五周目 伍
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刀傷を治しきった鬼が、足に力を入れる。
「ふん!人質は失ったが、お前達は俺の速さについてこれまい!」
音速とも近しい速度で私達の周りを移動し始めた。
速いのかもしれないけど見えてるんだよねぇ……。手を伸ばせば捕まえられそう。
「逃げ足だけは確かに早いな。そして自分の足や力に過信もしている」
「過信、だと?」
「ああそうだ。昨晩お前が傷をつけた女性は、傷も残らず治る。また、再び傷をつけようとしても、彼女はお前から見つからない場所にいるから無駄だぞ!」
「心の傷も私達が長い時間をかけて手当てしていくので、ご心配なく〜」
「ちっ……」
言おうとした事を先を越されて言われ、苦々しく舌打ちする。けれど何かを思い出したようでにやりと笑っていた。
「そうだ、弁当売りを殺しに行ってやる。
挨拶しにいきたい、ということは知り合いのようなものなんだろ?知りうる人間を殺されちゃ、気分が悪いだろう」
「はあ!?なんでそうなるの!!」
「助けたいなら俺より早く駅まで来る事だ」
そう言って消える鬼。
結局、ふくちゃん達のところへ行かせる結果になってしまった!!なんたる失敗!!
いや、鬼なんて斬ればいいのよ。斬れば。
あんな鬼より、杏寿郎さんの方が強いし速い。私も多分、あの鬼より上。……だと思う。
置いてきた日輪刀を回収し、杏寿郎さんの横に並ぶ。
「うむ、やはり逃げ足は速いな。
……朝緋、忘れているようだが後で話がある。が、今はあの鬼が先だ。ここは隊の皆に任せる。行くぞ」
「……はい」
うげ……忘れさせてほしい。どうしてこう、私が関わると杏寿郎さんは途端に根に持つ男になるのだろう。
「今に同じような黒い服の者が来ます。仲間達なので少年の治療や事後処理は任せてください。お騒がせしました。
少年、痛い思いさせてごめんね」
立つ前に、謝罪を述べる。
「いえ……助けていただいてありがとうございました」
「君達は鉄道管理局の者じゃなかったのか……?さっきの化け物は一体……」
「私達はああいった化け物から人を助けるために存在する者です」
非公認の組織だけれど、根底にあるのはそれのみだ。
ニコリと笑い、踵を返す。
「「──全集中の呼吸──」」
杏寿郎さんと二人、呼吸を整え高め、地面を蹴る。初めは緩やかに、徐々に速く、そしてあの鬼よりも速く、炎の軌跡を描きながら線路沿いを駆ける。
その時、走り抜けている私めがけて、何か鋭い刃物のようなものが飛んできた。
「えっ何!!?」
咄嗟に避けたけれど、それによって足が止まる。杏寿郎さんは速度が落ちたのみ。
「朝緋ッ!?」
「杏寿郎さ、師範は先に行って!!」
「わかった!あとで駅に来い!!」
再び速度を上げて去る杏寿郎さん。うわはやい。一緒に走っていた時はあまり気にしてなかったけど、ホント速いな。さすが柱。
地面に刺さったものを引っこ抜いてみれば、見覚えのある鋭いナイフのような、羽根。
「この羽根……またアンタね。
二度あることは三度あるのと同じで、二度会ったなら三度会うということかなあ?」
上空でホバリングする大きな影が目の前に現れる。
「見覚えある鬼狩りが見えたからな。また更に強くなった事だし、わざわざ見せに来てやったぜ!今度こそ、お前を殺す!!んで稀血だから食べる!!」
「あ、そ。つまりわざわざ頸を斬られに来たってことよね」
「あっ確かに!鬼殺隊であるお前の前に現れるってそういうことになるじゃねぇか!」
「わからなかったの?逃げに徹してたくせに馬鹿じゃん」
馬鹿だけど体の大きさはオオワシからグリフォンって感じに大きくなったことくらいは認めてあげよう。馬鹿だけど。
「ま、殺せるものなら殺してみなよ。私は忙しいから、アンタの頸取ってサッサと移動なくちゃなので仕掛けてくるなら早めにお願いね」
「腹の立つ奴め……!喰らえ、刃羽根!!」
鬼が鋭利な羽根を飛ばしてくる。
「って、数が多い!そんなに飛ばしたらハゲちゃわない?」
「余計なお世話だ、よっ!!」
大量のそれを避け、日輪刀を振り地に落とす。次いで仕掛けてきた猛禽の爪は、前よりも頑丈で鋭い凶器と化していた。これで掴まれたら終わりだ。
「うわ、脚の爪も合金みたいになってる!あっぶな炎の呼吸肆ノ型盛炎のうねりっ!!」
「相変わらず炎の呼吸つええ!」
日輪刀が鈍い音を立てる。ずっといなしていたら刃こぼれする。そんな硬さだった。
そして、視界の端で落とした羽根がふわり、浮いて向かってくる。
「わ、わ、落としたはずの羽根が全部追尾してくるとか嘘でしょ!しかもそのタイミングで追加打ち!?死ぬわぼけ!」
と見せかけて水の呼吸陸ノ型ねじれ渦!!」
「なっ!!」
さっきあの鬼から逃れる時にぶっつけ本番で初めて使ったものだけど、あれが練習になったみたいだ。今回も上手い事いった!
