五周目 肆
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小さなリップ音と共に再び唇を食まれる。下唇をはむはむと挟み、食べるみたいに味わってきて。
ふわふわとしたその口付けにばかり集中していたら、他がおろそかになっていた。頭と背中をがっしりと固定されそのつま先は絡み、身じろぎ一つ出来ない。声までもが、食まれて飲まれる。
杏寿郎さんから逃れられない。
気がついた時には、小鳥のような優しいキスから噛みつくような激しいキスに徐々に移行を始めていた。
ちゅ、ちゅ、ちゅく、いやらしく響く行為の水音とも聞こえてしまうそれ。想像力の豊かな自分が恨めしい。
顔を背けるようにして唇を離す。抗議するように目を見つめても、貴方はそれすら楽しむように口に弧を描いて嗤う。
私の一挙一動、抗議の行動すらご自分の手の内。無意味なことだというように、私の頭に固定された手を上下に動かし、かわいがるように撫でながら。
きっと、私が拒もうと反撃しようと、痛くも痒くもないのだ。
「きょじゅろ、さ……はぁ、……ちょっと待ってよ、……はげし、すぎます……」
「そうか?普段の鍛錬よりはゆるりとした動きだろうに」
「比べるものが違いすぎっ、……んんぅ、」
再び重ねられる唇。噛み付くようにではない、もう噛み付かれている。
目は閉じず視線はまっすぐ私を貫いていた。
その目には私を逃すものかという、炎がごうごうと燃えている。
布団と杏寿郎さんに挟まれて、息すら困難。私は苦しくてもう涙目なのに放してはもらえない。
「はあ、は、っ、……、んっ、ぁ、常中が……途切れちゃう、……、ゃっ」
休憩がしたくて目の前にある杏寿郎さんの着物をぎゅっと掴めば、ようやく離れてくれた。けれど涙こぼるる目元に唇が寄せられ舐め取られ、掬い上げられる。
塩辛いのに甘いな。
小さく小さく紡がれた言葉と、浮かべている微笑み。
「朝緋はだらしがないなぁ。この程度で根を上げ、常中を途切れさせてどうする」
「だってぇ……」
すりすりとほっぺたを撫でやり、くすりと笑う貴方。杏寿郎さんはいつもそうやって余裕をお持ちで、私ばかりが息を切らす。
下唇を指でなぞり、優しくトントンと叩かれた。
「朝緋、舌を出せ。舌だ」
「ん……は、い……、」
舌先を出せ?つまり、杏寿郎さんはあと少し、あと一歩だけ先に進みたいのね。足だけじゃなく舌をも絡ませあい、もっと近くに。もっと一つになりたい、と。
私も貴方と一つになりたい。もっと貴方を感じていたい。
けれどこの体で深いキスをするのは初めて。そんな事したら、私どうなっちゃうんだろう?
杏寿郎さんだけじゃない。我慢に我慢を重ねた私はおかしくなってしまうんじゃないかしら。
期待と不安が入り混じる。
「んむっ!?ンー!んん、ン゛ーー!!」
口を少しだけ開いて舌先をそっと差し出せば、杏寿郎さんに勢いよくむしゃぶりつかれた。
まるで好物を前にして獲物に飛び掛かる飢えた獣の如し。
ああ、杏寿郎さん自身が炎虎だったのね。絡んでくる舌が熱くて厚くて、猛り狂う炎の虎そのもの。じりじりと灼かれていく……。
ジュルジュル、くちゅ、ぬちり。
こうして吸われるであろう事はわかっていたけれど、初めからここまで激しいとは思ってもいなかった。
感覚は度重なる『繰り返し』の中で知っている。けれどまだ慣れていない私の体は驚いていた。
翻弄される。貴方に体も心も乱される。
先程から舌をちゅくちゅくと吸い続けられている。
自分の元へは戻してはもらえず、逆に引っ張られていく。もう返してはやらんと言いたげに。
頭も押さえつけられて逃げ場はない。
口が閉じられない……唇の端からよだれがこぼれ落ち、呼吸は乱され続ける……ほろ苦く甘い大人のくちづけ。
苦しいと虚空に伸ばした手は、そのまま杏寿郎さんにガシリと握られて取り込まれ、布団に縫い止められた。
「ん……ふ、……、」
「はぁ、イイ顔をしているな。かわいいぞ、朝緋……」
杏寿郎さんが言葉を紡いだおかげでやっと呼吸ができた。
私は今、苦しさから頬を紅潮させていることだろう。杏寿郎さんもまた、興奮からだろうけれど頬を紅潮させていた。
そして隠し事は許さないとばかりに、口内を荒々しく這ってくる舌先。歯列も念入りになぞりあげられ、喉の奥までもが支配されてしまった。
この体は私のものなのに、もう杏寿郎さんのもの同然。
ちゅる、ぴちゃ、くちゅっ……
水音が響くたび、ゾ、ゾゾゾ……ゾクゾクッ!背筋を駆け上がっていく快感。
「ん、ん、んん……ーーっ!?」
まさかこの口吸いだけで気を遣ってしまいそうだなんて。
