五周目 壱
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葬儀も無事に終わりその後。
私は槇寿朗さんとちょっぴりオハナシした。
見つけてきた瑠火さんのレシピ帳で作った瑠火さんの味の料理、瑠火さんの位牌、瑠火さんが使っていたお着物と髪留めを借りて瑠火さんと似た格好をするという重装備で。
髪色はともかく目元は私と瑠火さんって似てるもんね。実の娘として通用するくらいだ。
でもまだ時期が悪かった。瑠火さんを亡くしたばかりの槇寿朗さんは料理の味をみて、私の姿を見て、火に油を注いだかのように激昂した。
位牌に至っては私が悪戯に持ち出したと勘違いしてきた。
槇寿朗さんの心が落ち着いて、ただ単に燻っている時期に。もっとあとにやればよかったかもしれない。
おかげでオハナシ=手も出る喧嘩になった。
狭霧山で鍛えてきてこの年頃にしては強いと自負しているけれど、現柱である槇寿朗さんには全く歯が立たず、私は床に叩きつけられ動けなくされた。
それでも私の話は止まらない。
炎だけではなく、他の呼吸全てが、日の呼吸の劣化版などではないこと。変化であり進化であること。
水の呼吸も学んだけれど、炎の呼吸を。それを教えてくれた師である槇寿朗さんを誇りに思うことを、今一度語って聞かせたのだ。
「朝緋はなぜ、日の呼吸のことを知っている」
「あっ」
柱たる者の恐ろしいひと睨みで射抜かれた。まるで鋭く磨がれた日輪刀を首に突きつけられているかのよう。私はいつから鬼になったのさ。
でもこればかりは完全に、日の呼吸についてうっかり口走ってしまった私のミス。余計に拗れる結果を生んでしまった。
あーあ、もう取り返しがつかないのではなかろうか……。
「いいか、朝緋はもう鬼殺隊に入ろうとするな!隊士など目指すな!!」
それも、非常にタイミングの悪いことにこれを言われたのは、私と槇寿朗さん二人が互いに声を張り上げているのを聞きつけた杏寿郎さんが部屋に入った時だった。
「父上!もうやめてください!朝緋がかわいそうです!!朝緋もそれ以上父上に楯突くんじゃない!肩を外されてしまうぞ!?」
「お前もだ、杏寿郎!鬼殺隊など入るな!!」
「ぇっ!?」
肩はそう簡単に外されはしない。そんなことになりそうなものなら、その前に逃げちゃうもの。
でも二人揃って言われてしまうとは……。元々思っていたことだろうとはいえ、杏寿郎さんは完全にとばっちりだ。
「杏寿郎兄さん、楯突いてるわけじゃないよ。ただ肉体言語まじりのちょっとしたオハナシしてるだけ!」
「に、肉体言語!?」
「父様、悪いけど私、ずぇーったい隊士になるんで。鬼殺隊に入るんで」
「入らせはせん!炎の呼吸も教えない!!」
「別に教えてもらわなくてももう使えますぅー」
床に押さえつけられて呼吸がしにくい中、槇寿朗さんに向かってあっかんべー。
見よ!苦しさをものともしないこの私の態度!!さすがだ。自画自賛。
「伍ノ型より先は教えてなかろうが!刀もないくせにどうやって選別を突破して剣士になる気だ!使うならお前は水の呼吸を使ってろ!」
「やーだぷー。私は炎の呼吸の使い手でーす」
家長に対する私の礼儀を欠いた態度、高圧的な槇寿朗さんの言葉を前にして、さすがの杏寿郎さんもおろおろハラハラしだした。
このままでは私の肩が外れるどころじゃなく、骨が折れてしまうのではと心配もしているようで。でも安心してほしい、これでも槇寿朗さん……ちゃんと手加減してくれてるの。
「減らず口を……!まあいい!刀がなくば隊士にはなれまい。杏寿郎の日輪刀も没収だ!!」
「えっ!父上!?」
けれど口論はヒートアップ。私にはないけど、杏寿郎さんにはすでにあるらしい日輪刀にまで、被害が及んだ。
本当にとばっちりじゃん!
