五周目 参
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二人だけのかけがえのない時間。
詳しくは言わないけれど、一泊二日の婚前旅行はとても幸せな時間を過ごせた。
あ、でも詳細を省くと変な想像されちゃうのかな……?
なーんもしてないよ?ほんとだよ?ちゅーしかしてない。
美味しい海鮮料理を食べて、温泉にゆっくり浸かって、のんびり羽根を伸ばした。ただそれだけ。
海鳥が鳴く中、浜辺で水平線を眺める。
あ、遠くに水着の女の子が見える。この時代の水着のかわいくなさは、なんとかならないものかなあ。……ううん、あの頭から下まですっぽりタイプでいいのかも。
ビキニなんて着てみてよ。杏寿郎さんが怒る。なんだそのあられも無い格好は!って怒る。それか、無言で布団に投げられそうでとても怖い。
男は狼なのよ、気をつけなさいって誰か言ってた!!
まあ、結局のところこの時代の水着が嫌なので着物を着てるのだから、関係ないけれども。
「おーい朝緋!!」
杏寿郎さんが向こうから走ってくる。わあ、いい笑顔!
「おかえりなさい、杏寿郎さん」
「うむ!待ち侘びた雲丹だ!海人さんに獲っていただき、焼いてもらってきたぞ!!」
「自分で潜ってきて獲るわけじゃないんだね」
ちょっと遅いから、杏寿郎さんが獲ってきたのかと思ってたわ。
「その日の猟獲量は決まっている。素人が下手に乱獲してはいかんからな。さ、熱いうちに食べよう」
「うん。はぁ……いいにおい〜」
黒々として艶のあるトゲトゲの外殻に包まれた黄色の中身。焼いた事で色が濃くなって美味しそうな匂いを発している。
二人共に、焼いた雲丹!うんまぁい!!しか言っていなかった気がする。
それほど獲り立て焼きたての濃厚な雲丹は美味しかった。磯の香りも格別で。こう……醤油をほんのちょっぴり垂らしてさ、焼き汁をこぼさないように啜りながら食べる贅沢といったらなかなかないよね。
雲丹に限らず新鮮な海の幸が最高すぎて、ここに住みたいくらい。
言ったら「朝緋は煉獄家の嫁だろう?」って怒られた。……冗談なのに。
たらふく食べて休んで遊んでの帰り際。鉄道の時間になるまで熱海を歩いていると、変わった装飾が目立つ建物が目に入ってきた。
帝都の方でも最近増えてきた建物だ。温泉地には似合わぬその見た目の豪奢さ、異様な雰囲気。それもこんな、自然豊かな広場のすぐそばになんて。一等地すぎる。
中で扱う生業が宗教関係なのは、下弦の弐の戦力低下を目論んだ時に、帝都で調べがついている。なんだっけ、万世極楽教っていったかな。
まさかこんなところにまで手を広げているとは思わなかったけどね。
「どうした朝緋」
「え、あ……うん」
「…………何かあったのか」
「最近変わった宗教団体が増えたなーって。あれなんて帝都でも見かけたよ」
「うちは宗教勧誘はお断りだ」
「同意。それに私はもう、炎柱様大好き教に入ってまーす」
炎柱、というワードじゃ嫌だったらしい。口を尖らせて抗議しつつ、ぎゅっと繋がれた手を強く握りしめられる。
「む!それだと元炎柱の父上も入ってしまう気がする!煉獄杏寿郎教にしておいてくれ」
