五周目 肆
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
強さを追い求める私は、久しぶりに獪岳にご教授賜り、雷の呼吸を教わった。
雷の呼吸、参ノ型 聚蚊成雷。
体を回転させながら波状に複数の斬撃を繰り出すという、目も回りそうで腕も忙しくなりそうな技だ。
前も教わったんだけど、これがなかなか難しくて覚えきれていなかったのよね。
他にも雷の呼吸には技がたくさんあるというに。……先は長そうだ。
「んぎゅっ」
ほら。攻撃が上手くいかなくて、また転んだ。
「何やってんだ馬鹿」
「馬鹿っていう方が馬鹿なのよー」
「うるせ馬鹿。朝緋は回転数が足りてないんだよ。もっと速く動け馬鹿」
腹は立つけど馬鹿の応酬してると時間があっという間にたってしまうので私からやめておこう。
「もっと速くとか、難しいこと言うんだから」
「お前だったらできるだろうよ」
「速く動けても目が回っちゃうよ。
私基本は炎の呼吸使いなんでー。雷の呼吸使いじゃないんでー。どっしり構えて技を放つ方なんでー」
「ちょこまか鼠みたいに忙しなく動くくせに何言ってやがる。てめえの動きだけは、炎の呼吸使いじゃねえよ」
言うに事欠いて鼠かい。
「やだ炎の呼吸がいい。炎の呼吸愛してる大好き」
「あ、そ。好きにすればいい」
「好きにするわよ。にしても違う呼吸を使うとさすがに疲れるね。汗かいたわ、あー暑い」
羽織はすでに脱いでいたけど、隊服の上も脱ぎ、シャツ一枚になる。釦を一つ開けくつろげ、ぱたぱた。涼しい。
「ん、首元の、なんだそれ……指輪?」
「師範にいただいたの」
獪岳がしゃらしゃら揺れるそれに気がついたようだ。
落ちちゃうと嫌だから、私は銀のチェーンでネックレスにして普段から身につけることにしたのよね。これならよほどの攻撃を受けない限りは、壊れたり落としたりすることもない。
ま、攻撃といっても首を狙われたりしない限り大丈夫なはず。首を狙われるのなんて、普通は鬼だけだし。
「指輪ってことは、お前……まさか炎柱と、」
この時代、指輪はカジュアルなお洒落文化ではない。とても高価で、結婚する人のためのもの、というイメージの方がまだまだ強い。
「えへへ、そのうちね!」
「へえ、……そのうち……」
杏寿郎さんの平穏無事な未来が約束されたものになれば、その時こそ私は杏寿郎さんのお側にありたいと思う。
「その時は獪岳も祝福して、く……!?」
どん、ドサッ──
「えっ、……ぇ?」
視点がくるりと回転。獪岳が私に覆い被さってきた。ご丁寧にも、私が頭を打ちつけないように、後頭部には獪岳の手が回っている。
……何この優しい手。
って、近!顔、近い!!
もう一本の手が私の顔の脇にドンと置かれる。あらー、いわゆる床ドンってやつね!?……じゃないのよもう!!
獪岳とそんな、恋愛フラグっていうのだっけ?そういうのだって、立った覚えないんだけどどういうこと?何で私この人に乗っかられてるの?押し倒された人の図よこれ。
「何の真似?獪岳も疲れて倒れちゃった、とかじゃないよね?」
「………………」
「……ねぇ、何か言ったらどうなの?
これだと見た人に勘違いされちゃうよ?ちょっと、早くどいてよ」
「……いやだ」
眉間に小さく皺が寄ってる。いつも皺を寄せている気がしないでもないけど、その表情はいつものそれと違う物だ。……なんでそんな傷ついたような目をするの?