「父様ひどい。杏寿郎兄さんは関係ないじゃん」
「なんとでも言うがいい」
杏寿郎さんの日輪刀は本当に没収された。
そのあと、離島の任務を言い渡され、槇寿朗さんが出かけて行った。離島ということは、伊黒さんか……。伊黒さんの無事も気になるところだけれど、私には使命がある。
日輪刀を没収されて落ち込む杏寿郎さんを元気にすることだ。
だって、共に鍛錬していても、木刀を見つめてはため息を吐いていて見ていられないんだもの。
「杏寿郎兄さん、ずっと浮かない顔してるね。刀のことでしょ」
「丸腰では鬼殺隊に入れないからな……。せっかく、刀の重みに慣れておこうと思ったのに」
木刀と真剣とじゃ重さも振り抜きの感覚も全て違う。習うより慣れよ、なところが大きいもんね。
「そんな杏寿郎兄さんに朗報です。私ね、杏寿郎兄さんの日輪刀がどこにあるか知ってるよ」
「なんだって!?」
「来て」
修行の激しさが窺える杏寿郎さんの豆と胼胝だらけの手を引き、その場所へと進む。障子を開け、襖を開け、その先を開ける。
「父様が物を隠す場所なんて、昔からお決まりのワンパターンなのよ」
槇寿朗さんが隠したいものがある時に物を隠す場所はよく知っている。
俯いていた時に飲んでいたお酒も、心を入れ替えたあとにすぐは止められなくて飲んでいたお酒も、同じところにばかりたくさん隠してあった。
そういえば酒瓶って呼んでいたけれど、あれ自体も徳利って呼ぶらしいね。小さいものだけが徳利って呼ぶのかと思ってたわ。
「ワンパターン?」
「馬鹿の一つ覚えってこと」
「朝緋!父上に馬鹿などと……!」
「いないんだから悪口の一つや二つ言ったってバチは当たらないよ。……ほーら、あった」
酒に隠れるようにして、奥に新品ピカピカの刀が置かれていた。それを傷がつかぬようそっと手に取り、引っ張り出して杏寿郎さんに渡す。
生き別れの家族との再会かのように、杏寿郎さんは日輪刀を抱きしめた。
「本当だ……!よくぞ戻ってきたなあ、俺の日輪刀 ……!!いやしかし、持ち出してしまって大丈夫だろうか!」
「だいじょぶだいじょぶ。父様は基本、隠した後は見に来ないことが多いから。お酒の入れ物が手前にたくさんあったってことは、刀がなくなっても気がつかないよ」
でも一応、移動したことがバレないように、お酒を元の位置に寸分違わず戻しておく。……これでよし、と。
「杏寿郎兄さんは父様に見つからないように、上手く自分の部屋に隠してね」
「りょ、了解した」
じゃないと槇寿朗さんはまた激昂するし、次は私がわからないところに隠されてしまうかもしれない。
「ありがとうな、朝緋」
「これくらいお安い御用だよ」
来た時同様に手を引いて出れば、今度はその手をしっかりと握り直された。見上げた先にあったのは幸せそうな顔。
あったかくて優しい私の大好きな手に握られ、その上杏寿郎さんの嬉しそうな顔を間近で見られるなんて、幸せのお裾分けをされた気分だ。
「そういえば日輪刀があるってことは、もう色変わりの儀は終わってるんだね」
「朝緋がいない内にな。見てくれ、これが俺の刀だ!!」
せっかく握ってもらった手が、離れていく。それをちょっぴり寂しく思いながら、杏寿郎さんが鞘から刀身をスラリと抜いて、太陽光に晒す様を眺める。
相変わらずとても綺麗で鮮やかな、赤い刀身だ。眩しくて美しくて魅入られてしまいそう。この刀になら斬られても文句はないと思ってしまう。私が鬼になったら、ぜひ杏寿郎さんに頸を刎ねてもらおう。
