五周目 弐
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お前は稀血だというに、隊士になるなど……!到底許せることではない!最終選別を無事合格したからなんだ!朝緋が隊士になることを俺が許すと思うか!
柱の命令だ。隊士をやめろ。鬼殺隊をやめろ。家にいて花嫁修行でもしていろ!女学校に通いたいなら手配してやる……!!」
「そんなこと言われてはいそうですかなんて、最終選別から戻った私が言うとお思いで?まだきちんと入隊してもいない内から、柱の命を聞くわけないでしょ!隊士になるのも鬼殺隊に入るのもやめません!私は己の意思に従い自由に生きます!」
結果的に帰還の報告……否、話し合いは、いつも通り始終喧嘩モードで終わった。
手こそ出されることはなかったけれど、言葉の刃は鋭くて。私だけでなく、外で聞いていたであろう杏寿郎さんや千寿郎にも被害が及んだ。んー、内容はとてもじゃないけどここじゃ詳しく言えないや。
最後は私が一方的に言い切ってはい終わり。杏寿郎さん風に言うと「この話はこれで終いだな!」である。
だって何を言われたって私が鬼殺隊士になるのを諦めることはないのだし。ううん、隊士にならないとしても鬼の頸を取るのは変わらない。杏寿郎さんの未来を得るためには、鬼を殺さなくてはならないのだから。
その後、鋼鐵塚さんが私の日輪刀を届けに来てくださった。
これはいつも通り。美しく煌めく私だけの色。どこか苛烈な性格を表した、熱い熱い、全てを消し炭へ変えてしまう私の炎の色。赤と青の、日輪刀。
私の日輪刀の美しさに惚れ惚れし、そして私が作っておいた大量のみたらし団子という献上品で嬉しそうな鋼鐵塚さんへと、二本目の日輪刀が欲しい話を切り出す。
おっと、その際に求婚されるのはいつものことだ。スルースキル発動ね。
彼は快く引き受けてくださった。あの黒みを帯びた二本目の日輪刀……あの子が届くのが今から楽しみでならない。
もう杏寿郎さんに二本目の日輪刀のことを隠す必要はない。
だってもう私が水の呼吸も多少使えることを、杏寿郎さんは知っている。あ、メインはもちろん炎の呼吸だよ。そこは変わらない。
私は炎の呼吸の使い手。炎柱の継子。
隊服についてもなんとか解決した。
「朝緋隊士のスカート丈はこのくらいでよろしいでしょうか!」
「うむ!まだ長いな!もう少し短くしたほうがいいと思うのだが!!」
「ですよねぇ!朝緋隊士のかわいらしい御御足を眺めるにはやはり、もう少し丈を詰めて短くしたほうがいいですよねぇ!!煉獄杏寿郎隊士、わかってますね!!」
「ははは!だろうだろう!」
この通りなんとか、スカートがみじかぁぁい丈になったけど解決した。
なんでこんなにスカートが短くなってるのさ。タイツだの長い靴下だの履くからいいという問題じゃないよ。
『最初』の頃は、ズボンにしなさいとか脚絆を使えだとか、足を出すことを良しとしなかったではないか。
杏寿郎さん……貴方なんだか『繰り返す』毎にどんどん自分の欲求に素直になってません?いや、杏寿郎さんも若い男性、ううん。青年なのだからそういう欲求があって当然なんだけどもね。
ただ、欲求の矛先は頼むから私ではなく他にも向けてちょうだい。そう!とにかくお芋に!食べ物に向けててよ!!
そして隊服を受け取りに行ったその日の内に、私の部屋にはあの羽織が置かれていた。私のための、私だけの炎の羽織。
槇寿朗さんめ……私や杏寿郎さんが不在の内にこっそり置いていったな……。相変わらず素直じゃない。ツンデレ具合に磨きがかかっている。
もっと素直になればいいのになぁ……杏寿郎さんを見習、いや、槇寿朗さんは反面教師の役かな?
槇寿朗さんが俯き、不機嫌そうにすればするほど、杏寿郎さんが前を向き、明るく笑う気がする。その胸の内に、時折湧いてくる寂しさや辛さを隠しながら。
数日経って初任務が言い渡された。『今回』も杏寿郎さんや千寿郎、獪岳に怪我などしないよう、攻撃を受けぬよう、無事に帰るよう耳にたこができるほど言われた。
無駄に傷を負う気はないけどさ、みんな私の稀血を気にしすぎ。あとたこの唐揚げ食べたい。
「はぁはぁ……、なかなかやる鬼だね……」
私が攻撃を仕掛けると、まるで鏡のように同じ斬撃が跳ね返ってくるとはまさか思わなんだ。私の斬撃がそのまま私の腕を裂くだなんて!
