五周目 肆
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「なーにが立ち位置よ」
思い返すとなんか腹立つなあ。
杏寿郎さんはみんなに優しい。それはよくわかってる。けど……ああもう!
杏寿郎さんが他の女性隊士に告白されてる場面は、これまでにたくさん見てきた。
だったら慣れてるだろうって?慣れているからといって私がそれをスルーできるかっていうとそんなわけないじゃない。
その一つ一つを思い出してムカムカしてくる。
当たり前でしょ。私だって、嫉妬はする。
杏寿郎さんが大好きだから。
ぐきゅるるる──
「うっ……腹が立ったら、甘いもの食べたくなった。甘いものがー!食べーたいー!今すぐによっっ!!」
叫べば往来の人が私をギョッとした顔で見てきた。大きな声出してすみません。
この時代最先端である流行菓子、森永西洋菓子さんのチョコレートクリーム含め、チョコレートを買い込んだ。この両手一杯にだ。
これだけたくさんだと高いけど奮発した。これが!鬼殺隊階級甲の財力じゃあ!!
ちなみに柱になると言った分だけお給金が発生する。……好物が買い放題だね。
「でも相変わらずこの時代のチョコって、少し変わった甘さ……」
カリ、ひとかけら齧ってみる。
本当のことを言うと、あんまり好きな甘さではない。
平成や令和の人がおいしさを追求しすぎた結果かな。あの時代は舌肥えてるよねぇ。これだけ大正の世に慣れてる私でさえ、あの頃食べたものの味はまだ強烈に覚えてるもん。実は味覚って記憶に残りやすい?
湯煎で溶かしてバターとミルク、その他諸々を入れて……自分好みの生チョコレートもどき、はい完成。
これが少し冷えたら丸めて成型して、ココアパウダー、が本当は最高なんだけどなかなか固まらないし待てないから果物つけて食べちゃおうと思う。
あっこれ、チョコレートフォンデュじゃない?最先端〜!
「報告書を書く予定もあるし、お部屋で食べながらやろうっと」
お行儀が悪い?
ごめんなさい、誰も見てないと障子戸すら足で開けちゃう。杏寿郎さんが見たら大目玉食らうやつだね。
報告書を書きながらおやつをもぐもぐ。
最初はお箸で摘んでつけて食べていたけれど、面倒くさくなって指で摘んで食べるまでになってしまった。
もはや、指でチョコレートを掬って舐めとるレベル。行儀の悪さ、ここに極まれり。でも誰も見てないし、報告書に垂らさなければ問題ない。
は〜指がチョコの匂い〜甘い匂い幸せ〜〜。
そんな幸せな時間を壊すかの如く、杏寿郎さんが任務から帰宅した。
血の香りも怪我をしている気配もゼロ。変に気が立っている感じもしないから、心配をする必要はなさそうだ。
キリッ!先ほどまでの喧嘩していたお怒りモードをオンにする。私の部屋にお帰りを言いに来た時点で、言葉を先に返す。
「おかえりなさいませ。お食事とお風呂は用意してありますので、どうぞご勝手に」
棘を最大限に飛ばし、さも「私はまだ怒ってます!」を主張し、顔も見ずにあとは無視する。
が、杏寿郎さんの視線が私から外れない。
部屋を退室しない。
無言の圧が止んだ、と思ったら。
「やだ、なんで私の部屋の布団引っ張り出してるの!?」
勝手に押し入れを開け、布団を引っ張り出す杏寿郎さん。その手が私を引きずり倒し、布団に押し付ける。
「ぎゃんっ!な、何するんですか!?」
かろうじて布団の端とはいえ、すっ転んで顔からダイブ。鼻が潰れた!デジャヴ!!