そんな美しい刀を持つこの人が、炎柱になるのはすごくよく理解出来る。杏寿郎さんは、炎柱になるべく生まれてきた特別な人。
「綺麗ですね」
「だろう、だろう!朝緋にも色が変わるところを見せてやりたかった!」
「私も見たかったです」
あの光景は、何度見ても感動する。
槇寿朗さんに無事助けられた伊黒さんがやって来て、彼が私や杏寿郎さんに慣れて、友人になって。そして水の呼吸の育手に引き取られていった頃のことだ。
私の元にはまたも悲しい知らせが届いた。
そんな気はしていた。どこか頭の片隅で理解していた。ただ、理解したくなかっただけで。
だから瑠火さんの時とは違い、涙が出たのは知らせを受け取ったその時のみだった。
手紙は真菰からで、届いたのは錆兎の訃報だ。
私が危惧していたことが起こってしまった。
やはり錆兎は、亡くなっていた。だから『今まで』、水柱になった冨岡さんの隣にいなかったのだ。
だって、もしも錆兎が生きていたらだよ?冨岡さん本来の性格から考えると、水柱になっていたのは錆兎の可能性が高い。力の差はほぼなく拮抗していた場合も、俺には務まりきらないなどと錆兎に柱の座を譲り、自分は補佐として継子になっていたかもしれないなって。
もちろんこれは私の想像。これも一つの、未来の形だったのでは、と。
手紙には冨岡さんの様子も事細かに書かれていた。戻ってきてからというもの、人が変わったように無口に、周りに無関心になってしまったと書いてある。
そうか。錆兎という親友を亡くしたから、冨岡さんは変わってしまったんだ。
殻にこもって、他の人と壁一枚隔てているような、そんな性質の人に。
私がよく知る、冨岡さんに。
私は槇寿朗さんとちょっぴりオハナシした。
見つけてきた瑠火さんのレシピ帳で作った瑠火さんの味の料理、瑠火さんの位牌、瑠火さんが使っていたお着物と髪留めを借りて瑠火さんと似た格好をするという重装備で。
髪色はともかく目元は私と瑠火さんって似てるもんね。実の娘として通用するくらいだ。
でもまだ時期が悪かった。瑠火さんを亡くしたばかりの槇寿朗さんは料理の味をみて、私の姿を見て、火に油を注いだかのように激昂した。
位牌に至っては私が悪戯に持ち出したと勘違いしてきた。
槇寿朗さんの心が落ち着いて、ただ単に燻っている時期に。もっとあとにやればよかったかもしれない。
おかげでオハナシ=手も出る喧嘩になった。
狭霧山で鍛えてきてこの年頃にしては強いと自負しているけれど、現柱である槇寿朗さんには全く歯が立たず、私は床に叩きつけられ動けなくされた。
それでも私の話は止まらない。
炎だけではなく、他の呼吸全てが、日の呼吸の劣化版などではないこと。変化であり進化であること。
水の呼吸も学んだけれど、炎の呼吸を。それを教えてくれた師である槇寿朗さんを誇りに思うことを、今一度語って聞かせたのだ。
「朝緋はなぜ、日の呼吸のことを知っている」
「あっ」
柱たる者の恐ろしいひと睨みで射抜かれた。まるで鋭く磨がれた日輪刀を首に突きつけられているかのよう。私はいつから鬼になったのさ。
でもこればかりは完全に、日の呼吸についてうっかり口走ってしまった私のミス。余計に拗れる結果を生んでしまった。
あーあ、もう取り返しがつかないのではなかろうか……。
「いいか、朝緋はもう鬼殺隊に入ろうとするな!隊士など目指すな!!」
それも、非常にタイミングの悪いことにこれを言われたのは、私と槇寿朗さん二人が互いに声を張り上げているのを聞きつけた杏寿郎さんが部屋に入った時だった。
