五周目 弐
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カプ。
切なくも恋焦がれるような熱情を孕んだ視線が射抜いてきたと同時、口に指を喰まれた。
熱い。舌の上で飴を転がすように舐められて、そこからも杏寿郎さんの熱がこれでもかと伝わってくる。
ぬるり、ぺろ、ちゅぱ、執拗に念入りに指先から指の根元までねぶられている。まるで行為の時みたいに、全身舐め取られているかのよう。顔から火が出そ、ううん、変な気分になる!
先が欲しい。杏寿郎さんとの先が。未来が。心は大人でも、体はまだまだ子供なのに……!
「ゃ、や…………やめてくださいっ!」
それ以上先に進まないために私がしたのは、空いた手を杏寿郎さんの頬へ打ち付ける事だった。バン!!とてもいい音と共に紅葉が散る。
「酷いぞ朝緋……!!」
「ごめんなさい!!!!
そ、そうだっ!私!母様に帰ったよーって報告してない!行ってきます!!」
衝撃で空いた拘束の隙間から抜け出し、その場から離れる。杏寿郎さんは頬をさすりながら泣いたふりをしていた。
普段あんなにかっこいいのに、かわいくて珍しい姿だ。
そのまま仏間でお線香の煙くゆらせながら、瑠火さんへと帰還の報告を行う。
杏寿郎さんも後ろからついてきた。……貴方は報告の必要ないのでは?
「あ」
「今度はどうした朝緋!」
「勝手に行っておいてなんだけど、父様にも帰ってきたって報告しなくちゃいけなくない?」
「……今はやめておいたほうがいいぞ。君の事でずっとお怒りだし、君自身も大変疲れている。言い返すことはおろかろくに話をする元気もないのだろう。
俺の抱擁を拒絶しようとする腕にも大して力が入っていなかったと思うが?」
力がない状態なのは認める。そうでなかったら、杏寿郎さんの行動全てを完全に拒否できていた。あんな恥ずかしい思いをせずに済んだ。
「ならあとにする……怒られたくないや」
槇寿朗さんに話をするのはもう少しあとにしよう。いつ行っても怒ってるってことだろうし、今行ったら確実に力でも言葉でも捩じ伏せられそう。
『前』みたいに、蔵にでも入れられそうになるかもしれない。それとも『今回』だと売り言葉に買い言葉の大喧嘩?口を開くとすーぐ喧嘩してしまうのよね。
これは気持ちに余裕がなくて、ずけずけと無遠慮な物言いをしてしまう私も悪い。
「しかし心配もしていた!やはり息子と娘では対応が違う!少しずるいな!!
まあ、今のところは少し休んでから挨拶に向かいなさい」
「そうします。
……ねぇ、兄さん。そんな金魚の糞みたいに私のあとを着いて歩かなくていいんだけど」
仏間を出ても、杏寿郎さんがあとをついてくる。それこそ、金魚の糞のようにぴったりと。怖くはないけど圧がすごい。視線が背中を焼いてしまいそう。
「金魚の糞に例えられようが親鴨の後ろの小鴨に見えようが俺は朝緋のあとを追う。君が元水柱殿のもとで修行していた分、ただでさえ今までより共にいる時間が少なくなってしまったのだぞ。決して離れるものか。
ん?いや待て、『今までより』とは俺は何と比べた……?」
おやおやおや?これはやはり、もしかして……?
自分の部屋に着いた。そこでご自身の発言に戸惑い唸る杏寿郎さんの方へと向き直る。
「杏寿郎兄さん、何か不思議な記憶がある感じ?初対面の時、私とは初めて会った気がしないとか思ったりしなかった?」
「そういえばそんな気もしたような、しなかったような……。妙に懐かしく、愛おしいと思った。
今はもっともっと愛おしいと思っているのだがなぁ?」
応えてくれたら嬉しい、そんな表情で見つめられて言葉に詰まってしまった。
「まあいい!何か願いはないか?朝緋が望む祝いの贈り物がしたい」
「この髪飾り以外に?」
先ほど貰った髪紐で髪を括り縛りながら問う。おっと、簪は壊れると嫌なので大事にしまっておこう。いつか貴方とデートができる、そんな関係にまたなれたなら。そんな未来を得られたなら。その時につけて出かけたい。
「朝緋が心から喜ぶものがいい」
「心から喜ぶもの……。ならまずは着替えたいお風呂入りたいご飯食べたい布団で眠りたい」
本心だ。今はものよりこの疲れを取る方が先決。
「なんと欲のない!だがそうだな!そう言うと思い、千寿郎が風呂を沸かしてくれていたから一つはすぐ叶うぞ!!服は脱げるか?風呂は共に入ろうか?背中を流してやるぞ!!」
杏寿郎さんが手のひらをわきわきバラバラに動かして何かをアピールしている。胸でも揉むってか?その動きは変態チック……。
「着替えは一人でできます!一緒には入りませんよ!!何ですかそのワキワキしている手は!ついて来ないで!?」
「むぅ!断られてしまった!残念!!なら添い寝「は結構です」なんだつまらん」
その後風呂に入り食事をしゆっくりと休んだ。
疲れを取るためだけじゃない。今現在のラスボス・槇寿朗さんと対決するために。
それより入浴時もずっと風呂の外で待ってたり、食事の際もぴったり隣に座ったり……果ては駄目と言ったのに起きたらいつの間にか私の布団に入っていたり。
杏寿郎さんからの愛を上手くかわす方が大変だった。
疲れすぎていたからというのもあるけれど、布団に潜られ、抱きしめられた状態に気が付かない私も悪い。
切なくも恋焦がれるような熱情を孕んだ視線が射抜いてきたと同時、口に指を喰まれた。
熱い。舌の上で飴を転がすように舐められて、そこからも杏寿郎さんの熱がこれでもかと伝わってくる。
ぬるり、ぺろ、ちゅぱ、執拗に念入りに指先から指の根元までねぶられている。まるで行為の時みたいに、全身舐め取られているかのよう。顔から火が出そ、ううん、変な気分になる!
