五周目 参
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その時期が迫っているからと、私はさつまいもと桜餅の材料を存分に用意した。その時期とはなんぞやって?蜜璃が初任務をこなし、我が煉獄家へと打ち稽古をしに来る時期のことだ。
あの時は何か自分の在り方や戦い方に関して悩んでいて、それで稽古をつけてもらいに来たんじゃないかなと思っている。蜜璃は隊士になった今も、炎の呼吸がまだ上手く扱えていない。
当然だ。だって蜜璃の進むところは炎の更に先。恋の呼吸なのだから。
だから今度こそと思い、蜜璃が相談がてら杏寿郎さんの稽古を受けに来た時に詳しく悩みを聞こうと思ったのだけれど……。
ぐうううう〜!
木刀同士がぶつかり合う小気味良い音が響く中、気が抜けるような蜜璃のお腹の音が主張してくる。
「腹の音で返事をするな甘露寺!!」
打ち稽古はあと百を切っている。『前』はあと千回なんて言われてたけど蜜璃も成長したのね。でもさっきお昼ご飯食べたばかりなのだから、甘味休憩はまだ先。私とも打ち合いできるはず。
「はいはーい師範!次私と交代!」
「む!朝緋もたまには甘露寺と稽古せんとなっ!存分に打ち合うといい!!」
あら。百が終わる前に、杏寿郎さんと居場所が変わっちゃった。
「れ、連戦!?」
「そうよ!
よーし蜜璃ちゃん、次は私とやろう!力いっぱい打ち込んできてほしいっ!!」
「どひー!朝緋ちゃん動きが速いからきついのにぃー!!甘味休憩どこに行ったのぉ〜!」
甘味休憩は私もしたい。けどあとだ、あと。
「なに言ってるの!力は蜜璃ちゃんの方が強いんだから、強引に押し通す感覚で来てくれればフィフティフィフティでしょ!」
「ふいふひふなんてわからないわ〜!お腹空いたよーー!!」
涙目になりながら木刀を力任せにブンブン振り回す蜜璃に、スイッチの入った私は手加減などしなかった。でないとその力で木刀ごと吹っ飛ばされるのはこちらだ。
今回も蜜璃の悩みを聞くことをとーんと忘れてしまい、杏寿郎さんと共に稽古に励んでしまった。甘味休憩も忘れるほどにだ。
相変わらず強くなる事ばかり考えている脳筋な私です、はい。
……強さばかり追い求めるだなんて、本当、猗窩座の事言えない。仲良くする気はないけど、考え方だけで言うと仲良くなれそう。
千寿郎と共に作った桜餅とスイートポテトでの甘味休憩、彼女の刺激的な隊服のお披露目を経て、炎柱煉獄槇寿朗の鎹烏から柱合会議に至急向かうようにとの伝令が下りた。
でも結局、槇寿朗さんは行かないの一点張りで。
そうだよね、少しだけ性格が丸くなっていた『前回』でさえ、行かなかったんだもの。
私が経験したどの『繰り返し』の中と比べても激しく私や杏寿郎さんの鬼殺隊入りを否定し非難し、任務も放棄して常に怒っているのが今だもの。
柱合会議に参加するわけがなかった。
ま!この任務には槇寿朗さんじゃなくて杏寿郎さんが参加してくれないと展開的に困るし、この流れでいいんだと、今は思えるようになったけどね!
「すまん、出かけてくる。父上の代わりに柱合会議に出るようにと仰せつかったのでな」
「兄上が柱合会議に……?」
槇寿朗さんが参加しない理由、槇寿朗さんの煉獄家での様子が聞きたいと、やはり代わりに杏寿郎さんが柱合会議に呼ばれた。
行きたいならお前が行け、との話もされていたようだし、これで杏寿郎さんのあの任務行きは確定かな。
準備する杏寿郎さんに倣い、身支度を整える私。
「ん?何をしている?朝緋は呼ばれていないだろうに」
「あ……すみません、流れで着いて行こうとしちゃってました」
だって『前回』杏寿郎さんたら、不死川さんに殴られて戻ってきたんだもの。なんで殴られてるの?って気になるじゃない。事の真相を確かめたい。
「一緒にいっちゃだめ?」
羽織の端を摘んで引き留め、聞いてみれば。
「よし共に行こう!!」
と即答からの。
「……と言いたいところだが駄目だ。朝緋は千寿郎や甘露寺と共に留守番をしていなさい。任務がない時は亭主の留守を守るのも立派な隊士の務めだぞ!」
「隊士関係ないじゃん。亭主じゃないじゃん」
「そこは『はい旦那様』だろう!?」
そのやり取りを聞いて蜜璃がキャアキャア言っているのをBGMにしながら、杏寿郎さんは鎹烏と共に柱合会議に出かけて行ってしまわれた。
旦那様だなんて絶対に呼びません。
柱合会議が終わって帰ってきた杏寿郎さんの顔の一部は、案の定少しだけ腫れていた。やっぱりね、また不死川さんに殴られたのだとわかる。美しいお顔に何してるの不死川さぁん!