「父上!もうやめてください!朝緋がかわいそうです!!朝緋もそれ以上父上に楯突くんじゃない!肩を外されてしまうぞ!?」
「お前もだ、杏寿郎!鬼殺隊など入るな!!」
「ぇっ!?」
肩はそう簡単に外されはしない。そんなことになりそうなものなら、その前に逃げちゃうもの。
でも二人揃って言われてしまうとは……。元々思っていたことだろうとはいえ、杏寿郎さんは完全にとばっちりだ。
「杏寿郎兄さん、楯突いてるわけじゃないよ。ただ肉体言語まじりのちょっとしたオハナシしてるだけ!」
「に、肉体言語!?」
「父様、悪いけど私、ずぇーったい隊士になるんで。鬼殺隊に入るんで」
「入らせはせん!炎の呼吸も教えない!!」
「別に教えてもらわなくてももう使えますぅー」
床に押さえつけられて呼吸がしにくい中、槇寿朗さんに向かってあっかんべー。
見よ!苦しさをものともしないこの私の態度!!さすがだ。自画自賛。
「伍ノ型より先は教えてなかろうが!刀もないくせにどうやって選別を突破して剣士になる気だ!使うならお前は水の呼吸を使ってろ!」
「やーだぷー。私は炎の呼吸の使い手でーす」
家長に対する私の礼儀を欠いた態度、高圧的な槇寿朗さんの言葉を前にして、さすがの杏寿郎さんもおろおろハラハラしだした。
このままでは私の肩が外れるどころじゃなく、骨が折れてしまうのではと心配もしているようで。でも安心してほしい、これでも槇寿朗さん……ちゃんと手加減してくれてるの。
「減らず口を……!まあいい!刀がなくば隊士にはなれまい。杏寿郎の日輪刀も没収だ!!」
「えっ!父上!?」
けれど口論はヒートアップ。私にはないけど、杏寿郎さんにはすでにあるらしい日輪刀にまで、被害が及んだ。
本当にとばっちりじゃん!
「父様ひどい。杏寿郎兄さんは関係ないじゃん」
「なんとでも言うがいい」
杏寿郎さんの日輪刀は本当に没収された。
そのあと、離島の任務を言い渡され、槇寿朗さんが出かけて行った。離島ということは、伊黒さんか……。伊黒さんの無事も気になるところだけれど、私には使命がある。
日輪刀を没収されて落ち込む杏寿郎さんを元気にすることだ。
だって、共に鍛錬していても、木刀を見つめてはため息を吐いていて見ていられないんだもの。
「杏寿郎兄さん、ずっと浮かない顔してるね。刀のことでしょ」
「丸腰では鬼殺隊に入れないからな……。せっかく、刀の重みに慣れておこうと思ったのに」
木刀と真剣とじゃ重さも振り抜きの感覚も全て違う。習うより慣れよ、なところが大きいもんね。
「そんな杏寿郎兄さんに朗報です。私ね、杏寿郎兄さんの日輪刀がどこにあるか知ってるよ」
「なんだって!?」
「来て」
修行の激しさが窺える杏寿郎さんの豆と胼胝だらけの手を引き、その場所へと進む。障子を開け、襖を開け、その先を開ける。
「父様が物を隠す場所なんて、昔からお決まりのワンパターンなのよ」
槇寿朗さんが隠したいものがある時に物を隠す場所はよく知っている。
俯いていた時に飲んでいたお酒も、心を入れ替えたあとにすぐは止められなくて飲んでいたお酒も、同じところにばかりたくさん隠してあった。
そういえば酒瓶って呼んでいたけれど、あれ自体も徳利って呼ぶらしいね。小さいものだけが徳利って呼ぶのかと思ってたわ。
「ワンパターン?」
「馬鹿の一つ覚えってこと」
「朝緋!父上に馬鹿などと……!」
