五周目 陸
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鬼である私に任務が言い渡された。
君はある意味、禰󠄀豆子より不思議な子だからね。鬼になっても隊士としてやっていけると信じているよ。
あれ?私ってそんなに不思議ちゃんなキャラだったかな?
そう書かれた御館様からの文を読みながら、任務先へと急ぎ向かう。
あれから何度か会った炭治郎によると、私の鬼としての気配はとても薄いそうで、ほっかむりやら頭巾をかぶってしまえば顔もわからず、角も隠して任務にあたれば問題ないとのこと。癒しの血鬼術を使う際には外さなくてはならないとはいえ、爪も手袋があるから隠せる。
んー、現代でいうフードを被った不審者か……。サングラスとマスクがあれば完璧じゃん。
私に与えられた仕事は二つ。
一つは単独で鬼を狩ること。もう一つは隊士の救助及び、重症者の手当てだ。
まあ、重症なら変な術で回復したところで、相手の意識は朦朧としてるだろうし、爪やら術やらそうバレやしないか。
と!楽観視している。
そして。
声は出ずとも呼吸法は使える。
呼吸とはすなわち生きることと同意だ。だから使えるに決まってるけど。全集中の呼吸は、その延長線。
炎の呼吸、玖ノ型 煉獄
鬼となったことで力が増している私は、つい出来心で。物は試しで。鬼に向かって奥義を放ってみた。
今までどんなに修行を積んでみても、終ぞ打ち放てなかった玖ノ型煉獄だ。
原理だけはよくわかってる。それを放つ時の心の持ちようも、何もかも習得済みだ。足りないのは私個人の体の大きさや性別からくる、基本的な力だけ。
魂ごと相手に全てぶつける必殺の斬撃。ごうごうと燃え盛る炎が、鬼を地獄へと落とさんと迫る。
ただし、杏寿郎さん達が放つ物よりちょっぴり火力が弱め。そこはご愛嬌ってやつね。
でも鬼になった今できるようになるなんて、皮肉染みてる。
「うわぁ!危ねぇ!!」
チッ、外した。
火力が弱いせいか狙いが定まりきっていなかったか、残念ながら鬼に当たることはなかった。
「貴様!同じ鬼だろう!?一瞬角が見えたぞ!!鬼のくせに鬼狩りとは!鬼狩りと同じ刀使うとはどういう了見だ!?」
攻撃しながら詰め寄ってくる鬼。まずいね、この鬼が私の事で騒ぎ続けたら、情報共有で無惨に居場所が割れてしまう。さっさと頸を落とさねば。
炎ノ呼吸、伍ノ型──
いや、
──玖ノ型 煉獄!!
私の斬撃から放たれる、二度目の青と赤の炎。
一度放てば力を使い果たしてしばらく動けなくなるほどの大技だ。
杏寿郎さんだって、あの槇寿朗さんだって一度に一回きり。
なのに、まさか連発出来るとは。鬼ってすごいや。
この時、私は生まれて初めて鬼となったことに感謝した。だってこれで体は煉獄を打つ時の感覚をしっかり覚えたもの。
まっ、鬼の始祖である鬼舞辻無惨は絶対に許さないけどね。感謝なんてしてあげない。
ただ……出来ても褒めてくれる人はいない。見てくださる杏寿郎さんはいない。
見て欲しかったな。一緒に喜んで欲しかった。
今までは一緒の任務にあんなにも行っていたのに。でもそれは私が人間で、貴方の継子だったからなだけ。今の私は人じゃない、鬼だ。
さよならの気持ちは残して来たはずなのに、未だ未練でいっぱいの自分が嫌になる。
それからしばらく。
数字持ちの鬼というわけではないけれど、相手はなかなかに強い鬼のようで。複数の隊士が投入された任務へと駆り出された。
可能なら討伐に参加を、基本は怪我人の治療にあたるようにとの話だ。
……重症の隊士もいるということか。姿を見られないようにしているとはいえ、少し不安だ。来る前はあんなにも楽観視していたのにね。
どのくらいの隊士の数がいるんだろう、三、四人かな。そう思い、到着してみれば。
なんとその数十名以上。
そしてそれよりも多いのは小さな鬼の数。
と言っても鬼は基本群れないでしょ?よくよく見たら、もとは一体の鬼ともいうべき、分身型の鬼のようだった。
鬼って、分裂もできるんだね、へー。
まさに隊士と鬼の芋洗い状態。さつまいもなら杏寿郎さんが喜ぶやつ。
一体一体は弱いだろうけど、大量に纏わりつかれたら邪魔だし、面倒くさそう。
本体をぶっ叩けば済む話だとはいえ、それをさせてもらえない状況なのも見たらわかる。
だって、鬼の分身達の攻撃は分散しすぎだし、大元の本体の鬼はだいだらぼっちみたいに巨大な体で広範囲全体攻撃を放って来てるもの。
鬼だし、私なら何とか……とも思うけど、あまり目立ちたくない。隊士の皆さん、協力して頑張れ。
というか柱はいないわけ?これだけの規模の任務なら、柱が投入されていてもおかしくな……って、いたー!冨岡さん、いたー!!
