五周目 陸
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杏寿郎さんが日輪刀を構える。燃え上がる炎にも似た、闘気が燃え上がる。
その様子を見て、猗窩座が喜んでいる。鬼にして戦い続けたいと望んでいる。バトルジャンキーめ……。
「心を燃やせ、限界を超えろ、俺は炎柱!煉獄杏寿郎!!」
杏寿郎さんの全身に炎の呼吸が巡るのがわかった。
日輪刀は体の一部。その日輪刀へと全ての力が収束していく。熱い、熱い、燃えるような刀身。
杏寿郎さんに続け。援護しろ。決してこの人を死なせてはならない!
流れる涙など我が身に宿す熱き炎で蒸発させてしまえ。
燃やせ、燃やせ、心を燃やせ……!怒りも涙も消して私も力に変えろ……!!
でも、どうやって?どう援護すればいいの?
この一騎打ちに私はどう、割り込んでいけばいい?
「玖ノ型、煉獄!!」
「破壊殺、滅式!!」
杏寿郎さんが奥義を。猗窩座が全てを滅する為の攻撃を打ち放った。
ええい、考えている暇はない!
そうだ!猗窩座のあの腕を斬り落とせば……杏寿郎さんは腹を貫かれないで済む!!
パァン!!!!
煉獄と滅式がぶつかり合うその瞬間、私は飛び出した。
「炎の呼吸、壱ノ型 不知火……!」
煉獄による最強の炎の斬撃が猗窩座の体を斬り進む。それと同時に杏寿郎さんの体目掛けて向かってきた拳を思い切り斬り落とした。
やった!これで……!
けれど、そこはさすがの上弦で。斬り落とした腕が瞬きの間に復活した。
「っ!?一瞬で生えて……!!」
ならこの方法しかない。でないと、杏寿郎さんがまた死んでしまう。
杏寿郎さんと猗窩座の間に、身を滑り込ませ私は肉壁になった。
──グシャ
猗窩座の拳が私の体を貫く生々しい音。
「……朝緋…………、?」
「か、は……きょ、う寿朗……さ、ん」
杏寿郎さんが信じられないものを見たように目を見開いて、何が起きたのか、そして起きてしまったことを信じたくないと、全身で震えている。
「貴様!なんで飛び出してきた!?
うぐ、……稀血くさい!!クラクラする!なんだこの稀血は!?」
猗窩座が大量に浴びた私の稀血に酔っている。私の特殊な稀血に多少なりとも酔っている!!
それにしてもこの光景、前にも見た。ああそうか、『以前』私が死んだ時と同じなんだ。
あれは痛かった。傷口はひどく熱を持って熱いのに、全身がとても寒くて冷たくて。静かに近づいてくる死が怖かった。
今も痛い。怖い。どんどん寒くなってくる。
「ああああ!朝緋!朝緋ッ!!君、なんて事を!!」
杏寿郎さんの叫び声が聞こえる。杏寿郎さんは無事だろうか、そればかりが気になる。
そっと目を向けてみると、私のお腹に生えた猗窩座の腕が杏寿郎さんの脇腹を掠り、血が流れていた。
ああもう、私のお腹薄すぎる……。
おかげで杏寿郎さんの脇腹が傷ついてしまったじゃない。まあでも直撃は免れたからよしとしようか。
大事なのはこのあとだ。
私が死ぬからといって、今度こそはこの人に死を選ばせてはならない。
「杏寿郎さ、どんなことになろうとも……!生きなきゃ呪う、から……ねっ!
さあ今度こそ今度こそ今度こそ!斬って!斬って!!奴の頸を!斬って!!今しかない!!
斬って!炎柱・煉獄杏寿郎!!」
「……〜〜朝緋っ、すまん!!うぉおおおおおお!!」
右上から日輪刀を振りかぶる杏寿郎さん。鬼気迫るその表情に焦り、左腕で防ごうとする猗窩座。
刃が頸に届いた。メリメリ、頸を落とさんと食い込み進む炎。
「貴様らぁっ!させるか、頸は斬らせん!!」
「──反対側がガラ空きよ、猗窩座」
「何!?」
刃を携えているのが杏寿郎さんだけと思わないでよね。
血をゴボリと吐き出しながら、反対側から頸を落とさんと日輪刀を当てる。
どちらからも斬れば、頸が落ちるまでそうかからない!!
