五周目 伍
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その瞬間から頭がふわふわしていた。
「ん、ん……、んんぅ!?」
温かいもので内側をなぞられる感覚。
唇に、口内に違和感を感じて目を開けると、視界いっぱいに杏寿郎さんの顔がドアップで映し出されていた。
キスされてる!!
夢の世界に落ちた瞬間、口付けされてるってどんな夢!?これが私の願望?幸せな夢?
だとしたら私ってかなりど助平なのでは?
「ん、ふ……はぁ、」
しばらくそうされていたのか、息が切れて酸欠で頭がふわふわしていたようだ。腰も砕けかけて立っているのがやっと。
なのに杏寿郎さんは息一つ乱れていない。私の後頭部と腰をがっちり押さえて食らいつき、私の様子を楽しんでいる。いつもそうだ。全てがギリギリ状態の私と、余裕綽々の杏寿郎さん。狡い、狡すぎる。
その手が腰の部分から服の中に入り、背中を弄り始めた。背筋をなぞられる度に、ぞわぞわしてきてたまらない。
「きょ、じゅろさん、ちょっと……」
「ん、ああ。すまん。君の方が美味しそうに見えたのでな。せっかくの朝食を焦がしては大変だ」
「え……」
少しだけ残念そうにしながら離れていく杏寿郎さん。抱擁とキスで杏寿郎さんしか見えていなかった世界に気がつく。
令和や平成によくある、リビングやダイニングだ。
そして杏寿郎さんの言葉。朝食の意味はすぐわかった。私のすぐ横から美味しそうな匂いがしていた。ベーコンエッグにウインナー……?
はっ、焦げなくてもこのままじゃ半熟でなくなってしまう。慌てて火を止める。
私は目玉焼きは半熟じゃないと許せない。
それにしても何、この夢。私の日輪刀はどこ?
夢だとわかっているのに、手にも腰にも日輪刀は現れず、隊服に変わることもない。
今は脱いでいるが、キッチンに立つに相応しいエプロン姿だった。
食べ物があると悩んでいても食べてしまう食い意地の張った私は、並べた朝食を口に入れながら考える。
朝食を作っていたというわりにここには包丁もない。
刃物の類が一つもないのだ。鋭いものも凶器になりそうなものも何もない。フォークもナイフもなく、箸で首を突いたとしても頸斬りには至らないだろう。痛い思いをして終わり。
これでは目覚める条件をクリアできない。してやられた感がすごい。
早く起きないといけないのに。
眉間を指で伸ばされた。同時に顔を真正面から覗かれる。
「ひゃっ、え?何?」
「難しい顔ばかりしている。朝緋、何を考えているんだ?俺の前で余計な事は考えなくていい」
俺の事だけ考えていてくれ、とその目は懇願していて。
けれどその目の奥に宿るは獣のように猛り狂う、熱い炎の視線。それを隠すように甘くとろりとした眼差しが覆っている。
「おいで」
おいで、じゃない。手招きどころか、私の腰を抱いて持ち上げ、どこかに運ぼうとしている。
「ちょ、ぇ、杏寿郎さ……どこ連れてく気なのっ」
リビングの扉を開け、違う部屋に連れ込まれる。二人が普段眠っているのであろう、大きなベッドが占領する部屋。
あれ、この部屋はどこかで見たことが……。
「あっ」
ボスッ!ベッドの上に投げられた。
わあ〜いふかふか〜気持ちいい〜……じゃなくて!!
「全く……どこって寝室に決まってるだろうに。今日は休みだからな。ならばする事は一つ」
ベッドスプリングがギシリと軋む音だけで、ぞくりと肌が粟立ちそう。
ベッドに乗り、私を見下ろす杏寿郎さんは目だけじゃない。すでに獣と化していて、炎の呼吸に似た荒い息を吐き出している。シャツの釦を外し、眩しい上半身を魅せつけてくる。
これはマズいぞ。そう思って逃げようとしても、足首が。腰が捕まえられて逃げられない。
ここは杏寿郎さんの檻の中。
「睡眠欲、そして食欲が満たされたなら、次はもう一つの欲を満たさねば。食前の分はお預けにさせられたから俺は飢えている……とてもとても飢えている」
そのまま覆い被さってきて動けなくされた。身動ぎする隙間すら皆無で。
私の首筋や耳に唇を寄せてちぅちぅ吸ったり、舐めたりを繰り返して来る。
「ん、んぅ、……ちょっと待っ、て……」
「待つわけがなかろう。
……服も下着もだが、ネックレスに通ったこの指輪が邪魔だな、誰からのものだ?」
軽く起き上がった杏寿郎さんが、私の首に光る指輪を摘んで憎らしげに引っ張る。やだ、そんなに力を入れたら千切れちゃう……。
「指輪は、駄目……っ引っ張らないで!凄く大切なものなの!!」
「『俺』が新しく贈ると言ってもか!!」
「それだけはやめて……」
だって『貴方』がくれたものだから。
貰うまでにあった事。貰った時の事。貰ってそれからあった様々な思い出。
杏寿郎さんから与えられる愛の数々。
その全てが煌めく一つの金属の輪っかに込められている。
「ん、ん……、んんぅ!?」
温かいもので内側をなぞられる感覚。
唇に、口内に違和感を感じて目を開けると、視界いっぱいに杏寿郎さんの顔がドアップで映し出されていた。
キスされてる!!
