五周目 壱
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冨岡さんのことを考えたら、芋づる式に鱗滝さんや真菰のことを思い出してしまった。
そういえば最近、真菰から手紙が来ていないなあ。送ればすぐお返事が返ってきていたのに。
あ、そろそろ最終選別の時期じゃないかな……?もしかして、選別の前後で忙しくてお返事が送れないとか?もしそうなら、帰ってきてからお返事をくれるかも。
大丈夫、真菰ならきっと、大丈夫。絶対帰ってくる。私はそう、信じてる。
けれど手紙は真菰本人ではなく、鱗滝さんから届いた。……真菰の訃報とともに。
涙の跡がわかる、ところどころくしゃくしゃの紙だった。
「そん、な……」
錆兎に続いて真菰まで。私はまた、大事な人を失ってしまった。
今度こそ、私はその場に泣き崩れてしまった。
杏寿郎さんが慰めようと、千寿郎が手を握ろうと、珍しく槇寿朗さんが私を抱きしめようとも。涙はしばらく止まらずに流れ続けた。
その後、槇寿朗さんが酒に溺れてしまった。悲しみや悔しさから逃れるように、好きでもない酒を浴びるように飲む日々。
またも任務にお酒を持ち込むようになり、とうとう杏寿郎さんが怒る、あの出来事が起こってしまった。
いずれ下弦の弐になる鬼の取り逃しだ。
隊士でもない私が鬼を取り逃すのとはわけが違う。槇寿朗さんは皆の指標となるべき柱なのだ。
お酒を飲んだからといって鬼を逃がすなどあってはならない。隊士にも示しがつかない。
槇寿朗さんは謹慎処分を受け、お酒をやめるよう言い渡された。でもきっと簡単にはやめられない。一度でもお酒という逃走を知ってしまうとやめるのは難しい。お酒ってそういうもの。
怒りたい思いはあれど、私は槇寿朗さんを怒れない。
槇寿朗さんがお酒に逃げる気持ちや理由をよく理解しているからだ。でもそれだけじゃない。勝手なことをして悪いと思ったから、私は杏寿郎さんのように槇寿朗さんに憤りを感じることはできないのだ。
勝手なこととはなんぞや?って?
外で継ぎ足したり新しく買っていたらどうしようもないけれど、実は槇寿朗さんのあの大きな徳利のお酒は、水でかなり薄めてあって。
すでに酔っている人なら気が付かないし、槇寿朗さんはお酒に弱くて本当は体に合わない質だから、多分すぐに酔っ払ってしまい薄くても気が付かない。これが瑠火さんの作る料理だったらすぐ気がつくのにね。愛の成せる技だろうけど、不思議だよね。
「杏寿郎兄さん、眉間に皺寄ってる」
杏寿郎さんがイライラした空気を纏っている。その影響でただでさえ皺の寄りやすい眉間に深い深い皺が溝のように彫られていた。
それを伸ばすよーに伸ばすよーに、ぐりぐりぺちぺち叩く、叩く!
「やめろ朝緋、俺の額をそんなに叩くな」
あっ怒られて腕をギリギリと掴まれた。痛い。そして声もひっくぅい。
「眉間の皺伸ばしてるんだよ。あまり怒らないで?腕が痛いし声色も怖いよ〜。見てらんないから、怒ってるその気持ちは鍛錬にでもぶつけたら?」
「む…………、そうだな、もうすぐ最終選別だからな」
「もうそんな時期だったの!?」
「そんな時期とは……?」
おっとちょっぴり失言。腕は放されたけれど、訝しげな視線で捕えるように見つめられてしまった。
「最終選別のため、この怒りすらぶつけるが如く朝緋と打ち稽古がしたい。確か君は、水の呼吸の日輪刀を持っていたな?使ってくれ」
「持ってるけど……でも……」
どういう風の吹き回しだろう。杏寿郎さんは水の呼吸にわずかながら対抗心を抱いている。だから、私の水の型は見なくていいと拒否していたくらいなのに。
その気持ちは顔で伝わっていた。
「水の呼吸が気に食わないくせにどうして、という顔をしているな。俺は朝緋の水の呼吸を、刃を通して感じたいと思ったし好きだの嫌いだの言っている場合ではないとも思った。様々なこと、多くの剣術を経験し自分の中に取り込み、柔軟な考えをもって鬼の巣窟へと挑まねば、と」
なるほどね、一理ある。失敗も敗北も、嫌なことも。全ての経験は後に活かされていく。
「いいけど私は手加減しないよ。真剣同士でやるなら尚更手加減しない。下手に手を抜くと、逆に怪我をするんだもの」
