五周目 参
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刀鍛冶の里へと杏寿郎さんと共に訪れたのは、それからすぐのことだった。
『前』は槇寿朗さんと来たっけなあ。変わらぬ景色を懐かしみながらも、さも初めて来たかのように振る舞い、お隣の杏寿郎さんについて歩く。
……まだここに来るには前と比べても、少し早過ぎるなぁと思ったけれど、そういえば全ての時期が少し早まっているのだった。
起こる物事の時期は元々の時期とそんなに変わらずとも、私達の強さは前よりも早い時期に成長を迎えている。
つまり、戦いの要と言うべき日輪刀の摩耗は早いわけでして。刀のメンテナンスにと、訪れたのだ。
「俺の担当刀鍛冶殿はあちらの方角にいらっしゃる。君は反対側の山小屋か。終わったらまたこのあたりで落ち合おう」
私の担当刀鍛冶、鋼鐵塚さんは刀にのみ愛情を注ぐ。だからこそ、刀鍛冶の里の中でも特別人里離れた山の中にひっそり佇む小屋で作業をしている。
遠くないけど遠いなあ。里の端っこじゃん。
「終わったらお借りした宿に集合、が一番いいかな?」
「うむ!……いや待て」
早速刀を置きに……と駆け出そうとしたところで、手首を掴まれる。
「よく考えたら鋼鐵塚殿は朝緋に求婚をしてきた男だ。何かあったらすぐ鋼鐵塚殿のお宅から逃げろ」
「はあー?考えすぎ!刀鍛冶と隊士ですよ?何もありませんって〜」
「普通は気がなくば求婚などせぬだろう!!」
「あれは私の炎への適性と、物珍しい青い炎への憧れなだけで、」
「いや、朝緋の異変は一瞬で察知する自信がある!すぐに駆けつけよう!いやいや、刀を置いたらすぐにそちらに行くから待っていてくれ!!」
言うだけ言い切ったら全集中の呼吸で走り抜けていった。
……賑やかな人だこと。
一振り目二振り目と、日輪刀を預けたことに関してだけれど。
特に求婚はされなかったが、献上品として持ってきたみたらし団子を手渡したタイミングで、杏寿郎さんが現れた。
勝手に扉を開けて中に入ってくるとは、礼儀を重んじる杏寿郎さんにしては珍しい。余裕がなく、切羽詰まって見える。
その目が向く先は、みたらし団子の箱を通し鋼鐵塚さんと私の手が触れている場所。
もう刀は預けたからいいけども、それを見た杏寿郎さんが私の手を取り、強引に引っ張る。
「鋼鐵塚殿、朝緋の用は済んだだろうか!」
「ああ、期日までには刀は磨き上げておく。あとで取りに来い」
「ならばその時は朝緋でなく俺が取りにくるからよろしく頼む!では行くぞ朝緋!!」
みたらし団子に夢中になっている鋼鐵塚さんは返事もせず、私達は小屋を早々に去る。
「ちょ、なんで私じゃなくて師範が取りに行くことになって、「何か問題があるか!ないだろう!!」あ、……ありませんっ」
私を捕まえて離さない、というかもはや俵担ぎにしている杏寿郎さん。なんだか誘拐されている気分だけど、誘拐はあながち間違いではなさそう。
現に、お宿とは反対の方角、『以前』二人で浸かった露天風呂のある山の上にその足は向かっているようで。
「ねぇこっち温泉の方角って聞いてるよ!!宿は!?」
聞いても答えてくれない。無言で山をスッタカター!と登っていく。
杏寿郎さんたら、無言になるほどに温泉を欲しているの?
そして湯煙で真っ白な温泉地に着いて。
「あの……温泉に入りたいのはわかったけど、私今、着替え持ってきてな、わっ!?」
ぽい、と宙に投げられた。いきなりのことで着地も何もあったものではない。落ちる先はもちろん。
バッシャーン!!
温泉の湯の中。
「ぷはっ!何するの!?隊服がびしょ濡、れ……」
杏寿郎さんが上から降ってきた。
えええ、まさかのご自身も服のまま入るのー!?着衣入浴って、この時代はまだそんなに浸透していないのでは……?
「っ……!?」
起きあがろうとしていた私を再び湯の中に沈め、頬に手を添えてきた杏寿郎さん。ドアップのその顔がどんどんと近づいてきて。
湯の中で、とうとう唇同士が触れ合った。
湯より熱くて柔らかい唇。私のことを丸ごと食べちゃえそうな、男の人の分厚い唇。
どこまでも愛情深く、私を愛し求めてくるその唇。
あ、れ……前も温泉の中で、こんな事が……。それは『今回』?それとも『前回』?
