五周目 壱
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杏寿郎さんが最終選別へと行ってしまった七日間は千寿郎と二人、不安な日々を過ごした。心配で夜も眠れないけれど、あの場所は何が起ころうとおかしくないところ。だからこればかりはどうしようもない。
それに『前』は大怪我だったじゃない?千寿郎はそのことを知らない。でも私はそれを知っているし、錆兎や真菰のことを思うと……。
ああどうしよう!杏寿郎さんにもしものことがあったら……!!
杏寿郎さん、どうか何事もなく帰ってきて。
「あっ!姉上!兄上が帰ってきます!!」
七日目。朝からずっとこうして待っていたところ、祈りが届いたか通り沿いをこちらに向かって歩いてくる人影が見えた。
千寿郎の言う通り、ゆっくり歩いてくるあの姿は杏寿郎さんに違いない!きらきらの髪色が太陽に照らされて眩しいもの!!
「杏寿郎兄さーん!」
「おお朝緋……っ、うぐっ!熱烈な歓迎だな!?」
不安でたまらなかった。死んでしまったらと、最悪の事態を考えてしまい怖かった。
おかけでこうして、体当たりするかのごとく突撃してしまった。
受け止めきれず、私ごとその場に倒れる杏寿郎さん。
「姉上、兄上がおけがをなされていたらどうするのですか」
「あ、そうだった。ごめん……」
挙げ句の果てに私の下になっているその杏寿郎さんから抱き起こされるという始末だ。
「わっはっは!いい、いい!でも俺でなかったら体を痛めていたかもしれない!気をつけてくれ!!」
そう言ってわしゃわしゃと撫でてくる杏寿郎さん。
ああ、デジャヴ。こんなこと『前』もあった。あの時もこうして受け止めてくれたよね?懐かしい。
「よかった、帰ってきてくれた……お疲れ様です、杏寿郎兄さん」
「お帰りなさい、兄上」
「うむ!帰ってきたぞ!ただいま、朝緋。千寿郎」
ぽんぽん、なでなで、ぎゅっ。
私と千寿郎をまとめて迎え入れてくれる腕の中の温かさと言ったら。血と汗と埃の匂いの中に杏寿郎さんの匂いを見つけ、思わず頬擦りしてしまうほどで。
「あ、そうだ怪我は…………!
うん、よし。ない、こっちもない。……ここにもない!ちっちゃい傷はあるし疲れた顔をしてるけどほぼ無傷〜!!よかったーー!!」
「朝緋、そんなにまさぐるな」
初めはおずおずと、でも途中から遠慮なしに杏寿郎さんの体の異変をチェックしだした私。
だって心配だったんだもの……!変なところは触ってないよね!?ね??それにまだお互いちょっと幼いからセーフ!ね??
「うわぁごめんなさいっ!そしてお疲れ様です!無事に帰れて何よりですっ!!」
「ああ!朝緋達が作ってくれた食事のおかげだな!!」
「え、そこなの?」
「食べ物が底をつけば生き残れないような場所だったからな!鬼より厄介だろう」
さすがは杏寿郎さん。まさか食事の有無が鬼より脅威だとは……いや、私もそうだからわかるけどさ。
次に私が最終選別に参加する時は『前』より多く食事を持っていこうと、屋敷の中へと歩きながら決意した。
「あ、そうそう。変な鬼はいた?」
「変な鬼?鬼は元々変だろう。角が生えていたり、牙をはやしていたり、人間を喰ったり」
んー、そうだけどそうじゃないんだよねぇ。でも話が出てこないところを見るに、手がいっぱいの鬼に会わなかったみたいだ。
どちらにしろあんな恐ろしい鬼には、初心者マークのついた選別参加者は会わない方がいい。
「それより父上はどうだ?何か言っていたか」
「そりゃあ、杏寿郎兄さんが勝手に行ったことについて怒ってるかと思いますがあまり気にしなくていいのでは?」
「姉上……怒ってると思うではなく、実際に怒っていらっしゃいましたよ」
「見てないから知らなぁい。……あ」
そう言い切ったところで、玄関にいた槇寿朗さんとばったり鉢合わせしてしまった。隊服を着ているから、任務に行くところかな。
