五周目 参
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「羽目を外す朝緋が許されるのなら、俺だって許されて良いはずだ」
ぐいぐい詰め寄られ、肩がくっつく。手を取られ引き寄せられ、逃れられない。
「温泉では互いの裸を見たのだから、少しくらい朝緋を味わいたい。これではなんのためのハネムーンだったかわからん。初夜、とやらがなかった」
「しょ、……っ!?まだぎりぎり昼間ですよ、なんて話してるの!?顔から火が出るう!穴があったら入りたい!」
「ははは!炎の呼吸使いだからな!顔から火が出ることもあろう!!」
「出てたまるかい!!」
ぐいぐい詰め寄られた時同様に、ぐいぐいと押し返す。炎の呼吸、昇り炎天の勢いだ。
「だいたい、帰ってからもまだそういう事はしないよ。私はもう少し甘酸っぱい関係でいたいんだもの」
「甘酸っぱい?」
「こういうふうに、ただ隣にいて、それで手を繋いで笑っていられるような関係」
手を繋ぎ直し、ただぴとり、隣に並ぶ。その距離拳一個分すら開いていない。
「ふむ、物足りんな……先に進めん……」
「体の関係はまだ先がいい。私の体が壊れちゃうよ。私の年齢知ってるでしょ?」
「むぅ、そういえば朝緋がまだ齢十六なのを失念していた。
……この薄い胎に俺は収まるまい」
熱い手のひらが私の下腹部をするぅりと繰り返し撫でていく。
「わ、私は杏寿郎さんじゃなくて、食べ物をお腹に入れたいです!あー!甘いの食べたくなっちゃった!!」
「俺は朝緋が食べたい」
「やだもう!まだ言うの!!」
「いや、そういう意味でなくとも、朝緋は甘くて美味しそうでなぁ」
鼻先でふんふん、首筋から耳元にかけてくすぐるように嗅ぎ、なぞり上げる。そしてかぷりと耳たぶが食まれた。
柔いその動きがもどかしく、身を捩る思い。
「ひゃわ、くすぐったい……!鬼じゃないんだからやめて?」
「ああ、鬼ではないから優しく君を食べよう」
「……ン、ぁ、結局そゆコト……、」
結局、唇までも食まれてしまった。キスされてしまえば、杏寿郎さんの勝ち。私はただ貴方に陥落し、愛に応えるのみ。
……ただ、もう貴方を鬼になんてしたくない。
万が一貴方が鬼にされそうになったら、代わりに私がなる勢いだ。
「甘いものと言っていたが何を食べたいんだ。芋羊羹か?」
「それは杏寿郎さんでしょ」
「俺は今、甘いものを食したばかりだ。しばらくは必要ない!」
「……そうですね」
ぺろ、唇を舌先で舐めとり、目を細くして笑う御姿にどきりとする。その目はまだ君を食べたいと言っているように見えた。
「苺の乗ったショートケーキ……は、ないからカスドースとか食べたいなあ」
「いいぞ。土産に買って食べよう。どこで売っているんだ?」
「長崎の平戸」
「さすがに遠いな!?」
列車もそこまでは出ていない。陸路も海路もこの時代だとかなりの距離。だって九州だものね。全集中で走っても、途中で途切れるに決まってる。
ちなみにカスドースも高いけど、カステラ自体結構な高級菓子にあたる。
「だから帰りに帝都でカステラ買っておうちで作る感じ?」
「朝緋の菓子か、それは楽しみだな」
「たまにはお芋以外もいいでしょ?ものすごーーく甘いお菓子だからびっくりしちゃうかもしれないけどね。炎柱様、お手伝い願えますか?」
「君が望むなら、男子厨房に入るとも!」
千寿郎は厨房に入るし、厨房に入る男子が増えた時代とはいえ、世間一般的には男子はまだまだお勝手場に立つことは少ない。煮炊きは女子がするものだ、という男尊女卑の考えが未だ強く残るこの時世……。
「それより来たようだ」
「ん?来たって何が」
ぐいと、顔を前に向かせられる。
「鶴だ。この場所には鶴が飛来することがあるそうでな。見られるかどうかはその時次第とのことだが、運が良いな」
「え、鶴!?アオサギとかじゃなくて鶴!!」
白い鳥が数羽飛来してきたなー、と思っていたら、鶴とな。確かによく見たら、鶴の特徴的な黒と赤のカラーリングがある。まごうことなき鶴だ。
「へー。この時代はまだこっちの方にも鶴が生息してるんだね。鹿児島か北海道だけだと思ってた。禁止になったけど江戸時代に乱獲されたから、今はほとんどいないんだよね?うん、確かに見られてラッキーかも」
「朝緋は時折よくわからない物言いをするが、まあいいだろう。君が不思議な娘なのは、今に始まった事ではない。謎多きところも魅力の一つだ」
「あはは……」
二羽の鶴が寄り添い、首を絡めて遊んでいる。そのシルエットが一瞬ハート型に見えて、仲の良さを強調した。
「あの鶴のように、いつまでも仲睦まじくいたいものだな」
「鶴……夫婦鶴、なんて言われる夫婦円満の象徴だね。他にも長寿や病気回復、平和の象徴にもなってるらしいよ」
「良い事づくめではないか。おめでたいな」