あ、獪岳の匂いがしてきた。獪岳がよく食べている桃のような少し甘い香りと、男の人の香り……。
その匂いが少しずつ近づいてくる。
「朝緋、獪岳少年との鍛錬は終わっ……」
杏寿郎さんが来たのはその瞬間だ。
……一番見られちゃまずい人に見られた。
「何をしている!!」
「……へっ、そろそろ来る頃だと思ってたぜ。炎柱様々がお前を迎えに、な」
声を荒げた杏寿郎さんが、その言葉を前に眉間にものすごい皺を寄せた。わ、獪岳以上の深い皺……。
珍しいくらいイライラしているのが、私にも獪岳にも伝わってくる。獪岳が鼻で笑った。
……ああ、なんだ。杏寿郎さんをイラつかせるために私の事を利用しただけか。
獪岳と杏寿郎さんはなぜか仲があまりよくないのよね。これも『今までの記憶』に刻まれてるのかしら。
まあ、たまに意地悪になる獪岳だしなあ。なんとなくで私に意地悪を、杏寿郎さんに嫌がらせしただけの可能性もある。
そんなことを考えていれば、私の視界はまた回る。一瞬のうちに地面から、杏寿郎さんの腕の中へと移動してしまった。早いなぁ……こんなことに全集中の呼吸を使うとは。
「獪岳少年、君は今一体何をしていたのだろうか?答えによっては、処罰したいとも考えている」
「別に」
「別にだと?答えになっていない。処罰物だな」
「師範。さすがにそれは職権濫用……」
「嫌がるおなごに無体を働こうとしたのだ。そんな隊士は処罰するに決まっている!」
「え、別に私嫌がってなんて」
鬼のように激しく怒る目の前の人を少しでも落ち着かせようと、軽い気持ちで発言してしまった。
「朝緋……?」
ピタリ、私の方を見て止まる杏寿郎さんの目。
失言だと気がついた時には、杏寿郎さんの怒りの矛先は獪岳から私に移行していた。
静かな怒りが全身から発せられている。
うわ、こわっ。
「獪岳少年と朝緋の鍛錬は終いだ。いいな?」
「ああ」
「ぇっ、ちょっとま……、」
今終わられたら、私超超怒られるのでは?私の性格を考えると喧嘩一直線だよね?
やだ、やめてまだ鍛錬してた方がまし!誰かなんとかして。
「お疲れ、朝緋。手取り足取りお前の体に教え込んだんだから、自分でも鍛錬しろよ」
「──手取り足取り?体に教え込んだ?」
あああああ獪岳うううう!言い方ぁぁ!!
去っていく獪岳の背中に私は呪いをかけた。箪笥の角に小指ぶつけろ!!
「なあ朝緋」
低い低い声が頭の上に降ってきて、思わずびくりと反応してしまった。聞かないふりは無理だ。きっと離れようとしてもこの腕の中から解放しては……もらえないよね。
「何をしていたんだ?」
「何って、そりゃもう、雷の呼吸をご指導してもらってただけですが……」
杏寿郎さんにはどこに誰と何をしに行くのか、前もって話をしてある。でないと怒るし。
獪岳と、と言うと少し嫌そうだったけど最終的には快く送り出してくれた。
「手取り足取りとはなんだ。体にとは?なぜ触らせた。
何より、あの状態で朝緋は嫌がっていなかっただと?」
「別に、手取り足取りなわけないじゃんかあ……ただ転んだだけみたいなあれに、嫌がるも何もないよ……」
うわ、すんごい視線の刃がグサグサ刺さってくる。怖いよぉ……。杏寿郎さんの方は見ないように、下向いてもごもご答える。
「ちゃんと此方を見て、答えにも自信があるならもっと大きな声で話しなさい」
「や、です……放して、ください」
しばしの沈黙と共に、私を囲う杏寿郎さんの腕の力はさらに強さを増した。
「はあ…………。君が一体誰のものなのか、君はまだ理解をしていない。首輪となっているその指輪も、何の意味もなさないのか?
