五周目 参
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雨の切れ間を縫って走り抜ける杏寿郎さんの姿が見える。駄目だ、その鬼じゃない。その鬼はあとでいい!
……待って、今倒すべき相手はどこにいる?
「むん!こんな麻痺毒!コツさえ掴めば簡単に解毒できちゃうもんね!!炎柱一番の継子なめんな!!」
全身に炎の呼吸を猛火の如く行き渡らせ、麻痺毒を燃やし尽くして解毒する。その勢いのまま、私は杏寿郎さんを追って飛び出した。
「師範!!」
「!?朝緋!もういいのか!!」
「ええ!ピンピンしてます!師範、この血鬼術は目の前の鬼のものじゃありません!もう一匹鬼がいます!倒すならそっちが先!!」
「なるほど!何かおかしいと思った!!」
横に並び共に鬼の気配を探ると、橋の上の怪しい、鬼であろう人物に気がついた。あの人なんで夜中に橋の上から黄昏て俺かっこいいポーズしてるの?ナルシストなの?
「師範!橋のッ!上ーーっ!!」
「む!奴か!!
確かに、このような夜中に人が出歩くのは怪しい!!」
鬼の前へと降り立てば。嫌味ったらしい喋り方をする鬼が口上を垂れ始めた。
どうもこのタイプの人間、ううん。鬼は癪に触る。
はぁん?美食派?むさい鬼殺隊士は口にしない?杏寿郎さんのことも口にしない、ですって?
私が鬼なら絶対杏寿郎さんを食べるけど!?食べていいなら、ね!!だって食べちゃいたいくらい大好きなんだもの。
話を聞いているとどんどん腹が立ってくる……。こちとらお前達鬼を追い回すのに、ろくにお風呂入れない時だってある。汗水そして血反吐吐きながら駆けずり回ってるのに。
むさくしてるのは誰だ!人に仇なす鬼でしょーが!!
話を待っていられなくて斬りかかれば、その素早さと攻撃に目を丸くする事となった。
この鬼、言葉だけじゃなくて、素早い……!
けれど尚も続く鼻持ちならない話の連続に、とうとう私の堪忍袋の尾が切れた。
「へぇぇぇぇ!そっかそっかぁー!私がどんな血を持ってるか知っても、口にしないんだねぇぇぇ!!?」
「朝緋!煽るな!やめろ!!」
「無理!今の私は煽りの呼吸使いです!」
「言う事を聞きなさいっ!どっ……せい!!」
「ヘブッ!?」
ぐるぅり回る世界と脳震盪。鼻と口から変な息が漏れた。
杏寿郎さんに背負い投げされて地面に、ううん、泥にまみれた地面に叩きつけられた。
「仲間割れ?……うっわー、その子、泥鬼より泥まみれで汚いなあ。食欲無くすよ……」
なんと惨めな気持ち。さらに泥だらけ……。泥鬼って、あの大きな鬼だよね。あれ泥鬼って呼ばれてるんだぁ……。それより泥だらけとは、悲しさの極み。
「言いたいことはそれだけか?これ以上こちらは聞く耳を持たない。今からこの煉獄の赫き炎刀がお前を焼き尽くす!!」
轟々と直炎柱の炎刀が、闇夜を照らして燃え盛る。
「焼き尽くす、か。物騒だね」
それを見てケタケタ笑う鬼の指す先、町の方角から火の手があがっている。人々の叫び声も聞こえる。
火を放った!?火から逃げ惑う人々に、歓喜の雨ならぬ血鬼術の雨を降らせるー!?なんてやつだ!!
若い女性や赤子、幼児を厳選して食べる、ですって?確かに、これは美食派の鬼の言葉だ。
いや私も若いけど、杏寿郎さんが泥んこまみれにしてくれちゃったおかげで、ターゲットにされずにはすんだ。隊士的にはターゲットになる方がどれほど良かったか……。
おかげで泥を食べちゃったじゃない!ぺぺぺぺぺ!!