でも本人がそれを伝えて来ないし、呼吸で痛みももうほとんどなさそうだ。氷嚢は作らなくてもいいかな。
「「おかえりなさい師範!」」
「おかえりなさい、兄上」
「ああただいま!
甘露寺!俺と一緒の任務だ!支度しろ!!」
「は、はいっ」
「朝緋!君にも任務が言い渡されているぞ!」
「はい!って、え?」
そう言って御館様からの書状を渡してくる杏寿郎さん。言い方とこの書状的に、一緒の任務じゃなさそう……?あれ?あれれー?
「私は師範や蜜璃ちゃんと一緒に帝都の任務じゃないの?」
「む?確かに行き先は帝都だが、朝緋はなぜ俺と甘露寺の任務先を知っているのだ?」
杏寿郎さんにじっと見つめられ、冷や汗がつたった。
「そ、そんな気がしただけです!」
「……まあ、そういうことにしておこう」
杏寿郎さんも、隣の蜜璃も不思議そうな顔をする。
何度もやり直しているせいかな。最近の私は、今までの記憶と今の記憶が混濁している。
ボロが出過ぎね。危ない危ない。
私は煉獄家を出て左、杏寿郎さん達は右に行くけれど、私が出立するまでにはまだ時間がある。お二人をお見送りしてまた縁側に戻り、少しだらしなく見えるのも気にせず、ぐでーんと床板に突っ伏す。
ひんやりして気持ちいいけど、ちょっと冷たすぎる。床暖房が欲しい。
「ねえあずま、千寿郎、二人はもう行ったよね?見えないよね?こっちの声聞こえてないよね?」
「行ッタ!声ハ届カナイ位置ニイルヨー!!」
「とっくに見えなくなりましたが、それがどうかしたのですか?」
「ならいいや」
すぅはぁ、深く深く深呼吸。
「あ゛ーーーもうッ!!なんで!?私も杏寿郎さん達と一緒の任務がいいのにぃ!少しでいいから杏寿郎さん達の手助けがしたいのにぃ!
かっこいい杏寿郎さんが見たいのにぃ!!なんで私だけ別の任務なのー!?やだやだやだやだ!!」
「あ、姉上……?」
その場でジタバタ。床板をバシバシ叩く。
あまりやると床板抜けるし、槇寿朗さんが煩いと怒号を飛ばしてきそうだからこの辺で。ほら、千寿郎も思いっきり引いてるし。
「ふう、叫んだら満足した!」
「……姉上………。今の姿は情けなさすぎます。僕としてはもう少し威厳ある姉でいて欲しいです」
「朝緋チャン私モ千寿郎ト同意見ヨ……」
「ふふ、威厳なんてとうの昔に、さつまいもと一緒に焼いて杏寿郎兄さんの胃袋の中よ」
前回の下弦の弐との戦闘を経て、守ってもらう事に関してのキュンがとまらない。そういう扱いを受けることに少しだけ病みつきになっている。
だって、杏寿郎さんのこと好きなのだもの。好きな人に守ってもらいたいというのは、全女子の願望。
あっもちろん杏寿郎さんの怪我はあの時よりも軽症に持っていくことをお約束するよ。
私は守ってもらってばかりの女じゃない。自分の身は自分で守るのが基本。鬼殺隊士なのだから自分が戦うのは基本だし。
強くなる。大切な人を守れるくらいに。
守ってもらうだけじゃない、杏寿郎さんを守りたい。
だから一緒に行きたかった。
でも私は一人、違う任務……。はあああ。
腹が立つので任務先の鬼の頸は、すごくすごーく痛い感じに斬り落としたいと思いまーす。
あの時は何か自分の在り方や戦い方に関して悩んでいて、それで稽古をつけてもらいに来たんじゃないかなと思っている。蜜璃は隊士になった今も、炎の呼吸がまだ上手く扱えていない。
当然だ。だって蜜璃の進むところは炎の更に先。恋の呼吸なのだから。
だから今度こそと思い、蜜璃が相談がてら杏寿郎さんの稽古を受けに来た時に詳しく悩みを聞こうと思ったのだけれど……。
ぐうううう〜!