「お前、稀血のくせに鬼狩りなんだなぁぁ。それも、変な呼吸を使う!イイ匂いだ……ムラムラしてくる気がするぜぇ」
「稀血で悪かったね。鬼狩りで悪かったね。変な呼吸で悪かったね!
あとムラムラしないでくれる?気色悪い!ロリコン!!」
おかげであんなに気をつけろと言われていた傷を負ってしまい、稀血もバレる始末。
でもさでもさ、初見殺しな鬼の血鬼術相手に傷を負わないでいられるなんて難しいよね?
私これでも今回のこの体ではまだまだ隊士としてヒヨッコの鬼殺初心者だよ。無傷で鬼退治ができるわけがないじゃない?ましてや、藤襲山にいるような血鬼術も使えない鬼と違い、今相手にしてるのは血鬼術バリバリ使いこなしてくる鬼だよ。
あ、どの程度人間を食べると血鬼術が使えるようになるのかはわからないからちょっと聞いてみようかな。幸いにも相手は意思疎通できる鬼だもの。
「ねえ貴方一体人を何人食べてる鬼?」
「ああ?両手じゃ足りねぇくらいは喰ってると思うぜ……ウヒヒ!」
わー、ぱちぱちぱち!正直に言えて偉い鬼ですねー。ご褒美に頸を刎ねなくちゃ。
それにしても両手じゃ足りない、つまり十人以上食べているわけか。万死。
「お前もその一人にしてやろう……稀血の鬼狩りは珍しいからなぁ!お前を喰って俺も十二鬼月に……!!」
ふーん?そっかぁ、よく考えたらそうよね。
私のような、稀血で呼吸を使う鬼殺隊士でおまけに栄養価が高い、だなんていわれる女の血肉。食べたら一気に十二鬼月に近くなるほど強さが増すのは当然で。
こりゃあ確かに食べられるわけにいかないね。鬼の増強剤になんてなりたくない。
「んべー。絶対にいやでーす」
「いやでーす、じゃねぇよ!かわい子ぶりやがって、その身包み剥いで素っ裸にしてからいたぶり喰ってやる!!」
その言動にゾワッとした。けどもう、その初見殺しは通用しない。この鬼の攻略法は見切った!!
「炎の呼吸、壱ノ型 不知火ッ!…………と見せかけて、回し蹴りっ!!」
不知火はフェイントだ。当てずにすれ違い、相手が見えていない死角から勢いよく蹴り付ける。足癖が悪い私の渾身の一撃。
やはり、これは当たるね。ならば……。
視線がこちらを向かぬ内に、そのまま刀を薙ぎ払う。
「炎と水の呼吸、伍と弐の型炎虎水車っ!!」
大顎で噛み付くように上段から振り下ろして炎虎をぶつけ、即座に切り替えた水の呼吸・水車で振り上げ斬る。
ズパァァン!という、肉が千切れ弾け飛んで斬り裂かれる音と共に鬼の頸が勢いよく宙を舞い、そして地に落ちた。
「貴方の血鬼術は貴方の目の届くところ。視線が向いているところからの攻撃にのみ発動する。来るとわからない攻撃や見えていない攻撃からは逃れられない。防げない。そして私はその隙を逃しはしない」
刀を鞘に収めた音で初めて、自分の頸と胴体が分かれたことに気がついた鬼。その表情が驚愕の色に染まる。けどもう遅い。
「な、ぁ、ぇ……お、俺の頸が……っこんな奴に……!」
そう言い残し、燃え尽きるように消えていく頭と体。日輪刀で斬ると骨すら残らない……少し物悲しいと毎回思う。
鬼に同情しているなんてバレたら怒られるけれど、口に出さなければ問題ない。私の心は私だけのものだ。
鬼を嫌い憎みながら、同時に鬼を憂う隊士がいたっていいでしょ。
「……さよなら、こんな奴で悪かったね。
っ!?…………うぐ、うぇ…… 何これめちゃくちゃ体がつらい……!」
目がまわる。心臓がばくばくする。
そういえば一瞬で呼吸の切り替えするなんて芸当をしたのは初めてだ。上手くいったからいい、でも本当に物凄い負荷がやってきた……。鍛錬が足りてない証拠に違いない!!
