五周目 伍
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あの隊士が蕎麦屋に合流した。
お腹が空いていそうなので、杏寿郎さんのおかわりと共に彼の分も追加注文する。
私?もうすでに三人前食べたけどそれが何か?
杏寿郎さんに盗まれた芋天をしっかりと食べ直すまで私の胃袋は止まらなかったのだ。
話によると女性は傷も残らないで済んだようだ。
やはり『前』と同じだ。処置が早かったようで何より。さすがは鬼殺隊の医療班……しのぶもかなりの医療の腕前を持っているけれど、医療班もその辺の医師が太刀打ちできないほどの知識と技術を持つ。
鬼がいなくなったら病院立てるといいかも。薬さえ苦くないならぜひ通院したい。
話の途中で蕎麦が届いた。杏寿郎さんの目の前にはまたもあのかき揚げ。隣の花は赤いとはよく言うが、私の天ぷらより美味しそうに見えてしまう。
「あーー……」
口を開けてちらり、杏寿郎さんを横目で見る。じっと見る。
「……朝緋は先ほど天ぷらを食べたろう?」
「あーー……」
言いたいことはわかるようで、断られた。けれどまだ開け続ける。
「はあ……わかったわかった。ほら、あーん」
「んむぅ、おいひぃ。ありがとう、師範」
「全く、朝緋は仕方のない子だなぁ」
サクサク幸せ。やっぱり美味しい〜。
ほっこり笑顔を浮かべる私に苦笑しながら、ご自身もサクサクと一口くれた残りを齧る。
「柱と継子ってこんなに仲がいいんですね〜。柱はもっと怖い存在だと思っておりましたが、微笑ましい場面が見られて、少し親近感が湧きました」
「柱も人間だからな。それに彼女は妻だから当然仲は良いぞ」
「えっ」
「妻違うっ!いいから二人とも食べてお蕎麦が伸びる!」
「……むぅ」
「あ、はいっ」
変な噂を流されたり勘違いされたらたまったものじゃない。ま、とりあえずさっきの芋天のことはこれで許そう。かき揚げ美味しかった。
「それで、調査任務はどうでしたか?」
食事があらかた済んだのを見計らい、お茶を勧めながら調査報告を促す。
やはり、機関庫に人目につかぬよう搬入されたとの情報だった。
機関庫にあるのならば、そこに行くのは最後だ。まずは、まだ開いている時間であるからして、車掌の遺体が発見された駅の検分に向かうことになった。
異常は相変わらずなし、と。あったら困るけど、こういう地道な調査はとても大事だ。
「鬼なんかいないよ!」
ん?聞き覚えある女の子の声……?
『鬼』という言葉を耳にして、杏寿郎さんが声をかけに行ってしまった。
どんな情報も逃さない精神はいいけど、相手はまだ年端もいかぬ女の子よ。いくらかっこいい美丈夫の貴方だとしても、詰め寄ったら怖がられるでしょうに。
「やあこんばんは!気持ちの良い月夜ですね!」
そう声をかけた相手は眼鏡がかわいい弁当売りの。
「あっ、やっぱりふくちゃんだ」
「え……何この人、私の名前を知ってる……?」
「む!朝緋はこの子を知っているのか?」
おっとお、失言再び。不審そうな目が二つ、此方を見つめる。
「え、あ……、あはは!」
私引っ込む〜。すすす、隊士の後ろに隠れた。
「鬼の話が出ましたよね。俺は鬼を探している者!鬼を知りませんか?」
あーあ、またそんな直球な聞き方……。や、台詞も『前』と同じだからわかってるけどさ。
隊士も要もあずまも驚いてるよ。
そうこうしている内に、あんぱんがビタン!と杏寿郎さんの顔に投げられた。
杏寿郎さんから見たら、投げつけられたのではなく差し上げると手渡されたようなものなのだろう。一瞬の沈黙ののち、美味い美味いと食べている。シュールだ……。
蕎麦のあとのデザートとして、私もあんぱんが欲しいよぉ。
話を聞き終えると、商魂逞しい彼女からお弁当を買い占める。隊への土産と、これから行く場所への小道具代わりだ。……余ったら今度こそ食べたい。余れ!!