「……ふん。杏寿郎、帰ってきたのか。隊士になどなったところで大したものにはなれんというに」
「はい!これで俺もはれて鬼殺隊士です!父上、俺は……、」
「千寿郎、これより任務に出る。羽織を」
「は、はいっ!!」
日輪刀を腰に差し、すぐに三和土から出て行ってしまった槇寿朗さん。それを追うようにして、千寿郎は庭に干してある炎柱が纏う羽織を取りに行ってしまった。
「杏寿郎兄さんの言葉はまるっと無視かぁ」
「父上は忙しいのだ。しかたあるまい」
「でももうちょい優しい言葉くらいかけたっていいでしょうに。しかもまーた千寿郎を小間使いにして……!」
「うーむ。そんなことを言うなら君が千寿郎のかわりにやってあげればいいのでは?」
その瞬間、ぎゅるんと杏寿郎さんの方に首を向け、真顔で答える私。杏寿郎さんがひいていた。
「なぜに?私は父様と絶賛喧嘩中ですよやるわけがないでしょう?」
「そ、そうか……」
羽織を纏う槇寿朗さんが煉獄家の門を出ていく姿がここからでも見える。炎が太陽の下で輝きを増し、風に揺られて美しい。
あの炎は私の誇り。炎の呼吸も私の誇り。
「俺も早くあの羽織を纏いたいものだな」
「柱にってこと?隊士になったばかりなのに気が早いなぁ」
「うむ!目標とおむすびは大きい方がいい!」
「ははは、そうだね!杏寿郎兄さんが柱になるのなんてすぐだよ」
「だといいな!そのために頑張るぞ!!うぉりゃっ!!」
「わっ!?きゃー!!」
腰を掴まれていきなり持ち上げられた!そのまま庭まで飛び出し、ぐるぐる回される。突然のメリーゴーランドやめーい!!でも楽しすぎる!!
途中から千寿郎も合流して、三人とも目が回るまでそうやって遊んだ。
日々鬼を斬って斬って、がむしゃらに走り続けた杏寿郎さん。あの頑張りを私は知っている。何度も見てきた。
一度も立ち止まることなく、体も心も傷ついても。ただひたすらに前を向いて駆け抜けた先。杏寿郎さんは誰よりも強くて優しい柱になる。
あの羽織は、杏寿郎さんの背でいずれまた輝くだろう。
それに『前』は大怪我だったじゃない?千寿郎はそのことを知らない。でも私はそれを知っているし、錆兎や真菰のことを思うと……。
ああどうしよう!杏寿郎さんにもしものことがあったら……!!
杏寿郎さん、どうか何事もなく帰ってきて。
「あっ!姉上!兄上が帰ってきます!!」
七日目。朝からずっとこうして待っていたところ、祈りが届いたか通り沿いをこちらに向かって歩いてくる人影が見えた。
千寿郎の言う通り、ゆっくり歩いてくるあの姿は杏寿郎さんに違いない!きらきらの髪色が太陽に照らされて眩しいもの!!
「杏寿郎兄さーん!」
「おお朝緋……っ、うぐっ!熱烈な歓迎だな!?」
不安でたまらなかった。死んでしまったらと、最悪の事態を考えてしまい怖かった。
おかけでこうして、体当たりするかのごとく突撃してしまった。
受け止めきれず、私ごとその場に倒れる杏寿郎さん。
「姉上、兄上がおけがをなされていたらどうするのですか」
「あ、そうだった。ごめん……」
挙げ句の果てに私の下になっているその杏寿郎さんから抱き起こされるという始末だ。
「わっはっは!いい、いい!でも俺でなかったら体を痛めていたかもしれない!気をつけてくれ!!」
そう言ってわしゃわしゃと撫でてくる杏寿郎さん。
ああ、デジャヴ。こんなこと『前』もあった。あの時もこうして受け止めてくれたよね?懐かしい。
「よかった、帰ってきてくれた……お疲れ様です、杏寿郎兄さん」
「お帰りなさい、兄上」
「うむ!帰ってきたぞ!ただいま、朝緋。千寿郎」
ぽんぽん、なでなで、ぎゅっ。
私と千寿郎をまとめて迎え入れてくれる腕の中の温かさと言ったら。血と汗と埃の匂いの中に杏寿郎さんの匂いを見つけ、思わず頬擦りしてしまうほどで。
「あ、そうだ怪我は…………!