「血鬼術……」
鬼が手を上に向ける。暗雲がさらに立ち込め始めた。
杏寿郎さんが鬼に対抗すべく、全身に炎の呼吸を纏わせたのを感じる。
「人は自らの誕生を選ぶことはできない。しかし、生を受けた以上、人は自らの生を全うし、それぞれの責任を果たす。
弱き人を助けることは我が責務!!」
杏寿郎さんの熱き思い。
その声を聞いて瑠火さんの言葉が脳裏に甦る。
かつて、杏寿郎さんが言われていた言葉。その隣で聞いたことがある言葉。
杏寿郎さんの心に宿る信念、その思いが伝わってくる。
こんな鬼に杏寿郎さんは負けない。その頸を斬り落とす瞬間は見れないけれど、任せてしまおう。
……血鬼術だろうが雨は雨だ。皮膚に当たらなければどうってことない。
泥まみれになっちゃったけど……羽織を頭からかぶれば済む話だし。
「師範!先に町に行きます!!火事とぬ●かべをどうにかしないと!」
「ああ頼む!だがせめて顔の泥は拭いて行きなさい!その顔では君の方が化け物だ!!」
「わかってるよ!?」
誰がこうした?杏寿郎さんだ。あとで絶対仕返しする。泥まみれんごくきょうじゅろうにしてやる。
「炎の呼吸、壱ノ型・不知火!!」
急ぐ私の目に、遠く、鬼の頸が跳んでいくのが見えた。
「言ったろう。俺の炎刀がお前を焼き尽くすと!」
夜空に赤く神聖な炎が舞い上がった。
本当、あっけない鬼。
さて。どんなに鈍くて歩みの遅い鬼だろうと、鬼をこれ以上先に進ませるわけにいかない。ぬ●かべを倒さなくちゃ。火を消してまわりつつ、鬼と相対する。
けれど、直前で。
『君には無理だ。駄目だ。』という言葉が蘇り、臆してしまった。
おかげで刃が通らなかった。これでは最初と同じではないか。こんな時、自分に蜜璃くらいの筋力の強さ、しなやかさがあればといつも思う。
「何を迷っている!剣筋が乱れているぞ!それでは斬れない!!」
叱咤する声が飛んできて我に返る。
「師範……。だって……!」
「俺が来たのだから息を合わせて斬れば良いだけの話だ!
それに君には水の呼吸もあるだろう!炎の呼吸は伍だ!伍ノ型を放て!!」
「は、はいっ!!」
喝を入れられ、力が入る思いだ。そうだ、私には他の呼吸もある!!
「炎の呼吸、伍ノ型!炎虎ッ!!」
杏寿郎さんの振るう刃から猛虎が吼える。杏寿郎さんに続け!
「水の呼吸、肆ノ型、打ち潮!……からの、伍ノ型、炎虎・改乱咬み!!」
杏寿郎さんの技、そして私の技によってあんなに困難だった鬼の頸斬りも、あっさり完遂することができた。
この鬼、最後まで何も抵抗しなかったな……。鈍感にも程がある。あのナルシーな鬼に利用するだけ利用されて、少しだけ可哀想に思えた。あ、でもご飯である人間が食べられればそれでいいのかな?
鬼の社会はよくわからない。
「朝緋!やればできるではないか!
何を迷い、思い悩んだのか知らぬが、君には素晴らしい速さがある。その強みを活かしこれからもその刃を振えば問題ないだろう。それに体力も筋力もまだまだつく!!」
「うん……うん!」
そう言われて、じわっとうるっときた。
やる気スイッチ押された感じ。
頑張ろう。
「さあ、民衆を救うぞ!!誰一人とて死なせはせん!!」
「はいっ!」
……待って、今倒すべき相手はどこにいる?
「むん!こんな麻痺毒!コツさえ掴めば簡単に解毒できちゃうもんね!!炎柱一番の継子なめんな!!」
全身に炎の呼吸を猛火の如く行き渡らせ、麻痺毒を燃やし尽くして解毒する。その勢いのまま、私は杏寿郎さんを追って飛び出した。
「師範!!」
「!?朝緋!もういいのか!!」
「ええ!ピンピンしてます!師範、この血鬼術は目の前の鬼のものじゃありません!もう一匹鬼がいます!倒すならそっちが先!!」
「なるほど!何かおかしいと思った!!」
横に並び共に鬼の気配を探ると、橋の上の怪しい、鬼であろう人物に気がついた。あの人なんで夜中に橋の上から黄昏て俺かっこいいポーズしてるの?ナルシストなの?
「師範!橋のッ!上ーーっ!!」
「む!奴か!!
確かに、このような夜中に人が出歩くのは怪しい!!」
鬼の前へと降り立てば。嫌味ったらしい喋り方をする鬼が口上を垂れ始めた。
どうもこのタイプの人間、ううん。鬼は癪に触る。
はぁん?美食派?むさい鬼殺隊士は口にしない?杏寿郎さんのことも口にしない、ですって?
私が鬼なら絶対杏寿郎さんを食べるけど!?食べていいなら、ね!!だって食べちゃいたいくらい大好きなんだもの。
話を聞いているとどんどん腹が立ってくる……。こちとらお前達鬼を追い回すのに、ろくにお風呂入れない時だってある。汗水そして血反吐吐きながら駆けずり回ってるのに。
むさくしてるのは誰だ!人に仇なす鬼でしょーが!!
話を待っていられなくて斬りかかれば、その素早さと攻撃に目を丸くする事となった。
この鬼、言葉だけじゃなくて、素早い……!
