五周目 参
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日が落ちて暗く佇む町並み。昼間なら活気があり賑やかだろうそこも、夜となればひっそりと静まり返り人もまばらにしか歩いていない。この時代のガス灯って結構暗いもんね。
今夜の私の舞台はこの場所だ。ここに出没する鬼の討伐、それが今回の任務。
近くには巨木の並ぶ森もあるから、逃げ込まれると厄介だな……。かといって、伐採するわけにいかないし。
「隊服の上から着物とか歩きにくいんですけど」
「隊士トバレタラ襲ッテ来ナイ可能性ガアルノヨ。仕方ナイデショ」
「わかってるけど走りにくいし、いつもの羽織がないのって落ち着かないのよね」
町娘が夜道の帰路を急ぐ体を装い、暗がりを歩きながら鎹烏のあずまに向かって文句を垂れていると早速頭上に鬼の気配。
屋根の上……いや、上空か!
「女発見!食わせろっ!!」
梟のように音も立てず滑空してきた鬼は、腕には羽毛と羽根が生え、しかしそれ以外は人間の姿。半人半鳥のいでたちをしていた。
ぎらりと光る爪が向かってきて、あずまも私も飛び退いてかわす。退いた瞬間見えた鬼の顔、そのフォルムに、聞こえた声……。
え、なんかこの鬼、見覚えある。
思い出せ、思い出せ。ええーと『今まで』の記憶の中には……いない。て事は『今回』の中で出会った鬼……?間近に遭遇していて取り逃したって事だよね?
そんな、私が鬼を取り逃すだなんて……。
「くそ、避けられるとはな……って、あの時の呼吸二つ使うガキ!?」
鬼が気がついて指を差してきた。人に向かって指差すな。……じゃなくて!
「ああーっ!それはこっちの台詞よ鳥にんげ、鳥の鬼!!」
隊士になる前、観劇の帰りに出くわし、取り逃した鬼だ!まさかまだ討伐されていなかったとは……。いや、取り逃した責任をとって私が頸を落としたいと思ってたんだし、これはチャンス!!
「ここであったが百年目、というところかしら!その羽根、むしり取って羽毛布団にしてやる!!」
頸取って鬼が死んだら跡形もなく消えるし、羽毛布団も何も残らないけどね。
「百年!貴様は百年も生きてないだろ!」
「どうせ鬼になって数年だろうアンタもで、しょっ!!」
ぼうっ!
私の心と鋒に炎が灯る。紅く、そして青い炎が。
「炎の呼吸、肆ノ型・盛炎のうねり!!
めらめらと焼き尽くせ!紅蓮の炎で焼き尽くせぇーー!」
そんな感じの歌詞の歌があった気がする。アニメかな?当時の明槻からの影響が大きすぎる。明槻はオタクだからなあ。
「うわ、あの時と段違いの炎の呼吸!?鳥の丸焼きになっちまう!刃羽根!!」
鳥の丸焼き!自分でも鳥と認めてるのこの鬼!自分で言ってて悲しくならないのかね……?
鬼は飛ばしてきた鋭いナイフのような羽根で、私の盛炎のうねりを打ち消してきた……へぇ。
「やるねー。相殺してくるだなんて。羽根を飛ばしてくる動きの精度も上がってるじゃないの」
「そうだろうそうだろう!お前も強く成長したようだが俺の技も磨かれた!強くなった!
肉を裂き骨も断つ俺の鋭利なこの羽根で、お前を引き裂いて喰ってやる……!!」
「食べれるものなら食べてみなさいよ!」
バッ!!
鬼が羽根を広げ、空へと飛んだ。
!?仕掛けてくる気ね……っ!
私からも相殺して技を打ち消し飛び込み、壱ノ型か伍ノ型で仕留める!!
刀を低く構え、いつでも技が繰り出せるよう、呼吸の精度を高めていく。
「と、見せかけて逃げる!!」
「ええっ!?」
技を放ってくると思っていたのに裏切られた!
くるりと回れ右して完全にそのまま逃亡するスタイル!
空に逃げられたら追えない!!
「逃げるな卑怯者、逃げるな!」
あっこれ炭治郎の言ってた台詞ー!思い出すと辛い!記憶のシャッター急いで閉じる!!
「空に逃げるとか鬼の風上にも置けない!逃がすものかーっ!!水の呼吸、参ノ型・流流舞っ!ふぬぅっ!!」
流流舞の勢いで屋根を駆け抜け伝い、飛び上がって鬼の足首をがしりと掴む。
掴まった重量でガクンと高度も速度も落ちた鬼が、私を見て暴れ始める。
「うわ離せこのやろっ」
ビシビシッ!!