「あっ」
最後にこそりとふくちゃんに耳打ち。
「おやつのあんぱん奪っちゃってごめんね。申し訳ないんだけど、何か聞かれたら前に名前を知ったって事にしておいてね。知らないかもしれないけれど、以前お弁当を買ったこともあるので、その時に名前が聞こえちゃったって感じに」
「は、はあ……わかりました」
隊士と別れ、無限列車があるという機関庫への廻送列車に乗り込む私達。
窓から臨む月を見ていれば、ぐいぐい席を詰めてくる気配。あずまや要は違う席で大人しくしているし、杏寿郎さんしかいない。
「せまっ!狭いんだけど?」
「君は弁当屋の少女の名前すら知っているのだな」
「あー……あれね」
「何を隠しているんだ?何を知っている?」
「いや別に何も知らないよ」
「怪しい……とても怪しい」
そりゃ、色々隠してる事満載だけど、言うわけにいかない。どんなに拷問されたって、殺されたって私は口を割らないだろう。うっかりミスで口走ることは多いけど。
それでも杏寿郎さんは、じぃーー。と睨み、どんどん詰め寄る。距離的に唇が重なる一歩手前。
「そんな間近に詰め寄ってこないでよ。私が座席に倒れちゃうじゃない」
「倒れれば良い!そのまま押し倒す!!」
「押し倒すって、もう押し倒してるじゃん!わあっ覆い被さって来ないでぇー!?」
座席にドスンと横になってしまった。重い、重いよ杏寿郎さん。私潰れちゃ、んんん!?
「あっは、手がくすぐったい!唇くすぐったい!髪の毛もくすぐったい!やめ、うっふぅ!ひーー!!」
私の隊服の釦を外し、シャツをもはだけさせ、脇の方をこちょこちょしながら、首元や耳に唇を寄せてふうふう息をかけてくる。杏寿郎さんの髪の毛もいろんなところに掠めてきて、なんとくすぐったい!
いや、性的に襲われるよりはいいけどさあ!でもこれも困る!実は私は擽り攻撃にめっぽう弱いのだ。
この前杏寿郎さんに知られた時から、杏寿郎さんはよく擽り攻撃を仕掛けてくる。
こんなところでじゃれあっている場合じゃないのに……。
TPO考えて!早く車掌さん来てー!!
「はあ、は……駄目。も、駄目……」
「んー!良い感じに解れたようで何よりだ」
「解れるっていうか、ふにゃふにゃですよぅ。動けなくされたぁ……」
座席にぐったりと身を預け、出ていきかけた魂を口の中にあわてて戻す。そんな私を、杏寿郎さんは笑いながらゆるりと撫でた。
「君は擽りにも弱いなぁ。涙目になるところも可愛らしくてつい、からかってしまいたくなる。もちろん、その先も……な?」
「……その先ぃ?」
開けられたシャツの隙間から、熱い手のひらがするりと滑り込み、私の胸を揉まんとする。
「!?解れるって、そういう意味?ここどこだかわかってやってます?」
「わかっているぞ。まだ誰も来ないから大丈夫だ!!」
「何が大丈夫なものですか!?うぉぉぉぉ絶対にさせなぃぃぃぃ!!」
渾身の力を込め、杏寿郎さんの行いを制止する。
「朝緋は動けないのではなかったのか。……まあ、俺の力の方が強いがな」
でも、たったの一捻りで、杏寿郎さんに行動も何もかも支配されてしまった。私、弱っ!
調理せんと迫る楽しそうな杏寿郎さん。私はもはやまな板の上の鯉です。
「ん、待て。
俺は前にもこうやって列車の中で朝緋に仕置きをしたような気がする」
唇を私の体に寄せた彼が顔を上げる。『以前』の事を思い出しかけているようだ。
そうよ、私に散々お仕置きしてきたことあったのよ。ご自分の所業を顧みて反省して、そして今すぐ私の上から退くのだ。
「記憶を辿りたいので思いつくままお仕置きしてみてもいいだろうか!!」
「はぁ!?駄目に決まってるでしょ!」
なんでそうなるのさ。
お腹が空いていそうなので、杏寿郎さんのおかわりと共に彼の分も追加注文する。
私?もうすでに三人前食べたけどそれが何か?