「いないんだから悪口の一つや二つ言ったってバチは当たらないよ。……ほーら、あった」
酒に隠れるようにして、奥に新品ピカピカの刀が置かれていた。それを傷がつかぬようそっと手に取り、引っ張り出して杏寿郎さんに渡す。
生き別れの家族との再会かのように、杏寿郎さんは日輪刀を抱きしめた。
「本当だ……!よくぞ戻ってきたなあ、俺の
「だいじょぶだいじょぶ。父様は基本、隠した後は見に来ないことが多いから。お酒の入れ物が手前にたくさんあったってことは、刀がなくなっても気がつかないよ」
でも一応、移動したことがバレないように、お酒を元の位置に寸分違わず戻しておく。……これでよし、と。
「杏寿郎兄さんは父様に見つからないように、上手く自分の部屋に隠してね」
「りょ、了解した」
じゃないと槇寿朗さんはまた激昂するし、次は私がわからないところに隠されてしまうかもしれない。
「ありがとうな、朝緋」
「これくらいお安い御用だよ」
来た時同様に手を引いて出れば、今度はその手をしっかりと握り直された。見上げた先にあったのは幸せそうな顔。
あったかくて優しい私の大好きな手に握られ、その上杏寿郎さんの嬉しそうな顔を間近で見られるなんて、幸せのお裾分けをされた気分だ。
「そういえば日輪刀があるってことは、もう色変わりの儀は終わってるんだね」
「朝緋がいない内にな。見てくれ、これが俺の刀だ!!」
せっかく握ってもらった手が、離れていく。それをちょっぴり寂しく思いながら、杏寿郎さんが鞘から刀身をスラリと抜いて、太陽光に晒す様を眺める。
相変わらずとても綺麗で鮮やかな、赤い刀身だ。眩しくて美しくて魅入られてしまいそう。この刀になら斬られても文句はないと思ってしまう。私が鬼になったら、ぜひ杏寿郎さんに頸を刎ねてもらおう。
そんな美しい刀を持つこの人が、炎柱になるのはすごくよく理解出来る。杏寿郎さんは、炎柱になるべく生まれてきた特別な人。
「綺麗ですね」
「だろう、だろう!朝緋にも色が変わるところを見せてやりたかった!」
「私も見たかったです」
あの光景は、何度見ても感動する。
槇寿朗さんに無事助けられた伊黒さんがやって来て、彼が私や杏寿郎さんに慣れて、友人になって。そして水の呼吸の育手に引き取られていった頃のことだ。
私の元にはまたも悲しい知らせが届いた。
そんな気はしていた。どこか頭の片隅で理解していた。ただ、理解したくなかっただけで。
だから瑠火さんの時とは違い、涙が出たのは知らせを受け取ったその時のみだった。
手紙は真菰からで、届いたのは錆兎の訃報だ。
私が危惧していたことが起こってしまった。
やはり錆兎は、亡くなっていた。だから『今まで』、水柱になった冨岡さんの隣にいなかったのだ。
だって、もしも錆兎が生きていたらだよ?冨岡さん本来の性格から考えると、水柱になっていたのは錆兎の可能性が高い。力の差はほぼなく拮抗していた場合も、俺には務まりきらないなどと錆兎に柱の座を譲り、自分は補佐として継子になっていたかもしれないなって。
もちろんこれは私の想像。これも一つの、未来の形だったのでは、と。
手紙には冨岡さんの様子も事細かに書かれていた。戻ってきてからというもの、人が変わったように無口に、周りに無関心になってしまったと書いてある。
そうか。錆兎という親友を亡くしたから、冨岡さんは変わってしまったんだ。
殻にこもって、他の人と壁一枚隔てているような、そんな性質の人に。
私がよく知る、冨岡さんに。