「んまー、心が狭い教祖様だこと」
もちろん、煉獄杏寿郎教に入り直しますとも。
「でもさ、ああいうのを隠れ蓑にして鬼が蔓延ってたりしてね」
「一理あるが、さすがに神仏の背後が鬼ということはないのではなかろうか。神仏だぞ?そんな罰当たりな……」
「杏寿郎さん、鬼に神仏を敬う気持ちはないよ。罰が当たるならとっくに当たってるよ」
鬼舞辻無惨も巧妙に人間社会に紛れてると思う。
尻尾か顔をその真っ暗な深淵の底から出してくれないかな。そしたら大きな釣り針と美味しい餌で釣り上げて、日輪刀で頸と胴体を綺麗に捌いて天日干ししてあげるのに。
……ああ、愛しい愛しい私の敵。早くお前の頸を取りたい。
今度は私が杏寿郎さんの手を強く握りしめてしまったようだ。その手をそっとなでられて初めて気がついた。
「まあいいではないか。日輪刀こそ携帯してはいるが、今の俺と朝緋は柱でも隊士でもない。旅行中の夫婦だ」
「夫婦違う、恋仲ね」
「指輪を嵌めていてもか?」
「嵌めていても、です」
「……つれないなぁ。
しかし本当にいい眺めの場所だ。遠くに海が見えているところがとても良い!」
「そうですねえ……」
水辺を前に、太陽を反射して輝いた水面を遠くに眺め物思いに耽っていると、杏寿郎さんが私の顔を覗き込む。なんだろう、前が杏寿郎さんでいっぱいになっちゃう。
唇が近づいてきて……。
べしり、手で口づけを防いだ。
「グッ、なんと身持ちの堅い……!」
「誰も知り合いがいないところだからって、そういう事する?羽目外しすぎ〜。確かに雰囲気は良いけどさ」
いちゃいちゃするのにベストな雰囲気と空気であることは間違いない。けれどTPOは考えないとだ。
ここは大正の世です。時代背景的に、外でいちゃいちゃは流行最先端すぎる。
「むっ!君だって羽目を外して温泉の中で泳いでいただろう!俺はこの目でしかと見た!!」
「うっ……、だって他に誰もいなかったし、広いお風呂だったから……」
この時代プールないしさあ、人様に迷惑がかからなくて広かったら、誰でも泳ぎたくなるよね?
え?ならない?子供だけ?……私、肉体年齢はまだ子供ですもの。
詳しくは言わないけれど、一泊二日の婚前旅行はとても幸せな時間を過ごせた。
あ、でも詳細を省くと変な想像されちゃうのかな……?
なーんもしてないよ?ほんとだよ?ちゅーしかしてない。
美味しい海鮮料理を食べて、温泉にゆっくり浸かって、のんびり羽根を伸ばした。ただそれだけ。
海鳥が鳴く中、浜辺で水平線を眺める。
あ、遠くに水着の女の子が見える。この時代の水着のかわいくなさは、なんとかならないものかなあ。……ううん、あの頭から下まですっぽりタイプでいいのかも。
ビキニなんて着てみてよ。杏寿郎さんが怒る。なんだそのあられも無い格好は!って怒る。それか、無言で布団に投げられそうでとても怖い。
男は狼なのよ、気をつけなさいって誰か言ってた!!
まあ、結局のところこの時代の水着が嫌なので着物を着てるのだから、関係ないけれども。
「おーい朝緋!!」
杏寿郎さんが向こうから走ってくる。わあ、いい笑顔!