杏寿郎さんに盗まれた芋天をしっかりと食べ直すまで私の胃袋は止まらなかったのだ。
話によると女性は傷も残らないで済んだようだ。
やはり『前』と同じだ。処置が早かったようで何より。さすがは鬼殺隊の医療班……しのぶもかなりの医療の腕前を持っているけれど、医療班もその辺の医師が太刀打ちできないほどの知識と技術を持つ。
鬼がいなくなったら病院立てるといいかも。薬さえ苦くないならぜひ通院したい。
話の途中で蕎麦が届いた。杏寿郎さんの目の前にはまたもあのかき揚げ。隣の花は赤いとはよく言うが、私の天ぷらより美味しそうに見えてしまう。
「あーー……」
口を開けてちらり、杏寿郎さんを横目で見る。じっと見る。
「……朝緋は先ほど天ぷらを食べたろう?」
「あーー……」
言いたいことはわかるようで、断られた。けれどまだ開け続ける。
「はあ……わかったわかった。ほら、あーん」
「んむぅ、おいひぃ。ありがとう、師範」
「全く、朝緋は仕方のない子だなぁ」
サクサク幸せ。やっぱり美味しい〜。
ほっこり笑顔を浮かべる私に苦笑しながら、ご自身もサクサクと一口くれた残りを齧る。
「柱と継子ってこんなに仲がいいんですね〜。柱はもっと怖い存在だと思っておりましたが、微笑ましい場面が見られて、少し親近感が湧きました」
「柱も人間だからな。それに彼女は妻だから当然仲は良いぞ」
「えっ」
「妻違うっ!いいから二人とも食べてお蕎麦が伸びる!」
「……むぅ」
「あ、はいっ」
変な噂を流されたり勘違いされたらたまったものじゃない。ま、とりあえずさっきの芋天のことはこれで許そう。かき揚げ美味しかった。
「それで、調査任務はどうでしたか?」
食事があらかた済んだのを見計らい、お茶を勧めながら調査報告を促す。
やはり、機関庫に人目につかぬよう搬入されたとの情報だった。
機関庫にあるのならば、そこに行くのは最後だ。まずは、まだ開いている時間であるからして、車掌の遺体が発見された駅の検分に向かうことになった。
異常は相変わらずなし、と。あったら困るけど、こういう地道な調査はとても大事だ。
「鬼なんかいないよ!」
ん?聞き覚えある女の子の声……?
『鬼』という言葉を耳にして、杏寿郎さんが声をかけに行ってしまった。
どんな情報も逃さない精神はいいけど、相手はまだ年端もいかぬ女の子よ。いくらかっこいい美丈夫の貴方だとしても、詰め寄ったら怖がられるでしょうに。
「やあこんばんは!気持ちの良い月夜ですね!」
そう声をかけた相手は眼鏡がかわいい弁当売りの。
「あっ、やっぱりふくちゃんだ」
「え……何この人、私の名前を知ってる……?」
「む!朝緋はこの子を知っているのか?」
おっとお、失言再び。不審そうな目が二つ、此方を見つめる。
「え、あ……、あはは!」
私引っ込む〜。すすす、隊士の後ろに隠れた。
「鬼の話が出ましたよね。俺は鬼を探している者!鬼を知りませんか?」
あーあ、またそんな直球な聞き方……。や、台詞も『前』と同じだからわかってるけどさ。
隊士も要もあずまも驚いてるよ。
そうこうしている内に、あんぱんがビタン!と杏寿郎さんの顔に投げられた。
杏寿郎さんから見たら、投げつけられたのではなく差し上げると手渡されたようなものなのだろう。一瞬の沈黙ののち、美味い美味いと食べている。シュールだ……。
蕎麦のあとのデザートとして、私もあんぱんが欲しいよぉ。
話を聞き終えると、商魂逞しい彼女からお弁当を買い占める。隊への土産と、これから行く場所への小道具代わりだ。……余ったら今度こそ食べたい。余れ!!