「空中戦は苦手なんだけど……。炎の呼吸弐ノ型 昇り炎天!伍ノ型 炎虎乱咬み!雷の呼吸参ノ型 聚蚊成雷──」
「ギェッッ!──ガッ!!」
昇り炎天を利用して高く飛び上がり、まずは鬼を守る刃羽根を炎虎で弾き飛ばす。本体に聚蚊成雷を打ち付けて地に落とすと。
「──壱ノ型 不知火」
勢いよく鬼の頸を飛ばした。ぽと、落ちる頸。
「あ、あれ……俺、死んだ?」
「うん、死んだ。結構強かったよ、体だけじゃなくて攻撃も成長したのね。……でもアンタさ、ほとんど人を食べてなくない?」
攻撃した後の傷の治りが遅く感じた。だからこそ、比較的簡単に頸を取れたんだろうと思う。
「お前と二度目まして以降、人を食べてない」
「やっぱり」
「……俺は元々鳥が好きだった……鳥と合体したような鬼だから、かな……。何故かこの体は、鼠や魚を欲しがるようになっていった。もちろん、食える時があれば人も喰ったさ。初めの頃は、な……」
「変な鬼ねえ」
「変なは余計、だ。……あー負けた……、まぁいいや……」
鬼の体と頸が消えた。初めから変な鬼だと思ってたけど、やっぱり変な鬼だったなあ。
「あ……急がなくちゃ」
足に、全身に呼吸を纏わせ、杏寿郎さんの元へと、駅へと急ぐ。鬼の一部、最期に残った一枚の羽根が、私の起こした風で高く高く舞い上がった。
駅に着いたら既に全てが終わっていた。隊士は駆けつけているし、事後処理の隠もいる。おまけに陽光も差し込んでいる。
陽の光に照らされた杏寿郎さんの髪がキラキラして綺麗。
「鬼の頸は取ったんですね」
「朝緋か」
ああ〜杏寿郎さんがかっこよく刀を鞘に収める瞬間が見たかったなぁ。でも、まあ、ふくちゃん達が守れたならそれでいいか。
隊士、隠、ふくちゃん達と別れて路地を進む。
一角を曲がり、誰もいない暗がりで立ち止まる杏寿郎さんから、小さな拳骨が頭にコツンと落ちてきた。
「全く、もう朝ではないか。
途中退場になった朝緋はどんな道草を食っていたんだ」
「ん、ごめんなさい。鬼退治してたの」
「やはりあれは他の鬼だったか。大事はないか?」
「ない……って、どこ触ってるんですか」
スカートの中に手を入れ、臀部を撫でてくる。それは下着の際までに至り、指を入れるか入れないかのギリギリを攻めてきた。
「言ったろう。話がある、と」
「ん、そんなところを触りながらなの?」
それだけで息が切れそう。心臓もどきどきしてくる。
「ああ。朝緋としっかり話をするには、やはり枕を交わしながらがいいとわかっているからな。君を尋問するにあたり拷問などは効かないが、体の深部に聞くと素直に吐いてくれるからな」
「おいこら炎柱」
「安心しろ!話といっても、怪しい行動を取り、俺に秘密の多そうな君に少しばかり仕置きをするだけだ!!別に内容を聞き出そうとは思っていない!!」
「おいこら炎柱」
ただ、いちゃいちゃしたいだけじゃん!!
