五周目 肆
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甘露寺蜜璃と時透無一郎が柱になった。
これで九人、全員が揃った。私が知る限り、歴代の柱の中でも精鋭揃いの者達である彼らが。
私もまた、階級が一番上の甲へと上がり、より一層強くなれたと自分でも感じる。
同時に杏寿郎さんの落ち着きのなさが加速した。任務や鍛錬の時は普通なのに、私と二人きりでいる時限定で、浮き足立っているというか、気がそぞろな状態。
私の階級が上がるまではと、ずっと我慢させてしまっていた行為が許可される時を今か今かと待っているのだ。
それはお預けを喰らいに喰らった飢えた狼のようなもの。
とはいえ漂う空気がそれなだけで、決して表情にも行動にも出ていない。杏寿郎さんと何度も恋仲になってきた中で、彼のそういった心情がわかるようになってきてしまった、それだけのこと。
私もね?階級や強さだけじゃなくってね?まあ、そこそこ体が成長したし、いいとは思ってるんだけど……。
なかなか言い出せないし、そもそもまだちょっと怖いのよね。何がって『前』よりも上背も高く筋肉量も体の大きさも増大した杏寿郎さんとなんて、絶対私の体が持たないもの。杏寿郎さんが大きいなら、杏寿郎さんのその……あれも大きいに違いない。言っておくけど『前回』もそうだったんだからね!?
任務で鬼を相手にした方がマシ。
煉獄杏寿郎の成長に終わりがないの怖すぎる。
今日も今日とて、いつどうなるかドキドキしつつ就寝を迎える。
任務がなければ、基本夜はすやすや夢の中。人間は夜に寝て昼間は太陽を浴びるべき生き物だもの!陽光をしっかりと浴び、ご飯をたっぷり食べ、鍛錬、鍛錬、そして鍛錬!満足するまで鍛錬に励んだら、またたくさんご飯を食べてしっかり寝る。
これ、強くなるための鉄則ね!!
満月が部屋に差し込んでいる。ベッドサイドランプにはちょうどいいなあと思いつつ、夜の読書を終えて布団に入りうとうとしていれば。
カタン、スー……
杏寿郎さんの部屋と私の部屋とを隔てる襖が静かに開いた。
あー、任務から帰ってきてたんだ。読書に夢中で気がつかなかったな……。
まどろみの中、杏寿郎さんが私の布団に近づいてくるのを感じる。
体温、息遣いまで感じて、杏寿郎さんが私の寝顔を見ているのがわかった。視線が突き刺さってくる……。優しく憂いを帯びた視線が。
そんなに見つめちゃ穴開いちゃいそうよ。
ん、お風呂も入ったみたい。ふんわりと石鹸の香りが漂ってくる。石鹸の匂いの中に、杏寿郎さんの優しくてあったかい匂いもしてくる。
あ、杏寿郎さんが布団を少し捲って、私の布団に潜り込んできた。
これで眠っていたら、隊士失格かな?殺気があるわけじゃないし、眠っていてもいいかな?
そう思うのに私はゆるゆると目を開けてしまった。だって、杏寿郎さんにおかえりが言いたいんだもの。
「ん、杏寿郎さん、おかえりなさい」
「、朝緋……」
布団の敷布が擦れる音を聞きながら、こしょこしょ話をするように小さく言葉を返す。
「……ただいま。起こしてしまったか?」
「んーん。実は起きてた」
「なんだ、ならば最初から声をかけてくれたらいいものを」
「ごめぇん」
ごそり、杏寿郎さんがそっと私を抱きしめてくる。
ん、いつもより体温が低く感じるなあ。びっくりして一瞬こわばってしまった。
「お風呂は入ったんだね。お湯は結構冷たくなってたと思うけど、どうでした」
「少しぬるかったが、任務時に外や川で水浴びをするよりは良い。……俺の体はそんなに冷たいか?」
「ぬるいお風呂に入られたからなのかな?いつもと比べるとちょっぴり冷たいね」
「そうか……なら、朝緋が冷えぬよう、俺は自分の布団に戻った方がいいだろうか」
私を抱きしめる腕を解放し、そっと離れてゆく。布団を出る気みたい。そんな悲しそうな声を出さないで。出ていかないで。
「せっかくあったかいお布団に潜り込んできたんでしょう?戻ったらもっと湯冷めしちゃう。今更冷たいお布団じゃ風邪ひいちゃいます。
