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五周目 伍

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前方車両に炭治郎を発見した。

「炭治郎!」
「っ朝緋さん!!先程すごい衝撃が……!鬼の攻撃かもしれません!!」
「多分それは師範と私の攻撃と移動の衝撃だから気にしなくていい!ここは今に禰󠄀豆子ちゃんと善逸が担当しにくるから私達は前に行くよ!!」

炭治郎の背を叩き、先を促す。

「でもこれから先は前より後方に車両が集中しています!このままでは後ろの乗客が……!」
「無限列車は八両編成で、後方五両は師範が守ってる!残り三両を禰󠄀豆子ちゃん達が守る!」
「一人で五両も!?」

柱がどれほどすごい存在なのかなんて、柱合会議で見た程度でしか関わったことの無い炭治郎からしたら、鬼の触腕が再生する中一人で五両を行ったり来たり。そんなの不可能と思ってしまっても仕方ない。でもね。

「大丈夫!うちの師範は強いし速い!!」

柱とはそれほどまでに凄い存在なのだ。

「私達がやるべき事は一つだよ!鬼の頸を斬りに行く事!」

「頸!?だって、この鬼は列車と融合していて……」
「どのような形になろうとも鬼である限り頸はある!……って、師範の受け売りだけどね!そして頸は前方運転士のいるあたりだよ!!」
「えっもう見つけているんで……うわぁ!?」

背を押すのでは遅い。
炭治郎の手を引いて疾走する。その速さに足が浮いているが気にしない。

「……伊之助は屋根の上ね!なら手間が省ける!炭治郎っ気合い入れてくよ!」
「は、はいっ!」

窓枠に手をかけて飛び上がり、屋根の上に降りたつ。伊之助が鬼の触腕と格闘を続けていた。
手短に話せば、鬼の頸の場所は私の言葉がなくとも、全力の獣の呼吸、漆ノ型 空間識覚である程度特定していたらしい。
索敵に使えるそんな技が……きっと感覚が特別鋭い伊之助だから出来ることよね。

私に並び勢いよく駆け出す姿を横目に思う。


それ以上進ませやしないと、迫る触腕に壱ノ型不知火で活路を開く。一部私を捕まえようとする腕もあったけど、全部斬っちゃえば一緒。

「二人とも体力にはまだ余裕あるよね!」
「もちろんです!ヒノカミ神楽も二度連続で放てそうです!それくらい元気です!」
「おうよ!俺様もまだまだ暴れたりねぇぜ!俺様の前に鬼をじゃんじゃん連れてこいやぁ!」

うんうん。やはり『前』より少しは強くなっているようで何よりだ。

「上々ね!ここが正念場!二人共行くよ!」

そう。

「「「前へ!!」」」

その勢いでたどり着いた先、運転席の屋根を斬り飛ばす。うわ、屋根の内部に鬼の肉がミルフィーユみたいにサンドされてる……融合ってそういう事だったか。
いきなり頭上が開いてえらくこざっぱりしてしまったからか、運転士がギョッとして見上げてきている。

「な、なんだお前らは!で、出ていけ!」

なんだかこう、シ●バニアファミリー達の住居の屋根をパカリと開けて、中を覗いてしまったような気持ちになった。
いきなり開けられたらびっくりするよね。出て行って欲しいって思うよね。
でも。

「てしっ」

運転士の首に手刀を思い切り振り下ろして意識を刈り取る。

「出ていくのは貴方。鬼の協力者の運転士は必要ないので、貴方にはご退場いただきます」
「鬼の協力者なんですか?だとしてもちょっと乱暴すぎるんじゃ……」

倒れた運転士をどこか乱雑に客車に放り込む私を咎める表情。一般人相手にやりすぎかと思う気持ちはわかるよ。私達鬼殺隊は人を守り、愛しまなくちゃいけないもんね。
でも、私は『何度か』この人に炭治郎が刺されている事を知ってる。