「ささ、二階のある蕎麦屋を探すぞ!夕方までゆっっっくり休憩だ!!」
「いやだーーー!!」
拒否しても杏寿郎さんはいつも一枚も二枚もうわて。あれよあれよの間に連行され、私はまたも夕方まで美味しくいただかれた。
もうやだ……。
「ふん!人質は失ったが、お前達は俺の速さについてこれまい!」
音速とも近しい速度で私達の周りを移動し始めた。
速いのかもしれないけど見えてるんだよねぇ……。手を伸ばせば捕まえられそう。
「逃げ足だけは確かに早いな。そして自分の足や力に過信もしている」
「過信、だと?」
「ああそうだ。昨晩お前が傷をつけた女性は、傷も残らず治る。また、再び傷をつけようとしても、彼女はお前から見つからない場所にいるから無駄だぞ!」
「心の傷も私達が長い時間をかけて手当てしていくので、ご心配なく〜」
「ちっ……」
言おうとした事を先を越されて言われ、苦々しく舌打ちする。けれど何かを思い出したようでにやりと笑っていた。
「そうだ、弁当売りを殺しに行ってやる。
挨拶しにいきたい、ということは知り合いのようなものなんだろ?知りうる人間を殺されちゃ、気分が悪いだろう」
「はあ!?なんでそうなるの!!」
「助けたいなら俺より早く駅まで来る事だ」
そう言って消える鬼。
結局、ふくちゃん達のところへ行かせる結果になってしまった!!なんたる失敗!!
いや、鬼なんて斬ればいいのよ。斬れば。
あんな鬼より、杏寿郎さんの方が強いし速い。私も多分、あの鬼より上。……だと思う。
置いてきた日輪刀を回収し、杏寿郎さんの横に並ぶ。
「うむ、やはり逃げ足は速いな。
……朝緋、忘れているようだが後で話がある。が、今はあの鬼が先だ。ここは隊の皆に任せる。行くぞ」
「……はい」
うげ……忘れさせてほしい。どうしてこう、私が関わると杏寿郎さんは途端に根に持つ男になるのだろう。
「今に同じような黒い服の者が来ます。仲間達なので少年の治療や事後処理は任せてください。お騒がせしました。
少年、痛い思いさせてごめんね」
立つ前に、謝罪を述べる。
「いえ……助けていただいてありがとうございました」
「君達は鉄道管理局の者じゃなかったのか……?さっきの化け物は一体……」
「私達はああいった化け物から人を助けるために存在する者です」
非公認の組織だけれど、根底にあるのはそれのみだ。
ニコリと笑い、踵を返す。
「「──全集中の呼吸──」」
杏寿郎さんと二人、呼吸を整え高め、地面を蹴る。初めは緩やかに、徐々に速く、そしてあの鬼よりも速く、炎の軌跡を描きながら線路沿いを駆ける。
その時、走り抜けている私めがけて、何か鋭い刃物のようなものが飛んできた。
「えっ何!!?」
咄嗟に避けたけれど、それによって足が止まる。杏寿郎さんは速度が落ちたのみ。
「朝緋ッ!?」
「杏寿郎さ、師範は先に行って!!」
「わかった!あとで駅に来い!!」
再び速度を上げて去る杏寿郎さん。うわはやい。一緒に走っていた時はあまり気にしてなかったけど、ホント速いな。さすが柱。
地面に刺さったものを引っこ抜いてみれば、見覚えのある鋭いナイフのような、羽根。
「この羽根……またアンタね。
二度あることは三度あるのと同じで、二度会ったなら三度会うということかなあ?」
上空でホバリングする大きな影が目の前に現れる。
「見覚えある鬼狩りが見えたからな。また更に強くなった事だし、わざわざ見せに来てやったぜ!今度こそ、お前を殺す!!んで稀血だから食べる!!」
「あ、そ。つまりわざわざ頸を斬られに来たってことよね」
「あっ確かに!鬼殺隊であるお前の前に現れるってそういうことになるじゃねぇか!」
「わからなかったの?逃げに徹してたくせに馬鹿じゃん」
馬鹿だけど体の大きさはオオワシからグリフォンって感じに大きくなったことくらいは認めてあげよう。馬鹿だけど。
「ま、殺せるものなら殺してみなよ。私は忙しいから、アンタの頸取ってサッサと移動なくちゃなので仕掛けてくるなら早めにお願いね」
「腹の立つ奴め……!喰らえ、刃羽根!!」
鬼が鋭利な羽根を飛ばしてくる。
「って、数が多い!そんなに飛ばしたらハゲちゃわない?」
「余計なお世話だ、よっ!!」
大量のそれを避け、日輪刀を振り地に落とす。次いで仕掛けてきた猛禽の爪は、前よりも頑丈で鋭い凶器と化していた。これで掴まれたら終わりだ。
「うわ、脚の爪も合金みたいになってる!あっぶな炎の呼吸肆ノ型盛炎のうねりっ!!」
「相変わらず炎の呼吸つええ!」
日輪刀が鈍い音を立てる。ずっといなしていたら刃こぼれする。そんな硬さだった。
そして、視界の端で落とした羽根がふわり、浮いて向かってくる。
「わ、わ、落としたはずの羽根が全部追尾してくるとか嘘でしょ!しかもそのタイミングで追加打ち!?死ぬわぼけ!」
と見せかけて水の呼吸陸ノ型ねじれ渦!!」
「なっ!!」
さっきあの鬼から逃れる時にぶっつけ本番で初めて使ったものだけど、あれが練習になったみたいだ。今回も上手い事いった!