それを見た炭治郎と伊之助が加勢に入った。猗窩座が抵抗できぬように、手足を固定している。
「やめろ、やめろ!!!」
「朝緋の作ったこの機会、無駄にせん!うおおおあああああ!!」
「ああああああああ!!」
「頸落ちろぉぉぉお!!」
「私の!私達の炎は!闇夜も夜明けに変える!!鬼を照らせ!陽光燃ゆる焔で焼き尽くせ!!」
あと少しで陽が昇る。私達の炎が太陽に変わり、鬼を滅する。あと少し、あと少しなんだ!
持ち堪えろ!この鬼を倒すまで、私は死なない!離さない!!
──その時、猗窩座の青く黄色い目が、赤く禍々しいものにぐるりと変わった。
『血を注ぎ込める時を待っていた』
どくん。
死に向かって弱まりつつあった心臓が大きく跳ねた。
どくん。どくん。
膨大な量の、何かとてつもなく不快なものが体に流れ込んでくる。
どくん。どくん。どくん。
体が一気に違う存在に作り変えられる感覚。不快。不快。不快。痛い、気持ち悪い。何これ!?
「あ、ぐっ!あ、ああああああ゛!!!!」
私を貫く猗窩座の腕が、ボコリと膨張する。赤き肉塊の腕となって、そばにいた杏寿郎さんを、猗窩座を押さえつけていた炭治郎と伊之助を攻撃し、弾き飛ばした。
「ぐっ!?朝緋っ!?」
「うぐぉあっ!?」
「なんだ!?これは鬼舞辻無惨の匂い……っ」
そのまま、腕の持ち主の元へと戻る私の体。
猗窩座に抱えられている。放してほしいのに、抵抗したいのに。なのにぐったりして力が出ない、ひどく気怠くて動くのが億劫だ。
赤い肉塊の塊は元の猗窩座の腕となり、私の体から抜ける。でも、貫かれたはずの私の体の傷は赤黒い何かで覆われ、再生を始めているようだった。
これは、何?私、死ぬはずじゃなかったの。
「はぁ、はあ……もう遅い!この女はじきに鬼になる!!あの方の血をたっぷり流し込まれたからな!」
血!鬼舞辻無惨の血!!さっきの不快な感じが鬼舞辻無惨の……!!ああもう手遅れ。かくなる上は今もこの手に握る日輪刀で自分の頸を……!!
「何をしている?そんなことはさせんぞ。お前は二本目もあったな。もう不要だ」
「ぁ、っや、」
日輪刀を二本とも取られ、そして遠くへと投げ捨てられた。
「朝緋を離せ、……返せっ!!」
「そういうわけにいかん。それにここに置いていったところでこの女が鬼になるのは変えられん。鬼狩り共のお荷物が関の山だろうに」
「まだ彼女は鬼ではない!!はぁぁぁ、壱ノ型不知……、」
「なんだなんだ、奥義とやらのせいか?随分と動きが悪くなったな杏寿郎!柱が聞いて呆れる!!」
「う、くっ、朝緋……!!」
「……きょ、じゅろ、さ……ん、」
不知火は弾かれ、代わりに伸ばし合った腕。だけどもその手が交差することはなかった。
杏寿郎さんの指がかろうじて引っかかったのは、私の首のネックレスの細い鎖。
プツ、カシャン──
指輪の通った鎖だけが、杏寿郎さんの手元に残された。
杏寿郎さんが駄目なのだから、炭治郎も伊之助も追ってこれない。上弦の参の足が速すぎる。
遠くなる杏寿郎さん達の姿。
徐々に暗くなる視界。
やだ、やだ、やだよ。
鬼になんて、なりたくないよ。
私を杏寿郎さんの元へ帰して。
その様子を見て、猗窩座が喜んでいる。鬼にして戦い続けたいと望んでいる。バトルジャンキーめ……。
「心を燃やせ、限界を超えろ、俺は炎柱!煉獄杏寿郎!!」
杏寿郎さんの全身に炎の呼吸が巡るのがわかった。
日輪刀は体の一部。その日輪刀へと全ての力が収束していく。熱い、熱い、燃えるような刀身。
杏寿郎さんに続け。援護しろ。決してこの人を死なせてはならない!