夢の世界に落ちた瞬間、口付けされてるってどんな夢!?これが私の願望?幸せな夢?
だとしたら私ってかなりど助平なのでは?
「ん、ふ……はぁ、」
しばらくそうされていたのか、息が切れて酸欠で頭がふわふわしていたようだ。腰も砕けかけて立っているのがやっと。
なのに杏寿郎さんは息一つ乱れていない。私の後頭部と腰をがっちり押さえて食らいつき、私の様子を楽しんでいる。いつもそうだ。全てがギリギリ状態の私と、余裕綽々の杏寿郎さん。狡い、狡すぎる。
その手が腰の部分から服の中に入り、背中を弄り始めた。背筋をなぞられる度に、ぞわぞわしてきてたまらない。
「きょ、じゅろさん、ちょっと……」
「ん、ああ。すまん。君の方が美味しそうに見えたのでな。せっかくの朝食を焦がしては大変だ」
「え……」
少しだけ残念そうにしながら離れていく杏寿郎さん。抱擁とキスで杏寿郎さんしか見えていなかった世界に気がつく。
令和や平成によくある、リビングやダイニングだ。
そして杏寿郎さんの言葉。朝食の意味はすぐわかった。私のすぐ横から美味しそうな匂いがしていた。ベーコンエッグにウインナー……?
はっ、焦げなくてもこのままじゃ半熟でなくなってしまう。慌てて火を止める。
私は目玉焼きは半熟じゃないと許せない。
それにしても何、この夢。私の日輪刀はどこ?
夢だとわかっているのに、手にも腰にも日輪刀は現れず、隊服に変わることもない。
今は脱いでいるが、キッチンに立つに相応しいエプロン姿だった。
食べ物があると悩んでいても食べてしまう食い意地の張った私は、並べた朝食を口に入れながら考える。
朝食を作っていたというわりにここには包丁もない。
刃物の類が一つもないのだ。鋭いものも凶器になりそうなものも何もない。フォークもナイフもなく、箸で首を突いたとしても頸斬りには至らないだろう。痛い思いをして終わり。
これでは目覚める条件をクリアできない。してやられた感がすごい。
早く起きないといけないのに。
眉間を指で伸ばされた。同時に顔を真正面から覗かれる。
「ひゃっ、え?何?」
「難しい顔ばかりしている。朝緋、何を考えているんだ?俺の前で余計な事は考えなくていい」
俺の事だけ考えていてくれ、とその目は懇願していて。
けれどその目の奥に宿るは獣のように猛り狂う、熱い炎の視線。それを隠すように甘くとろりとした眼差しが覆っている。
「おいで」
おいで、じゃない。手招きどころか、私の腰を抱いて持ち上げ、どこかに運ぼうとしている。
「ちょ、ぇ、杏寿郎さ……どこ連れてく気なのっ」
リビングの扉を開け、違う部屋に連れ込まれる。二人が普段眠っているのであろう、大きなベッドが占領する部屋。
あれ、この部屋はどこかで見たことが……。
「あっ」
ボスッ!ベッドの上に投げられた。
わあ〜いふかふか〜気持ちいい〜……じゃなくて!!
「全く……どこって寝室に決まってるだろうに。今日は休みだからな。ならばする事は一つ」
ベッドスプリングがギシリと軋む音だけで、ぞくりと肌が粟立ちそう。
ベッドに乗り、私を見下ろす杏寿郎さんは目だけじゃない。すでに獣と化していて、炎の呼吸に似た荒い息を吐き出している。シャツの釦を外し、眩しい上半身を魅せつけてくる。
これはマズいぞ。そう思って逃げようとしても、足首が。腰が捕まえられて逃げられない。
ここは杏寿郎さんの檻の中。
「睡眠欲、そして食欲が満たされたなら、次はもう一つの欲を満たさねば。食前の分はお預けにさせられたから俺は飢えている……とてもとても飢えている」
そのまま覆い被さってきて動けなくされた。身動ぎする隙間すら皆無で。
私の首筋や耳に唇を寄せてちぅちぅ吸ったり、舐めたりを繰り返して来る。
「ん、んぅ、……ちょっと待っ、て……」
「待つわけがなかろう。
……服も下着もだが、ネックレスに通ったこの指輪が邪魔だな、誰からのものだ?」
軽く起き上がった杏寿郎さんが、私の首に光る指輪を摘んで憎らしげに引っ張る。やだ、そんなに力を入れたら千切れちゃう……。
「指輪は、駄目……っ引っ張らないで!凄く大切なものなの!!」
「『俺』が新しく贈ると言ってもか!!」
「それだけはやめて……」
だって『貴方』がくれたものだから。
貰うまでにあった事。貰った時の事。貰ってそれからあった様々な思い出。
杏寿郎さんから与えられる愛の数々。
その全てが煌めく一つの金属の輪っかに込められている。