「あっ」
最後にこそりとふくちゃんに耳打ち。
「おやつのあんぱん奪っちゃってごめんね。申し訳ないんだけど、何か聞かれたら前に名前を知ったって事にしておいてね。知らないかもしれないけれど、以前お弁当を買ったこともあるので、その時に名前が聞こえちゃったって感じに」
「は、はあ……わかりました」
隊士と別れ、無限列車があるという機関庫への廻送列車に乗り込む私達。
窓から臨む月を見ていれば、ぐいぐい席を詰めてくる気配。あずまや要は違う席で大人しくしているし、杏寿郎さんしかいない。
「せまっ!狭いんだけど?」
「君は弁当屋の少女の名前すら知っているのだな」
「あー……あれね」
「何を隠しているんだ?何を知っている?」
「いや別に何も知らないよ」
「怪しい……とても怪しい」
そりゃ、色々隠してる事満載だけど、言うわけにいかない。どんなに拷問されたって、殺されたって私は口を割らないだろう。うっかりミスで口走ることは多いけど。
それでも杏寿郎さんは、じぃーー。と睨み、どんどん詰め寄る。距離的に唇が重なる一歩手前。
「そんな間近に詰め寄ってこないでよ。私が座席に倒れちゃうじゃない」
「倒れれば良い!そのまま押し倒す!!」
「押し倒すって、もう押し倒してるじゃん!わあっ覆い被さって来ないでぇー!?」
座席にドスンと横になってしまった。重い、重いよ杏寿郎さん。私潰れちゃ、んんん!?
「あっは、手がくすぐったい!唇くすぐったい!髪の毛もくすぐったい!やめ、うっふぅ!ひーー!!」
私の隊服の釦を外し、シャツをもはだけさせ、脇の方をこちょこちょしながら、首元や耳に唇を寄せてふうふう息をかけてくる。杏寿郎さんの髪の毛もいろんなところに掠めてきて、なんとくすぐったい!
いや、性的に襲われるよりはいいけどさあ!でもこれも困る!実は私は擽り攻撃にめっぽう弱いのだ。
この前杏寿郎さんに知られた時から、杏寿郎さんはよく擽り攻撃を仕掛けてくる。
こんなところでじゃれあっている場合じゃないのに……。
TPO考えて!早く車掌さん来てー!!
「はあ、は……駄目。も、駄目……」
「んー!良い感じに解れたようで何よりだ」
「解れるっていうか、ふにゃふにゃですよぅ。動けなくされたぁ……」
座席にぐったりと身を預け、出ていきかけた魂を口の中にあわてて戻す。そんな私を、杏寿郎さんは笑いながらゆるりと撫でた。
「君は擽りにも弱いなぁ。涙目になるところも可愛らしくてつい、からかってしまいたくなる。もちろん、その先も……な?」
「……その先ぃ?」
開けられたシャツの隙間から、熱い手のひらがするりと滑り込み、私の胸を揉まんとする。
「!?解れるって、そういう意味?ここどこだかわかってやってます?」
「わかっているぞ。まだ誰も来ないから大丈夫だ!!」
「何が大丈夫なものですか!?うぉぉぉぉ絶対にさせなぃぃぃぃ!!」
渾身の力を込め、杏寿郎さんの行いを制止する。
「朝緋は動けないのではなかったのか。……まあ、俺の力の方が強いがな」
でも、たったの一捻りで、杏寿郎さんに行動も何もかも支配されてしまった。私、弱っ!
調理せんと迫る楽しそうな杏寿郎さん。私はもはやまな板の上の鯉です。
「ん、待て。
俺は前にもこうやって列車の中で朝緋に仕置きをしたような気がする」
唇を私の体に寄せた彼が顔を上げる。『以前』の事を思い出しかけているようだ。
そうよ、私に散々お仕置きしてきたことあったのよ。ご自分の所業を顧みて反省して、そして今すぐ私の上から退くのだ。
「記憶を辿りたいので思いつくままお仕置きしてみてもいいだろうか!!」
「はぁ!?駄目に決まってるでしょ!」
なんでそうなるのさ。