食い込んだか、傷も深い……。
「くっきり歯型ついちゃった……痛いよね、ごめん」
「いやいい。こんなもの猫の歯型と変わらんよ、かわいらしい」
「猫!?」
そんなかわいらしい歯形じゃない気がする。杏寿郎さんは私に関することだと感性すら少しおかしくなる。
「ほら、俺の飼い猫よ。気が済むまで吸うといい……」
「んむ……っ、」
血の流れる傷に顔を、口を押し付けられる。しばらく放してもらえそうにない。甘い血の味と香りで頭がクラクラして、誘いに抗えない。吸うのをやめられない。
結局、久しぶりの血の味を前に満足するまで吸い続けてしまった。
唇を離して立ち上がる。……珍しく杏寿郎さんが貧血でよろけた。
「おっと、少し吸われすぎたようだな」
「……すみません」
「いい。牛鍋でも食えばすぐ血や肉になるだろうて!牛の乳もいいのだったな?」
「お乳自体、血液から作られますからね。でもそういう問題じゃないでしょ」
食べてすぐ血になるわけじゃないし。
それより、よろけた杏寿郎さんを支える際にぎゅっと掴んだ腰が気になる。
いつも行為の時に見ているし触っているけれど、その時は他のことを考える余裕がないから気が付かなかった。
「あの〜……杏寿郎さん、ちゃんとごはん食べてますか?」
「ん?むう……君がいなくなってから食が細くなってな。食べる量が減った。だから前よりは食べていないな」
「やっぱり。
この辺が少し細くなったな、と思って。ベルトの穴も、一個ずれましたね?」
杏寿郎さんのお腰がほっそりしたのだ。
「ベルトの穴はずれたが、君は俺がひょろいといいたいのか!?心外だ!
言っておくが君を抱く力は衰えておらんぞ!ふんぬっ!!」
支えていた手を離され、羽交締めにされる。首のあたりに負荷がかかりしめられる感覚。プロレスかな?プロレスだよねこれ。
「強い強い強いギブギブギブ!私の意識落とす気!?」
「朝緋は鬼だろう!この程度で根を上げるとは情けない!!」
「私を数字持ちの鬼と一緒にしないで?こちとら最弱よわよわ鬼よ」
弱いと言ったって炎柱の継子だ。そんじょそこらの鬼に遅れは取らないけどね。
ぺちぺち叩いて訴え続ければ、杏寿郎さんが私を解放し、そして。
「そうだな。抱くならこっちの抱く、だった」
真正面から抱き直して、袖口や合わせ目から手をスルスルと侵入させてきた。背中に這う手のひらに体がびくりと震える。
下腹部に当たる杏寿郎さんの腰の熱さも、私の女の部分を刺激してやまない。
「ちょっと、やめてください昼間ですよ」
ベシッ!おいたする手を振り払って逃れる。
私は外に出られないから部屋に閉じこもりきり。でもまだ日は高いはずなのだ。鬼となってなお狂わない私の体内時計がそう伝えている。
「この部屋は昼も夜のように暗いだろうに。それにいつでも俺に抱いてもらえるよう、常に君は襦袢姿ではないか」
襦袢とは着物の形をした下着のことだ。だから中身が透けるほど薄い。ベビードールか!ってくらい薄く体が透けるものもある。ま、今着ているのはそこまでじゃないからいい。
「抱いてもらえるようにって、貴方がこういうのしか用意してくれないんでしょ。ああ、隊服が着たい……」
「隊服は駄目だ。任務にも行かせない。日輪刀も持たせない。あずまを使って他の誰とも連絡を取らせない」
「徹底してるなあ」
御館様とも連絡を取らせてもらえないとは……。死んだと勘違いされたらどうするのかしら。まあ、その辺りはあずまや要も考えて話していそうだけど。
「それに様々な体液で汚れてしまうから仕方ないのだ。襦袢ならいくらあってもいいし、その都度捨ててしまえば良い」