こんな縁起のいい光景を見れたのだから、ぜひあの任務では誰一人として欠けずに、先に進みたい。
ぐいぐい詰め寄られ、肩がくっつく。手を取られ引き寄せられ、逃れられない。
「温泉では互いの裸を見たのだから、少しくらい朝緋を味わいたい。これではなんのためのハネムーンだったかわからん。初夜、とやらがなかった」
「しょ、……っ!?まだぎりぎり昼間ですよ、なんて話してるの!?顔から火が出るう!穴があったら入りたい!」
「ははは!炎の呼吸使いだからな!顔から火が出ることもあろう!!」
「出てたまるかい!!」
ぐいぐい詰め寄られた時同様に、ぐいぐいと押し返す。炎の呼吸、昇り炎天の勢いだ。
「だいたい、帰ってからもまだそういう事はしないよ。私はもう少し甘酸っぱい関係でいたいんだもの」
「甘酸っぱい?」
「こういうふうに、ただ隣にいて、それで手を繋いで笑っていられるような関係」
手を繋ぎ直し、ただぴとり、隣に並ぶ。その距離拳一個分すら開いていない。
「ふむ、物足りんな……先に進めん……」
「体の関係はまだ先がいい。私の体が壊れちゃうよ。私の年齢知ってるでしょ?」
「むぅ、そういえば朝緋がまだ齢十六なのを失念していた。
……この薄い胎に俺は収まるまい」
熱い手のひらが私の下腹部をするぅりと繰り返し撫でていく。
「わ、私は杏寿郎さんじゃなくて、食べ物をお腹に入れたいです!あー!甘いの食べたくなっちゃった!!」
「俺は朝緋が食べたい」
「やだもう!まだ言うの!!」
「いや、そういう意味でなくとも、朝緋は甘くて美味しそうでなぁ」
鼻先でふんふん、首筋から耳元にかけてくすぐるように嗅ぎ、なぞり上げる。そしてかぷりと耳たぶが食まれた。
柔いその動きがもどかしく、身を捩る思い。
「ひゃわ、くすぐったい……!鬼じゃないんだからやめて?」
「ああ、鬼ではないから優しく君を食べよう」
「……ン、ぁ、結局そゆコト……、」
結局、唇までも食まれてしまった。キスされてしまえば、杏寿郎さんの勝ち。私はただ貴方に陥落し、愛に応えるのみ。
……ただ、もう貴方を鬼になんてしたくない。
万が一貴方が鬼にされそうになったら、代わりに私がなる勢いだ。
「甘いものと言っていたが何を食べたいんだ。芋羊羹か?」
「それは杏寿郎さんでしょ」
「俺は今、甘いものを食したばかりだ。しばらくは必要ない!」
「……そうですね」
ぺろ、唇を舌先で舐めとり、目を細くして笑う御姿にどきりとする。その目はまだ君を食べたいと言っているように見えた。
「苺の乗ったショートケーキ……は、ないからカスドースとか食べたいなあ」
「いいぞ。土産に買って食べよう。どこで売っているんだ?」
「長崎の平戸」
「さすがに遠いな!?」
列車もそこまでは出ていない。陸路も海路もこの時代だとかなりの距離。だって九州だものね。全集中で走っても、途中で途切れるに決まってる。
ちなみにカスドースも高いけど、カステラ自体結構な高級菓子にあたる。
「だから帰りに帝都でカステラ買っておうちで作る感じ?」
「朝緋の菓子か、それは楽しみだな」
「たまにはお芋以外もいいでしょ?ものすごーーく甘いお菓子だからびっくりしちゃうかもしれないけどね。炎柱様、お手伝い願えますか?」
「君が望むなら、男子厨房に入るとも!」
千寿郎は厨房に入るし、厨房に入る男子が増えた時代とはいえ、世間一般的には男子はまだまだお勝手場に立つことは少ない。煮炊きは女子がするものだ、という男尊女卑の考えが未だ強く残るこの時世……。
「それより来たようだ」
「ん?来たって何が」
ぐいと、顔を前に向かせられる。
「鶴だ。この場所には鶴が飛来することがあるそうでな。見られるかどうかはその時次第とのことだが、運が良いな」
「え、鶴!?アオサギとかじゃなくて鶴!!」
白い鳥が数羽飛来してきたなー、と思っていたら、鶴とな。確かによく見たら、鶴の特徴的な黒と赤のカラーリングがある。まごうことなき鶴だ。
「へー。この時代はまだこっちの方にも鶴が生息してるんだね。鹿児島か北海道だけだと思ってた。禁止になったけど江戸時代に乱獲されたから、今はほとんどいないんだよね?うん、確かに見られてラッキーかも」
「朝緋は時折よくわからない物言いをするが、まあいいだろう。君が不思議な娘なのは、今に始まった事ではない。謎多きところも魅力の一つだ」
「あはは……」
二羽の鶴が寄り添い、首を絡めて遊んでいる。そのシルエットが一瞬ハート型に見えて、仲の良さを強調した。
「あの鶴のように、いつまでも仲睦まじくいたいものだな」
「鶴……夫婦鶴、なんて言われる夫婦円満の象徴だね。他にも長寿や病気回復、平和の象徴にもなってるらしいよ」
「良い事づくめではないか。おめでたいな」
こんな縁起のいい光景を見れたのだから、ぜひあの任務では誰一人として欠けずに、先に進みたい。