柱ならもっと目立つところにいて欲しい、そう思ったけど隊士をかばって怪我をしているようで、頭から血を流して目を閉じていた。死んではいない。鬼の目だとちゃんと生きているとわかる。
ええいこの鬼達邪魔だわ!
壱ノ型 不知火!!
夜に赤と青の炎がパッと咲く。冨岡さんの周りに群がる鬼を一掃し、その治療にあたる。あー、目が閉じててよかっ……手を掴まれた。血鬼術で怪我を治療中の、鋭く長い鬼の爪が露わとなった素手を。
「お前……、朝緋、か?」
あ、バレた。
さすが柱……というか、やっぱり普通はバレるよね。どんなに抜けている鬼殺隊士とかでも、一般人のそれよりは気配に聡いのだから。
鬼の姿だわ声は出ないわ頭巾はかぶっているわで怪しすぎる私だけれど、結果的に冨岡さんは私を見逃してくれた。他の人には、特に杏寿郎さんには言わないとも約束してくれた。
なんと頼もしい!鬼である禰󠄀豆子ちゃんを連れた炭治郎を鬼殺隊に推薦したのも冨岡さんらしいし、禰󠄀豆子ちゃんが人を食べてしまったら冨岡さんも切腹するくらいだからね。
この人も炭治郎と同じ、自分がいいと認めた鬼には多少寛容だ。
これが不死川さんだったら問答無用で頸刎ねだったろう。ぶるるっ。
君はある意味、禰󠄀豆子より不思議な子だからね。鬼になっても隊士としてやっていけると信じているよ。
あれ?私ってそんなに不思議ちゃんなキャラだったかな?
そう書かれた御館様からの文を読みながら、任務先へと急ぎ向かう。
あれから何度か会った炭治郎によると、私の鬼としての気配はとても薄いそうで、ほっかむりやら頭巾をかぶってしまえば顔もわからず、角も隠して任務にあたれば問題ないとのこと。癒しの血鬼術を使う際には外さなくてはならないとはいえ、爪も手袋があるから隠せる。
んー、現代でいうフードを被った不審者か……。サングラスとマスクがあれば完璧じゃん。
私に与えられた仕事は二つ。
一つは単独で鬼を狩ること。もう一つは隊士の救助及び、重症者の手当てだ。
まあ、重症なら変な術で回復したところで、相手の意識は朦朧としてるだろうし、爪やら術やらそうバレやしないか。
と!楽観視している。
そして。
声は出ずとも呼吸法は使える。
呼吸とはすなわち生きることと同意だ。だから使えるに決まってるけど。全集中の呼吸は、その延長線。
炎の呼吸、玖ノ型 煉獄
鬼となったことで力が増している私は、つい出来心で。物は試しで。鬼に向かって奥義を放ってみた。
今までどんなに修行を積んでみても、終ぞ打ち放てなかった玖ノ型煉獄だ。
原理だけはよくわかってる。それを放つ時の心の持ちようも、何もかも習得済みだ。足りないのは私個人の体の大きさや性別からくる、基本的な力だけ。
魂ごと相手に全てぶつける必殺の斬撃。ごうごうと燃え盛る炎が、鬼を地獄へと落とさんと迫る。
ただし、杏寿郎さん達が放つ物よりちょっぴり火力が弱め。そこはご愛嬌ってやつね。
でも鬼になった今できるようになるなんて、皮肉染みてる。
「うわぁ!危ねぇ!!」
チッ、外した。
火力が弱いせいか狙いが定まりきっていなかったか、残念ながら鬼に当たることはなかった。
「貴様!同じ鬼だろう!?一瞬角が見えたぞ!!鬼のくせに鬼狩りとは!鬼狩りと同じ刀使うとはどういう了見だ!?」
攻撃しながら詰め寄ってくる鬼。まずいね、この鬼が私の事で騒ぎ続けたら、情報共有で無惨に居場所が割れてしまう。さっさと頸を落とさねば。
炎ノ呼吸、伍ノ型──
いや、
──玖ノ型 煉獄!!