「絶対に放さな……イタ!痛いっ!イタタッ!!爪いたっ!!アンタの足は鳥の鉤爪なわけ!?」
猛禽類を思わせる爪でひっかかれ、腕から出血した。ただしあくまでも攻撃の主体は羽根なのか、その威力は高くない。
でも私の血は鬼にとってのご馳走。抗い難し魅惑の香りの稀血。
「あっおまっ!お前稀血なのか!?」
「そうよ稀血よ!逃げる気無くなったでしょ美味しそうでしょ稀血に酔うでしょ!降りて私と戦えーー!!」
「ぐ、ぬぬぬ……」
振り払うのをやめた鬼が葛藤している。え、葛藤?稀血を前にして?稀血酔いも見られるのだか見られないのだかわからない状態。
「稀血だろうがなんだろうが俺は逃げる!頸のが大事!!」
「ええーっ!?……ぁっ!きゃー!?」
食事より命大事に!稀血の誘惑ごと、鬼に振り払われて真っ逆様に落ちる私。屋根の上に着地できたからいいけど、常人なら死んでる高さだった。
上空高く逃げていく鬼に向かって声高に呼びかける。
「稀血食べて十二鬼月にならなくていいわけー!?」
「そんなもの興味なーし!逃げる!!」
「いいんかいっ!」
その姿は点のように小さくなっていって…………消えた。
「あの鬼、鬼舞辻無惨の呪いすら解けかけてるんじゃないの……?十二鬼月に興味ないとか、普通ありえなくない?積極的に人間食べろー、とかテレパシーで伝わってくるんでしょ?」
鬼達は自分の空腹に乗っかって本能のままに人を襲い、そして喰らう。けれど、本能でなくても、鬼舞辻無惨からの命で人を襲って食べる。強い鬼になるよう、仕向けられているとの話だ。
一般的な鬼のはずの今の鬼が、その命に従わないだなんて誰が思う?
「っていうか。嘘でしょ……また取り逃しちゃったんだけど?あの時とは違う、今の私は隊士なのに。
師範役を引き受けてくれている杏寿郎さんに面目が立たない!見つけ出して頸を斬る対象がまた増えた……っ」
思えば明槻みたいな逃げ足の鬼だった。人間を食べてるのは確実だから、いつか頸を斬るのは確定だけど。
今夜の私の舞台はこの場所だ。ここに出没する鬼の討伐、それが今回の任務。
近くには巨木の並ぶ森もあるから、逃げ込まれると厄介だな……。かといって、伐採するわけにいかないし。
「隊服の上から着物とか歩きにくいんですけど」
「隊士トバレタラ襲ッテ来ナイ可能性ガアルノヨ。仕方ナイデショ」
「わかってるけど走りにくいし、いつもの羽織がないのって落ち着かないのよね」
町娘が夜道の帰路を急ぐ体を装い、暗がりを歩きながら鎹烏のあずまに向かって文句を垂れていると早速頭上に鬼の気配。
屋根の上……いや、上空か!
「女発見!食わせろっ!!」
梟のように音も立てず滑空してきた鬼は、腕には羽毛と羽根が生え、しかしそれ以外は人間の姿。半人半鳥のいでたちをしていた。
ぎらりと光る爪が向かってきて、あずまも私も飛び退いてかわす。退いた瞬間見えた鬼の顔、そのフォルムに、聞こえた声……。
え、なんかこの鬼、見覚えある。
思い出せ、思い出せ。ええーと『今まで』の記憶の中には……いない。て事は『今回』の中で出会った鬼……?間近に遭遇していて取り逃したって事だよね?
そんな、私が鬼を取り逃すだなんて……。
「くそ、避けられるとはな……って、あの時の呼吸二つ使うガキ!?」
鬼が気がついて指を差してきた。人に向かって指差すな。……じゃなくて!
「ああーっ!それはこっちの台詞よ鳥にんげ、鳥の鬼!!」
隊士になる前、観劇の帰りに出くわし、取り逃した鬼だ!まさかまだ討伐されていなかったとは……。いや、取り逃した責任をとって私が頸を落としたいと思ってたんだし、これはチャンス!!
「ここであったが百年目、というところかしら!その羽根、むしり取って羽毛布団にしてやる!!」
頸取って鬼が死んだら跡形もなく消えるし、羽毛布団も何も残らないけどね。
「百年!貴様は百年も生きてないだろ!」
「どうせ鬼になって数年だろうアンタもで、しょっ!!」
ぼうっ!