酸欠と熱い熱い湯によって一気に頭がぼーっとしてきて思考能力低下中の私の脳では、いつのことだったのかすぐ答えが出なかった。
口づけをかわすのなんて、避け続けてきた『今回』のはずがないのにね。
水面にあがってもなお、唇を吸われ食まれ、快感を拾うスイッチでも探されている気分だ。
そんなもの探さなくても、十分に背筋がゾクゾクしてきてる。いつなん時、堕とされるかわからない状態。
「んっ、んん、……ぁ、もっと……、」
案の定、杏寿郎さんを求めて自分から唇を当て始めようと動く私の体。やめなさいと、心がどんなに訴えようと、体が勝手に求めてしまう。
「ぁ、ちが、う……駄目、も、やめ……。
し、はん……ひどい、いつだって駄目って言ってたのに、こんな……無理やりちゅーするなんて……!」
本能でなく理性に主導権を戻した私は、なおも私をとらえようとする杏寿郎さんの体を突き飛ばした。
「酷いのは君だ。俺に何度も何度も嫉妬させて……。
最近の俺は君を想いすぎて胸が苦しい。このままではきっと、鬼でなく朝緋が俺を殺すのだ」
「え、縁起でもない事言わな、ん、ぁぅ、んむ」
死の話は嫌だ。私が全て言い切る前に、険しい顔をした杏寿郎さんが再び唇を重ねてきた。
なんて性急な口づけ。口をこじ開け、舌先を中に侵入させようとしている。
「っんは、またそうやって……!」
顔を逸らし回避すると平手打ち!手を思い切り振り上げる。けれどそんなもの、柱の前では何にもならない。全て見切られていた。
「させん。
俺がどれほど我慢をしていたかわからせてやる。そして朝緋もまた、自身に我慢を強いていると今一度よく自覚した方がいい」
「わかりたくないし、我慢なんてしてない」
「ほぉ?無意識だろうが、もっと、と先ほど言っていたぞ。本心では俺を求めている証拠ではないか?」
ぐぬ……図星すぎて何にも言えません。
恥ずかしいこと呟いちゃったなぁ……穴があったら入りたいわ。
『前』は槇寿朗さんと来たっけなあ。変わらぬ景色を懐かしみながらも、さも初めて来たかのように振る舞い、お隣の杏寿郎さんについて歩く。
……まだここに来るには前と比べても、少し早過ぎるなぁと思ったけれど、そういえば全ての時期が少し早まっているのだった。
起こる物事の時期は元々の時期とそんなに変わらずとも、私達の強さは前よりも早い時期に成長を迎えている。
つまり、戦いの要と言うべき日輪刀の摩耗は早いわけでして。刀のメンテナンスにと、訪れたのだ。
「俺の担当刀鍛冶殿はあちらの方角にいらっしゃる。君は反対側の山小屋か。終わったらまたこのあたりで落ち合おう」
私の担当刀鍛冶、鋼鐵塚さんは刀にのみ愛情を注ぐ。だからこそ、刀鍛冶の里の中でも特別人里離れた山の中にひっそり佇む小屋で作業をしている。
遠くないけど遠いなあ。里の端っこじゃん。
「終わったらお借りした宿に集合、が一番いいかな?」
「うむ!……いや待て」
早速刀を置きに……と駆け出そうとしたところで、手首を掴まれる。
「よく考えたら鋼鐵塚殿は朝緋に求婚をしてきた男だ。何かあったらすぐ鋼鐵塚殿のお宅から逃げろ」
「はあー?考えすぎ!刀鍛冶と隊士ですよ?何もありませんって〜」
「普通は気がなくば求婚などせぬだろう!!」
「あれは私の炎への適性と、物珍しい青い炎への憧れなだけで、」
「いや、朝緋の異変は一瞬で察知する自信がある!すぐに駆けつけよう!いやいや、刀を置いたらすぐにそちらに行くから待っていてくれ!!」
言うだけ言い切ったら全集中の呼吸で走り抜けていった。
……賑やかな人だこと。
一振り目二振り目と、日輪刀を預けたことに関してだけれど。
特に求婚はされなかったが、献上品として持ってきたみたらし団子を手渡したタイミングで、杏寿郎さんが現れた。
勝手に扉を開けて中に入ってくるとは、礼儀を重んじる杏寿郎さんにしては珍しい。余裕がなく、切羽詰まって見える。
その目が向く先は、みたらし団子の箱を通し鋼鐵塚さんと私の手が触れている場所。
もう刀は預けたからいいけども、それを見た杏寿郎さんが私の手を取り、強引に引っ張る。
「鋼鐵塚殿、朝緋の用は済んだだろうか!」
「ああ、期日までには刀は磨き上げておく。あとで取りに来い」
「ならばその時は朝緋でなく俺が取りにくるからよろしく頼む!では行くぞ朝緋!!」
みたらし団子に夢中になっている鋼鐵塚さんは返事もせず、私達は小屋を早々に去る。
「ちょ、なんで私じゃなくて師範が取りに行くことになって、「何か問題があるか!ないだろう!!」あ、……ありませんっ」
私を捕まえて離さない、というかもはや俵担ぎにしている杏寿郎さん。なんだか誘拐されている気分だけど、誘拐はあながち間違いではなさそう。
現に、お宿とは反対の方角、『以前』二人で浸かった露天風呂のある山の上にその足は向かっているようで。
「ねぇこっち温泉の方角って聞いてるよ!!宿は!?」
聞いても答えてくれない。無言で山をスッタカター!と登っていく。
杏寿郎さんたら、無言になるほどに温泉を欲しているの?