でも転んですぐ体勢を立て直したので、杏寿郎さんからは離れられた。
「外での続きだ!!」
「喧嘩の続きなら、せめて道場で打ち合いとかじゃない!?喜んでお相手しますが!!」
「いいやここであっているしあんなもの喧嘩ではなかろう!君を叱っただけだ!話をするから入れ!!」
「あれが喧嘩じゃないだって!?入るわけないでしょ!布団を指さして入れだなんて、何よその犬みたいな扱い!そんなの、貴方に食べられるのがオチじゃないの!いつもそのパターンなの私わかってるんだから!!」
ああでも、今の私は犬かもしれない。吠えるような声を上げて相手を威嚇するさまはそっくりだ。
「パターンでも旗でも何でもいいが、君の頭と体にしっかりきっちり教え込まねば終わらない!こっちにおいで!!」
「いやです!部屋から出てって!!ううん、私が出ます!!」
「ああわかったなんて言うと思うか!逃さん!!」
開いた障子戸から逃げる私。……の、尻尾のような長いポニーテールを杏寿郎さんが掴み、思い切り引っ張った。
「あだーー!?」
やばい、頭皮ごと抜ける。
ぐわんと激しいその痛みから逃れるように、後ろに倒れる私の体。
「おっ、女の髪の毛引っ張るなんて柱の!男性のすることですか!抜けてハゲたらどうしてくれんの!?」
「抜けるほど強く引っ張らないから安心してくれ!」
「それは私が痛みで止まったからでしょ!」
あー痛い!全く抜けていないけれど、頭皮がヒリヒリしてつらい。
頭がどうなっているかを確認していれば。
「朝緋……君は往生際が悪いっ」
ふんっ!と一息。抱き上げられて俵担ぎにされてしまった。
「わっ!?やだやだやだ離してばかばかばか!!」
「い゛っ!この、荒馬め!!」
「ぎゃん!」
バシバシバシバシ!杏寿郎さんの背中をたたき、腹を蹴りつければ。
お尻を同じようにバシンと思い切り叩かれた。痛い!柱の力でなんて、お尻が真っ赤になっちゃう!!
そのままあれよあれよの内に布団まで運ばれ、投げ捨てられる。捨てられた先では、縄で縛り上げられる、というとんでもない所業が待ち受けていた。
「荒馬はこうして繋いでおかんとな!」
ちょっと待て。どこから取り出したのさ。
縄抜けできるからいいけどね……って、縄抜けできない仕様に結ばれてるーーっ!?
私は芋虫みたいに転がるのがお似合いってか。
「やだ、何これ。ほどいてよ……!」
「断る。俺がどれほど朝緋を愛しているか、朝緋はまだわかっていないからな。それが俺は悲しくつらいのだ。……縛り上げたくなるほどに」
何だその理由。でも、愛してるというのは私だって一緒だ。
「杏寿郎さん……。私だって、杏寿郎さんのこと、」
「全く!君は!!この体を触らせおって!!嫌がっていなかった、だと!!」
激しい怒りが再熱した。
「はあーー!?結局まだそれ引き摺ってんの!?ちょっと頭触られたくらいじゃん。倒れ込んできただけでしょ!」
「あやつの目に気が付かなかったのか!君に注がれた熱視線に!!あれは愛しい者を見る目だ!!」
「知らんがな!なんか悲しそうな目はしてたけどね!?」
「獪岳は君をひとりの女性として欲しがっている!!」
「えっ、ちょ、欲しがっ……!?
そんなまさか、獪岳が……ええーっただの同期なのに!」
思えばそんな節……あったかもしれない。『繰り返し』の中で、やけに好意的になってきたなあ、とはちょっと思っていた。
でもほら、どちらにせよ私のラブは杏寿郎さんに向いてるから関係ないのよ。うん。
「もういい。他の男の名前は聞きたくない。君のその顔はなんだ?なぜ今、嬉しそうに口角が上がった?」
「口角をあげてなんていない。それに杏寿郎さんが話題にしたんじゃな、──、」
口を閉じろと、噛み付くような口付けでガブリと食まれた。
「んっ、んん、ん゛ーーっ」
「はぁ、甘い。……甘い香りがする……ん、いや、本当に甘いな。しょこらぁとか?」
ペロとご自分の口元、私の唇を舐め取りながら、息の苦しくなるようなキスを与えてくる。
長い間舌先で口内をぐちゃぐちゃに荒らされ、すでに常中が切れてしまっている。
苦しさも快感も全てが杏寿郎さんの手の内で、うまく身動きが取れない。
「は、ぁ、お願い、せめてこの縄を……解いてぇ……、」
「まだ駄目だ。仕置きが足りていない。
……そういえば、そこにしょこらぁとがあるようだな。報告書を書きながら食していたのか?全く、行儀の悪い子だ」
「うっ、すみません……」
「行儀の悪いお給仕さんには、もっと行儀が悪い子にでも堕ちてもらうとしようか」
「は?お給仕さん……?」
にんまりと笑う杏寿郎さんに嫌な予感しかしない。
その後、私はちょっぴりアブノーマルな食べ方で杏寿郎さんに散々お仕置きされながら、隅々まで美味しくいただかれた。
思い返すとなんか腹立つなあ。
杏寿郎さんはみんなに優しい。それはよくわかってる。けど……ああもう!
