五周目 参
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場所は変わって刀鍛冶の里の宿。
宿にもある温泉に入り、美味しい食事を堪能して宿の部屋でお茶を飲みながら、ゆったりと過ごす。
刀は鍛治師に預けてあるから手入れはできない。むしろ鍛治師がやってくれるし、暇を潰す遊び道具も何もない。
鍛錬すればいい?残念、もうさっき終わったばかり。あまり汗かいちゃうとまたお風呂入らないといけなくなるし、宿のお庭でしていると宿の人が気を遣ってくるのでずっとはやってられないのよね。
だからただただ、隣あってのんびり過ごす私達。たまにはこう言う時間があってもいいかもしれない。
それにしても、隠れ里とはいえ普通に泊まったら相当するよね。ここのお料理、松茸とか普通に出るよ?温泉の質もかなりいい。
鬼殺隊の、それも柱が一緒だからほぼタダみたいなものなんだろうけど……お値段は考えたくない。
その時、部屋の中に要が飛びこんできた。
柱への文。そう思うと途端に緊張が走るけれど、杏寿郎さんは何故か落ち着き払ったままだった。
因みにあずまは……あ、外であくびしてる。私には任務も何もないらしい。
「……もしかして杏寿郎さん、任務ですか?」
刀が研ぎ終わってからでないと無理だけど、もしも任務なら杏寿郎さんと過ごす時間はここまでだ。
継子だからといって、毎回同じ任務に配属されるわけじゃない。せっかく隣に居られるようになったばかりなのに、ちょっと寂しいな。
「任務ではないが、御館様からの文でな」
「御館様直々に?」
いくら柱相手だからといって、御館様から任務でもないのに直接お手紙ってなんだろう?任務だったとしても、全てが御館様からではなく、隠や鎹烏係を通してがほとんどだというに。
「婚前旅行に行きたいと言った。その返事だ」
「婚前……なんですって?」
「君と俺とが祝言を挙げる前に行く旅行だ。確か、外国ではハネムーン、といったか」
「ハネムーンは結婚してから行くのが普通だよ」
「そうなのか。まあ、どちらも変わらんだろう」
いいけど、指輪に飽き足らずハネムーンとな!?杏寿郎さんの海外文化への進出が止まらない!!
「えっつまり、もう私が杏寿郎さんの求婚に『はい』と答えた事、御館様は知っているって事?」
「ああ!指輪を渡した事も、朝緋と恋仲を通り越してめおとになりたい事も話してある!」
「話を通すの早くない?求婚してもらってはいって頷いて、まだ半日くらいしか経ってないよね」
「こういうのは早ければ早いほどいい!要には頑張ってもらった!」
うわぁ、要お疲れ様だわ……。いつもより、疲れて見えるのはそういう事だったのね。あとで美味しいものあげよう。
杏寿郎さんが不敵な笑みを浮かべている。その笑み、結構あくどい。
「ふ、ふふふふふ。あとで父上にお許しをいただきに行くにあたり、先手を取って父上よりも位の高い御館様に口添えをいただきたいとも思ってな。
俺達の背後には御館様がいるという事だ。父上も頭が上がらぬ御館様という心強い味方がな」
「わー、外側から攻略しようとしてるー。……用意周到だね」
「二度も失敗せんよ。
ん?二度?……まあいいか」
『今』と『前』とで杏寿郎さんも記憶の混濁が激しくなってきたなあ。『前回』では散々、槇寿朗さんに却下されてたもんね。どろどろに愛されて嬉しい反面、ちょっと怖かったっけ。
「それで?その婚前旅行は行っていいって言われてるの?」
「ああ!お許しいただいた!」
「鬼の動きが活発化してきてる時なのに良いんだ……しかもやることまみれで忙しい柱なのに」
「柱だからこそだ。普段忙しく走り回っている分、休む時はしっかりと休息をとのこと」
メリハリは大切だものね。さすが御館様率いる鬼殺隊。命の危機はあるけれど、ホワイト企業!
「それに、東京府周辺だけでなく、他の地域にも鬼がいないとも限らんしな。その調査も兼ねての休暇となる」
「ならいいかもね。……どこ行くの?私としては、今この状態で十分に休暇だし、旅行って感じしてるけどね」
調査はできないけど温泉もあるし。
そう思っていた私の耳に届く、杏寿郎さんの笑顔の声。
「雲丹でも食べに行こうかと思う!」
「……雲丹?確かにここは山の幸は豊富だけど、海の幸はないもんね。でも何故にいきなり雲丹?」
「いきなりではない。前に食べたがっていたのは朝緋ではないか」
紅葉狩りの鬼退治の際、言った話か。覚えていてくれて嬉しい……杏寿郎さん、好きすぎる。
スススと近づいて、ぴとり。その隣にくっつくと、そっと頭を撫でてくれた。
「わたしいまからきょーじゅろーさんのせんようのねこになるね。ごろごろごろ、にゃあ」
「にゃあ!?くっ、猫とは愛いやつめ……!」
わしゃわしゃされたから余計香ってきたけど、温泉に入った後の香りに混じって杏寿郎さんの匂いがする…………本当に好きでたまらない。貴方は私のまたたびだ。
「雲丹なら海岸に行けば大抵どこでも獲れるとお聞きした。御館様の所有する土地や温泉宿が熱海にもあるそうでな。泊まる場所はそちらになる。良きお心遣いもいただいた事だし、ぜひ行こうではないか」
「熱海の温泉……」
箱根に草津、登別に酸ヶ湯、別府……日本各地にはたくさんの温泉地があるけれど、熱海かぁ。行ってみたかったところだ。
平成令和の時代にも、行く機会がないまま終わった、テレビでしか知らない場所。
御館様さすがです。そんな憧れの場所に、プライベートビーチや別荘を持っているとは。
「ちょっと待って、熱海よね?
