五周目 肆
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お盆の時期だろうと鬼は関係なく活動する。
今回私に課せられたのは、蟲柱・胡蝶しのぶと恋柱・甘露寺蜜璃との三人による合同任務だった。
場所は浅草のはずれ。隅田川沿いのあたりに巣食うとされている鬼の討伐。
女三人寄れば姦しい、だなんてよく言うよね。
「三人も女性が集まるとうるさくてかなわない」など、良い意味で取られることの少ないことわざだけど「明るくて賑やかで華やかで、見ると幸せな気持ちになる」そういうポジティブな意味を推したい。
私はともかくとして、しのぶと蜜璃は綺麗で美しくとてもかわいらしい女性の柱だ。
こんなに素敵な女性なのに鬼殺隊の上に立つ、強き者。柱である。
……二人は柱。なのに私は強くなった気がしてただけの弱い女だ。その差にちょっともやもやするのは仕方ない。
そりゃあ、友達二人との任務だなんて今のいままでなかったから、命の取り合いの最中とはいえ嬉しいけどね。
でもどちらにせよ早く終わらせて、私は瑠火さんのお墓参りに行きたいと思っていた。お盆なのだから煉獄家のお盆に参加したい。……迎え盆はすでに他の任務に行っていたから間に合わなかったけど、せめて送り盆だけでも参加したいなぁと、思っていたの。
送り盆がいつなのかって?今日だよ!はいもう無理ーー!今日というか午前様に回ったからもう昨日だし!!
むむむ、代わりに川に灯篭流ししようかしら。ただいずれ環境問題に繋がる事だから、火を使わないごみがほとんど出ない方法。和紙に故人に宛てた文をしたためて流す……みたいなのがいいかもね。和紙ならやがて溶けて消える。
その時、二人の鋭い声が耳に届いた。
「朝緋さん!何を呆けているんですッ!」
「そっち行ったわよ!朝緋ちゃん!」
ハッとして無意識に刀を構え声の方を見れば。
水陸両用型、オオサンショウウオのような体躯で両生類を模した姿。だがやたらと動きは素早いという鬼。それがこちらに全速力で向かってきていた。
しまった、柱が二人いるからと安心していた。
これは任務で命の取り合い。安心や油断は禁物なのに。
……というか。
「改めて言うけど気持ち悪っ!」
気持ち悪い見た目の鬼だとは思っていたけれど、それが全速力とか悪夢以外の何ものでもない。
しのぶの藤毒を喰らっても動けるところを見るに、毒耐性はあったのだろう。鱗の皮膚をところどころ爛れさせ、蜜璃からは壱ノ型・初恋のわななきで斬り刻まれているのに頸はスレスレでまだ健在という状態。
「そこの鬼狩り!どーーけーー!!」
皮一枚で繋がったままの頸。カパリと大きく開いた口から、分厚く長い舌がびゅるりと飛んできた。
ウッ……これもまた触手系の鬼に見えて来た……私のトラウマ掘り起こさないでよね。
「ああほんと気持ち悪いこっち来んな!!水の呼吸 壱ノ型・水面斬り!!
……あっ!」
スパンと斬り落としたのは、その鬼の舌だけだった。舌なんかいくら斬り落としてもなんの意味もない。鬼だから回復するのに。
「頸を落としなさい!炎柱が継子、煉獄朝緋!!」
「お願い、朝緋ちゃん!」
命令とお願いの形で言っているけれど、強くなりたいとばかり洩らしていた私に、鬼の頸を斬っていいよと柱二人が譲ってくれた。二人が斬ったほうが簡単だったのにその機会をもらえるだなんて何とありがたいことだろう。
……わかってる。私は誇り高き炎柱の継子。彼の顔に泥は塗らない。
鬼の頸は次の一太刀で仕留める!
「任せて……よっ!!──逃さない」
強く強く自分の炎の化身を握れば、刀身が私の心の炎で燃え上がり、赤の色を鮮明にする。熱い。熱い!
この煉獄の灼熱の炎で灰燼に帰してくれる!
「──炎の呼吸 参ノ型!気炎万象!!」
身軽に跳び上がって宙返り。
重力の力を借り威力の増した気炎万象で鬼の頸に刃を入れる。
今度こそ頸と胴体が綺麗に分かれた。鬼が黒く黒く真っ黒焦げになるように燃えゆく。
その最期は呆気なかった。声も出さずに、だなんて……。
「イモリの黒焼き、完成です」
表では冗談まじりに言いつつも、消えていく鬼の頸と体を前に、心の中で手を合わせる。
鬼だって元は人間だ。死をもって罪を償う形を取らせてもらう他ないけれど、次に生まれる時は鬼にならず鬼に害されず、幸せに生きて欲しい。
二人が任務完了の報告を烏に伝え、労いの言葉をかけてくれた。祈りの時間はおしまい。
「やったわね、朝緋ちゃん!」
「お疲れ様です。でもイモリじゃありませんでしょうに。惚れ薬や精力剤でも作る気だったのですか?」
そういえばイモリの黒焼きって惚れ薬とか精力剤になるんだったっけ。
どちらにせよ鬼の亡骸なのですぐ消えちゃう上に、実際にイモリの黒焼きがあったとしても絶対に要らない。
もう私は杏寿郎さんに惚れているし、杏寿郎さんもこんな私の事を好きでいてくださる。精力剤なんて要らないくらい杏寿郎さんは性欲が強いし、いつも精力満タンだ。
「間に合ってる!」
「「えっ間に合ってる!?」」
あっ、返答のチョイス間違えた。
今回私に課せられたのは、蟲柱・胡蝶しのぶと恋柱・甘露寺蜜璃との三人による合同任務だった。
場所は浅草のはずれ。隅田川沿いのあたりに巣食うとされている鬼の討伐。
女三人寄れば姦しい、だなんてよく言うよね。
「三人も女性が集まるとうるさくてかなわない」など、良い意味で取られることの少ないことわざだけど「明るくて賑やかで華やかで、見ると幸せな気持ちになる」そういうポジティブな意味を推したい。
私はともかくとして、しのぶと蜜璃は綺麗で美しくとてもかわいらしい女性の柱だ。
こんなに素敵な女性なのに鬼殺隊の上に立つ、強き者。柱である。
……二人は柱。なのに私は強くなった気がしてただけの弱い女だ。その差にちょっともやもやするのは仕方ない。
そりゃあ、友達二人との任務だなんて今のいままでなかったから、命の取り合いの最中とはいえ嬉しいけどね。
でもどちらにせよ早く終わらせて、私は瑠火さんのお墓参りに行きたいと思っていた。お盆なのだから煉獄家のお盆に参加したい。……迎え盆はすでに他の任務に行っていたから間に合わなかったけど、せめて送り盆だけでも参加したいなぁと、思っていたの。
送り盆がいつなのかって?今日だよ!はいもう無理ーー!今日というか午前様に回ったからもう昨日だし!!