木刀同士がぶつかり合う小気味良い音が響く中、気が抜けるような蜜璃のお腹の音が主張してくる。
「腹の音で返事をするな甘露寺!!」
打ち稽古はあと百を切っている。『前』はあと千回なんて言われてたけど蜜璃も成長したのね。でもさっきお昼ご飯食べたばかりなのだから、甘味休憩はまだ先。私とも打ち合いできるはず。
「はいはーい師範!次私と交代!」
「む!朝緋もたまには甘露寺と稽古せんとなっ!存分に打ち合うといい!!」
あら。百が終わる前に、杏寿郎さんと居場所が変わっちゃった。
「れ、連戦!?」
「そうよ!
よーし蜜璃ちゃん、次は私とやろう!力いっぱい打ち込んできてほしいっ!!」
「どひー!朝緋ちゃん動きが速いからきついのにぃー!!甘味休憩どこに行ったのぉ〜!」
甘味休憩は私もしたい。けどあとだ、あと。
「なに言ってるの!力は蜜璃ちゃんの方が強いんだから、強引に押し通す感覚で来てくれればフィフティフィフティでしょ!」
「ふいふひふなんてわからないわ〜!お腹空いたよーー!!」
涙目になりながら木刀を力任せにブンブン振り回す蜜璃に、スイッチの入った私は手加減などしなかった。でないとその力で木刀ごと吹っ飛ばされるのはこちらだ。
今回も蜜璃の悩みを聞くことをとーんと忘れてしまい、杏寿郎さんと共に稽古に励んでしまった。甘味休憩も忘れるほどにだ。
相変わらず強くなる事ばかり考えている脳筋な私です、はい。
……強さばかり追い求めるだなんて、本当、猗窩座の事言えない。仲良くする気はないけど、考え方だけで言うと仲良くなれそう。
千寿郎と共に作った桜餅とスイートポテトでの甘味休憩、彼女の刺激的な隊服のお披露目を経て、炎柱煉獄槇寿朗の鎹烏から柱合会議に至急向かうようにとの伝令が下りた。
でも結局、槇寿朗さんは行かないの一点張りで。
そうだよね、少しだけ性格が丸くなっていた『前回』でさえ、行かなかったんだもの。
私が経験したどの『繰り返し』の中と比べても激しく私や杏寿郎さんの鬼殺隊入りを否定し非難し、任務も放棄して常に怒っているのが今だもの。
柱合会議に参加するわけがなかった。
ま!この任務には槇寿朗さんじゃなくて杏寿郎さんが参加してくれないと展開的に困るし、この流れでいいんだと、今は思えるようになったけどね!
「すまん、出かけてくる。父上の代わりに柱合会議に出るようにと仰せつかったのでな」
「兄上が柱合会議に……?」
槇寿朗さんが参加しない理由、槇寿朗さんの煉獄家での様子が聞きたいと、やはり代わりに杏寿郎さんが柱合会議に呼ばれた。
行きたいならお前が行け、との話もされていたようだし、これで杏寿郎さんのあの任務行きは確定かな。
準備する杏寿郎さんに倣い、身支度を整える私。
「ん?何をしている?朝緋は呼ばれていないだろうに」
「あ……すみません、流れで着いて行こうとしちゃってました」
だって『前回』杏寿郎さんたら、不死川さんに殴られて戻ってきたんだもの。なんで殴られてるの?って気になるじゃない。事の真相を確かめたい。
「一緒にいっちゃだめ?」
羽織の端を摘んで引き留め、聞いてみれば。
「よし共に行こう!!」
と即答からの。
「……と言いたいところだが駄目だ。朝緋は千寿郎や甘露寺と共に留守番をしていなさい。任務がない時は亭主の留守を守るのも立派な隊士の務めだぞ!」
「隊士関係ないじゃん。亭主じゃないじゃん」
「そこは『はい旦那様』だろう!?」
そのやり取りを聞いて蜜璃がキャアキャア言っているのをBGMにしながら、杏寿郎さんは鎹烏と共に柱合会議に出かけて行ってしまわれた。
旦那様だなんて絶対に呼びません。
柱合会議が終わって帰ってきた杏寿郎さんの顔の一部は、案の定少しだけ腫れていた。やっぱりね、また不死川さんに殴られたのだとわかる。美しいお顔に何してるの不死川さぁん!