体の上から下まで順繰りに敏感にされていく。快楽なんて求めていないのに、杏寿郎さんという雄から離れられない体にされていく。
そして私のお腹に当たるのは、大きくなった杏寿郎さんの……。
ア……欲しい。
私の奥にこの人が欲しい。
肉欲を求め、その海に溺れ、波に飲まれる感情。絡みつかれて海の底へと、引き摺り込まれる。目の前にあるのは、海のような深い青にも濡れぬそんな瞳なのに。炎がゆらめく赤い瞳なのに。
いや、激しく情炎燃ゆる赤い瞳だ。海の青よりもなお、私を煽り情炎の中へといざなってくる。
欲しくてたまらない。女の部分が杏寿郎さんに手を伸ばす。
愛して、と。貴方を私にちょうだい、と。
駄目、駄目だよ、駄目。
そんなこと思ってはいけない。まだしないって私は決めた。先をしないでと杏寿郎さんに言ったばかり。堕ちたら本当に戻れない。弱くなる。
恋愛にばかりかまけてしまう、駄目な弱い子に逆戻り。
杏寿郎さんがしっかりと足を絡ませて動けなくされている中、つま先をむずむずと動かして必死に快楽に堕ちそうな自分をやりすごそうとしてみるも。
ぐりぐりと体に押し付けられる感覚に痺れが止まらなくて、もう何も考えつかない。
ただただ堕ちていく。
「ん、んんぅ、っは」
心臓がバクバクと早鐘を打ち会館に上り詰めそうだ、という時、突如唇が離れた。
「どうした?何か欲しくなったか?何が欲しい?何をして欲しい?」
私の背に回す手をすぅるりと、腰へ、臀部へと滑り下ろしてさすっていく。どこまでも快感を拾わせるかのような動き。
目の前でにんまりと笑うこの男が憎らしい。愛しているけれどなんと憎い顔だろうか。
睨みつければまたも吸われる舌。
びりびりに痺れて動けなくなり、頭に霞がかかったかのようになってきた頃、ようやく解放されたと思いきや。
そのまま杏寿郎さんの唇は私の耳へ。吸い付いて噛み付いて、中まで侵攻してきて。
耳に直接届く水音。くすぐったくも気持ち善い舌先の愛撫……。
「ひァ……っ!ぁぁっ、!!」
昇りつめてしまった。たったこれだけでイかされた!!
「なあ朝緋」
はくはくと呼吸する私に目を赤く光らせた獣が聞く。
「何が?」
弧を描いた唇で聞く。
「欲しい?」
……もう駄目だ。
私は甘く痺れる誘惑を前に陥落してしまった。
ふわふわとしたその口付けにばかり集中していたら、他がおろそかになっていた。頭と背中をがっしりと固定されそのつま先は絡み、身じろぎ一つ出来ない。声までもが、食まれて飲まれる。
杏寿郎さんから逃れられない。
気がついた時には、小鳥のような優しいキスから噛みつくような激しいキスに徐々に移行を始めていた。
ちゅ、ちゅ、ちゅく、いやらしく響く行為の水音とも聞こえてしまうそれ。想像力の豊かな自分が恨めしい。
顔を背けるようにして唇を離す。抗議するように目を見つめても、貴方はそれすら楽しむように口に弧を描いて嗤う。
私の一挙一動、抗議の行動すらご自分の手の内。無意味なことだというように、私の頭に固定された手を上下に動かし、かわいがるように撫でながら。
きっと、私が拒もうと反撃しようと、痛くも痒くもないのだ。
「きょじゅろ、さ……はぁ、……ちょっと待ってよ、……はげし、すぎます……」
「そうか?普段の鍛錬よりはゆるりとした動きだろうに」
「比べるものが違いすぎっ、……んんぅ、」
再び重ねられる唇。噛み付くようにではない、もう噛み付かれている。
目は閉じず視線はまっすぐ私を貫いていた。
その目には私を逃すものかという、炎がごうごうと燃えている。
布団と杏寿郎さんに挟まれて、息すら困難。私は苦しくてもう涙目なのに放してはもらえない。
「はあ、は、っ、……、んっ、ぁ、常中が……途切れちゃう、……、ゃっ」
休憩がしたくて目の前にある杏寿郎さんの着物をぎゅっと掴めば、ようやく離れてくれた。けれど涙こぼるる目元に唇が寄せられ舐め取られ、掬い上げられる。
塩辛いのに甘いな。
小さく小さく紡がれた言葉と、浮かべている微笑み。
「朝緋はだらしがないなぁ。この程度で根を上げ、常中を途切れさせてどうする」
「だってぇ……」
すりすりとほっぺたを撫でやり、くすりと笑う貴方。杏寿郎さんはいつもそうやって余裕をお持ちで、私ばかりが息を切らす。
下唇を指でなぞり、優しくトントンと叩かれた。
「朝緋、舌を出せ。舌だ」
「ん……は、い……、」
舌先を出せ?つまり、杏寿郎さんはあと少し、あと一歩だけ先に進みたいのね。足だけじゃなく舌をも絡ませあい、もっと近くに。もっと一つになりたい、と。
私も貴方と一つになりたい。もっと貴方を感じていたい。
けれどこの体で深いキスをするのは初めて。そんな事したら、私どうなっちゃうんだろう?