来て?あっためてあげる」
「ありがとう」
手を広げて招いてみれば、今度こそ隙間ないほど強く抱き寄せられた。
まんまるなお月様が私達を見ている。
こんなにも明るい月夜だもの。こういう時は月が綺麗ですねと愛の言葉を囁いて、杏寿郎さんと先に進むべきなのかな。
「今夜は月が綺麗だとは思わんか、朝緋」
「!……そうですね。
……ねえ杏寿郎さん、これからもずっと、月を私と一緒に見てくれる?月だけじゃなくて、季節毎のお花も、いろんな場所の景色も」
「もちろんだ!見よう!見に行こう!いやしかし、言葉の意味が通じてよかった!!」
有名な言葉だし、何度貴方に似た言葉を紡がれたと思って?わかるに決まってるよ。
そんな無粋なこと、嬉しそうにしている杏寿郎さんにわざわざ伝えたりしない。
月光の五百倍は明るい笑顔を浮かべた杏寿郎さんが、唇を寄せてくる。キス……したいのかな。
「その……唇を重ねても良いか?」
「うん……まだ。まだその先をしないでいただけるのなら……」
あと数ミリというところで、今更確認を取ってくる。
確かに、まだ怖いよ。貴方とそういう関係になりたいのは山々だけれど、久しぶりの行為と初めての痛みに恐怖を覚えている。
鬼殺隊士ならそんな痛みなんて、と思うかもしれない。でも、内側の痛みは想像以上だし、この人の背や体の大きさがね、本当にネックなの。その内宇髄さんや悲鳴嶼さんの背より高くなったらどうしよう。
さすがに悲鳴嶼さんほどは大きく成長しないと思うけど、宇髄さんは抜かしてしまうかも。
「その先……。ああ、なるほど。
俺からはしないと約束しよう」
ドサリ、抱きついていた杏寿郎さんが私の上に乗り覆い被さってきた。押し倒された時と同じような格好。
たとえ行為に及ばなくとも、私は今、杏寿郎さんにとってのただの獲物と化してしまった。
それでも初めは小鳥が啄むような軽いキスで。
触れるだけのようなゆるゆるとしたそれを、繰り返し送られる。
「ん、……、」
「相も変わらず君の唇は甘いな。蜂の蜜でも塗っているのかと思いたくなる」
「別に、蜂蜜なんて塗ってない、」
『初めて』貴方と繋がったあの時、乾燥対策にと唇に蜂蜜を塗っていた事をふと思い出してしまった。……頬が熱い。
これで九人、全員が揃った。私が知る限り、歴代の柱の中でも精鋭揃いの者達である彼らが。
私もまた、階級が一番上の甲へと上がり、より一層強くなれたと自分でも感じる。
同時に杏寿郎さんの落ち着きのなさが加速した。任務や鍛錬の時は普通なのに、私と二人きりでいる時限定で、浮き足立っているというか、気がそぞろな状態。
私の階級が上がるまではと、ずっと我慢させてしまっていた行為が許可される時を今か今かと待っているのだ。
それはお預けを喰らいに喰らった飢えた狼のようなもの。
とはいえ漂う空気がそれなだけで、決して表情にも行動にも出ていない。杏寿郎さんと何度も恋仲になってきた中で、彼のそういった心情がわかるようになってきてしまった、それだけのこと。
私もね?階級や強さだけじゃなくってね?まあ、そこそこ体が成長したし、いいとは思ってるんだけど……。
なかなか言い出せないし、そもそもまだちょっと怖いのよね。何がって『前』よりも上背も高く筋肉量も体の大きさも増大した杏寿郎さんとなんて、絶対私の体が持たないもの。杏寿郎さんが大きいなら、杏寿郎さんのその……あれも大きいに違いない。言っておくけど『前回』もそうだったんだからね!?
任務で鬼を相手にした方がマシ。
煉獄杏寿郎の成長に終わりがないの怖すぎる。
今日も今日とて、いつどうなるかドキドキしつつ就寝を迎える。
任務がなければ、基本夜はすやすや夢の中。人間は夜に寝て昼間は太陽を浴びるべき生き物だもの!陽光をしっかりと浴び、ご飯をたっぷり食べ、鍛錬、鍛錬、そして鍛錬!満足するまで鍛錬に励んだら、またたくさんご飯を食べてしっかり寝る。
これ、強くなるための鉄則ね!!