……脳筋と言わないで。
「ん?」
……なんだろう、一瞬だけど最後までなかなか消えずに残っていた鬼の目玉を通して、ものすごく恐ろしい気配を感じた。鬼の頸は斬れているのに、なんて強い鬼の気配。
鬼がまだ生きている?いや、そんなわけない。この鬼は数字持ちの鬼でもなんでもない。
「気のせいかな」
私が対峙したこの鬼はもう死んだ。
柱の命令だ。隊士をやめろ。鬼殺隊をやめろ。家にいて花嫁修行でもしていろ!女学校に通いたいなら手配してやる……!!」
「そんなこと言われてはいそうですかなんて、最終選別から戻った私が言うとお思いで?まだきちんと入隊してもいない内から、柱の命を聞くわけないでしょ!隊士になるのも鬼殺隊に入るのもやめません!私は己の意思に従い自由に生きます!」
結果的に帰還の報告……否、話し合いは、いつも通り始終喧嘩モードで終わった。
手こそ出されることはなかったけれど、言葉の刃は鋭くて。私だけでなく、外で聞いていたであろう杏寿郎さんや千寿郎にも被害が及んだ。んー、内容はとてもじゃないけどここじゃ詳しく言えないや。
最後は私が一方的に言い切ってはい終わり。杏寿郎さん風に言うと「この話はこれで終いだな!」である。
だって何を言われたって私が鬼殺隊士になるのを諦めることはないのだし。ううん、隊士にならないとしても鬼の頸を取るのは変わらない。杏寿郎さんの未来を得るためには、鬼を殺さなくてはならないのだから。
その後、鋼鐵塚さんが私の日輪刀を届けに来てくださった。
これはいつも通り。美しく煌めく私だけの色。どこか苛烈な性格を表した、熱い熱い、全てを消し炭へ変えてしまう私の炎の色。赤と青の、日輪刀。
私の日輪刀の美しさに惚れ惚れし、そして私が作っておいた大量のみたらし団子という献上品で嬉しそうな鋼鐵塚さんへと、二本目の日輪刀が欲しい話を切り出す。
おっと、その際に求婚されるのはいつものことだ。スルースキル発動ね。
彼は快く引き受けてくださった。あの黒みを帯びた二本目の日輪刀……あの子が届くのが今から楽しみでならない。
もう杏寿郎さんに二本目の日輪刀のことを隠す必要はない。
だってもう私が水の呼吸も多少使えることを、杏寿郎さんは知っている。あ、メインはもちろん炎の呼吸だよ。そこは変わらない。
私は炎の呼吸の使い手。炎柱の継子。
隊服についてもなんとか解決した。
「朝緋隊士のスカート丈はこのくらいでよろしいでしょうか!」
「うむ!まだ長いな!もう少し短くしたほうがいいと思うのだが!!」
「ですよねぇ!朝緋隊士のかわいらしい御御足を眺めるにはやはり、もう少し丈を詰めて短くしたほうがいいですよねぇ!!煉獄杏寿郎隊士、わかってますね!!」
「ははは!だろうだろう!」
この通りなんとか、スカートがみじかぁぁい丈になったけど解決した。
なんでこんなにスカートが短くなってるのさ。タイツだの長い靴下だの履くからいいという問題じゃないよ。
『最初』の頃は、ズボンにしなさいとか脚絆を使えだとか、足を出すことを良しとしなかったではないか。
杏寿郎さん……貴方なんだか『繰り返す』毎にどんどん自分の欲求に素直になってません?いや、杏寿郎さんも若い男性、ううん。青年なのだからそういう欲求があって当然なんだけどもね。
ただ、欲求の矛先は頼むから私ではなく他にも向けてちょうだい。そう!とにかくお芋に!食べ物に向けててよ!!
そして隊服を受け取りに行ったその日の内に、私の部屋にはあの羽織が置かれていた。私のための、私だけの炎の羽織。
槇寿朗さんめ……私や杏寿郎さんが不在の内にこっそり置いていったな……。相変わらず素直じゃない。ツンデレ具合に磨きがかかっている。
もっと素直になればいいのになぁ……杏寿郎さんを見習、いや、槇寿朗さんは反面教師の役かな?
槇寿朗さんが俯き、不機嫌そうにすればするほど、杏寿郎さんが前を向き、明るく笑う気がする。その胸の内に、時折湧いてくる寂しさや辛さを隠しながら。
数日経って初任務が言い渡された。『今回』も杏寿郎さんや千寿郎、獪岳に怪我などしないよう、攻撃を受けぬよう、無事に帰るよう耳にたこができるほど言われた。
無駄に傷を負う気はないけどさ、みんな私の稀血を気にしすぎ。あとたこの唐揚げ食べたい。
「はぁはぁ……、なかなかやる鬼だね……」
私が攻撃を仕掛けると、まるで鏡のように同じ斬撃が跳ね返ってくるとはまさか思わなんだ。私の斬撃がそのまま私の腕を裂くだなんて!