遠いよ?この里からも逆方向じゃない?足は?」
起き上がり杏寿郎さんに詰め寄る。
わしゃわしゃの代わりに、膝の上に乗せられて髪に顔をうずめて鼻先で撫でてきた。あ、猫役は続行なよう。
でも、さすがに全集中の呼吸でばびゅーん!と徒歩で行くような距離ではない。行けるかもしれないけど、絶対にやだ。
「帝都あたりから専用の列車が運行しているだろう?熱海鉄道に乗って行こうかと」
「列車、ですか……?列車は、……」
はいみんなのトラウマきたー。いや、今の時点では私だけのトラウマか。
「何か問題があるのか?列車は嫌か?」
列車単体はいいのよ。そこに杏寿郎さんが加わると途端にトラウマになる。杏寿郎さんには列車に乗ってほしくないのよね……。
……んでも、熱海鉄道かぁ。んー……大丈夫、無限列車ではない。自身によくよく言い聞かせ、納得させる。
「いいえ特に問題ないし、列車も嫌いじゃないです。特に中で食べる駅弁なんて格別ですからね」
「そうだな、駅弁は美味い。熱海は海鮮料理はもちろんのこと、温泉で作る卵料理も美味いそうでな。
あちらでも改めて温泉に入ろうではないか。熱くて気持ちがいいそうだぞ。ここと違う泉質だから、朝緋もきっと気に入るはずだ」
美味しい料理に入ったことのなさそうな温泉……それ以前に大好きな人との旅行。
「行きたい!杏寿郎さんと、旅行に行きたいです!!」
「ははは!決まりだな!!」
行きたいに決まってるよね。
宿にもある温泉に入り、美味しい食事を堪能して宿の部屋でお茶を飲みながら、ゆったりと過ごす。
刀は鍛治師に預けてあるから手入れはできない。むしろ鍛治師がやってくれるし、暇を潰す遊び道具も何もない。
鍛錬すればいい?残念、もうさっき終わったばかり。あまり汗かいちゃうとまたお風呂入らないといけなくなるし、宿のお庭でしていると宿の人が気を遣ってくるのでずっとはやってられないのよね。
だからただただ、隣あってのんびり過ごす私達。たまにはこう言う時間があってもいいかもしれない。
それにしても、隠れ里とはいえ普通に泊まったら相当するよね。ここのお料理、松茸とか普通に出るよ?温泉の質もかなりいい。
鬼殺隊の、それも柱が一緒だからほぼタダみたいなものなんだろうけど……お値段は考えたくない。
その時、部屋の中に要が飛びこんできた。
柱への文。そう思うと途端に緊張が走るけれど、杏寿郎さんは何故か落ち着き払ったままだった。
因みにあずまは……あ、外であくびしてる。私には任務も何もないらしい。
「……もしかして杏寿郎さん、任務ですか?」
刀が研ぎ終わってからでないと無理だけど、もしも任務なら杏寿郎さんと過ごす時間はここまでだ。
継子だからといって、毎回同じ任務に配属されるわけじゃない。せっかく隣に居られるようになったばかりなのに、ちょっと寂しいな。
「任務ではないが、御館様からの文でな」
「御館様直々に?」
いくら柱相手だからといって、御館様から任務でもないのに直接お手紙ってなんだろう?任務だったとしても、全てが御館様からではなく、隠や鎹烏係を通してがほとんどだというに。
「婚前旅行に行きたいと言った。その返事だ」
「婚前……なんですって?」
「君と俺とが祝言を挙げる前に行く旅行だ。確か、外国ではハネムーン、といったか」
「ハネムーンは結婚してから行くのが普通だよ」
「そうなのか。まあ、どちらも変わらんだろう」
いいけど、指輪に飽き足らずハネムーンとな!?杏寿郎さんの海外文化への進出が止まらない!!
