五周目 伍
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杏寿郎さんの声が聞こえた。
「朝緋!朝緋どこだ!いたら返事をしてくれ!!」
「!?杏寿郎さーん!こっちこっちー!!」
悲痛にも聞こえる呼び声に、こりゃ早く顔を見せないとまずい!と感じた。
列車の影からひょこ、と顔を出すと同時、彼に抱きしめられる。わあ、目の前にまで来てたのね。
「わぷっ!杏寿郎さ、師範?」
「師範でなくていい!!……ああ、よかった!無事だなっ!!」
隙間なくぎゅうぎゅうに抱きしめたまま、高い高ーいの、くるくるメリーゴーランドが始まる。うっ……目がまわる!
今一度強く、強く抱きしめてから下された。
「禰󠄀豆子ちゃんと善逸、それに乗客達は?」
「みな無事だ。乗客も誰一人として死んでいない。怪我人は多いがな」
「そう……よかったぁ」
またも一息。こんなにしっちゃかめっちゃかに脱線した列車事故にまでなったんだもの。必ず死者ゼロ、となるとは限らない。けれど乗客誰一人として亡くなっていないと聞いて安心した。
「それより君だ。鬼に狙われていたとの話だったし、いると思った場所に見当たらなかったから心配した……」
「ん、ごめんなさい」
何度抱きしめる気なのだろう。
まるでご自身の心の安定剤か何かだというように、長く長く息を吐き出しながら、またも抱きしめて私の頭をゆっくりゆっくり撫でていく。
私からも杏寿郎さんの背に腕を回し、私はここにいるよ。と全身で伝える。
鼓動が聞こえる。あったかい。私にとっても、貴方は心の安定剤。一緒にいると安心できる。
抱擁から顔を離し、杏寿郎さんが頬に手を置いて顔を覗き込んでくる。
「顔をもっとよく見せてくれ」
「ええ〜やだあ〜……あまり見ないで欲しいなぁ。戦いで傷だらけの埃だらけだもの……」
「この目でしっかりと無事を確かめたいのだ」
顔をまじまじと見られたのは一瞬のこと。
唇が重なり合って。
そのあと、薄く開いた口から舌先を捩じ込まれた。
「や、あ……、ンン、ふ、……」
「ン……、…………朝緋、ハぁ、……、」
じゅる、口内を念入りになぞりあげ、優しく甘く、私を愛してくる。太陽というよりは蜂蜜の、甘さを増した瞳がそこにあった。
「ん……、目じゃなくてお口で確かめてくるだなんて。TPOを考えてください」
「朝緋がよく言うてぴおだな。大丈夫だ、時と場所と場合は考えているよ。ここはぎりぎり竈門少年からしか見えん。その竈門少年も、今は顔をあっち側に背けている」
「それは気を利かせて見ないようにしてくれているからで……わあ!潰れちゃう〜〜」
体重をかけて覆い被さりながら、潰れるほどに抱きしめてくる。いや、ほんと潰れてる。笑い事じゃない。
中身が出てしまいそうで、顔が引き攣ってしまった。
「俺の腕の中から逃げていかぬよう、潰している!
大丈夫だ!潰れて不細工な顔になろうと俺が愛してあげよう!いや、潰れても朝緋はかわいいぞ!!」
ありがとう、でも潰さないで。苦しいのでギブアップさせて欲しい。
それにまだこの後、戦うはずなのだから。
「はあー……こんなにかわいいのだから、鬼に狙われても仕方ないなあ。よーしよしよし」
これでもかという愛の感じられる頬擦りを経て、頭を高速でぐりぐりわしゃわしゃ撫でられる。
よーしよしよし、だなんて、貴方は●ツゴロウ氏か。
それより、柱の力でやられたら頭がはげそう。毛根までなくなって、一生坊主にだなんてなったらどうしよう。
この時代にも鬘はあるけど、物は良くない。
「それは私のことを好きでいてくれる杏寿郎さんだから思うことなんだよ。
あんまりそうやって撫で続けないでよ。摩擦で発火しそう……」
「何!?朝緋が燃えてしまったら大変だ!!俺の炎で燃えるのは、鬼だけでいい!!」
やめてもらったので、発火というかはげずに済んだ。
「俺もいつもいつでも愛を伝えたい。君が大好きだ。任務が終わったらいっぱいいっぱい、愛してあげような」
「任務後の話は、もっと落ち着いてからお願いしたいな」
変なフラグ立っちゃうもの。
「む、そうか。……そうだな。
まだ夜だ。鬼がいつなん時、稀血の匂いをさせた君を狙いに来るかわからぬものな」
ほとんど怪我はしてないけれど、擦り傷からの出血は免れていない。嗅覚の鋭い個体の鬼には、稀血だと簡単にバレてしまう。
「ああそうだ。狙われていたというその理由を聞かねばな!稀血以外に一体どんな理由があって……」
「師範、その話はあとにした方が良さそうです」
「……何?」
名前の呼び方を変え、日輪刀の塚に手をやる。
私の纏うものが真剣なものに変わったからか、杏寿郎さんも柱の顔へ戻った。
──来る。
私の愛しい愛しい、仇が来る。(殺したい殺したい
会いたい、けれど会いたくない私達の宿敵。
『何度』も経験したからだろうか。柱である杏寿郎さん以上に、私にはその気配が近づいてくるのが読み取れた。
上弦の参、猗窩座が来る。
「朝緋!朝緋どこだ!いたら返事をしてくれ!!」
「!?杏寿郎さーん!こっちこっちー!!」
悲痛にも聞こえる呼び声に、こりゃ早く顔を見せないとまずい!と感じた。
列車の影からひょこ、と顔を出すと同時、彼に抱きしめられる。わあ、目の前にまで来てたのね。
「わぷっ!杏寿郎さ、師範?」
「師範でなくていい!!……ああ、よかった!無事だなっ!!」
隙間なくぎゅうぎゅうに抱きしめたまま、高い高ーいの、くるくるメリーゴーランドが始まる。うっ……目がまわる!