私の心と鋒に炎が灯る。紅く、そして青い炎が。
「炎の呼吸、肆ノ型・盛炎のうねり!!
めらめらと焼き尽くせ!紅蓮の炎で焼き尽くせぇーー!」
そんな感じの歌詞の歌があった気がする。アニメかな?当時の明槻からの影響が大きすぎる。明槻はオタクだからなあ。
「うわ、あの時と段違いの炎の呼吸!?鳥の丸焼きになっちまう!刃羽根!!」
鳥の丸焼き!自分でも鳥と認めてるのこの鬼!自分で言ってて悲しくならないのかね……?
鬼は飛ばしてきた鋭いナイフのような羽根で、私の盛炎のうねりを打ち消してきた……へぇ。
「やるねー。相殺してくるだなんて。羽根を飛ばしてくる動きの精度も上がってるじゃないの」
「そうだろうそうだろう!お前も強く成長したようだが俺の技も磨かれた!強くなった!
肉を裂き骨も断つ俺の鋭利なこの羽根で、お前を引き裂いて喰ってやる……!!」
「食べれるものなら食べてみなさいよ!」
バッ!!
鬼が羽根を広げ、空へと飛んだ。
!?仕掛けてくる気ね……っ!
私からも相殺して技を打ち消し飛び込み、壱ノ型か伍ノ型で仕留める!!
刀を低く構え、いつでも技が繰り出せるよう、呼吸の精度を高めていく。
「と、見せかけて逃げる!!」
「ええっ!?」
技を放ってくると思っていたのに裏切られた!
くるりと回れ右して完全にそのまま逃亡するスタイル!
空に逃げられたら追えない!!
「逃げるな卑怯者、逃げるな!」
あっこれ炭治郎の言ってた台詞ー!思い出すと辛い!記憶のシャッター急いで閉じる!!
「空に逃げるとか鬼の風上にも置けない!逃がすものかーっ!!水の呼吸、参ノ型・流流舞っ!ふぬぅっ!!」
流流舞の勢いで屋根を駆け抜け伝い、飛び上がって鬼の足首をがしりと掴む。
掴まった重量でガクンと高度も速度も落ちた鬼が、私を見て暴れ始める。
「うわ離せこのやろっ」
ビシビシッ!!
「絶対に放さな……イタ!痛いっ!イタタッ!!爪いたっ!!アンタの足は鳥の鉤爪なわけ!?」
猛禽類を思わせる爪でひっかかれ、腕から出血した。ただしあくまでも攻撃の主体は羽根なのか、その威力は高くない。
でも私の血は鬼にとってのご馳走。抗い難し魅惑の香りの稀血。
「あっおまっ!お前稀血なのか!?」
「そうよ稀血よ!逃げる気無くなったでしょ美味しそうでしょ稀血に酔うでしょ!降りて私と戦えーー!!」
「ぐ、ぬぬぬ……」
振り払うのをやめた鬼が葛藤している。え、葛藤?稀血を前にして?稀血酔いも見られるのだか見られないのだかわからない状態。
「稀血だろうがなんだろうが俺は逃げる!頸のが大事!!」
「ええーっ!?……ぁっ!きゃー!?」
食事より命大事に!稀血の誘惑ごと、鬼に振り払われて真っ逆様に落ちる私。屋根の上に着地できたからいいけど、常人なら死んでる高さだった。
上空高く逃げていく鬼に向かって声高に呼びかける。
「稀血食べて十二鬼月にならなくていいわけー!?」
「そんなもの興味なーし!逃げる!!」
「いいんかいっ!」
その姿は点のように小さくなっていって…………消えた。
「あの鬼、鬼舞辻無惨の呪いすら解けかけてるんじゃないの……?十二鬼月に興味ないとか、普通ありえなくない?積極的に人間食べろー、とかテレパシーで伝わってくるんでしょ?」
鬼達は自分の空腹に乗っかって本能のままに人を襲い、そして喰らう。けれど、本能でなくても、鬼舞辻無惨からの命で人を襲って食べる。強い鬼になるよう、仕向けられているとの話だ。
一般的な鬼のはずの今の鬼が、その命に従わないだなんて誰が思う?
「っていうか。嘘でしょ……また取り逃しちゃったんだけど?あの時とは違う、今の私は隊士なのに。
師範役を引き受けてくれている杏寿郎さんに面目が立たない!見つけ出して頸を斬る対象がまた増えた……っ」
思えば明槻みたいな逃げ足の鬼だった。人間を食べてるのは確実だから、いつか頸を斬るのは確定だけど。