五周目 陸
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戦いが始まった。いつものあの戦いが。
「離して!離しなさい、炭治郎!」
「駄目です!俺は煉獄さんに貴女を頼まれました!この手を離すわけにいかない!!」
杏寿郎さんに投げ飛ばされた私を受け止めた炭治郎が、後ろから羽交い締めにする。
「離して、って言って……」
ゴチンッ!!
「ゔっ!?」
「朝緋さん!?」
暴れたら炭治郎の額に頭突いてしまった。
石頭である炭治郎 対 普通の頭の私、ファイッ!!……なんて、聞かなくてもどっちが強いかなんてわかるよね。
一瞬で気が遠のいた。炭治郎、本当に石頭すぎる……。
すぐに目が覚めたけど、起き上がると私の隣には炭治郎だけでなく伊之助もいた。
二人がかりで私が飛び出さないように押さえているとは……どれだけ信用されてないんだろう。まあ、飛び出せるタイミングがあれば飛び出す気満々ですが?
目の前では杏寿郎さんと猗窩座の激しい戦いが進む。
炭治郎と伊之助の二人はやっとの事だけどこの戦いを目で追えている。『前』はその速さを目で追えず悲観し、悔しそうにしていたからその成長ぶりは私にもうかがえた。
けれどだからこそだ。なまじ中途半端に二人は強くなったからだろう。上弦の強さ。柱の強さ。杏寿郎さんと猗窩座の戦いの凄まじさがその目に映ってしまった。
その格の違いへの畏れが、二人の手に震えとして現れていた。
選ばれたものしか鬼にはなれない。尚も誘う猗窩座の腕を斬り飛ばすも、さすがは上弦の鬼。一瞬で再生し、杏寿郎さんに次々と殴りかかる。
受け流して斬り結ぶ杏寿郎さんの至近距離、つぶやかれる声を私の耳が拾った。
「鬼にならぬのなら、死んでくれ杏寿郎。若く強いまま」
こんなところで死なず、若く強いままいてほしい。元気で笑顔でずっとずっとそばにいてほしい。そういう気持ちは私にもある。けれど鬼となるのは駄目だ。もう二度とそんな未来には進ませたくない。
……死んでほしくない。いつだって願いはその一つ。
「死なせない!
私も……今回は絶対絶対、参戦するんだから!ふんぬっ!!」
「あっ、朝緋さんっ」
「まだら!?」
疲れている中私を抑えている炭治郎と伊之助には悪いけど、この手、何がなんでも振り払わせてもらう。炭治郎の石頭と関節の柔らかい伊之助の手の動きには注意して、私は二人の腕から無理やり抜け出した。
「猗窩座!私も相手になってやる!」
日輪刀を手に、横から間に入るが如く、猗窩座に斬りかかる。
目の前に生えて出た刀に、杏寿郎さんも猗窩座も青筋立てて怒っている。
「女ァ!お前は引っ込んでろ!!」
「そうだ朝緋!君は来るな!!鬼にされてしまうだろう!?狙われているのだぞ!?」
高速で繰り広げられる拳と刀のぶつかり合いに自ら入り込み、まるで餅つきの返し手のように二人の隙間に攻撃をしかける。
「それ言ったら杏寿郎さんだって鬼に誘われてるじゃん昇り炎天っ!」
「俺は誘いを受けたのみ!朝緋は強制的に鬼にさせられようとしている不知火ッ!待機命れ「いは聞きませんっ!」聞きなさい!大体君は俺より弱いっ!!」
むかちーん!腹立つうううう!!
確かに私は『前回』杏寿郎さんを鬼にしてしまった!それは全部全部、私の弱さが招いたこと。体の弱さだけではなく、心の弱さも原因。
けどさ、改めて言うことないよね!?
「弱いだなんてっ!こちとらそんなことわかった上でやってんのよっ!!」
刀を振り下ろさんとする杏寿郎さんの動きを遮り、前に躍り出て猗窩座の拳を峰で受け流す。より一層、杏寿郎さんの声が怒気強めになった。
「俺の前に出るとはなんだ!上官命令を無視か!!継子失格!隊律違反!!」
継子失格?隊律違反?なんとでも言えばいい。私は私がほしい未来に進めばそれでいい。終わりよければ全てよし!