「おかえりなさい、杏寿郎さん」
「うむ!待ち侘びた雲丹だ!海人さんに獲っていただき、焼いてもらってきたぞ!!」
「自分で潜ってきて獲るわけじゃないんだね」
ちょっと遅いから、杏寿郎さんが獲ってきたのかと思ってたわ。
「その日の猟獲量は決まっている。素人が下手に乱獲してはいかんからな。さ、熱いうちに食べよう」
「うん。はぁ……いいにおい〜」
黒々として艶のあるトゲトゲの外殻に包まれた黄色の中身。焼いた事で色が濃くなって美味しそうな匂いを発している。
二人共に、焼いた雲丹!うんまぁい!!しか言っていなかった気がする。
それほど獲り立て焼きたての濃厚な雲丹は美味しかった。磯の香りも格別で。こう……醤油をほんのちょっぴり垂らしてさ、焼き汁をこぼさないように啜りながら食べる贅沢といったらなかなかないよね。
雲丹に限らず新鮮な海の幸が最高すぎて、ここに住みたいくらい。
言ったら「朝緋は煉獄家の嫁だろう?」って怒られた。……冗談なのに。
たらふく食べて休んで遊んでの帰り際。鉄道の時間になるまで熱海を歩いていると、変わった装飾が目立つ建物が目に入ってきた。
帝都の方でも最近増えてきた建物だ。温泉地には似合わぬその見た目の豪奢さ、異様な雰囲気。それもこんな、自然豊かな広場のすぐそばになんて。一等地すぎる。
中で扱う生業が宗教関係なのは、下弦の弐の戦力低下を目論んだ時に、帝都で調べがついている。なんだっけ、万世極楽教っていったかな。
まさかこんなところにまで手を広げているとは思わなかったけどね。
「どうした朝緋」
「え、あ……うん」
「…………何かあったのか」
「最近変わった宗教団体が増えたなーって。あれなんて帝都でも見かけたよ」
「うちは宗教勧誘はお断りだ」
「同意。それに私はもう、炎柱様大好き教に入ってまーす」
炎柱、というワードじゃ嫌だったらしい。口を尖らせて抗議しつつ、ぎゅっと繋がれた手を強く握りしめられる。
「む!それだと元炎柱の父上も入ってしまう気がする!煉獄杏寿郎教にしておいてくれ」
「んまー、心が狭い教祖様だこと」
もちろん、煉獄杏寿郎教に入り直しますとも。
「でもさ、ああいうのを隠れ蓑にして鬼が蔓延ってたりしてね」
「一理あるが、さすがに神仏の背後が鬼ということはないのではなかろうか。神仏だぞ?そんな罰当たりな……」
「杏寿郎さん、鬼に神仏を敬う気持ちはないよ。罰が当たるならとっくに当たってるよ」
鬼舞辻無惨も巧妙に人間社会に紛れてると思う。
尻尾か顔をその真っ暗な深淵の底から出してくれないかな。そしたら大きな釣り針と美味しい餌で釣り上げて、日輪刀で頸と胴体を綺麗に捌いて天日干ししてあげるのに。
……ああ、愛しい愛しい私の敵。早くお前の頸を取りたい。
今度は私が杏寿郎さんの手を強く握りしめてしまったようだ。その手をそっとなでられて初めて気がついた。
「まあいいではないか。日輪刀こそ携帯してはいるが、今の俺と朝緋は柱でも隊士でもない。旅行中の夫婦だ」
「夫婦違う、恋仲ね」
「指輪を嵌めていてもか?」
「嵌めていても、です」
「……つれないなぁ。
しかし本当にいい眺めの場所だ。遠くに海が見えているところがとても良い!」
「そうですねえ……」
水辺を前に、太陽を反射して輝いた水面を遠くに眺め物思いに耽っていると、杏寿郎さんが私の顔を覗き込む。なんだろう、前が杏寿郎さんでいっぱいになっちゃう。
唇が近づいてきて……。
べしり、手で口づけを防いだ。
「グッ、なんと身持ちの堅い……!」
「誰も知り合いがいないところだからって、そういう事する?羽目外しすぎ〜。確かに雰囲気は良いけどさ」
いちゃいちゃするのにベストな雰囲気と空気であることは間違いない。けれどTPOは考えないとだ。
ここは大正の世です。時代背景的に、外でいちゃいちゃは流行最先端すぎる。
「むっ!君だって羽目を外して温泉の中で泳いでいただろう!俺はこの目でしかと見た!!」
「うっ……、だって他に誰もいなかったし、広いお風呂だったから……」
この時代プールないしさあ、人様に迷惑がかからなくて広かったら、誰でも泳ぎたくなるよね?
え?ならない?子供だけ?……私、肉体年齢はまだ子供ですもの。