「これでいいの。放置したら私達が後ろからグサッと刺されるわよ」

大して強くない殺気で向かってくる一般人ほど脅威な者はない事も知っている。他のことに、それも鬼に気を取られている時なんて、近づかれても気づくのが遅れる場合がある。鬼くらい殺気立っててくれたら楽なのに。

そうこうしてる間に魘夢の手がうじゃうじゃと湧いて、これ以上斬らせないとばかりに向かってきた。
狭い場所だ。私の目の前に出た伊之助が全て斬り落とそうとするも手が多すぎて難しく。炭治郎がねじれ渦で助太刀を入れた。
予想以上にダメージが入ったのか、響き渡る魘夢の叫び声と列車の大きな揺れ。

ねぇ杏寿郎さん……本当に強くなったよこの子達……私要らなくないかしら。


すんすん、炭治郎が鼻を動かし下を見ている。

「確かに真下ですね!鬼の匂いが強い!!」
「なら親分である俺に任せろ!」

伊之助が飛び上がり、床板を十文字型に斬り裂いて剥がす。

下にあったのは水道管のパイプが通っているのかと思うような、鬼の巨大な頸の骨だ。が、肉に埋まるそれはすぐに他の肉に覆われて決して刃を通らせようとはしない。
日光以外の、鬼の唯一の弱点なのだから当たり前か。斬られたらそこでおしまい。

そのまま肉は増殖を続け、先ほどよりも大量の触腕となって私達を捕まえようと伸びてくる。
一度後退してみれば、狭かった場所を肉壁で伸ばして広くしてきた。元々あった鉄の骨組みがぐにゃりと曲がっている。
何よ、バトルフィールドを広くなんてして。斬ってみろって?ううん……お椀型に広げて、斬りに来た者をそのまま包み込んで捕まえるべく誘い込んでいるように見える。
でもその考えも肉壁も触腕も全て斬ればいいだけの事。

「防がれるし斬ってもすぐに裂け目が塞がります!再生も早く、骨を露出させるので精一杯です!」
「どちらかが肉を斬り、どちらかが骨を断つ。貴方達はずっと任務を共にしてきた気の置けない仲間!なら二人が斬った方が呼吸も合わせやすくていいはず!!」
「なるほどな!わかったぜ俺に任せろ!!」

これは炭治郎の言葉だったものだし、『毎回』魘夢の頸を斬るのは炭治郎だ。彼に任せた方がいい。
それに、どんなに沢山の鍛錬を積んでも何年修行しても、戦場の実際に戦った経験の方が強い。二人の成長にも繋がる。

肉壁に沿って走り抜けながら、刃を振り抜く。
一直線に斬り飛ばした無数の腕が、風圧に負けて彼方に飛んで消えた。

「私はこうして周りの触腕やら肉壁の処理をする!頸を斬られないよう最優先で守りに徹してくるとはいえ、隙あらばまーだ私を狙ってきてるからちょうどいい!適材適所よ!!」
「はいっ!よろしくお願いします!」

刀を構えて飛び上がり、頸へと向かう二人。目の前で肉壁が大きく盛り上がる。
あ!見るだけで眠らされる血鬼術の事を忘れていた!!

「二人は鬼の頸『だけ』見て!他にはけっして視線を向けないこと!『眼』は見ないで!!」
「え!?それはどういう……、鬼の目玉!?」

強制昏倒睡眠・眼

肉塊に無数の鬼の目玉が出現し、二人を眠りに誘う。
言うのが遅かった!目の前すぎて防げない!

「炭治郎伊之助、見ちゃだ、めぇ……」

しまった、私までもが見てしまった。
目玉の中の夢の文字と視線が合う。眠りに誘う魔の手が、私に絡みついて離さない。

「伊之助!朝緋さん!夢の中で自分の頸を斬ると覚醒できます!!」

炭治郎が叫んだ。
わかってるよ。でも、夢の中とはいえ自分の頸を斬るのは怖いんだよねえ。
視界の端で触腕が伸びてくるのを見ながら、眠りの底へ落ちた。

あ、やばい。捕まる。
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