様々な体液……血と汗と、あとは言いたくない。
というか襦袢とはいえ資源の無駄が過ぎる。なんともったいない!杏寿郎さんは私が関わることにはお金も湯水のように使うし、色んな感覚が麻痺してしまう。そういうのやめて欲しい。
「まあ、腹が減っては朝緋を襲えぬ、というからな」
「何その造語。襲わんでいい」
「襲う!!」
「ぎゃあ!?」
バリッ!襦袢を脱がされかけた。あっぶな!?大事なところが見えてしまうところだった。でも端が少し破けた……柱の力でやらないで。
着なおしても一部ボロボロで見窄らしくなってしまった。
「前より食べる量は減ったが、今はなるべく食べるようにしている。食べずにいると自分自身も動けなくなるので、普段は定食屋などで食べさせてもらっているよ」
そういえば、ここに戻ってきてから杏寿郎さんが食事しているところ見ていなかったな。
……定食屋か。私達の走りで行けばすぐそことはいえ、毎回行くの手間だよねぇ。
「味見はできませんが、お食事作りましょうか?たぶん長年作って来た通りに作れば、味もそう変わらず出来上がると思うんです」
足りぬ食材については仲良くしていただいている炎柱邸近隣住民の皆様に頼もう。こういう時、近所付き合いをしっかりしてあると助かる。
「朝緋の食事!!ぜひ頼みたい!!
……嬉しいなぁ、朝緋の食事がまた食べられるのだな。まずは芋の味噌汁が飲みたい!」
「はいはい」
食べる前から食べた後のような笑顔だ。すでにわっしょいが飛び出しそう。
この笑顔のためにもたくさん作らなくちゃね。
逃げることは出来ない。
杏寿郎さんがいない時は、藤のクナイで体を貫かれ、部屋にある鎖に繋がれる。鬼の力を持ってしても壊れない鎖だから、鬼殺隊製のものだろう。
そして用意周到にも周りを囲むは藤の花という檻。藤襲山で藤の花に慣らしたこの体だけど、藤の毒で弱っているところにこれはキツい。どうやっても逃れることはもちろん、動くことも出来やしない。
あれっ?これって軟禁じゃなくて監禁かな?
ここだけ聞くとそんな気がするけど、杏寿郎さんがいる時はそうじゃない。
クナイも藤も片付けてくれるし、炎柱邸の中なら自由に歩き回らせてもらえる。
『前回』、杏寿郎さんが鬼になった時、私は杏寿郎さんを煉獄家から出してあげられなかった。その存在を隠すが為、杏寿郎さんを煉獄家に閉じ込めてしまっていた。
それと変わらない。私は今、同じことをされているだけ。
だからこそ、逃げる気はない。
それにそんな気、とうに失せた。
昼間に庭に飛び出して死のうとしたら物凄い剣幕で怒られたし、隙をついて逃げようとしたらしばらく繋がれっぱなしでお仕置きと称して抱き潰されたし。
鬼も足腰立たなくなるんだね。気絶するんだね。初めて知ったよ。
ただ、私が危険視しているのは、私が血を摂取したことでいつか悪鬼と成り果てることだ。
いつかがいつなのかはわからない。明日かもしれないし、一ヶ月後かもしれない。
私はいつかを恐れながら、杏寿郎さんと共にいる。離れられない。
だって、私も杏寿郎さんと一緒にいたいんだもの。大好きなんだもの、愛しているんだもの。
好きすぎてどうしようもない。
きっと私は貴方の血しか飲めない。
他の人の血も飲んでないから比べようがないけれど、そこも愛の力が大きい。
好きな人の血ほど嬉しくて美味しくて幸せなものはないって、鬼となった今だからわかる。
美味しくて全て飲み干したくなる。けれどなるべくなら飲みたくない。血を啜りたくないとも思っていて。
ちなみに。毎回断られるけど万が一の時には私の頸を刎ねるよう言ってある。断られるけど。