「誰も鬼にならないし誰も死なせない!望む未来に進む!!──っ邪魔しないで!!こいつは私の獲物なのっ!!」
俺が俺がと前に出ようとする杏寿郎さんを振り払い、刃を閃かせる。
「ナヌ!夫に向かって邪魔だと!?」
「ムキィ!貴方はまだ私の夫じゃないって言ってるでしょ!!」
「夫だ!妻だ!撤回しろ!それに奴にとって獲物は君だと言って……、!?」
言い争いながら、技を放つこと数回。
痺れを切らした猗窩座が空中へと飛び上がり、拳による衝撃派を放ってきた。
杏寿郎さんが素早く前に出て、刀で受け流してくれたからなんとか当たらずに済んだ。助かったけれど、同時に自分の弱さが浮き彫りになって悔しい。
「もういいまとめて相手してやる!!女、怪我をしても文句は言うなよ……!!」
破壊殺 空式
「ぐっ!?」
「朝緋っ」
「……大丈夫です!!」
流星群のように降り注ぐ拳の弾丸。
一つ一つがなんと重い攻撃だろう。一発受けただけで、体が吹っ飛んだ。
こんな遠距離攻撃を刀で受け止め続けていたら、日輪刀が折れてしまう。
『折ったら殺すぞ』と、一瞬だけ脳裏によぎった自らの刀鍛冶のことは忘れておこう。
「炎の呼吸、肆ノ型 盛炎のうねりっ!」
杏寿郎さんが肆ノ型で空式を絡め取り、相殺している。
私に向かってきた分はというと。
「炎の呼吸──、」
足に呼吸を集中させ、思い切り地を蹴って走り飛ぶ。全て素早く動いて避けていれば、猗窩座は私の事なんてどうでもいいのか、杏寿郎さんの方に集中攻撃を仕掛け出した。
けど、炎の呼吸、の続きがここで終わりなわけないでしょ?
「走りながら不知火っ」
炎の呼吸最速のこの技は、色々と応用が効く。
烈火のごときスピードで猗窩座の背後を取り高く舞い上がって斬りつければ、私の炎がその頸を燃やさんとうなじに吸い込まれてゆく。
「やった、頸に届……」
「お前の殺意にまみれた闘志くらい見えている!」
「あぐっ!?」
胸ぐらを掴まれての容赦ない投げ技が炸裂する。
しかし、鬼にしなくてはならないというのもある為か、扱いは比較的優しいものだった。
「朝緋っ!!」
私が地面と激突する前に、杏寿郎さんが受け止めてくださった。なんと不甲斐ない。
そのまま二人で、目の前の敵を見据える。
「せっかく良い気分で杏寿郎と戦っていたのが台無しだ。だが女……お前も速いことだけは確かだ、褒めてやろう。褒めてやるからさっさと退け」
「褒めてくれてありがとう?でも退きません。まとめて相手にしてくれる、ってのは嘘だったわけ?」
「基本的に俺は女には手を出さん!今回はうろちょろするお前が悪いだけだ」
「んまー、男尊女卑な鬼だこと」
軽口を言い合いながらも刀を構える手はブレず、猗窩座を睨みつける。
攻撃の激しさで荒れた大地に、鬼殺隊士と鬼。二つを別つような砂煙が舞った。
「離して!離しなさい、炭治郎!」
「駄目です!俺は煉獄さんに貴女を頼まれました!この手を離すわけにいかない!!」
杏寿郎さんに投げ飛ばされた私を受け止めた炭治郎が、後ろから羽交い締めにする。
「離して、って言って……」
ゴチンッ!!
「ゔっ!?」
「朝緋さん!?」
暴れたら炭治郎の額に頭突いてしまった。
石頭である炭治郎 対 普通の頭の私、ファイッ!!……なんて、聞かなくてもどっちが強いかなんてわかるよね。
一瞬で気が遠のいた。炭治郎、本当に石頭すぎる……。
すぐに目が覚めたけど、起き上がると私の隣には炭治郎だけでなく伊之助もいた。
二人がかりで私が飛び出さないように押さえているとは……どれだけ信用されてないんだろう。まあ、飛び出せるタイミングがあれば飛び出す気満々ですが?
目の前では杏寿郎さんと猗窩座の激しい戦いが進む。
炭治郎と伊之助の二人はやっとの事だけどこの戦いを目で追えている。『前』はその速さを目で追えず悲観し、悔しそうにしていたからその成長ぶりは私にもうかがえた。
けれどだからこそだ。なまじ中途半端に二人は強くなったからだろう。上弦の強さ。柱の強さ。杏寿郎さんと猗窩座の戦いの凄まじさがその目に映ってしまった。
その格の違いへの畏れが、二人の手に震えとして現れていた。
選ばれたものしか鬼にはなれない。尚も誘う猗窩座の腕を斬り飛ばすも、さすがは上弦の鬼。一瞬で再生し、杏寿郎さんに次々と殴りかかる。
受け流して斬り結ぶ杏寿郎さんの至近距離、つぶやかれる声を私の耳が拾った。
「鬼にならぬのなら、死んでくれ杏寿郎。若く強いまま」
こんなところで死なず、若く強いままいてほしい。元気で笑顔でずっとずっとそばにいてほしい。そういう気持ちは私にもある。けれど鬼となるのは駄目だ。もう二度とそんな未来には進ませたくない。
……死んでほしくない。いつだって願いはその一つ。
「死なせない!
