五周目 陸
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『今まで』はこのあと、距離をとって戦っても無意味だと、杏寿郎さんは猗窩座に近づいて攻撃していた。
それはそうだ。鬼によっては火の玉を放ってきたり、雷を打ってきたりと小狡い戦法を取ってくる上に、私達は飛び道具でなく刀で敵を討つのだもの。近づかなくては倒せない。
そして今回もその目が猗窩座の足元へと一瞬向き、それから燃えるような目で私を見て小さく頷く。
刹那、私達は呼吸法による最速の走りで、猗窩座を挟み込んでいた。
炎の呼吸、弐ノ型 昇り炎天
炎の呼吸、参ノ型 気炎万象
鰐が大顎で噛み砕くように攻撃を仕掛ける。
防がれようとも止まらない。何度も何度も猗窩座の頸を狙って二人で斬りつける。
「ほおおおお、なんという反応速度だ。
二人揃うと素晴らしく息が合っている。お前達二人はやはり揃った状態で鬼になるべきなのだな。……鬼になれ!」
「「嫌だ」」
言葉すら揃う私達。
「鬼にならなければその素晴らしい剣技も何もかも失われていくのだぞ!悲しくはないのか」
「人間なら当然のことだ!だからこそ一所懸命に命を燃やして生きるのだ!!」
「そうよっ!よって私も師範も決して鬼には……ならないっっ!!」
杏寿郎さんの肩を足場に手をつき、素早く高く飛び上がる。空中一回転からの、弾丸のように懐に潜り込んでの壱ノ型不知火。
今度こそ、と思った。
「……ぐ、」
「なんだこの程度。やはり女の身では強さが一歩足りないことは確かだ。単体では弱い、弱すぎる……」
「朝緋を離せ!!」
またも胸ぐらを掴まれ、高く持ち上げられる。私に当たってはと思ったのか、杏寿郎さんの手も止まった。
じたばた、暴れても刀を振ってもほとんど傷にもならない。
「この戦いにおいてお前は邪魔だ。俺はあくまで杏寿郎と戦いたい。俺が鬼にするまでは退いていてもらおうか。それとも今すぐ鬼になるか?」
「……っどっちも嫌!」
鬼にされるなんてたまったものじゃない。女の底力みせてやる!
苦しい中、呼吸を腕に全集中。猗窩座の肩口に刃を食い込ませる。……ちっ、なんて固いの。
「しつこい虫ケラめ。お前が死にたがりだろうが何だろうが……」
「別に私っ死にたがりじゃないんだけど……っ」
グググ
刀を外される。外れた先から傷が塞がる。
胸ぐらを掴む手に更に力が入り、大きく振りかぶられた。
「俺は女を殺す気はないのだ!退いてろ!」
「!?──ッ!」
思い切り投げられ、今度こそ地面に激突。バウンドして転がる私の体。
「っ、大丈夫か朝緋!」
「弱者に構う暇はないぞ杏寿郎!」
「くっ、守るべき存在を放っておいて鬼を狩るなどという芸当、俺には出来ん!」
「いいやさせん!……俺に集中しろ」
私の元へ向かおうとした杏寿郎さんの行手を遮り、攻撃を仕掛ける猗窩座。拳と刀のぶつかり合いの音が耳に届く中、杏寿郎さんのその気持ちの一部が垣間見えた。
鬼を狩るより、何よりも優先されるのは──。
私や炭治郎達、仲間達を含めて、全ての人の命。しかしそこに、自身は含まれていない。
自分を大切にしない杏寿郎さんを守るために、私が動かなくては。
体はものすごく痛いけど受け身は取れた方だ。根性で立ち上がり激しい戦いの中へと飛び込む。
杏寿郎さんのためならば、何度だって、何度だって立ち上がる。
「はぁぁぁぁ!炎の呼吸、伍ノ型炎虎!!」
「朝緋!?君は休んでいろ!」
「絶対に嫌です!どんなに足手纏いになろうと私も戦う!!」
「っ、全く君って子は!!」
そんな言い方をしていても、その口角は上がっていた。
「かなりの速さと強さで地面に叩きつけたはずだが、まだ起き上がるとはなかなかにしぶとい女だ!」
「あの程度なら受け身取れるんで!さっきもそうだけど本当、殺す気はないようね!随分とまあ手加減してくれちゃって……さあ!」
手加減されようと、こちらは全身全霊全力で行かせてもらう。
杏寿郎さんと呼吸を合わせ日輪刀を思い切り振り抜けば、猗窩座が木々のある森の中へ吹っ飛んだ。
いや違う、自ら木々のある方へと飛んだのだ。
誘いに乗り森を駆け抜けて猗窩座の頸を狙って刃を振るったけれど、手首しか斬り落とせない。逆に勢いのある蹴りを繰り出されてしまった。
この人を傷つけさせるわけにいかない。消耗させるわけにいかない!