「お前、稀血のくせに鬼狩りなんだなぁぁ。それも、変な呼吸を使う!イイ匂いだ……ムラムラしてくる気がするぜぇ」
「稀血で悪かったね。鬼狩りで悪かったね。変な呼吸で悪かったね!
あとムラムラしないでくれる?気色悪い!ロリコン!!」
おかげであんなに気をつけろと言われていた傷を負ってしまい、稀血もバレる始末。
でもさでもさ、初見殺しな鬼の血鬼術相手に傷を負わないでいられるなんて難しいよね?
私これでも今回のこの体ではまだまだ隊士としてヒヨッコの鬼殺初心者だよ。無傷で鬼退治ができるわけがないじゃない?ましてや、藤襲山にいるような血鬼術も使えない鬼と違い、今相手にしてるのは血鬼術バリバリ使いこなしてくる鬼だよ。
あ、どの程度人間を食べると血鬼術が使えるようになるのかはわからないからちょっと聞いてみようかな。幸いにも相手は意思疎通できる鬼だもの。
「ねえ貴方一体人を何人食べてる鬼?」
「ああ?両手じゃ足りねぇくらいは喰ってると思うぜ……ウヒヒ!」
わー、ぱちぱちぱち!正直に言えて偉い鬼ですねー。ご褒美に頸を刎ねなくちゃ。
それにしても両手じゃ足りない、つまり十人以上食べているわけか。万死。
「お前もその一人にしてやろう……稀血の鬼狩りは珍しいからなぁ!お前を喰って俺も十二鬼月に……!!」
ふーん?そっかぁ、よく考えたらそうよね。
私のような、稀血で呼吸を使う鬼殺隊士でおまけに栄養価が高い、だなんていわれる女の血肉。食べたら一気に十二鬼月に近くなるほど強さが増すのは当然で。
こりゃあ確かに食べられるわけにいかないね。鬼の増強剤になんてなりたくない。
「んべー。絶対にいやでーす」
「いやでーす、じゃねぇよ!かわい子ぶりやがって、その身包み剥いで素っ裸にしてからいたぶり喰ってやる!!」
その言動にゾワッとした。けどもう、その初見殺しは通用しない。この鬼の攻略法は見切った!!
「炎の呼吸、壱ノ型 不知火ッ!…………と見せかけて、回し蹴りっ!!」
不知火はフェイントだ。当てずにすれ違い、相手が見えていない死角から勢いよく蹴り付ける。足癖が悪い私の渾身の一撃。
やはり、これは当たるね。ならば……。
視線がこちらを向かぬ内に、そのまま刀を薙ぎ払う。
「炎と水の呼吸、伍と弐の型炎虎水車っ!!」
大顎で噛み付くように上段から振り下ろして炎虎をぶつけ、即座に切り替えた水の呼吸・水車で振り上げ斬る。
ズパァァン!という、肉が千切れ弾け飛んで斬り裂かれる音と共に鬼の頸が勢いよく宙を舞い、そして地に落ちた。
「貴方の血鬼術は貴方の目の届くところ。視線が向いているところからの攻撃にのみ発動する。来るとわからない攻撃や見えていない攻撃からは逃れられない。防げない。そして私はその隙を逃しはしない」
刀を鞘に収めた音で初めて、自分の頸と胴体が分かれたことに気がついた鬼。その表情が驚愕の色に染まる。けどもう遅い。
「な、ぁ、ぇ……お、俺の頸が……っこんな奴に……!」
そう言い残し、燃え尽きるように消えていく頭と体。日輪刀で斬ると骨すら残らない……少し物悲しいと毎回思う。
鬼に同情しているなんてバレたら怒られるけれど、口に出さなければ問題ない。私の心は私だけのものだ。
鬼を嫌い憎みながら、同時に鬼を憂う隊士がいたっていいでしょ。
「……さよなら、こんな奴で悪かったね。
っ!?…………うぐ、うぇ…… 何これめちゃくちゃ体がつらい……!」
目がまわる。心臓がばくばくする。
そういえば一瞬で呼吸の切り替えするなんて芸当をしたのは初めてだ。上手くいったからいい、でも本当に物凄い負荷がやってきた……。鍛錬が足りてない証拠に違いない!!
……脳筋と言わないで。
「ん?」
……なんだろう、一瞬だけど最後までなかなか消えずに残っていた鬼の目玉を通して、ものすごく恐ろしい気配を感じた。鬼の頸は斬れているのに、なんて強い鬼の気配。
鬼がまだ生きている?いや、そんなわけない。この鬼は数字持ちの鬼でもなんでもない。
「気のせいかな」
私が対峙したこの鬼はもう死んだ。