でも本人がそれを伝えて来ないし、呼吸で痛みももうほとんどなさそうだ。氷嚢は作らなくてもいいかな。
「「おかえりなさい師範!」」
「おかえりなさい、兄上」
「ああただいま!
甘露寺!俺と一緒の任務だ!支度しろ!!」
「は、はいっ」
「朝緋!君にも任務が言い渡されているぞ!」
「はい!って、え?」
そう言って御館様からの書状を渡してくる杏寿郎さん。言い方とこの書状的に、一緒の任務じゃなさそう……?あれ?あれれー?
「私は師範や蜜璃ちゃんと一緒に帝都の任務じゃないの?」
「む?確かに行き先は帝都だが、朝緋はなぜ俺と甘露寺の任務先を知っているのだ?」
杏寿郎さんにじっと見つめられ、冷や汗がつたった。
「そ、そんな気がしただけです!」
「……まあ、そういうことにしておこう」
杏寿郎さんも、隣の蜜璃も不思議そうな顔をする。
何度もやり直しているせいかな。最近の私は、今までの記憶と今の記憶が混濁している。
ボロが出過ぎね。危ない危ない。
私は煉獄家を出て左、杏寿郎さん達は右に行くけれど、私が出立するまでにはまだ時間がある。お二人をお見送りしてまた縁側に戻り、少しだらしなく見えるのも気にせず、ぐでーんと床板に突っ伏す。
ひんやりして気持ちいいけど、ちょっと冷たすぎる。床暖房が欲しい。
「ねえあずま、千寿郎、二人はもう行ったよね?見えないよね?こっちの声聞こえてないよね?」
「行ッタ!声ハ届カナイ位置ニイルヨー!!」
「とっくに見えなくなりましたが、それがどうかしたのですか?」
「ならいいや」
すぅはぁ、深く深く深呼吸。
「あ゛ーーーもうッ!!なんで!?私も杏寿郎さん達と一緒の任務がいいのにぃ!少しでいいから杏寿郎さん達の手助けがしたいのにぃ!
かっこいい杏寿郎さんが見たいのにぃ!!なんで私だけ別の任務なのー!?やだやだやだやだ!!」
「あ、姉上……?」
その場でジタバタ。床板をバシバシ叩く。
あまりやると床板抜けるし、槇寿朗さんが煩いと怒号を飛ばしてきそうだからこの辺で。ほら、千寿郎も思いっきり引いてるし。
「ふう、叫んだら満足した!」
「……姉上………。今の姿は情けなさすぎます。僕としてはもう少し威厳ある姉でいて欲しいです」
「朝緋チャン私モ千寿郎ト同意見ヨ……」
「ふふ、威厳なんてとうの昔に、さつまいもと一緒に焼いて杏寿郎兄さんの胃袋の中よ」
前回の下弦の弐との戦闘を経て、守ってもらう事に関してのキュンがとまらない。そういう扱いを受けることに少しだけ病みつきになっている。
だって、杏寿郎さんのこと好きなのだもの。好きな人に守ってもらいたいというのは、全女子の願望。
あっもちろん杏寿郎さんの怪我はあの時よりも軽症に持っていくことをお約束するよ。
私は守ってもらってばかりの女じゃない。自分の身は自分で守るのが基本。鬼殺隊士なのだから自分が戦うのは基本だし。
強くなる。大切な人を守れるくらいに。
守ってもらうだけじゃない、杏寿郎さんを守りたい。
だから一緒に行きたかった。
でも私は一人、違う任務……。はあああ。
腹が立つので任務先の鬼の頸は、すごくすごーく痛い感じに斬り落としたいと思いまーす。