先が欲しい。杏寿郎さんとの先が。未来が。心は大人でも、体はまだまだ子供なのに……!
「ゃ、や…………やめてくださいっ!」
それ以上先に進まないために私がしたのは、空いた手を杏寿郎さんの頬へ打ち付ける事だった。バン!!とてもいい音と共に紅葉が散る。
「酷いぞ朝緋……!!」
「ごめんなさい!!!!
そ、そうだっ!私!母様に帰ったよーって報告してない!行ってきます!!」
衝撃で空いた拘束の隙間から抜け出し、その場から離れる。杏寿郎さんは頬をさすりながら泣いたふりをしていた。
普段あんなにかっこいいのに、かわいくて珍しい姿だ。
そのまま仏間でお線香の煙くゆらせながら、瑠火さんへと帰還の報告を行う。
杏寿郎さんも後ろからついてきた。……貴方は報告の必要ないのでは?
「あ」
「今度はどうした朝緋!」
「勝手に行っておいてなんだけど、父様にも帰ってきたって報告しなくちゃいけなくない?」
「……今はやめておいたほうがいいぞ。君の事でずっとお怒りだし、君自身も大変疲れている。言い返すことはおろかろくに話をする元気もないのだろう。
俺の抱擁を拒絶しようとする腕にも大して力が入っていなかったと思うが?」
力がない状態なのは認める。そうでなかったら、杏寿郎さんの行動全てを完全に拒否できていた。あんな恥ずかしい思いをせずに済んだ。
「ならあとにする……怒られたくないや」
槇寿朗さんに話をするのはもう少しあとにしよう。いつ行っても怒ってるってことだろうし、今行ったら確実に力でも言葉でも捩じ伏せられそう。
『前』みたいに、蔵にでも入れられそうになるかもしれない。それとも『今回』だと売り言葉に買い言葉の大喧嘩?口を開くとすーぐ喧嘩してしまうのよね。
これは気持ちに余裕がなくて、ずけずけと無遠慮な物言いをしてしまう私も悪い。
「しかし心配もしていた!やはり息子と娘では対応が違う!少しずるいな!!
まあ、今のところは少し休んでから挨拶に向かいなさい」
「そうします。
……ねぇ、兄さん。そんな金魚の糞みたいに私のあとを着いて歩かなくていいんだけど」
仏間を出ても、杏寿郎さんがあとをついてくる。それこそ、金魚の糞のようにぴったりと。怖くはないけど圧がすごい。視線が背中を焼いてしまいそう。
「金魚の糞に例えられようが親鴨の後ろの小鴨に見えようが俺は朝緋のあとを追う。君が元水柱殿のもとで修行していた分、ただでさえ今までより共にいる時間が少なくなってしまったのだぞ。決して離れるものか。
ん?いや待て、『今までより』とは俺は何と比べた……?」
おやおやおや?これはやはり、もしかして……?
自分の部屋に着いた。そこでご自身の発言に戸惑い唸る杏寿郎さんの方へと向き直る。
「杏寿郎兄さん、何か不思議な記憶がある感じ?初対面の時、私とは初めて会った気がしないとか思ったりしなかった?」
「そういえばそんな気もしたような、しなかったような……。妙に懐かしく、愛おしいと思った。
今はもっともっと愛おしいと思っているのだがなぁ?」
応えてくれたら嬉しい、そんな表情で見つめられて言葉に詰まってしまった。
「まあいい!何か願いはないか?朝緋が望む祝いの贈り物がしたい」
「この髪飾り以外に?」
先ほど貰った髪紐で髪を括り縛りながら問う。おっと、簪は壊れると嫌なので大事にしまっておこう。いつか貴方とデートができる、そんな関係にまたなれたなら。そんな未来を得られたなら。その時につけて出かけたい。
「朝緋が心から喜ぶものがいい」
「心から喜ぶもの……。ならまずは着替えたいお風呂入りたいご飯食べたい布団で眠りたい」
本心だ。今はものよりこの疲れを取る方が先決。
「なんと欲のない!だがそうだな!そう言うと思い、千寿郎が風呂を沸かしてくれていたから一つはすぐ叶うぞ!!服は脱げるか?風呂は共に入ろうか?背中を流してやるぞ!!」
杏寿郎さんが手のひらをわきわきバラバラに動かして何かをアピールしている。胸でも揉むってか?その動きは変態チック……。
「着替えは一人でできます!一緒には入りませんよ!!何ですかそのワキワキしている手は!ついて来ないで!?」
「むぅ!断られてしまった!残念!!なら添い寝「は結構です」なんだつまらん」
その後風呂に入り食事をしゆっくりと休んだ。
疲れを取るためだけじゃない。今現在のラスボス・槇寿朗さんと対決するために。
それより入浴時もずっと風呂の外で待ってたり、食事の際もぴったり隣に座ったり……果ては駄目と言ったのに起きたらいつの間にか私の布団に入っていたり。
杏寿郎さんからの愛を上手くかわす方が大変だった。
疲れすぎていたからというのもあるけれど、布団に潜られ、抱きしめられた状態に気が付かない私も悪い。