今一度強く、強く抱きしめてから下された。
「禰󠄀豆子ちゃんと善逸、それに乗客達は?」
「みな無事だ。乗客も誰一人として死んでいない。怪我人は多いがな」
「そう……よかったぁ」
またも一息。こんなにしっちゃかめっちゃかに脱線した列車事故にまでなったんだもの。必ず死者ゼロ、となるとは限らない。けれど乗客誰一人として亡くなっていないと聞いて安心した。
「それより君だ。鬼に狙われていたとの話だったし、いると思った場所に見当たらなかったから心配した……」
「ん、ごめんなさい」
何度抱きしめる気なのだろう。
まるでご自身の心の安定剤か何かだというように、長く長く息を吐き出しながら、またも抱きしめて私の頭をゆっくりゆっくり撫でていく。
私からも杏寿郎さんの背に腕を回し、私はここにいるよ。と全身で伝える。
鼓動が聞こえる。あったかい。私にとっても、貴方は心の安定剤。一緒にいると安心できる。
抱擁から顔を離し、杏寿郎さんが頬に手を置いて顔を覗き込んでくる。
「顔をもっとよく見せてくれ」
「ええ〜やだあ〜……あまり見ないで欲しいなぁ。戦いで傷だらけの埃だらけだもの……」
「この目でしっかりと無事を確かめたいのだ」
顔をまじまじと見られたのは一瞬のこと。
唇が重なり合って。
そのあと、薄く開いた口から舌先を捩じ込まれた。
「や、あ……、ンン、ふ、……」
「ン……、…………朝緋、ハぁ、……、」
じゅる、口内を念入りになぞりあげ、優しく甘く、私を愛してくる。太陽というよりは蜂蜜の、甘さを増した瞳がそこにあった。
「ん……、目じゃなくてお口で確かめてくるだなんて。TPOを考えてください」
「朝緋がよく言うてぴおだな。大丈夫だ、時と場所と場合は考えているよ。ここはぎりぎり竈門少年からしか見えん。その竈門少年も、今は顔をあっち側に背けている」
「それは気を利かせて見ないようにしてくれているからで……わあ!潰れちゃう〜〜」
体重をかけて覆い被さりながら、潰れるほどに抱きしめてくる。いや、ほんと潰れてる。笑い事じゃない。
中身が出てしまいそうで、顔が引き攣ってしまった。
「俺の腕の中から逃げていかぬよう、潰している!
大丈夫だ!潰れて不細工な顔になろうと俺が愛してあげよう!いや、潰れても朝緋はかわいいぞ!!」
ありがとう、でも潰さないで。苦しいのでギブアップさせて欲しい。
それにまだこの後、戦うはずなのだから。
「はあー……こんなにかわいいのだから、鬼に狙われても仕方ないなあ。よーしよしよし」
これでもかという愛の感じられる頬擦りを経て、頭を高速でぐりぐりわしゃわしゃ撫でられる。
よーしよしよし、だなんて、貴方は●ツゴロウ氏か。
それより、柱の力でやられたら頭がはげそう。毛根までなくなって、一生坊主にだなんてなったらどうしよう。
この時代にも鬘はあるけど、物は良くない。
「それは私のことを好きでいてくれる杏寿郎さんだから思うことなんだよ。
あんまりそうやって撫で続けないでよ。摩擦で発火しそう……」
「何!?朝緋が燃えてしまったら大変だ!!俺の炎で燃えるのは、鬼だけでいい!!」
やめてもらったので、発火というかはげずに済んだ。
「俺もいつもいつでも愛を伝えたい。君が大好きだ。任務が終わったらいっぱいいっぱい、愛してあげような」
「任務後の話は、もっと落ち着いてからお願いしたいな」
変なフラグ立っちゃうもの。
「む、そうか。……そうだな。
まだ夜だ。鬼がいつなん時、稀血の匂いをさせた君を狙いに来るかわからぬものな」
ほとんど怪我はしてないけれど、擦り傷からの出血は免れていない。嗅覚の鋭い個体の鬼には、稀血だと簡単にバレてしまう。
「ああそうだ。狙われていたというその理由を聞かねばな!稀血以外に一体どんな理由があって……」
「師範、その話はあとにした方が良さそうです」
「……何?」
名前の呼び方を変え、日輪刀の塚に手をやる。
私の纏うものが真剣なものに変わったからか、杏寿郎さんも柱の顔へ戻った。
──来る。
私の愛しい愛しい、仇が来る。(殺したい殺したい
会いたい、けれど会いたくない私達の宿敵。
『何度』も経験したからだろうか。柱である杏寿郎さん以上に、私にはその気配が近づいてくるのが読み取れた。
上弦の参、猗窩座が来る。