杏寿郎さんが他の女性隊士に告白されてる場面は、これまでにたくさん見てきた。
だったら慣れてるだろうって?慣れているからといって私がそれをスルーできるかっていうとそんなわけないじゃない。
その一つ一つを思い出してムカムカしてくる。
当たり前でしょ。私だって、嫉妬はする。
杏寿郎さんが大好きだから。
ぐきゅるるる──
「うっ……腹が立ったら、甘いもの食べたくなった。甘いものがー!食べーたいー!今すぐによっっ!!」
叫べば往来の人が私をギョッとした顔で見てきた。大きな声出してすみません。
この時代最先端である流行菓子、森永西洋菓子さんのチョコレートクリーム含め、チョコレートを買い込んだ。この両手一杯にだ。
これだけたくさんだと高いけど奮発した。これが!鬼殺隊階級甲の財力じゃあ!!
ちなみに柱になると言った分だけお給金が発生する。……好物が買い放題だね。
「でも相変わらずこの時代のチョコって、少し変わった甘さ……」
カリ、ひとかけら齧ってみる。
本当のことを言うと、あんまり好きな甘さではない。
平成や令和の人がおいしさを追求しすぎた結果かな。あの時代は舌肥えてるよねぇ。これだけ大正の世に慣れてる私でさえ、あの頃食べたものの味はまだ強烈に覚えてるもん。実は味覚って記憶に残りやすい?
湯煎で溶かしてバターとミルク、その他諸々を入れて……自分好みの生チョコレートもどき、はい完成。
これが少し冷えたら丸めて成型して、ココアパウダー、が本当は最高なんだけどなかなか固まらないし待てないから果物つけて食べちゃおうと思う。
あっこれ、チョコレートフォンデュじゃない?最先端〜!
「報告書を書く予定もあるし、お部屋で食べながらやろうっと」
お行儀が悪い?
ごめんなさい、誰も見てないと障子戸すら足で開けちゃう。杏寿郎さんが見たら大目玉食らうやつだね。
報告書を書きながらおやつをもぐもぐ。
最初はお箸で摘んでつけて食べていたけれど、面倒くさくなって指で摘んで食べるまでになってしまった。
もはや、指でチョコレートを掬って舐めとるレベル。行儀の悪さ、ここに極まれり。でも誰も見てないし、報告書に垂らさなければ問題ない。
は〜指がチョコの匂い〜甘い匂い幸せ〜〜。
そんな幸せな時間を壊すかの如く、杏寿郎さんが任務から帰宅した。
血の香りも怪我をしている気配もゼロ。変に気が立っている感じもしないから、心配をする必要はなさそうだ。
キリッ!先ほどまでの喧嘩していたお怒りモードをオンにする。私の部屋にお帰りを言いに来た時点で、言葉を先に返す。
「おかえりなさいませ。お食事とお風呂は用意してありますので、どうぞご勝手に」
棘を最大限に飛ばし、さも「私はまだ怒ってます!」を主張し、顔も見ずにあとは無視する。
が、杏寿郎さんの視線が私から外れない。
部屋を退室しない。
無言の圧が止んだ、と思ったら。
「やだ、なんで私の部屋の布団引っ張り出してるの!?」
勝手に押し入れを開け、布団を引っ張り出す杏寿郎さん。その手が私を引きずり倒し、布団に押し付ける。
「ぎゃんっ!な、何するんですか!?」
かろうじて布団の端とはいえ、すっ転んで顔からダイブ。鼻が潰れた!デジャヴ!!