「空中戦は苦手なんだけど……。炎の呼吸弐ノ型 昇り炎天!伍ノ型 炎虎乱咬み!雷の呼吸参ノ型 聚蚊成雷──」
「ギェッッ!──ガッ!!」
昇り炎天を利用して高く飛び上がり、まずは鬼を守る刃羽根を炎虎で弾き飛ばす。本体に聚蚊成雷を打ち付けて地に落とすと。
「──壱ノ型 不知火」
勢いよく鬼の頸を飛ばした。ぽと、落ちる頸。
「あ、あれ……俺、死んだ?」
「うん、死んだ。結構強かったよ、体だけじゃなくて攻撃も成長したのね。……でもアンタさ、ほとんど人を食べてなくない?」
攻撃した後の傷の治りが遅く感じた。だからこそ、比較的簡単に頸を取れたんだろうと思う。
「お前と二度目まして以降、人を食べてない」
「やっぱり」
「……俺は元々鳥が好きだった……鳥と合体したような鬼だから、かな……。何故かこの体は、鼠や魚を欲しがるようになっていった。もちろん、食える時があれば人も喰ったさ。初めの頃は、な……」
「変な鬼ねえ」
「変なは余計、だ。……あー負けた……、まぁいいや……」
鬼の体と頸が消えた。初めから変な鬼だと思ってたけど、やっぱり変な鬼だったなあ。
「あ……急がなくちゃ」
足に、全身に呼吸を纏わせ、杏寿郎さんの元へと、駅へと急ぐ。鬼の一部、最期に残った一枚の羽根が、私の起こした風で高く高く舞い上がった。
駅に着いたら既に全てが終わっていた。隊士は駆けつけているし、事後処理の隠もいる。おまけに陽光も差し込んでいる。
陽の光に照らされた杏寿郎さんの髪がキラキラして綺麗。
「鬼の頸は取ったんですね」
「朝緋か」
ああ〜杏寿郎さんがかっこよく刀を鞘に収める瞬間が見たかったなぁ。でも、まあ、ふくちゃん達が守れたならそれでいいか。
隊士、隠、ふくちゃん達と別れて路地を進む。
一角を曲がり、誰もいない暗がりで立ち止まる杏寿郎さんから、小さな拳骨が頭にコツンと落ちてきた。
「全く、もう朝ではないか。
途中退場になった朝緋はどんな道草を食っていたんだ」
「ん、ごめんなさい。鬼退治してたの」
「やはりあれは他の鬼だったか。大事はないか?」
「ない……って、どこ触ってるんですか」
スカートの中に手を入れ、臀部を撫でてくる。それは下着の際までに至り、指を入れるか入れないかのギリギリを攻めてきた。
「言ったろう。話がある、と」
「ん、そんなところを触りながらなの?」
それだけで息が切れそう。心臓もどきどきしてくる。
「ああ。朝緋としっかり話をするには、やはり枕を交わしながらがいいとわかっているからな。君を尋問するにあたり拷問などは効かないが、体の深部に聞くと素直に吐いてくれるからな」
「おいこら炎柱」
「安心しろ!話といっても、怪しい行動を取り、俺に秘密の多そうな君に少しばかり仕置きをするだけだ!!別に内容を聞き出そうとは思っていない!!」
「おいこら炎柱」
ただ、いちゃいちゃしたいだけじゃん!!
「ささ、二階のある蕎麦屋を探すぞ!夕方までゆっっっくり休憩だ!!」
「いやだーーー!!」
拒否しても杏寿郎さんはいつも一枚も二枚もうわて。あれよあれよの間に連行され、私はまたも夕方まで美味しくいただかれた。
もうやだ……。