……俺は悋気を覚える…………気が狂いそうな俺のこの気持ちがわからんのかッッ!?」
「うっるさッ!!」
至近距離。大声で怒鳴られて私もぷっちんした。
こんなところで全集中の呼吸を使って悪いけれど、杏寿郎さんの腕を思い切り振り払い、睨みつけながら捲し立てる。
「何よ!私だって、杏寿郎さんに好きって告白してる子に嫉妬の一つや二つや星の数ほどしてきたよ!!それを棚に上げて、獪岳と鍛錬してただけの私を非難するんだ!?」
「俺は断っている!手一つ触れられてもいないし、此方から触れてもいない!!」
「そうね!?断ってくれたのはいいよ!でもすっぱり切り捨てず、いい顔して断るから余計に好きが向いてるじゃん!女の子達から私に悪い感情向いてくるじゃん!!あれ、すっごく嫌なんですけど!!迷惑!!」
女性隊士の友達増えないし。まあ、階級甲の女性隊士なんて他にほぼゼロだけどさ。
「勇気を出して声をかけてくれた女性に失礼だろう!それが嫌ならば正式に夫婦になってしまえば問題ない。はやく俺の言葉に頷けばいい!!」
「うっ……それだけはまだ駄目って言ってるでしょ……」
「朝緋!何で君はそう頑ななんだ!!」
「ふーんだ」
ムスッとしてぷいっ。
「あっこら!ちゃんと此方を見て話を聞くように言っただろう!君は悪い子だな!?他のおなごの方が良い子だぞ!!」
「悪い子で結構です!
……ほら、要が任務だと呼んでますよ?え、ん、ば、し、ら、さ、ま?」
顔を背けた先、上空に旋回する要を見つける。次いで炎柱煉獄杏寿郎に向けた、任務だという言葉。
「むぅ……!行ってくる。朝緋は自分の立ち位置をよくよく考えておきなさい!!」
いつもより痛い頭を撫でる行為。撫でるじゃない、これはもう攻撃レベルの強さだ。
ガシガシ揉みくちゃにしてから、杏寿郎さんはその台詞と共に、この場を後にして行った。
雷の呼吸、参ノ型 聚蚊成雷。
体を回転させながら波状に複数の斬撃を繰り出すという、目も回りそうで腕も忙しくなりそうな技だ。
前も教わったんだけど、これがなかなか難しくて覚えきれていなかったのよね。
他にも雷の呼吸には技がたくさんあるというに。……先は長そうだ。
「んぎゅっ」
ほら。攻撃が上手くいかなくて、また転んだ。
「何やってんだ馬鹿」
「馬鹿っていう方が馬鹿なのよー」
「うるせ馬鹿。朝緋は回転数が足りてないんだよ。もっと速く動け馬鹿」
腹は立つけど馬鹿の応酬してると時間があっという間にたってしまうので私からやめておこう。
「もっと速くとか、難しいこと言うんだから」
「お前だったらできるだろうよ」
「速く動けても目が回っちゃうよ。
私基本は炎の呼吸使いなんでー。雷の呼吸使いじゃないんでー。どっしり構えて技を放つ方なんでー」
「ちょこまか鼠みたいに忙しなく動くくせに何言ってやがる。てめえの動きだけは、炎の呼吸使いじゃねえよ」
言うに事欠いて鼠かい。
「やだ炎の呼吸がいい。炎の呼吸愛してる大好き」
「あ、そ。好きにすればいい」
「好きにするわよ。にしても違う呼吸を使うとさすがに疲れるね。汗かいたわ、あー暑い」
羽織はすでに脱いでいたけど、隊服の上も脱ぎ、シャツ一枚になる。釦を一つ開けくつろげ、ぱたぱた。涼しい。
「ん、首元の、なんだそれ……指輪?」
「師範にいただいたの」
獪岳がしゃらしゃら揺れるそれに気がついたようだ。
落ちちゃうと嫌だから、私は銀のチェーンでネックレスにして普段から身につけることにしたのよね。これならよほどの攻撃を受けない限りは、壊れたり落としたりすることもない。
ま、攻撃といっても首を狙われたりしない限り大丈夫なはず。首を狙われるのなんて、普通は鬼だけだし。
「指輪ってことは、お前……まさか炎柱と、」
この時代、指輪はカジュアルなお洒落文化ではない。とても高価で、結婚する人のためのもの、というイメージの方がまだまだ強い。
「えへへ、そのうちね!」
「へえ、……そのうち……」
杏寿郎さんの平穏無事な未来が約束されたものになれば、その時こそ私は杏寿郎さんのお側にありたいと思う。
「その時は獪岳も祝福して、く……!?」
どん、ドサッ──
「えっ、……ぇ?」
視点がくるりと回転。獪岳が私に覆い被さってきた。ご丁寧にも、私が頭を打ちつけないように、後頭部には獪岳の手が回っている。
……何この優しい手。
って、近!顔、近い!!
