五周目 伍
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杏寿郎さんは後方車両の座席でまだ眠っていらっしゃった。
「師……、杏寿郎さん!起きてください!煉獄杏寿郎!こら起きろ!!」
こんな肉塊だらけの布団の横で未だ眠りこける杏寿郎さんを遠慮なしにスパーンと叩く。私だから許されるけど、他の隊士がやったら許されない行為だ。
しかし起きない!
……あ!そうだった!!
『今まで』ちゅーしようとすると起きていた!!……それって狸寝入りじゃないかな、とも思うけど実際寝ている。キスで起きるとはなんという眠り姫だろうね。
「杏寿郎さん起きて!」
ああもう、魘夢が見ているかもしれないってのに!でも女は思い切りが大事だ。
触手だって迫ってくる。急いで唇を重ね、
「っ!?────んんんっ!?」
……た瞬間、腰と頭に手が回って噛み付くようなキスに発展した。舌が吸われる。絡められる。こんなまずい状況の中、快楽に堕とされる……。
ジタバタと暴れ、その胸をどんどんと押せば、やっと離れてくれた。
「おはよう朝緋」
「っぷぁ!起きるの遅い!!」
「うむ!そしてありがとう朝緋!!」
言いながらも斬る、斬る、斬る。杏寿郎さんも一瞬の内に抜いた日輪刀で斬る。
「何がありがとうなんだか……!」
「はっはっは!桃色の炎が体を包んでな、今俺は無限列車の中にいるのだったと思い出す事が出来た!その後、朝緋が現れた。これは鬼が見せる夢だから鬼の嫌うことをして夢から醒めろと、そう言うんだ!だから自分の頸を斬ってみた!鬼は頸を斬られるのを嫌うからな!!」
頸を斬って自決するのが一番手っ取り早い解除方法とはいえ。
「潔すぎ!」
……って、なんだこの手。スカートの中に入り込んで、お尻を弄り始めている!
「何してんです??」
「起きたばかりは勃ってしまうものだから処理を頼みたい!すぐ済む!」
「はー!?おはようのちゅーまでならいいけど、この列車自体が鬼なのでその先はしないでください!杏寿郎さんは鬼に私の事を視姦させたいの?」
「む!それは嫌だ!朝緋の痴態は俺だけのものだ!!我慢する!!」
「いや誰のものでもないし痴態晒したくないわ。そもそも状況を見て!?そんなことしてる暇ないでしょ!!」
こんな状態でしようと思ったのか杏寿郎さん!いくら柱でも余裕こきすぎだ。でも出来てしまいそうなのがまた怖い。
「それと私は乗客よりもさらに重点的に鬼に狙われています!」
「なに!?稀血だからか!!」
「稀血もそうだけど他にも色々あってです!あとで説明する!!」
「約束だからな!君の事は全て知りたい!!」
柱の起床に合わせたのか、触腕の数が増してきた。囲まれている。
「しかし、うたた寝している間にこんな事態になっているとはな。なんなのだ、この肉塊は」
「言ったでしょ?鬼が列車と融合して、列車そのものが鬼になったの」
「なるほど。この中は鬼の腹の中なのか。乗客や俺達全てが鬼の食事であり、人質というわけだ。なんとまあ、よもやよもやだ」
刀を構える。杏寿郎さんの炎の呼吸がごうごうと燃え盛り、その場の空気までも熱く感じる。
刃にも炎が灯って見え、そして。
「こんな中で眠りこけていたとは、柱として不甲斐なし!穴があったら入りたい!!!!」
轟音が響く。細かく、そして大きく斬撃を入れながら移動する。着いていくのが大変だ。
「あいかわらず見事な攻撃ですね、炎柱様」
「うむ!君も取り残しを始末してくれてありがとう!!」
「当然ですとも。私は炎柱の継子ですよ」
私は貴方のためだけに存在する継子。継子は次代の柱になるために存在するのが普通なのかもしれないけれど、私の場合は少し違う。貴方が自由に動けるよう陰に日向にと補佐して回るのが私の役目だ。