満月が部屋に差し込んでいる。ベッドサイドランプにはちょうどいいなあと思いつつ、夜の読書を終えて布団に入りうとうとしていれば。
カタン、スー……
杏寿郎さんの部屋と私の部屋とを隔てる襖が静かに開いた。
あー、任務から帰ってきてたんだ。読書に夢中で気がつかなかったな……。
まどろみの中、杏寿郎さんが私の布団に近づいてくるのを感じる。
体温、息遣いまで感じて、杏寿郎さんが私の寝顔を見ているのがわかった。視線が突き刺さってくる……。優しく憂いを帯びた視線が。
そんなに見つめちゃ穴開いちゃいそうよ。
ん、お風呂も入ったみたい。ふんわりと石鹸の香りが漂ってくる。石鹸の匂いの中に、杏寿郎さんの優しくてあったかい匂いもしてくる。
あ、杏寿郎さんが布団を少し捲って、私の布団に潜り込んできた。
これで眠っていたら、隊士失格かな?殺気があるわけじゃないし、眠っていてもいいかな?
そう思うのに私はゆるゆると目を開けてしまった。だって、杏寿郎さんにおかえりが言いたいんだもの。
「ん、杏寿郎さん、おかえりなさい」
「、朝緋……」
布団の敷布が擦れる音を聞きながら、こしょこしょ話をするように小さく言葉を返す。
「……ただいま。起こしてしまったか?」
「んーん。実は起きてた」
「なんだ、ならば最初から声をかけてくれたらいいものを」
「ごめぇん」
ごそり、杏寿郎さんがそっと私を抱きしめてくる。
ん、いつもより体温が低く感じるなあ。びっくりして一瞬こわばってしまった。
「お風呂は入ったんだね。お湯は結構冷たくなってたと思うけど、どうでした」
「少しぬるかったが、任務時に外や川で水浴びをするよりは良い。……俺の体はそんなに冷たいか?」
「ぬるいお風呂に入られたからなのかな?いつもと比べるとちょっぴり冷たいね」
「そうか……なら、朝緋が冷えぬよう、俺は自分の布団に戻った方がいいだろうか」
私を抱きしめる腕を解放し、そっと離れてゆく。布団を出る気みたい。そんな悲しそうな声を出さないで。出ていかないで。
「せっかくあったかいお布団に潜り込んできたんでしょう?戻ったらもっと湯冷めしちゃう。今更冷たいお布団じゃ風邪ひいちゃいます。
来て?あっためてあげる」
「ありがとう」
手を広げて招いてみれば、今度こそ隙間ないほど強く抱き寄せられた。
まんまるなお月様が私達を見ている。
こんなにも明るい月夜だもの。こういう時は月が綺麗ですねと愛の言葉を囁いて、杏寿郎さんと先に進むべきなのかな。
「今夜は月が綺麗だとは思わんか、朝緋」
「!……そうですね。
……ねえ杏寿郎さん、これからもずっと、月を私と一緒に見てくれる?月だけじゃなくて、季節毎のお花も、いろんな場所の景色も」
「もちろんだ!見よう!見に行こう!いやしかし、言葉の意味が通じてよかった!!」
有名な言葉だし、何度貴方に似た言葉を紡がれたと思って?わかるに決まってるよ。
そんな無粋なこと、嬉しそうにしている杏寿郎さんにわざわざ伝えたりしない。
月光の五百倍は明るい笑顔を浮かべた杏寿郎さんが、唇を寄せてくる。キス……したいのかな。
「その……唇を重ねても良いか?」
「うん……まだ。まだその先をしないでいただけるのなら……」
あと数ミリというところで、今更確認を取ってくる。
確かに、まだ怖いよ。貴方とそういう関係になりたいのは山々だけれど、久しぶりの行為と初めての痛みに恐怖を覚えている。
鬼殺隊士ならそんな痛みなんて、と思うかもしれない。でも、内側の痛みは想像以上だし、この人の背や体の大きさがね、本当にネックなの。その内宇髄さんや悲鳴嶼さんの背より高くなったらどうしよう。
さすがに悲鳴嶼さんほどは大きく成長しないと思うけど、宇髄さんは抜かしてしまうかも。
「その先……。ああ、なるほど。
俺からはしないと約束しよう」
ドサリ、抱きついていた杏寿郎さんが私の上に乗り覆い被さってきた。押し倒された時と同じような格好。
たとえ行為に及ばなくとも、私は今、杏寿郎さんにとってのただの獲物と化してしまった。
それでも初めは小鳥が啄むような軽いキスで。
触れるだけのようなゆるゆるとしたそれを、繰り返し送られる。
「ん、……、」
「相も変わらず君の唇は甘いな。蜂の蜜でも塗っているのかと思いたくなる」
「別に、蜂蜜なんて塗ってない、」
『初めて』貴方と繋がったあの時、乾燥対策にと唇に蜂蜜を塗っていた事をふと思い出してしまった。……頬が熱い。