「えっつまり、もう私が杏寿郎さんの求婚に『はい』と答えた事、御館様は知っているって事?」
「ああ!指輪を渡した事も、朝緋と恋仲を通り越してめおとになりたい事も話してある!」
「話を通すの早くない?求婚してもらってはいって頷いて、まだ半日くらいしか経ってないよね」
「こういうのは早ければ早いほどいい!要には頑張ってもらった!」
うわぁ、要お疲れ様だわ……。いつもより、疲れて見えるのはそういう事だったのね。あとで美味しいものあげよう。
杏寿郎さんが不敵な笑みを浮かべている。その笑み、結構あくどい。
「ふ、ふふふふふ。あとで父上にお許しをいただきに行くにあたり、先手を取って父上よりも位の高い御館様に口添えをいただきたいとも思ってな。
俺達の背後には御館様がいるという事だ。父上も頭が上がらぬ御館様という心強い味方がな」
「わー、外側から攻略しようとしてるー。……用意周到だね」
「二度も失敗せんよ。
ん?二度?……まあいいか」
『今』と『前』とで杏寿郎さんも記憶の混濁が激しくなってきたなあ。『前回』では散々、槇寿朗さんに却下されてたもんね。どろどろに愛されて嬉しい反面、ちょっと怖かったっけ。
「それで?その婚前旅行は行っていいって言われてるの?」
「ああ!お許しいただいた!」
「鬼の動きが活発化してきてる時なのに良いんだ……しかもやることまみれで忙しい柱なのに」
「柱だからこそだ。普段忙しく走り回っている分、休む時はしっかりと休息をとのこと」
メリハリは大切だものね。さすが御館様率いる鬼殺隊。命の危機はあるけれど、ホワイト企業!
「それに、東京府周辺だけでなく、他の地域にも鬼がいないとも限らんしな。その調査も兼ねての休暇となる」
「ならいいかもね。……どこ行くの?私としては、今この状態で十分に休暇だし、旅行って感じしてるけどね」
調査はできないけど温泉もあるし。
そう思っていた私の耳に届く、杏寿郎さんの笑顔の声。
「雲丹でも食べに行こうかと思う!」
「……雲丹?確かにここは山の幸は豊富だけど、海の幸はないもんね。でも何故にいきなり雲丹?」
「いきなりではない。前に食べたがっていたのは朝緋ではないか」
紅葉狩りの鬼退治の際、言った話か。覚えていてくれて嬉しい……杏寿郎さん、好きすぎる。
スススと近づいて、ぴとり。その隣にくっつくと、そっと頭を撫でてくれた。
「わたしいまからきょーじゅろーさんのせんようのねこになるね。ごろごろごろ、にゃあ」
「にゃあ!?くっ、猫とは愛いやつめ……!」
わしゃわしゃされたから余計香ってきたけど、温泉に入った後の香りに混じって杏寿郎さんの匂いがする…………本当に好きでたまらない。貴方は私のまたたびだ。
「雲丹なら海岸に行けば大抵どこでも獲れるとお聞きした。御館様の所有する土地や温泉宿が熱海にもあるそうでな。泊まる場所はそちらになる。良きお心遣いもいただいた事だし、ぜひ行こうではないか」
「熱海の温泉……」
箱根に草津、登別に酸ヶ湯、別府……日本各地にはたくさんの温泉地があるけれど、熱海かぁ。行ってみたかったところだ。
平成令和の時代にも、行く機会がないまま終わった、テレビでしか知らない場所。
御館様さすがです。そんな憧れの場所に、プライベートビーチや別荘を持っているとは。
「ちょっと待って、熱海よね?
遠いよ?この里からも逆方向じゃない?足は?」
起き上がり杏寿郎さんに詰め寄る。
わしゃわしゃの代わりに、膝の上に乗せられて髪に顔をうずめて鼻先で撫でてきた。あ、猫役は続行なよう。
でも、さすがに全集中の呼吸でばびゅーん!と徒歩で行くような距離ではない。行けるかもしれないけど、絶対にやだ。
「帝都あたりから専用の列車が運行しているだろう?熱海鉄道に乗って行こうかと」
「列車、ですか……?列車は、……」
はいみんなのトラウマきたー。いや、今の時点では私だけのトラウマか。
「何か問題があるのか?列車は嫌か?」
列車単体はいいのよ。そこに杏寿郎さんが加わると途端にトラウマになる。杏寿郎さんには列車に乗ってほしくないのよね……。
……んでも、熱海鉄道かぁ。んー……大丈夫、無限列車ではない。自身によくよく言い聞かせ、納得させる。
「いいえ特に問題ないし、列車も嫌いじゃないです。特に中で食べる駅弁なんて格別ですからね」
「そうだな、駅弁は美味い。熱海は海鮮料理はもちろんのこと、温泉で作る卵料理も美味いそうでな。
あちらでも改めて温泉に入ろうではないか。熱くて気持ちがいいそうだぞ。ここと違う泉質だから、朝緋もきっと気に入るはずだ」
美味しい料理に入ったことのなさそうな温泉……それ以前に大好きな人との旅行。
「行きたい!杏寿郎さんと、旅行に行きたいです!!」
「ははは!決まりだな!!」
行きたいに決まってるよね。