「望むところだ」
炎刀対水刀の打ち稽古が始まった。
そういえば最近、真菰から手紙が来ていないなあ。送ればすぐお返事が返ってきていたのに。
あ、そろそろ最終選別の時期じゃないかな……?もしかして、選別の前後で忙しくてお返事が送れないとか?もしそうなら、帰ってきてからお返事をくれるかも。
大丈夫、真菰ならきっと、大丈夫。絶対帰ってくる。私はそう、信じてる。
けれど手紙は真菰本人ではなく、鱗滝さんから届いた。……真菰の訃報とともに。
涙の跡がわかる、ところどころくしゃくしゃの紙だった。
「そん、な……」
錆兎に続いて真菰まで。私はまた、大事な人を失ってしまった。
今度こそ、私はその場に泣き崩れてしまった。
杏寿郎さんが慰めようと、千寿郎が手を握ろうと、珍しく槇寿朗さんが私を抱きしめようとも。涙はしばらく止まらずに流れ続けた。
その後、槇寿朗さんが酒に溺れてしまった。悲しみや悔しさから逃れるように、好きでもない酒を浴びるように飲む日々。
またも任務にお酒を持ち込むようになり、とうとう杏寿郎さんが怒る、あの出来事が起こってしまった。
いずれ下弦の弐になる鬼の取り逃しだ。
隊士でもない私が鬼を取り逃すのとはわけが違う。槇寿朗さんは皆の指標となるべき柱なのだ。
お酒を飲んだからといって鬼を逃がすなどあってはならない。隊士にも示しがつかない。
槇寿朗さんは謹慎処分を受け、お酒をやめるよう言い渡された。でもきっと簡単にはやめられない。一度でもお酒という逃走を知ってしまうとやめるのは難しい。お酒ってそういうもの。
怒りたい思いはあれど、私は槇寿朗さんを怒れない。
槇寿朗さんがお酒に逃げる気持ちや理由をよく理解しているからだ。でもそれだけじゃない。勝手なことをして悪いと思ったから、私は杏寿郎さんのように槇寿朗さんに憤りを感じることはできないのだ。
勝手なこととはなんぞや?って?
外で継ぎ足したり新しく買っていたらどうしようもないけれど、実は槇寿朗さんのあの大きな徳利のお酒は、水でかなり薄めてあって。
すでに酔っている人なら気が付かないし、槇寿朗さんはお酒に弱くて本当は体に合わない質だから、多分すぐに酔っ払ってしまい薄くても気が付かない。これが瑠火さんの作る料理だったらすぐ気がつくのにね。愛の成せる技だろうけど、不思議だよね。
「杏寿郎兄さん、眉間に皺寄ってる」
杏寿郎さんがイライラした空気を纏っている。その影響でただでさえ皺の寄りやすい眉間に深い深い皺が溝のように彫られていた。
それを伸ばすよーに伸ばすよーに、ぐりぐりぺちぺち叩く、叩く!
「やめろ朝緋、俺の額をそんなに叩くな」
あっ怒られて腕をギリギリと掴まれた。痛い。そして声もひっくぅい。
「眉間の皺伸ばしてるんだよ。あまり怒らないで?腕が痛いし声色も怖いよ〜。見てらんないから、怒ってるその気持ちは鍛錬にでもぶつけたら?」
「む…………、そうだな、もうすぐ最終選別だからな」
「もうそんな時期だったの!?」
「そんな時期とは……?」
おっとちょっぴり失言。腕は放されたけれど、訝しげな視線で捕えるように見つめられてしまった。
「最終選別のため、この怒りすらぶつけるが如く朝緋と打ち稽古がしたい。確か君は、水の呼吸の日輪刀を持っていたな?使ってくれ」
「持ってるけど……でも……」
どういう風の吹き回しだろう。杏寿郎さんは水の呼吸にわずかながら対抗心を抱いている。だから、私の水の型は見なくていいと拒否していたくらいなのに。
その気持ちは顔で伝わっていた。
「水の呼吸が気に食わないくせにどうして、という顔をしているな。俺は朝緋の水の呼吸を、刃を通して感じたいと思ったし好きだの嫌いだの言っている場合ではないとも思った。様々なこと、多くの剣術を経験し自分の中に取り込み、柔軟な考えをもって鬼の巣窟へと挑まねば、と」
なるほどね、一理ある。失敗も敗北も、嫌なことも。全ての経験は後に活かされていく。
「いいけど私は手加減しないよ。真剣同士でやるなら尚更手加減しない。下手に手を抜くと、逆に怪我をするんだもの」
「望むところだ」
炎刀対水刀の打ち稽古が始まった。