けれど尚も続く鼻持ちならない話の連続に、とうとう私の堪忍袋の尾が切れた。
「へぇぇぇぇ!そっかそっかぁー!私がどんな血を持ってるか知っても、口にしないんだねぇぇぇ!!?」
「朝緋!煽るな!やめろ!!」
「無理!今の私は煽りの呼吸使いです!」
「言う事を聞きなさいっ!どっ……せい!!」
「ヘブッ!?」
ぐるぅり回る世界と脳震盪。鼻と口から変な息が漏れた。
杏寿郎さんに背負い投げされて地面に、ううん、泥にまみれた地面に叩きつけられた。
「仲間割れ?……うっわー、その子、泥鬼より泥まみれで汚いなあ。食欲無くすよ……」
なんと惨めな気持ち。さらに泥だらけ……。泥鬼って、あの大きな鬼だよね。あれ泥鬼って呼ばれてるんだぁ……。それより泥だらけとは、悲しさの極み。
「言いたいことはそれだけか?これ以上こちらは聞く耳を持たない。今からこの煉獄の赫き炎刀がお前を焼き尽くす!!」
轟々と直炎柱の炎刀が、闇夜を照らして燃え盛る。
「焼き尽くす、か。物騒だね」
それを見てケタケタ笑う鬼の指す先、町の方角から火の手があがっている。人々の叫び声も聞こえる。
火を放った!?火から逃げ惑う人々に、歓喜の雨ならぬ血鬼術の雨を降らせるー!?なんてやつだ!!
若い女性や赤子、幼児を厳選して食べる、ですって?確かに、これは美食派の鬼の言葉だ。
いや私も若いけど、杏寿郎さんが泥んこまみれにしてくれちゃったおかげで、ターゲットにされずにはすんだ。隊士的にはターゲットになる方がどれほど良かったか……。
おかげで泥を食べちゃったじゃない!ぺぺぺぺぺ!!
「血鬼術……」
鬼が手を上に向ける。暗雲がさらに立ち込め始めた。
杏寿郎さんが鬼に対抗すべく、全身に炎の呼吸を纏わせたのを感じる。
「人は自らの誕生を選ぶことはできない。しかし、生を受けた以上、人は自らの生を全うし、それぞれの責任を果たす。
弱き人を助けることは我が責務!!」
杏寿郎さんの熱き思い。
その声を聞いて瑠火さんの言葉が脳裏に甦る。
かつて、杏寿郎さんが言われていた言葉。その隣で聞いたことがある言葉。
杏寿郎さんの心に宿る信念、その思いが伝わってくる。
こんな鬼に杏寿郎さんは負けない。その頸を斬り落とす瞬間は見れないけれど、任せてしまおう。
……血鬼術だろうが雨は雨だ。皮膚に当たらなければどうってことない。
泥まみれになっちゃったけど……羽織を頭からかぶれば済む話だし。
「師範!先に町に行きます!!火事とぬ●かべをどうにかしないと!」
「ああ頼む!だがせめて顔の泥は拭いて行きなさい!その顔では君の方が化け物だ!!」
「わかってるよ!?」
誰がこうした?杏寿郎さんだ。あとで絶対仕返しする。泥まみれんごくきょうじゅろうにしてやる。
「炎の呼吸、壱ノ型・不知火!!」
急ぐ私の目に、遠く、鬼の頸が跳んでいくのが見えた。
「言ったろう。俺の炎刀がお前を焼き尽くすと!」
夜空に赤く神聖な炎が舞い上がった。
本当、あっけない鬼。
さて。どんなに鈍くて歩みの遅い鬼だろうと、鬼をこれ以上先に進ませるわけにいかない。ぬ●かべを倒さなくちゃ。火を消してまわりつつ、鬼と相対する。
けれど、直前で。
『君には無理だ。駄目だ。』という言葉が蘇り、臆してしまった。
おかげで刃が通らなかった。これでは最初と同じではないか。こんな時、自分に蜜璃くらいの筋力の強さ、しなやかさがあればといつも思う。
「何を迷っている!剣筋が乱れているぞ!それでは斬れない!!」
叱咤する声が飛んできて我に返る。
「師範……。だって……!」
「俺が来たのだから息を合わせて斬れば良いだけの話だ!
それに君には水の呼吸もあるだろう!炎の呼吸は伍だ!伍ノ型を放て!!」
「は、はいっ!!」
喝を入れられ、力が入る思いだ。そうだ、私には他の呼吸もある!!
「炎の呼吸、伍ノ型!炎虎ッ!!」
杏寿郎さんの振るう刃から猛虎が吼える。杏寿郎さんに続け!
「水の呼吸、肆ノ型、打ち潮!……からの、伍ノ型、炎虎・改乱咬み!!」
杏寿郎さんの技、そして私の技によってあんなに困難だった鬼の頸斬りも、あっさり完遂することができた。
この鬼、最後まで何も抵抗しなかったな……。鈍感にも程がある。あのナルシーな鬼に利用するだけ利用されて、少しだけ可哀想に思えた。あ、でもご飯である人間が食べられればそれでいいのかな?
鬼の社会はよくわからない。
「朝緋!やればできるではないか!
何を迷い、思い悩んだのか知らぬが、君には素晴らしい速さがある。その強みを活かしこれからもその刃を振えば問題ないだろう。それに体力も筋力もまだまだつく!!」
「うん……うん!」
そう言われて、じわっとうるっときた。
やる気スイッチ押された感じ。
頑張ろう。
「さあ、民衆を救うぞ!!誰一人とて死なせはせん!!」
「はいっ!」