もう一本の手が私の顔の脇にドンと置かれる。あらー、いわゆる床ドンってやつね!?……じゃないのよもう!!
獪岳とそんな、恋愛フラグっていうのだっけ?そういうのだって、立った覚えないんだけどどういうこと?何で私この人に乗っかられてるの?押し倒された人の図よこれ。
「何の真似?獪岳も疲れて倒れちゃった、とかじゃないよね?」
「………………」
「……ねぇ、何か言ったらどうなの?
これだと見た人に勘違いされちゃうよ?ちょっと、早くどいてよ」
「……いやだ」
眉間に小さく皺が寄ってる。いつも皺を寄せている気がしないでもないけど、その表情はいつものそれと違う物だ。……なんでそんな傷ついたような目をするの?
あ、獪岳の匂いがしてきた。獪岳がよく食べている桃のような少し甘い香りと、男の人の香り……。
その匂いが少しずつ近づいてくる。
「朝緋、獪岳少年との鍛錬は終わっ……」
杏寿郎さんが来たのはその瞬間だ。
……一番見られちゃまずい人に見られた。
「何をしている!!」
「……へっ、そろそろ来る頃だと思ってたぜ。炎柱様々がお前を迎えに、な」
声を荒げた杏寿郎さんが、その言葉を前に眉間にものすごい皺を寄せた。わ、獪岳以上の深い皺……。
珍しいくらいイライラしているのが、私にも獪岳にも伝わってくる。獪岳が鼻で笑った。
……ああ、なんだ。杏寿郎さんをイラつかせるために私の事を利用しただけか。
獪岳と杏寿郎さんはなぜか仲があまりよくないのよね。これも『今までの記憶』に刻まれてるのかしら。
まあ、たまに意地悪になる獪岳だしなあ。なんとなくで私に意地悪を、杏寿郎さんに嫌がらせしただけの可能性もある。
そんなことを考えていれば、私の視界はまた回る。一瞬のうちに地面から、杏寿郎さんの腕の中へと移動してしまった。早いなぁ……こんなことに全集中の呼吸を使うとは。
「獪岳少年、君は今一体何をしていたのだろうか?答えによっては、処罰したいとも考えている」
「別に」
「別にだと?答えになっていない。処罰物だな」
「師範。さすがにそれは職権濫用……」
「嫌がるおなごに無体を働こうとしたのだ。そんな隊士は処罰するに決まっている!」
「え、別に私嫌がってなんて」
鬼のように激しく怒る目の前の人を少しでも落ち着かせようと、軽い気持ちで発言してしまった。
「朝緋……?」
ピタリ、私の方を見て止まる杏寿郎さんの目。
失言だと気がついた時には、杏寿郎さんの怒りの矛先は獪岳から私に移行していた。
静かな怒りが全身から発せられている。
うわ、こわっ。
「獪岳少年と朝緋の鍛錬は終いだ。いいな?」
「ああ」
「ぇっ、ちょっとま……、」
今終わられたら、私超超怒られるのでは?私の性格を考えると喧嘩一直線だよね?