私の斬撃から放たれる、二度目の青と赤の炎。
一度放てば力を使い果たしてしばらく動けなくなるほどの大技だ。
杏寿郎さんだって、あの槇寿朗さんだって一度に一回きり。
なのに、まさか連発出来るとは。鬼ってすごいや。
この時、私は生まれて初めて鬼となったことに感謝した。だってこれで体は煉獄を打つ時の感覚をしっかり覚えたもの。
まっ、鬼の始祖である鬼舞辻無惨は絶対に許さないけどね。感謝なんてしてあげない。
ただ……出来ても褒めてくれる人はいない。見てくださる杏寿郎さんはいない。
見て欲しかったな。一緒に喜んで欲しかった。
今までは一緒の任務にあんなにも行っていたのに。でもそれは私が人間で、貴方の継子だったからなだけ。今の私は人じゃない、鬼だ。
さよならの気持ちは残して来たはずなのに、未だ未練でいっぱいの自分が嫌になる。
それからしばらく。
数字持ちの鬼というわけではないけれど、相手はなかなかに強い鬼のようで。複数の隊士が投入された任務へと駆り出された。
可能なら討伐に参加を、基本は怪我人の治療にあたるようにとの話だ。
……重症の隊士もいるということか。姿を見られないようにしているとはいえ、少し不安だ。来る前はあんなにも楽観視していたのにね。
どのくらいの隊士の数がいるんだろう、三、四人かな。そう思い、到着してみれば。
なんとその数十名以上。
そしてそれよりも多いのは小さな鬼の数。
と言っても鬼は基本群れないでしょ?よくよく見たら、もとは一体の鬼ともいうべき、分身型の鬼のようだった。
鬼って、分裂もできるんだね、へー。
まさに隊士と鬼の芋洗い状態。さつまいもなら杏寿郎さんが喜ぶやつ。
一体一体は弱いだろうけど、大量に纏わりつかれたら邪魔だし、面倒くさそう。
本体をぶっ叩けば済む話だとはいえ、それをさせてもらえない状況なのも見たらわかる。
だって、鬼の分身達の攻撃は分散しすぎだし、大元の本体の鬼はだいだらぼっちみたいに巨大な体で広範囲全体攻撃を放って来てるもの。
鬼だし、私なら何とか……とも思うけど、あまり目立ちたくない。隊士の皆さん、協力して頑張れ。
というか柱はいないわけ?これだけの規模の任務なら、柱が投入されていてもおかしくな……って、いたー!冨岡さん、いたー!!
柱ならもっと目立つところにいて欲しい、そう思ったけど隊士をかばって怪我をしているようで、頭から血を流して目を閉じていた。死んではいない。鬼の目だとちゃんと生きているとわかる。
ええいこの鬼達邪魔だわ!
壱ノ型 不知火!!
夜に赤と青の炎がパッと咲く。冨岡さんの周りに群がる鬼を一掃し、その治療にあたる。あー、目が閉じててよかっ……手を掴まれた。血鬼術で怪我を治療中の、鋭く長い鬼の爪が露わとなった素手を。
「お前……、朝緋、か?」
あ、バレた。
さすが柱……というか、やっぱり普通はバレるよね。どんなに抜けている鬼殺隊士とかでも、一般人のそれよりは気配に聡いのだから。
鬼の姿だわ声は出ないわ頭巾はかぶっているわで怪しすぎる私だけれど、結果的に冨岡さんは私を見逃してくれた。他の人には、特に杏寿郎さんには言わないとも約束してくれた。
なんと頼もしい!鬼である禰󠄀豆子ちゃんを連れた炭治郎を鬼殺隊に推薦したのも冨岡さんらしいし、禰󠄀豆子ちゃんが人を食べてしまったら冨岡さんも切腹するくらいだからね。
この人も炭治郎と同じ、自分がいいと認めた鬼には多少寛容だ。
これが不死川さんだったら問答無用で頸刎ねだったろう。ぶるるっ。