杏寿郎さんだけじゃない。我慢に我慢を重ねた私はおかしくなってしまうんじゃないかしら。
期待と不安が入り混じる。
「んむっ!?ンー!んん、ン゛ーー!!」
口を少しだけ開いて舌先をそっと差し出せば、杏寿郎さんに勢いよくむしゃぶりつかれた。
まるで好物を前にして獲物に飛び掛かる飢えた獣の如し。
ああ、杏寿郎さん自身が炎虎だったのね。絡んでくる舌が熱くて厚くて、猛り狂う炎の虎そのもの。じりじりと灼かれていく……。
ジュルジュル、くちゅ、ぬちり。
こうして吸われるであろう事はわかっていたけれど、初めからここまで激しいとは思ってもいなかった。
感覚は度重なる『繰り返し』の中で知っている。けれどまだ慣れていない私の体は驚いていた。
翻弄される。貴方に体も心も乱される。
先程から舌をちゅくちゅくと吸い続けられている。
自分の元へは戻してはもらえず、逆に引っ張られていく。もう返してはやらんと言いたげに。
頭も押さえつけられて逃げ場はない。
口が閉じられない……唇の端からよだれがこぼれ落ち、呼吸は乱され続ける……ほろ苦く甘い大人のくちづけ。
苦しいと虚空に伸ばした手は、そのまま杏寿郎さんにガシリと握られて取り込まれ、布団に縫い止められた。
「ん……ふ、……、」
「はぁ、イイ顔をしているな。かわいいぞ、朝緋……」
杏寿郎さんが言葉を紡いだおかげでやっと呼吸ができた。
私は今、苦しさから頬を紅潮させていることだろう。杏寿郎さんもまた、興奮からだろうけれど頬を紅潮させていた。
そして隠し事は許さないとばかりに、口内を荒々しく這ってくる舌先。歯列も念入りになぞりあげられ、喉の奥までもが支配されてしまった。
この体は私のものなのに、もう杏寿郎さんのもの同然。
ちゅる、ぴちゃ、くちゅっ……
水音が響くたび、ゾ、ゾゾゾ……ゾクゾクッ!背筋を駆け上がっていく快感。
「ん、ん、んん……ーーっ!?」
まさかこの口吸いだけで気を遣ってしまいそうだなんて。
体の上から下まで順繰りに敏感にされていく。快楽なんて求めていないのに、杏寿郎さんという雄から離れられない体にされていく。
そして私のお腹に当たるのは、大きくなった杏寿郎さんの……。
ア……欲しい。
私の奥にこの人が欲しい。
肉欲を求め、その海に溺れ、波に飲まれる感情。絡みつかれて海の底へと、引き摺り込まれる。目の前にあるのは、海のような深い青にも濡れぬそんな瞳なのに。炎がゆらめく赤い瞳なのに。
いや、激しく情炎燃ゆる赤い瞳だ。海の青よりもなお、私を煽り情炎の中へといざなってくる。
欲しくてたまらない。女の部分が杏寿郎さんに手を伸ばす。
愛して、と。貴方を私にちょうだい、と。
駄目、駄目だよ、駄目。
そんなこと思ってはいけない。まだしないって私は決めた。先をしないでと杏寿郎さんに言ったばかり。堕ちたら本当に戻れない。弱くなる。
恋愛にばかりかまけてしまう、駄目な弱い子に逆戻り。
杏寿郎さんがしっかりと足を絡ませて動けなくされている中、つま先をむずむずと動かして必死に快楽に堕ちそうな自分をやりすごそうとしてみるも。
ぐりぐりと体に押し付けられる感覚に痺れが止まらなくて、もう何も考えつかない。
ただただ堕ちていく。
「ん、んんぅ、っは」
心臓がバクバクと早鐘を打ち会館に上り詰めそうだ、という時、突如唇が離れた。
「どうした?何か欲しくなったか?何が欲しい?何をして欲しい?」
私の背に回す手をすぅるりと、腰へ、臀部へと滑り下ろしてさすっていく。どこまでも快感を拾わせるかのような動き。
目の前でにんまりと笑うこの男が憎らしい。愛しているけれどなんと憎い顔だろうか。
睨みつければまたも吸われる舌。
びりびりに痺れて動けなくなり、頭に霞がかかったかのようになってきた頃、ようやく解放されたと思いきや。
そのまま杏寿郎さんの唇は私の耳へ。吸い付いて噛み付いて、中まで侵攻してきて。
耳に直接届く水音。くすぐったくも気持ち善い舌先の愛撫……。
「ひァ……っ!ぁぁっ、!!」
昇りつめてしまった。たったこれだけでイかされた!!
「なあ朝緋」
はくはくと呼吸する私に目を赤く光らせた獣が聞く。
「何が?」
弧を描いた唇で聞く。
「欲しい?」
……もう駄目だ。
私は甘く痺れる誘惑を前に陥落してしまった。