でもきっと、杏寿郎さんならやってくれる。
だって杏寿郎さんは人間を守る存在。鬼殺隊の柱だもの。優先すべき者はわかるはずだ。
やる事もないので繕い物をしていれば、
「朝緋、いい加減に食事にしよう」
杏寿郎さんが私の作業を遮り、顔を覗き込んでくる。
……来たか。血をなかなか摂りたがらない私に、杏寿郎さんは時折こうして血の摂取を勧めてくる。
せっかく戻ってきた私が飢餓で死んでしまってはと、気が気じゃないのだ。
「要らない。水で十分です」
鬼には水分もあまり必要がないようだったけど、飲めるなら気を紛らわせるのに飲んだ方がいい。幸いなことに私の体は水を受け付けてくれたので、こまめに水を飲んで空腹を紛らわせていた。
「要らない、ではなかろう。君は数日間血を飲んでいない……飢えているはずだ。
腕に傷をつけるから飲みなさい」
「飢えてない。傷つけたら痛いからいいです。杏寿郎さんに余計な傷を負ってほしくない」
言った瞬間、血の香りが飛んできた。えっ早い。
「残念、もう傷をつけてしまった。こぼれてはもったいないぞ。下に落ちたら床が汚れるぞ。早く飲みなさい」
「もぉぉぉ勝手なことして!!馬鹿、杏寿郎さんの馬鹿馬鹿馬鹿ば、か…………、ん、でもおいし……、」
ぷりぷり怒りながらも流れるような動きで傷口に吸い付き、一滴も取りこぼさんと血を啜る。
ああ、甘い。美味しい。この世のどこを探したって、こんなに美味しいものはないだろう。
「結局飲むのではないか!」
「だって勿体無いし床を汚したくないんだも……」
ガブッ!
「いっっっ!?」
血に吸い付いていたらつい、歯を立ててしまった。肉を喰むまではいかなかったけれど、杏寿郎さんの声で思い切り噛んだとわかるはず。
「あっ!ごめんなさい!噛んじゃった……!」
鬼だから牙はもちろん鋭い。人間の八重歯どころではない鋭さと危険さを兼ね備えている。絶対痛いよね。
唇をどかせば、そこにあるのは血が滲む私の歯形。かなり食い込んだか、傷も深い……。
「くっきり歯型ついちゃった……痛いよね、ごめん」
「いやいい。こんなもの猫の歯型と変わらんよ、かわいらしい」
「猫!?」
そんなかわいらしい歯形じゃない気がする。杏寿郎さんは私に関することだと感性すら少しおかしくなる。
「ほら、俺の飼い猫よ。気が済むまで吸うといい……」
「んむ……っ、」
血の流れる傷に顔を、口を押し付けられる。しばらく放してもらえそうにない。甘い血の味と香りで頭がクラクラして、誘いに抗えない。吸うのをやめられない。
結局、久しぶりの血の味を前に満足するまで吸い続けてしまった。
唇を離して立ち上がる。……珍しく杏寿郎さんが貧血でよろけた。
「おっと、少し吸われすぎたようだな」
「……すみません」
「いい。牛鍋でも食えばすぐ血や肉になるだろうて!牛の乳もいいのだったな?」
「お乳自体、血液から作られますからね。でもそういう問題じゃないでしょ」
食べてすぐ血になるわけじゃないし。
それより、よろけた杏寿郎さんを支える際にぎゅっと掴んだ腰が気になる。
いつも行為の時に見ているし触っているけれど、その時は他のことを考える余裕がないから気が付かなかった。
「あの〜……杏寿郎さん、ちゃんとごはん食べてますか?」
「ん?むう……君がいなくなってから食が細くなってな。食べる量が減った。だから前よりは食べていないな」
「やっぱり。
この辺が少し細くなったな、と思って。ベルトの穴も、一個ずれましたね?」
杏寿郎さんのお腰がほっそりしたのだ。
「ベルトの穴はずれたが、君は俺がひょろいといいたいのか!?心外だ!