やだ、やめてまだ鍛錬してた方がまし!誰かなんとかして。
「お疲れ、朝緋。手取り足取りお前の体に教え込んだんだから、自分でも鍛錬しろよ」
「──手取り足取り?体に教え込んだ?」
あああああ獪岳うううう!言い方ぁぁ!!
去っていく獪岳の背中に私は呪いをかけた。箪笥の角に小指ぶつけろ!!
「なあ朝緋」
低い低い声が頭の上に降ってきて、思わずびくりと反応してしまった。聞かないふりは無理だ。きっと離れようとしてもこの腕の中から解放しては……もらえないよね。
「何をしていたんだ?」
「何って、そりゃもう、雷の呼吸をご指導してもらってただけですが……」
杏寿郎さんにはどこに誰と何をしに行くのか、前もって話をしてある。でないと怒るし。
獪岳と、と言うと少し嫌そうだったけど最終的には快く送り出してくれた。
「手取り足取りとはなんだ。体にとは?なぜ触らせた。
何より、あの状態で朝緋は嫌がっていなかっただと?」
「別に、手取り足取りなわけないじゃんかあ……ただ転んだだけみたいなあれに、嫌がるも何もないよ……」
うわ、すんごい視線の刃がグサグサ刺さってくる。怖いよぉ……。杏寿郎さんの方は見ないように、下向いてもごもご答える。
「ちゃんと此方を見て、答えにも自信があるならもっと大きな声で話しなさい」
「や、です……放して、ください」
しばしの沈黙と共に、私を囲う杏寿郎さんの腕の力はさらに強さを増した。
「はあ…………。君が一体誰のものなのか、君はまだ理解をしていない。首輪となっているその指輪も、何の意味もなさないのか?
……俺は悋気を覚える…………気が狂いそうな俺のこの気持ちがわからんのかッッ!?」
「うっるさッ!!」
至近距離。大声で怒鳴られて私もぷっちんした。
こんなところで全集中の呼吸を使って悪いけれど、杏寿郎さんの腕を思い切り振り払い、睨みつけながら捲し立てる。
「何よ!私だって、杏寿郎さんに好きって告白してる子に嫉妬の一つや二つや星の数ほどしてきたよ!!それを棚に上げて、獪岳と鍛錬してただけの私を非難するんだ!?」
「俺は断っている!手一つ触れられてもいないし、此方から触れてもいない!!」
「そうね!?断ってくれたのはいいよ!でもすっぱり切り捨てず、いい顔して断るから余計に好きが向いてるじゃん!女の子達から私に悪い感情向いてくるじゃん!!あれ、すっごく嫌なんですけど!!迷惑!!」
女性隊士の友達増えないし。まあ、階級甲の女性隊士なんて他にほぼゼロだけどさ。
「勇気を出して声をかけてくれた女性に失礼だろう!それが嫌ならば正式に夫婦になってしまえば問題ない。はやく俺の言葉に頷けばいい!!」
「うっ……それだけはまだ駄目って言ってるでしょ……」
「朝緋!何で君はそう頑ななんだ!!」
「ふーんだ」
ムスッとしてぷいっ。
「あっこら!ちゃんと此方を見て話を聞くように言っただろう!君は悪い子だな!?他のおなごの方が良い子だぞ!!」
「悪い子で結構です!
……ほら、要が任務だと呼んでますよ?え、ん、ば、し、ら、さ、ま?」
顔を背けた先、上空に旋回する要を見つける。次いで炎柱煉獄杏寿郎に向けた、任務だという言葉。
「むぅ……!行ってくる。朝緋は自分の立ち位置をよくよく考えておきなさい!!」
いつもより痛い頭を撫でる行為。撫でるじゃない、これはもう攻撃レベルの強さだ。
ガシガシ揉みくちゃにしてから、杏寿郎さんはその台詞と共に、この場を後にして行った。