私も……今回は絶対絶対、参戦するんだから!ふんぬっ!!」
「あっ、朝緋さんっ」
「まだら!?」
疲れている中私を抑えている炭治郎と伊之助には悪いけど、この手、何がなんでも振り払わせてもらう。炭治郎の石頭と関節の柔らかい伊之助の手の動きには注意して、私は二人の腕から無理やり抜け出した。
「猗窩座!私も相手になってやる!」
日輪刀を手に、横から間に入るが如く、猗窩座に斬りかかる。
目の前に生えて出た刀に、杏寿郎さんも猗窩座も青筋立てて怒っている。
「女ァ!お前は引っ込んでろ!!」
「そうだ朝緋!君は来るな!!鬼にされてしまうだろう!?狙われているのだぞ!?」
高速で繰り広げられる拳と刀のぶつかり合いに自ら入り込み、まるで餅つきの返し手のように二人の隙間に攻撃をしかける。
「それ言ったら杏寿郎さんだって鬼に誘われてるじゃん昇り炎天っ!」
「俺は誘いを受けたのみ!朝緋は強制的に鬼にさせられようとしている不知火ッ!待機命れ「いは聞きませんっ!」聞きなさい!大体君は俺より弱いっ!!」
むかちーん!腹立つうううう!!
確かに私は『前回』杏寿郎さんを鬼にしてしまった!それは全部全部、私の弱さが招いたこと。体の弱さだけではなく、心の弱さも原因。
けどさ、改めて言うことないよね!?
「弱いだなんてっ!こちとらそんなことわかった上でやってんのよっ!!」
刀を振り下ろさんとする杏寿郎さんの動きを遮り、前に躍り出て猗窩座の拳を峰で受け流す。より一層、杏寿郎さんの声が怒気強めになった。
「俺の前に出るとはなんだ!上官命令を無視か!!継子失格!隊律違反!!」
継子失格?隊律違反?なんとでも言えばいい。私は私がほしい未来に進めばそれでいい。終わりよければ全てよし!
「誰も鬼にならないし誰も死なせない!望む未来に進む!!──っ邪魔しないで!!こいつは私の獲物なのっ!!」
俺が俺がと前に出ようとする杏寿郎さんを振り払い、刃を閃かせる。
「ナヌ!夫に向かって邪魔だと!?」
「ムキィ!貴方はまだ私の夫じゃないって言ってるでしょ!!」
「夫だ!妻だ!撤回しろ!それに奴にとって獲物は君だと言って……、!?」
言い争いながら、技を放つこと数回。
痺れを切らした猗窩座が空中へと飛び上がり、拳による衝撃派を放ってきた。
杏寿郎さんが素早く前に出て、刀で受け流してくれたからなんとか当たらずに済んだ。助かったけれど、同時に自分の弱さが浮き彫りになって悔しい。
「もういいまとめて相手してやる!!女、怪我をしても文句は言うなよ……!!」
破壊殺 空式
「ぐっ!?」
「朝緋っ」
「……大丈夫です!!」
流星群のように降り注ぐ拳の弾丸。
一つ一つがなんと重い攻撃だろう。一発受けただけで、体が吹っ飛んだ。
こんな遠距離攻撃を刀で受け止め続けていたら、日輪刀が折れてしまう。
『折ったら殺すぞ』と、一瞬だけ脳裏によぎった自らの刀鍛冶のことは忘れておこう。
「炎の呼吸、肆ノ型 盛炎のうねりっ!」
杏寿郎さんが肆ノ型で空式を絡め取り、相殺している。
私に向かってきた分はというと。
「炎の呼吸──、」
足に呼吸を集中させ、思い切り地を蹴って走り飛ぶ。全て素早く動いて避けていれば、猗窩座は私の事なんてどうでもいいのか、杏寿郎さんの方に集中攻撃を仕掛け出した。
けど、炎の呼吸、の続きがここで終わりなわけないでしょ?
「走りながら不知火っ」
炎の呼吸最速のこの技は、色々と応用が効く。
烈火のごときスピードで猗窩座の背後を取り高く舞い上がって斬りつければ、私の炎がその頸を燃やさんとうなじに吸い込まれてゆく。
「やった、頸に届……」
「お前の殺意にまみれた闘志くらい見えている!」
「あぐっ!?」
胸ぐらを掴まれての容赦ない投げ技が炸裂する。
しかし、鬼にしなくてはならないというのもある為か、扱いは比較的優しいものだった。
「朝緋っ!!」
私が地面と激突する前に、杏寿郎さんが受け止めてくださった。なんと不甲斐ない。
そのまま二人で、目の前の敵を見据える。
「せっかく良い気分で杏寿郎と戦っていたのが台無しだ。だが女……お前も速いことだけは確かだ、褒めてやろう。褒めてやるからさっさと退け」
「褒めてくれてありがとう?でも退きません。まとめて相手にしてくれる、ってのは嘘だったわけ?」
「基本的に俺は女には手を出さん!今回はうろちょろするお前が悪いだけだ」
「んまー、男尊女卑な鬼だこと」
軽口を言い合いながらも刀を構える手はブレず、猗窩座を睨みつける。
攻撃の激しさで荒れた大地に、鬼殺隊士と鬼。二つを別つような砂煙が舞った。