杏寿郎さんの体を狙うそれを、自ら飛び出して庇い防ぐ。
肋骨が悲鳴を上げる音がする。
「かはっ、」
「朝緋っ!!……ぐぅっ」
それでも勢いは殺せず、杏寿郎さんと私は二人まとめて吹っ飛んだ。
私がクッションの役割をしたことで、杏寿郎さんの負傷が少なく済んだだけよしとしたい。
「杏寿郎さん、大丈夫?」
「ああ、君こそ直撃したのでは……。大事ないか?」
返事代わりに伝わるかどうかわからないけれど、小さくサムズアップ。
これから追って出てくる脅威に備え、痛みなんて吹き飛ばすように立ち上がる。
鬼になれ、やってきた瞬間からそればかり繰り返す猗窩座の行手を杏寿郎さんの前、手を広げて止める。二人共に息を切らしているけど、私の方が満身創痍?そんなの知ったことか。
杏寿郎さんを前には出さない。
「言ったろう、俺は女は殺さんと。喰いもしないし喰ったこともないのだ。だから退け」
喰ったこともない?
そういえば、何故この鬼は女性を頑なに食べようとしないのだろう。
気がついたら疑問で口撃していた。
「──ねぇなんで女は殺さないの?
ねぇなんでなんで?女の肉は男より栄養があるんでしょ?強くなれるんでしょ?なのに食べないのはなんで?上弦ともあろう者が、女を食べたことがない?
ね、なんで?理由言ってみてよ?ほら、ほら、ほら」
「女を殺さぬ理由?……理由だと……?俺が女を食べない、理由……?」
猗窩座の様子がおかしい。俯いて、動きが止まる。
しめた。悩み始めたぞこやつ。
その理由も気になるけれど、このチャンスを逃す私ではない。
「水の呼吸、肆ノ型 打ち潮!雷の呼吸、弐ノ型 稲魂!!」
その頸、今度こそ落とす!
日輪刀を持ち替え、攻撃を仕掛けた。
それはそうだ。鬼によっては火の玉を放ってきたり、雷を打ってきたりと小狡い戦法を取ってくる上に、私達は飛び道具でなく刀で敵を討つのだもの。近づかなくては倒せない。
そして今回もその目が猗窩座の足元へと一瞬向き、それから燃えるような目で私を見て小さく頷く。
刹那、私達は呼吸法による最速の走りで、猗窩座を挟み込んでいた。
炎の呼吸、弐ノ型 昇り炎天
炎の呼吸、参ノ型 気炎万象
鰐が大顎で噛み砕くように攻撃を仕掛ける。
防がれようとも止まらない。何度も何度も猗窩座の頸を狙って二人で斬りつける。
「ほおおおお、なんという反応速度だ。
二人揃うと素晴らしく息が合っている。お前達二人はやはり揃った状態で鬼になるべきなのだな。……鬼になれ!」
「「嫌だ」」
言葉すら揃う私達。
「鬼にならなければその素晴らしい剣技も何もかも失われていくのだぞ!悲しくはないのか」
「人間なら当然のことだ!だからこそ一所懸命に命を燃やして生きるのだ!!」
「そうよっ!よって私も師範も決して鬼には……ならないっっ!!」
杏寿郎さんの肩を足場に手をつき、素早く高く飛び上がる。空中一回転からの、弾丸のように懐に潜り込んでの壱ノ型不知火。
今度こそ、と思った。
「……ぐ、」
「なんだこの程度。やはり女の身では強さが一歩足りないことは確かだ。単体では弱い、弱すぎる……」
「朝緋を離せ!!」
またも胸ぐらを掴まれ、高く持ち上げられる。私に当たってはと思ったのか、杏寿郎さんの手も止まった。
じたばた、暴れても刀を振ってもほとんど傷にもならない。
「この戦いにおいてお前は邪魔だ。俺はあくまで杏寿郎と戦いたい。俺が鬼にするまでは退いていてもらおうか。それとも今すぐ鬼になるか?」
「……っどっちも嫌!」
鬼にされるなんてたまったものじゃない。女の底力みせてやる!