私達の斬撃で鬼の肉塊の再生が遅れている。ここいら一帯の人間は少しの間安全だ。予断は許されないが。
「さて、どのような形であれ鬼なのだから頸はあるはずだ。だが肝心の頸はどこだ?」
「おそらくですが前方車両にあります」
「何?それは確かか」
「はい。でも、触腕が多すぎて乗客を守りきるので手がいっぱいです」
「ならば後方の守りに入る!五両程度ならば俺も守り切れる!」
八両の内、五両もの車両を守るだなんて。何度聞いても凄すぎる。私もギリ、出来るかな〜出来ないかな〜。
「五両の守りは私がやりましょうか。どちらにせよ私にばかり触腕は向かってきます。囮になって斬っていれば……」
「いや俺が守る!狙われている君に五両は難しかろう!だからこそ君自身が前へと進み、竈門少年達と鬼の頸を斬りに行け!守りでなく攻めに転じろ!!」
難しい、にちょっぴりカチンとくるけど、今は適材適所。杏寿郎さんの采配はいつだって正解を拾う。
「はいっ!禰󠄀豆子ちゃんと善逸、それに師範に後方は任せます!
私は前方車両に向かいつつ、彼らに指示します!今の状態の私では、どちらにせよ彼らと協力しなくては頸を斬れませんっ」
「わかった!頼んだぞ朝緋!!」
「ええ!頼まれました!
…………杏寿郎さん大好き、愛してる」
「!?」
了承とともに、後ろから一瞬だけ抱きつき呟く。炎燃える羽織が温かく感じた。
「そんな仕草で誘いおって……!俺も朝緋が大好きだ!だがなぜ今言う!?」
「いつもいつでもどんな時でも言いたい言葉ですからね。またあとで!」
少しだけ。そう、少しだけ後ろ髪を引かれる思いだ。だって、もしかしたらきちんと話せるのはこれが最後かもしれないもの。
いつだって絶対はない。これだけはあり得てはいけないし実際あり得ないけれど、私が魘夢に連れて行かれる可能性もあるし、魘夢の頸を斬って無限列車から逃れたら乗客の救出や色々な事で会話をする暇はないかもしれない。
何より、猗窩座が現れたならあの緊迫した空間だ。私に構う余裕は皆無だ。
正直遺言のようで嫌だけど、人間には口がある。言葉がある。
思いは伝えたい時に伝えておきたい。
踵を返し前方車両へと急ぎ向かう。
途中、協力して鬼の触腕に立ち向かう禰󠄀豆子ちゃんと善逸を見かけたので後を頼んでおく。
善逸って本当どうなってるんだろうね。眠っている時の方がなんかこう、普段より顔もかっこよく見える。眠っているはずなのに言葉も交わせるし、返事にも覇気がある。技のキレも素晴らしく速い。全然弱くないと思った。
前の車両に行けば行くほど、自分の頸を守るためなのか、ただ私を捕まえるためなのか、触腕が増えていく。
気持ち悪すぎてもう鳥肌も立たなくなった。顔はしょっぱい表情したままだけどもね。
「水の呼吸、玖ノ型 水流飛沫・乱!炎の呼吸、肆ノ型 盛炎のうねり!」
二本の刀を駆使して広範囲、細かく斬撃を入れて斬り刻む。炎の呼吸をたっぷり含ませた技で焼き尽くすようにしたから、すぐに再生することもない……と思いたい。私の技は杏寿郎さんの技より弱いからなあ。
次の車両へと続く列車の連結部分を横目に考えた。
「魘夢の頸を落とすのは最後かな。まずは連結部分を外しちゃうといいのでは……?」
肝心要の魘夢の頸が前方車両、運転席の下に存在するのは変わらない。だったら連結部分を離してしまえば後方車両はやがて止まる。後方車両の脱線は免れるかもしれない。
「無駄だよぉ」
「わっ出たな下弦の壱!」
ぼこり、魘夢の顔が出現した。
人の独り言まで聞いているとは。セルフ盗聴器にセルフ隠しカメラ。お前は私のストーカーか。
というか、出現場所私の足元かい!