でも転んですぐ体勢を立て直したので、杏寿郎さんからは離れられた。
「外での続きだ!!」
「喧嘩の続きなら、せめて道場で打ち合いとかじゃない!?喜んでお相手しますが!!」
「いいやここであっているしあんなもの喧嘩ではなかろう!君を叱っただけだ!話をするから入れ!!」
「あれが喧嘩じゃないだって!?入るわけないでしょ!布団を指さして入れだなんて、何よその犬みたいな扱い!そんなの、貴方に食べられるのがオチじゃないの!いつもそのパターンなの私わかってるんだから!!」
ああでも、今の私は犬かもしれない。吠えるような声を上げて相手を威嚇するさまはそっくりだ。
「パターンでも旗でも何でもいいが、君の頭と体にしっかりきっちり教え込まねば終わらない!こっちにおいで!!」
「いやです!部屋から出てって!!ううん、私が出ます!!」
「ああわかったなんて言うと思うか!逃さん!!」
開いた障子戸から逃げる私。……の、尻尾のような長いポニーテールを杏寿郎さんが掴み、思い切り引っ張った。
「あだーー!?」
やばい、頭皮ごと抜ける。
ぐわんと激しいその痛みから逃れるように、後ろに倒れる私の体。
「おっ、女の髪の毛引っ張るなんて柱の!男性のすることですか!抜けてハゲたらどうしてくれんの!?」
「抜けるほど強く引っ張らないから安心してくれ!」
「それは私が痛みで止まったからでしょ!」
あー痛い!全く抜けていないけれど、頭皮がヒリヒリしてつらい。
頭がどうなっているかを確認していれば。
「朝緋……君は往生際が悪いっ」
ふんっ!と一息。抱き上げられて俵担ぎにされてしまった。
「わっ!?やだやだやだ離してばかばかばか!!」
「い゛っ!この、荒馬め!!」
「ぎゃん!」
バシバシバシバシ!杏寿郎さんの背中をたたき、腹を蹴りつければ。
お尻を同じようにバシンと思い切り叩かれた。痛い!柱の力でなんて、お尻が真っ赤になっちゃう!!
そのままあれよあれよの内に布団まで運ばれ、投げ捨てられる。捨てられた先では、縄で縛り上げられる、というとんでもない所業が待ち受けていた。
「荒馬はこうして繋いでおかんとな!」
ちょっと待て。どこから取り出したのさ。
縄抜けできるからいいけどね……って、縄抜けできない仕様に結ばれてるーーっ!?
私は芋虫みたいに転がるのがお似合いってか。
「やだ、何これ。ほどいてよ……!」
「断る。俺がどれほど朝緋を愛しているか、朝緋はまだわかっていないからな。それが俺は悲しくつらいのだ。……縛り上げたくなるほどに」
何だその理由。でも、愛してるというのは私だって一緒だ。
「杏寿郎さん……。私だって、杏寿郎さんのこと、」
「全く!君は!!この体を触らせおって!!嫌がっていなかった、だと!!」
激しい怒りが再熱した。
「はあーー!?結局まだそれ引き摺ってんの!?ちょっと頭触られたくらいじゃん。倒れ込んできただけでしょ!」
「あやつの目に気が付かなかったのか!君に注がれた熱視線に!!あれは愛しい者を見る目だ!!」
「知らんがな!なんか悲しそうな目はしてたけどね!?」
「獪岳は君をひとりの女性として欲しがっている!!」
「えっ、ちょ、欲しがっ……!?
そんなまさか、獪岳が……ええーっただの同期なのに!」
思えばそんな節……あったかもしれない。『繰り返し』の中で、やけに好意的になってきたなあ、とはちょっと思っていた。
でもほら、どちらにせよ私のラブは杏寿郎さんに向いてるから関係ないのよ。うん。
「もういい。他の男の名前は聞きたくない。君のその顔はなんだ?なぜ今、嬉しそうに口角が上がった?」
「口角をあげてなんていない。それに杏寿郎さんが話題にしたんじゃな、──、」
口を閉じろと、噛み付くような口付けでガブリと食まれた。
「んっ、んん、ん゛ーーっ」
「はぁ、甘い。……甘い香りがする……ん、いや、本当に甘いな。しょこらぁとか?」
ペロとご自分の口元、私の唇を舐め取りながら、息の苦しくなるようなキスを与えてくる。
長い間舌先で口内をぐちゃぐちゃに荒らされ、すでに常中が切れてしまっている。
苦しさも快感も全てが杏寿郎さんの手の内で、うまく身動きが取れない。
「は、ぁ、お願い、せめてこの縄を……解いてぇ……、」
「まだ駄目だ。仕置きが足りていない。
……そういえば、そこにしょこらぁとがあるようだな。報告書を書きながら食していたのか?全く、行儀の悪い子だ」
「うっ、すみません……」
「行儀の悪いお給仕さんには、もっと行儀が悪い子にでも堕ちてもらうとしようか」
「は?お給仕さん……?」
にんまりと笑う杏寿郎さんに嫌な予感しかしない。
その後、私はちょっぴりアブノーマルな食べ方で杏寿郎さんに散々お仕置きされながら、隅々まで美味しくいただかれた。