苦しい中、呼吸を腕に全集中。猗窩座の肩口に刃を食い込ませる。……ちっ、なんて固いの。
「しつこい虫ケラめ。お前が死にたがりだろうが何だろうが……」
「別に私っ死にたがりじゃないんだけど……っ」
グググ
刀を外される。外れた先から傷が塞がる。
胸ぐらを掴む手に更に力が入り、大きく振りかぶられた。
「俺は女を殺す気はないのだ!退いてろ!」
「!?──ッ!」
思い切り投げられ、今度こそ地面に激突。バウンドして転がる私の体。
「っ、大丈夫か朝緋!」
「弱者に構う暇はないぞ杏寿郎!」
「くっ、守るべき存在を放っておいて鬼を狩るなどという芸当、俺には出来ん!」
「いいやさせん!……俺に集中しろ」
私の元へ向かおうとした杏寿郎さんの行手を遮り、攻撃を仕掛ける猗窩座。拳と刀のぶつかり合いの音が耳に届く中、杏寿郎さんのその気持ちの一部が垣間見えた。
鬼を狩るより、何よりも優先されるのは──。
私や炭治郎達、仲間達を含めて、全ての人の命。しかしそこに、自身は含まれていない。
自分を大切にしない杏寿郎さんを守るために、私が動かなくては。
体はものすごく痛いけど受け身は取れた方だ。根性で立ち上がり激しい戦いの中へと飛び込む。
杏寿郎さんのためならば、何度だって、何度だって立ち上がる。
「はぁぁぁぁ!炎の呼吸、伍ノ型炎虎!!」
「朝緋!?君は休んでいろ!」
「絶対に嫌です!どんなに足手纏いになろうと私も戦う!!」
「っ、全く君って子は!!」
そんな言い方をしていても、その口角は上がっていた。
「かなりの速さと強さで地面に叩きつけたはずだが、まだ起き上がるとはなかなかにしぶとい女だ!」
「あの程度なら受け身取れるんで!さっきもそうだけど本当、殺す気はないようね!随分とまあ手加減してくれちゃって……さあ!」
手加減されようと、こちらは全身全霊全力で行かせてもらう。
杏寿郎さんと呼吸を合わせ日輪刀を思い切り振り抜けば、猗窩座が木々のある森の中へ吹っ飛んだ。
いや違う、自ら木々のある方へと飛んだのだ。
誘いに乗り森を駆け抜けて猗窩座の頸を狙って刃を振るったけれど、手首しか斬り落とせない。逆に勢いのある蹴りを繰り出されてしまった。
この人を傷つけさせるわけにいかない。消耗させるわけにいかない!
杏寿郎さんの体を狙うそれを、自ら飛び出して庇い防ぐ。
肋骨が悲鳴を上げる音がする。
「かはっ、」
「朝緋っ!!……ぐぅっ」
それでも勢いは殺せず、杏寿郎さんと私は二人まとめて吹っ飛んだ。
私がクッションの役割をしたことで、杏寿郎さんの負傷が少なく済んだだけよしとしたい。
「杏寿郎さん、大丈夫?」
「ああ、君こそ直撃したのでは……。大事ないか?」
返事代わりに伝わるかどうかわからないけれど、小さくサムズアップ。
これから追って出てくる脅威に備え、痛みなんて吹き飛ばすように立ち上がる。
鬼になれ、やってきた瞬間からそればかり繰り返す猗窩座の行手を杏寿郎さんの前、手を広げて止める。二人共に息を切らしているけど、私の方が満身創痍?そんなの知ったことか。
杏寿郎さんを前には出さない。
「言ったろう、俺は女は殺さんと。喰いもしないし喰ったこともないのだ。だから退け」
喰ったこともない?
そういえば、何故この鬼は女性を頑なに食べようとしないのだろう。
気がついたら疑問で口撃していた。
「──ねぇなんで女は殺さないの?
ねぇなんでなんで?女の肉は男より栄養があるんでしょ?強くなれるんでしょ?なのに食べないのはなんで?上弦ともあろう者が、女を食べたことがない?
ね、なんで?理由言ってみてよ?ほら、ほら、ほら」
「女を殺さぬ理由?……理由だと……?俺が女を食べない、理由……?」
猗窩座の様子がおかしい。俯いて、動きが止まる。
しめた。悩み始めたぞこやつ。
その理由も気になるけれど、このチャンスを逃す私ではない。
「水の呼吸、肆ノ型 打ち潮!雷の呼吸、弐ノ型 稲魂!!」
その頸、今度こそ落とす!
日輪刀を持ち替え、攻撃を仕掛けた。