「そんなところから出現なんてなんなの!私の下着でも覗く気?」
「まさか!ふふ、そんな趣味ないよ。君の大好きな柱じゃあるまいし」
こいつ、杏寿郎さんを馬鹿にした!杏寿郎さんが私の下着なんか覗くわけな……あ、覗かないけどいつぞやの時には欲しがってたっけ。
「あっそう!覗いたら踏み絵みたいに踏んであげようかと思ったのにっ」
水の呼吸、漆ノ型 雫波紋突き
刺突技を魘夢の顔のある真下目掛けて突き出す。……間一髪で避けられた。
「うふふ、後ろの人間達を引き離して助けようとしてるの?自分の番である柱も乗ってるのにいいの?離れ離れになっちゃうよ」
離れ離れは私も考えた。もう話す機会がないかもしれないというに、ここで別れていいのかと。
でも、後方車両が遥か遠くに取り残されてくれれば、もしかしたら猗窩座と杏寿郎さんを出会わせないで済むかもしれない。戦わずに済むかもしれないのだ。
私は私より、杏寿郎さんが大切なのだ。
「列車そのものの連結部分なんて、もう意味をなさない。そんなものなくとも、俺はもう列車と繋がっている。
そんな事より、稀血ちゃんは俺に早く捕まってくれないかなあ!」
壁に張り付く肉壁から腕の形の触腕が大量発生。私を捕まえようと手を伸ばしてくる。
数が多かろうと、この私に集中して向かってくるならまとめて斬ればいい!
「お断りしますの壱ノ型不知火!」
炎の呼吸、基本にして最速の技で全ての触腕を一気に刎ね飛ばす。その燃え盛る勢いで、出現していた魘夢の顔も焼き消えた。
「……意味をなさない、か」
死者がいなくとも怪我人は多かったし、それも防ぎたかったんだけどなあ。
「師……、杏寿郎さん!起きてください!煉獄杏寿郎!こら起きろ!!」
こんな肉塊だらけの布団の横で未だ眠りこける杏寿郎さんを遠慮なしにスパーンと叩く。私だから許されるけど、他の隊士がやったら許されない行為だ。
しかし起きない!
……あ!そうだった!!
『今まで』ちゅーしようとすると起きていた!!……それって狸寝入りじゃないかな、とも思うけど実際寝ている。キスで起きるとはなんという眠り姫だろうね。
「杏寿郎さん起きて!」
ああもう、魘夢が見ているかもしれないってのに!でも女は思い切りが大事だ。
触手だって迫ってくる。急いで唇を重ね、
「っ!?────んんんっ!?」
……た瞬間、腰と頭に手が回って噛み付くようなキスに発展した。舌が吸われる。絡められる。こんなまずい状況の中、快楽に堕とされる……。
ジタバタと暴れ、その胸をどんどんと押せば、やっと離れてくれた。
「おはよう朝緋」
「っぷぁ!起きるの遅い!!」
「うむ!そしてありがとう朝緋!!」
言いながらも斬る、斬る、斬る。杏寿郎さんも一瞬の内に抜いた日輪刀で斬る。
「何がありがとうなんだか……!」
「はっはっは!桃色の炎が体を包んでな、今俺は無限列車の中にいるのだったと思い出す事が出来た!その後、朝緋が現れた。これは鬼が見せる夢だから鬼の嫌うことをして夢から醒めろと、そう言うんだ!だから自分の頸を斬ってみた!鬼は頸を斬られるのを嫌うからな!!」
頸を斬って自決するのが一番手っ取り早い解除方法とはいえ。
「潔すぎ!」
……って、なんだこの手。スカートの中に入り込んで、お尻を弄り始めている!