流れる涙など我が身に宿す熱き炎で蒸発させてしまえ。
燃やせ、燃やせ、心を燃やせ……!怒りも涙も消して私も力に変えろ……!!
でも、どうやって?どう援護すればいいの?
この一騎打ちに私はどう、割り込んでいけばいい?
「玖ノ型、煉獄!!」
「破壊殺、滅式!!」
杏寿郎さんが奥義を。猗窩座が全てを滅する為の攻撃を打ち放った。
ええい、考えている暇はない!
そうだ!猗窩座のあの腕を斬り落とせば……杏寿郎さんは腹を貫かれないで済む!!
パァン!!!!
煉獄と滅式がぶつかり合うその瞬間、私は飛び出した。
「炎の呼吸、壱ノ型 不知火……!」
煉獄による最強の炎の斬撃が猗窩座の体を斬り進む。それと同時に杏寿郎さんの体目掛けて向かってきた拳を思い切り斬り落とした。
やった!これで……!
けれど、そこはさすがの上弦で。斬り落とした腕が瞬きの間に復活した。
「っ!?一瞬で生えて……!!」
ならこの方法しかない。でないと、杏寿郎さんがまた死んでしまう。
杏寿郎さんと猗窩座の間に、身を滑り込ませ私は肉壁になった。
──グシャ
猗窩座の拳が私の体を貫く生々しい音。
「……朝緋…………、?」
「か、は……きょ、う寿朗……さ、ん」
杏寿郎さんが信じられないものを見たように目を見開いて、何が起きたのか、そして起きてしまったことを信じたくないと、全身で震えている。
「貴様!なんで飛び出してきた!?
うぐ、……稀血くさい!!クラクラする!なんだこの稀血は!?」
猗窩座が大量に浴びた私の稀血に酔っている。私の特殊な稀血に多少なりとも酔っている!!
それにしてもこの光景、前にも見た。ああそうか、『以前』私が死んだ時と同じなんだ。
あれは痛かった。傷口はひどく熱を持って熱いのに、全身がとても寒くて冷たくて。静かに近づいてくる死が怖かった。
今も痛い。怖い。どんどん寒くなってくる。
「ああああ!朝緋!朝緋ッ!!君、なんて事を!!」
杏寿郎さんの叫び声が聞こえる。杏寿郎さんは無事だろうか、そればかりが気になる。
そっと目を向けてみると、私のお腹に生えた猗窩座の腕が杏寿郎さんの脇腹を掠り、血が流れていた。
ああもう、私のお腹薄すぎる……。
おかげで杏寿郎さんの脇腹が傷ついてしまったじゃない。まあでも直撃は免れたからよしとしようか。
大事なのはこのあとだ。
私が死ぬからといって、今度こそはこの人に死を選ばせてはならない。
「杏寿郎さ、どんなことになろうとも……!生きなきゃ呪う、から……ねっ!
さあ今度こそ今度こそ今度こそ!斬って!斬って!!奴の頸を!斬って!!今しかない!!
斬って!炎柱・煉獄杏寿郎!!」
「……〜〜朝緋っ、すまん!!うぉおおおおおお!!」
右上から日輪刀を振りかぶる杏寿郎さん。鬼気迫るその表情に焦り、左腕で防ごうとする猗窩座。
刃が頸に届いた。メリメリ、頸を落とさんと食い込み進む炎。
「貴様らぁっ!させるか、頸は斬らせん!!」
「──反対側がガラ空きよ、猗窩座」
「何!?」
刃を携えているのが杏寿郎さんだけと思わないでよね。
血をゴボリと吐き出しながら、反対側から頸を落とさんと日輪刀を当てる。
どちらからも斬れば、頸が落ちるまでそうかからない!!