言っておくが君を抱く力は衰えておらんぞ!ふんぬっ!!」
支えていた手を離され、羽交締めにされる。首のあたりに負荷がかかりしめられる感覚。プロレスかな?プロレスだよねこれ。
「強い強い強いギブギブギブ!私の意識落とす気!?」
「朝緋は鬼だろう!この程度で根を上げるとは情けない!!」
「私を数字持ちの鬼と一緒にしないで?こちとら最弱よわよわ鬼よ」
弱いと言ったって炎柱の継子だ。そんじょそこらの鬼に遅れは取らないけどね。
ぺちぺち叩いて訴え続ければ、杏寿郎さんが私を解放し、そして。
「そうだな。抱くならこっちの抱く、だった」
真正面から抱き直して、袖口や合わせ目から手をスルスルと侵入させてきた。背中に這う手のひらに体がびくりと震える。
下腹部に当たる杏寿郎さんの腰の熱さも、私の女の部分を刺激してやまない。
「ちょっと、やめてください昼間ですよ」
ベシッ!おいたする手を振り払って逃れる。
私は外に出られないから部屋に閉じこもりきり。でもまだ日は高いはずなのだ。鬼となってなお狂わない私の体内時計がそう伝えている。
「この部屋は昼も夜のように暗いだろうに。それにいつでも俺に抱いてもらえるよう、常に君は襦袢姿ではないか」
襦袢とは着物の形をした下着のことだ。だから中身が透けるほど薄い。ベビードールか!ってくらい薄く体が透けるものもある。ま、今着ているのはそこまでじゃないからいい。
「抱いてもらえるようにって、貴方がこういうのしか用意してくれないんでしょ。ああ、隊服が着たい……」
「隊服は駄目だ。任務にも行かせない。日輪刀も持たせない。あずまを使って他の誰とも連絡を取らせない」
「徹底してるなあ」
御館様とも連絡を取らせてもらえないとは……。死んだと勘違いされたらどうするのかしら。まあ、その辺りはあずまや要も考えて話していそうだけど。
「それに様々な体液で汚れてしまうから仕方ないのだ。襦袢ならいくらあってもいいし、その都度捨ててしまえば良い」
様々な体液……血と汗と、あとは言いたくない。
というか襦袢とはいえ資源の無駄が過ぎる。なんともったいない!杏寿郎さんは私が関わることにはお金も湯水のように使うし、色んな感覚が麻痺してしまう。そういうのやめて欲しい。
「まあ、腹が減っては朝緋を襲えぬ、というからな」
「何その造語。襲わんでいい」
「襲う!!」
「ぎゃあ!?」
バリッ!襦袢を脱がされかけた。あっぶな!?大事なところが見えてしまうところだった。でも端が少し破けた……柱の力でやらないで。
着なおしても一部ボロボロで見窄らしくなってしまった。
「前より食べる量は減ったが、今はなるべく食べるようにしている。食べずにいると自分自身も動けなくなるので、普段は定食屋などで食べさせてもらっているよ」
そういえば、ここに戻ってきてから杏寿郎さんが食事しているところ見ていなかったな。
……定食屋か。私達の走りで行けばすぐそことはいえ、毎回行くの手間だよねぇ。
「味見はできませんが、お食事作りましょうか?たぶん長年作って来た通りに作れば、味もそう変わらず出来上がると思うんです」
足りぬ食材については仲良くしていただいている炎柱邸近隣住民の皆様に頼もう。こういう時、近所付き合いをしっかりしてあると助かる。
「朝緋の食事!!ぜひ頼みたい!!
……嬉しいなぁ、朝緋の食事がまた食べられるのだな。まずは芋の味噌汁が飲みたい!」
「はいはい」
食べる前から食べた後のような笑顔だ。すでにわっしょいが飛び出しそう。
この笑顔のためにもたくさん作らなくちゃね。