うん、よし。ない、こっちもない。……ここにもない!ちっちゃい傷はあるし疲れた顔をしてるけどほぼ無傷〜!!よかったーー!!」
「朝緋、そんなにまさぐるな」
初めはおずおずと、でも途中から遠慮なしに杏寿郎さんの体の異変をチェックしだした私。
だって心配だったんだもの……!変なところは触ってないよね!?ね??それにまだお互いちょっと幼いからセーフ!ね??
「うわぁごめんなさいっ!そしてお疲れ様です!無事に帰れて何よりですっ!!」
「ああ!朝緋達が作ってくれた食事のおかげだな!!」
「え、そこなの?」
「食べ物が底をつけば生き残れないような場所だったからな!鬼より厄介だろう」
さすがは杏寿郎さん。まさか食事の有無が鬼より脅威だとは……いや、私もそうだからわかるけどさ。
次に私が最終選別に参加する時は『前』より多く食事を持っていこうと、屋敷の中へと歩きながら決意した。
「あ、そうそう。変な鬼はいた?」
「変な鬼?鬼は元々変だろう。角が生えていたり、牙をはやしていたり、人間を喰ったり」
んー、そうだけどそうじゃないんだよねぇ。でも話が出てこないところを見るに、手がいっぱいの鬼に会わなかったみたいだ。
どちらにしろあんな恐ろしい鬼には、初心者マークのついた選別参加者は会わない方がいい。
「それより父上はどうだ?何か言っていたか」
「そりゃあ、杏寿郎兄さんが勝手に行ったことについて怒ってるかと思いますがあまり気にしなくていいのでは?」
「姉上……怒ってると思うではなく、実際に怒っていらっしゃいましたよ」
「見てないから知らなぁい。……あ」
そう言い切ったところで、玄関にいた槇寿朗さんとばったり鉢合わせしてしまった。隊服を着ているから、任務に行くところかな。
「……ふん。杏寿郎、帰ってきたのか。隊士になどなったところで大したものにはなれんというに」
「はい!これで俺もはれて鬼殺隊士です!父上、俺は……、」
「千寿郎、これより任務に出る。羽織を」
「は、はいっ!!」
日輪刀を腰に差し、すぐに三和土から出て行ってしまった槇寿朗さん。それを追うようにして、千寿郎は庭に干してある炎柱が纏う羽織を取りに行ってしまった。
「杏寿郎兄さんの言葉はまるっと無視かぁ」
「父上は忙しいのだ。しかたあるまい」
「でももうちょい優しい言葉くらいかけたっていいでしょうに。しかもまーた千寿郎を小間使いにして……!」
「うーむ。そんなことを言うなら君が千寿郎のかわりにやってあげればいいのでは?」
その瞬間、ぎゅるんと杏寿郎さんの方に首を向け、真顔で答える私。杏寿郎さんがひいていた。
「なぜに?私は父様と絶賛喧嘩中ですよやるわけがないでしょう?」
「そ、そうか……」
羽織を纏う槇寿朗さんが煉獄家の門を出ていく姿がここからでも見える。炎が太陽の下で輝きを増し、風に揺られて美しい。
あの炎は私の誇り。炎の呼吸も私の誇り。
「俺も早くあの羽織を纏いたいものだな」
「柱にってこと?隊士になったばかりなのに気が早いなぁ」
「うむ!目標とおむすびは大きい方がいい!」
「ははは、そうだね!杏寿郎兄さんが柱になるのなんてすぐだよ」
「だといいな!そのために頑張るぞ!!うぉりゃっ!!」
「わっ!?きゃー!!」
腰を掴まれていきなり持ち上げられた!そのまま庭まで飛び出し、ぐるぐる回される。突然のメリーゴーランドやめーい!!でも楽しすぎる!!
途中から千寿郎も合流して、三人とも目が回るまでそうやって遊んだ。
日々鬼を斬って斬って、がむしゃらに走り続けた杏寿郎さん。あの頑張りを私は知っている。何度も見てきた。
一度も立ち止まることなく、体も心も傷ついても。ただひたすらに前を向いて駆け抜けた先。杏寿郎さんは誰よりも強くて優しい柱になる。
あの羽織は、杏寿郎さんの背でいずれまた輝くだろう。