それを見た炭治郎と伊之助が加勢に入った。猗窩座が抵抗できぬように、手足を固定している。
「やめろ、やめろ!!!」
「朝緋の作ったこの機会、無駄にせん!うおおおあああああ!!」
「ああああああああ!!」
「頸落ちろぉぉぉお!!」
「私の!私達の炎は!闇夜も夜明けに変える!!鬼を照らせ!陽光燃ゆる焔で焼き尽くせ!!」
あと少しで陽が昇る。私達の炎が太陽に変わり、鬼を滅する。あと少し、あと少しなんだ!
持ち堪えろ!この鬼を倒すまで、私は死なない!離さない!!
──その時、猗窩座の青く黄色い目が、赤く禍々しいものにぐるりと変わった。
『血を注ぎ込める時を待っていた』
どくん。
死に向かって弱まりつつあった心臓が大きく跳ねた。
どくん。どくん。
膨大な量の、何かとてつもなく不快なものが体に流れ込んでくる。
どくん。どくん。どくん。
体が一気に違う存在に作り変えられる感覚。不快。不快。不快。痛い、気持ち悪い。何これ!?
「あ、ぐっ!あ、ああああああ゛!!!!」
私を貫く猗窩座の腕が、ボコリと膨張する。赤き肉塊の腕となって、そばにいた杏寿郎さんを、猗窩座を押さえつけていた炭治郎と伊之助を攻撃し、弾き飛ばした。
「ぐっ!?朝緋っ!?」
「うぐぉあっ!?」
「なんだ!?これは鬼舞辻無惨の匂い……っ」
そのまま、腕の持ち主の元へと戻る私の体。
猗窩座に抱えられている。放してほしいのに、抵抗したいのに。なのにぐったりして力が出ない、ひどく気怠くて動くのが億劫だ。
赤い肉塊の塊は元の猗窩座の腕となり、私の体から抜ける。でも、貫かれたはずの私の体の傷は赤黒い何かで覆われ、再生を始めているようだった。
これは、何?私、死ぬはずじゃなかったの。
「はぁ、はあ……もう遅い!この女はじきに鬼になる!!あの方の血をたっぷり流し込まれたからな!」
血!鬼舞辻無惨の血!!さっきの不快な感じが鬼舞辻無惨の……!!ああもう手遅れ。かくなる上は今もこの手に握る日輪刀で自分の頸を……!!
「何をしている?そんなことはさせんぞ。お前は二本目もあったな。もう不要だ」
「ぁ、っや、」
日輪刀を二本とも取られ、そして遠くへと投げ捨てられた。
「朝緋を離せ、……返せっ!!」
「そういうわけにいかん。それにここに置いていったところでこの女が鬼になるのは変えられん。鬼狩り共のお荷物が関の山だろうに」
「まだ彼女は鬼ではない!!はぁぁぁ、壱ノ型不知……、」
「なんだなんだ、奥義とやらのせいか?随分と動きが悪くなったな杏寿郎!柱が聞いて呆れる!!」
「う、くっ、朝緋……!!」
「……きょ、じゅろ、さ……ん、」
不知火は弾かれ、代わりに伸ばし合った腕。だけどもその手が交差することはなかった。
杏寿郎さんの指がかろうじて引っかかったのは、私の首のネックレスの細い鎖。
プツ、カシャン──
指輪の通った鎖だけが、杏寿郎さんの手元に残された。
杏寿郎さんが駄目なのだから、炭治郎も伊之助も追ってこれない。上弦の参の足が速すぎる。
遠くなる杏寿郎さん達の姿。
徐々に暗くなる視界。
やだ、やだ、やだよ。
鬼になんて、なりたくないよ。
私を杏寿郎さんの元へ帰して。