「何してんです??」
「起きたばかりは勃ってしまうものだから処理を頼みたい!すぐ済む!」
「はー!?おはようのちゅーまでならいいけど、この列車自体が鬼なのでその先はしないでください!杏寿郎さんは鬼に私の事を視姦させたいの?」
「む!それは嫌だ!朝緋の痴態は俺だけのものだ!!我慢する!!」
「いや誰のものでもないし痴態晒したくないわ。そもそも状況を見て!?そんなことしてる暇ないでしょ!!」
こんな状態でしようと思ったのか杏寿郎さん!いくら柱でも余裕こきすぎだ。でも出来てしまいそうなのがまた怖い。
「それと私は乗客よりもさらに重点的に鬼に狙われています!」
「なに!?稀血だからか!!」
「稀血もそうだけど他にも色々あってです!あとで説明する!!」
「約束だからな!君の事は全て知りたい!!」
柱の起床に合わせたのか、触腕の数が増してきた。囲まれている。
「しかし、うたた寝している間にこんな事態になっているとはな。なんなのだ、この肉塊は」
「言ったでしょ?鬼が列車と融合して、列車そのものが鬼になったの」
「なるほど。この中は鬼の腹の中なのか。乗客や俺達全てが鬼の食事であり、人質というわけだ。なんとまあ、よもやよもやだ」
刀を構える。杏寿郎さんの炎の呼吸がごうごうと燃え盛り、その場の空気までも熱く感じる。
刃にも炎が灯って見え、そして。
「こんな中で眠りこけていたとは、柱として不甲斐なし!穴があったら入りたい!!!!」
轟音が響く。細かく、そして大きく斬撃を入れながら移動する。着いていくのが大変だ。
「あいかわらず見事な攻撃ですね、炎柱様」
「うむ!君も取り残しを始末してくれてありがとう!!」
「当然ですとも。私は炎柱の継子ですよ」
私は貴方のためだけに存在する継子。継子は次代の柱になるために存在するのが普通なのかもしれないけれど、私の場合は少し違う。貴方が自由に動けるよう陰に日向にと補佐して回るのが私の役目だ。
私達の斬撃で鬼の肉塊の再生が遅れている。ここいら一帯の人間は少しの間安全だ。予断は許されないが。
「さて、どのような形であれ鬼なのだから頸はあるはずだ。だが肝心の頸はどこだ?」
「おそらくですが前方車両にあります」
「何?それは確かか」
「はい。でも、触腕が多すぎて乗客を守りきるので手がいっぱいです」
「ならば後方の守りに入る!五両程度ならば俺も守り切れる!」
八両の内、五両もの車両を守るだなんて。何度聞いても凄すぎる。私もギリ、出来るかな〜出来ないかな〜。
「五両の守りは私がやりましょうか。どちらにせよ私にばかり触腕は向かってきます。囮になって斬っていれば……」
「いや俺が守る!狙われている君に五両は難しかろう!だからこそ君自身が前へと進み、竈門少年達と鬼の頸を斬りに行け!守りでなく攻めに転じろ!!」
難しい、にちょっぴりカチンとくるけど、今は適材適所。杏寿郎さんの采配はいつだって正解を拾う。
「はいっ!禰󠄀豆子ちゃんと善逸、それに師範に後方は任せます!
私は前方車両に向かいつつ、彼らに指示します!今の状態の私では、どちらにせよ彼らと協力しなくては頸を斬れませんっ」
「わかった!頼んだぞ朝緋!!」
「ええ!頼まれました!