そして湯煙で真っ白な温泉地に着いて。
「あの……温泉に入りたいのはわかったけど、私今、着替え持ってきてな、わっ!?」
ぽい、と宙に投げられた。いきなりのことで着地も何もあったものではない。落ちる先はもちろん。
バッシャーン!!
温泉の湯の中。
「ぷはっ!何するの!?隊服がびしょ濡、れ……」
杏寿郎さんが上から降ってきた。
えええ、まさかのご自身も服のまま入るのー!?着衣入浴って、この時代はまだそんなに浸透していないのでは……?
「っ……!?」
起きあがろうとしていた私を再び湯の中に沈め、頬に手を添えてきた杏寿郎さん。ドアップのその顔がどんどんと近づいてきて。
湯の中で、とうとう唇同士が触れ合った。
湯より熱くて柔らかい唇。私のことを丸ごと食べちゃえそうな、男の人の分厚い唇。
どこまでも愛情深く、私を愛し求めてくるその唇。
あ、れ……前も温泉の中で、こんな事が……。それは『今回』?それとも『前回』?
酸欠と熱い熱い湯によって一気に頭がぼーっとしてきて思考能力低下中の私の脳では、いつのことだったのかすぐ答えが出なかった。
口づけをかわすのなんて、避け続けてきた『今回』のはずがないのにね。
水面にあがってもなお、唇を吸われ食まれ、快感を拾うスイッチでも探されている気分だ。
そんなもの探さなくても、十分に背筋がゾクゾクしてきてる。いつなん時、堕とされるかわからない状態。
「んっ、んん、……ぁ、もっと……、」
案の定、杏寿郎さんを求めて自分から唇を当て始めようと動く私の体。やめなさいと、心がどんなに訴えようと、体が勝手に求めてしまう。
「ぁ、ちが、う……駄目、も、やめ……。
し、はん……ひどい、いつだって駄目って言ってたのに、こんな……無理やりちゅーするなんて……!」
本能でなく理性に主導権を戻した私は、なおも私をとらえようとする杏寿郎さんの体を突き飛ばした。
「酷いのは君だ。俺に何度も何度も嫉妬させて……。
最近の俺は君を想いすぎて胸が苦しい。このままではきっと、鬼でなく朝緋が俺を殺すのだ」
「え、縁起でもない事言わな、ん、ぁぅ、んむ」
死の話は嫌だ。私が全て言い切る前に、険しい顔をした杏寿郎さんが再び唇を重ねてきた。
なんて性急な口づけ。口をこじ開け、舌先を中に侵入させようとしている。
「っんは、またそうやって……!」
顔を逸らし回避すると平手打ち!手を思い切り振り上げる。けれどそんなもの、柱の前では何にもならない。全て見切られていた。
「させん。
俺がどれほど我慢をしていたかわからせてやる。そして朝緋もまた、自身に我慢を強いていると今一度よく自覚した方がいい」
「わかりたくないし、我慢なんてしてない」
「ほぉ?無意識だろうが、もっと、と先ほど言っていたぞ。本心では俺を求めている証拠ではないか?」
ぐぬ……図星すぎて何にも言えません。
恥ずかしいこと呟いちゃったなぁ……穴があったら入りたいわ。