むむむ、代わりに川に灯篭流ししようかしら。ただいずれ環境問題に繋がる事だから、火を使わないごみがほとんど出ない方法。和紙に故人に宛てた文をしたためて流す……みたいなのがいいかもね。和紙ならやがて溶けて消える。
その時、二人の鋭い声が耳に届いた。
「朝緋さん!何を呆けているんですッ!」
「そっち行ったわよ!朝緋ちゃん!」
ハッとして無意識に刀を構え声の方を見れば。
水陸両用型、オオサンショウウオのような体躯で両生類を模した姿。だがやたらと動きは素早いという鬼。それがこちらに全速力で向かってきていた。
しまった、柱が二人いるからと安心していた。
これは任務で命の取り合い。安心や油断は禁物なのに。
……というか。
「改めて言うけど気持ち悪っ!」
気持ち悪い見た目の鬼だとは思っていたけれど、それが全速力とか悪夢以外の何ものでもない。
しのぶの藤毒を喰らっても動けるところを見るに、毒耐性はあったのだろう。鱗の皮膚をところどころ爛れさせ、蜜璃からは壱ノ型・初恋のわななきで斬り刻まれているのに頸はスレスレでまだ健在という状態。
「そこの鬼狩り!どーーけーー!!」
皮一枚で繋がったままの頸。カパリと大きく開いた口から、分厚く長い舌がびゅるりと飛んできた。
ウッ……これもまた触手系の鬼に見えて来た……私のトラウマ掘り起こさないでよね。
「ああほんと気持ち悪いこっち来んな!!水の呼吸 壱ノ型・水面斬り!!
……あっ!」
スパンと斬り落としたのは、その鬼の舌だけだった。舌なんかいくら斬り落としてもなんの意味もない。鬼だから回復するのに。
「頸を落としなさい!炎柱が継子、煉獄朝緋!!」
「お願い、朝緋ちゃん!」
命令とお願いの形で言っているけれど、強くなりたいとばかり洩らしていた私に、鬼の頸を斬っていいよと柱二人が譲ってくれた。二人が斬ったほうが簡単だったのにその機会をもらえるだなんて何とありがたいことだろう。
……わかってる。私は誇り高き炎柱の継子。彼の顔に泥は塗らない。
鬼の頸は次の一太刀で仕留める!
「任せて……よっ!!──逃さない」
強く強く自分の炎の化身を握れば、刀身が私の心の炎で燃え上がり、赤の色を鮮明にする。熱い。熱い!
この煉獄の灼熱の炎で灰燼に帰してくれる!
「──炎の呼吸 参ノ型!気炎万象!!」
身軽に跳び上がって宙返り。
重力の力を借り威力の増した気炎万象で鬼の頸に刃を入れる。
今度こそ頸と胴体が綺麗に分かれた。鬼が黒く黒く真っ黒焦げになるように燃えゆく。
その最期は呆気なかった。声も出さずに、だなんて……。
「イモリの黒焼き、完成です」
表では冗談まじりに言いつつも、消えていく鬼の頸と体を前に、心の中で手を合わせる。
鬼だって元は人間だ。死をもって罪を償う形を取らせてもらう他ないけれど、次に生まれる時は鬼にならず鬼に害されず、幸せに生きて欲しい。
二人が任務完了の報告を烏に伝え、労いの言葉をかけてくれた。祈りの時間はおしまい。
「やったわね、朝緋ちゃん!」
「お疲れ様です。でもイモリじゃありませんでしょうに。惚れ薬や精力剤でも作る気だったのですか?」
そういえばイモリの黒焼きって惚れ薬とか精力剤になるんだったっけ。
どちらにせよ鬼の亡骸なのですぐ消えちゃう上に、実際にイモリの黒焼きがあったとしても絶対に要らない。
もう私は杏寿郎さんに惚れているし、杏寿郎さんもこんな私の事を好きでいてくださる。精力剤なんて要らないくらい杏寿郎さんは性欲が強いし、いつも精力満タンだ。
「間に合ってる!」
「「えっ間に合ってる!?」」
あっ、返答のチョイス間違えた。