…………杏寿郎さん大好き、愛してる」
「!?」
了承とともに、後ろから一瞬だけ抱きつき呟く。炎燃える羽織が温かく感じた。
「そんな仕草で誘いおって……!俺も朝緋が大好きだ!だがなぜ今言う!?」
「いつもいつでもどんな時でも言いたい言葉ですからね。またあとで!」
少しだけ。そう、少しだけ後ろ髪を引かれる思いだ。だって、もしかしたらきちんと話せるのはこれが最後かもしれないもの。
いつだって絶対はない。これだけはあり得てはいけないし実際あり得ないけれど、私が魘夢に連れて行かれる可能性もあるし、魘夢の頸を斬って無限列車から逃れたら乗客の救出や色々な事で会話をする暇はないかもしれない。
何より、猗窩座が現れたならあの緊迫した空間だ。私に構う余裕は皆無だ。
正直遺言のようで嫌だけど、人間には口がある。言葉がある。
思いは伝えたい時に伝えておきたい。
踵を返し前方車両へと急ぎ向かう。
途中、協力して鬼の触腕に立ち向かう禰󠄀豆子ちゃんと善逸を見かけたので後を頼んでおく。
善逸って本当どうなってるんだろうね。眠っている時の方がなんかこう、普段より顔もかっこよく見える。眠っているはずなのに言葉も交わせるし、返事にも覇気がある。技のキレも素晴らしく速い。全然弱くないと思った。
前の車両に行けば行くほど、自分の頸を守るためなのか、ただ私を捕まえるためなのか、触腕が増えていく。
気持ち悪すぎてもう鳥肌も立たなくなった。顔はしょっぱい表情したままだけどもね。
「水の呼吸、玖ノ型 水流飛沫・乱!炎の呼吸、肆ノ型 盛炎のうねり!」
二本の刀を駆使して広範囲、細かく斬撃を入れて斬り刻む。炎の呼吸をたっぷり含ませた技で焼き尽くすようにしたから、すぐに再生することもない……と思いたい。私の技は杏寿郎さんの技より弱いからなあ。
次の車両へと続く列車の連結部分を横目に考えた。
「魘夢の頸を落とすのは最後かな。まずは連結部分を外しちゃうといいのでは……?」
肝心要の魘夢の頸が前方車両、運転席の下に存在するのは変わらない。だったら連結部分を離してしまえば後方車両はやがて止まる。後方車両の脱線は免れるかもしれない。
「無駄だよぉ」
「わっ出たな下弦の壱!」
ぼこり、魘夢の顔が出現した。
人の独り言まで聞いているとは。セルフ盗聴器にセルフ隠しカメラ。お前は私のストーカーか。
というか、出現場所私の足元かい!
「そんなところから出現なんてなんなの!私の下着でも覗く気?」
「まさか!ふふ、そんな趣味ないよ。君の大好きな柱じゃあるまいし」
こいつ、杏寿郎さんを馬鹿にした!杏寿郎さんが私の下着なんか覗くわけな……あ、覗かないけどいつぞやの時には欲しがってたっけ。
「あっそう!覗いたら踏み絵みたいに踏んであげようかと思ったのにっ」
水の呼吸、漆ノ型 雫波紋突き
刺突技を魘夢の顔のある真下目掛けて突き出す。……間一髪で避けられた。
「うふふ、後ろの人間達を引き離して助けようとしてるの?自分の番である柱も乗ってるのにいいの?離れ離れになっちゃうよ」
離れ離れは私も考えた。もう話す機会がないかもしれないというに、ここで別れていいのかと。
でも、後方車両が遥か遠くに取り残されてくれれば、もしかしたら猗窩座と杏寿郎さんを出会わせないで済むかもしれない。戦わずに済むかもしれないのだ。
私は私より、杏寿郎さんが大切なのだ。
「列車そのものの連結部分なんて、もう意味をなさない。そんなものなくとも、俺はもう列車と繋がっている。
そんな事より、稀血ちゃんは俺に早く捕まってくれないかなあ!」
壁に張り付く肉壁から腕の形の触腕が大量発生。私を捕まえようと手を伸ばしてくる。
数が多かろうと、この私に集中して向かってくるならまとめて斬ればいい!
「お断りしますの壱ノ型不知火!」
炎の呼吸、基本にして最速の技で全ての触腕を一気に刎ね飛ばす。その燃え盛る勢いで、出現していた魘夢の顔も焼き消えた。
「……意味をなさない、か」
死者がいなくとも怪我人は多かったし、それも防ぎたかったんだけどなあ。