四周目 捌
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前はよく、早めに任務を終わらせて、空いた時間に夜道を並んで歩いた。
季節ごとの景色や草花を眺めながらの散歩は、それがたとえ夜の中でもとても素敵で綺麗で。繰り返される命のやり取りの中で、それは私達にとってかけがえない時間だった。
なのに今はそれもできない。夜に出歩くのは鬼だけにあらず。その鬼を狩る鬼殺隊士や柱とばったり!なんてことになれば大変だ。
だから煉獄家の中に、杏寿郎さんは缶詰め状態だ。
「夜しか歩けないのに、そのお散歩もできなくてちょっと寂しいですよね。ごめんね……」
「君は謝ってばかりだ。もう謝らなくていいと言っているのに。
煉獄家の生家の庭にも、君の植えた花がある。空には月が浮かんでいる。それだけでいい」
顔にはいつもの笑顔が浮かんでいる。けれどあとはただ黙り続けていて。
花を愛でるのとは違う。月を一心不乱に見つめているのとも違う。その瞳は花や月を見ているようで見ていない。
何かじっと耐えるようなその視線。
「ねぇ杏寿郎さん、もしかして機嫌悪い?
やっぱり、出歩けないから怒ってる?何か要望や、言いたいことがあるなら言って欲しいよ……」
杏寿郎さんを横から揺さぶり、その感情を吐き出させようとする。
あああ、こんな時炭治郎達みたいに、五感が発達していたらなぁ。その感情の一端が、少しでも理解できたろうに。
ぶんぶんと何度か続けて初めて、観念した杏寿郎さんが漏らした。
「その……空腹がひどくてな……。花より団子状態なんだ」
「…………………はなよりだんご。
……団子かあ!あはは、せめてお芋くらい食べられればいいのにね」
花を見るより月を見るより、食べ物とは杏寿郎さんらしいや。私もお腹が空くと機嫌悪くなるからその気持ちわかる。
「まったくだな。鬼になり何が悲しいかって、好物のさつまいもを食べられなくなってしまったことだな。君達が食べている姿をどんなに羨ましく思ったことか……」
「やっぱり食べたかったんだね」
「当たり前だろう?」
私達が焼き芋を食べている時は、そんな感情一切見せなかったのに。私にだけ本当の感情を見せてくれて嬉しい反面、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「ごめんね……」
「だから、謝って欲しいわけではないのだがな。……いや、余計なことを言ってしまった俺が悪い」
「ううん、私が……って、最近の私達は謝りあってばかりですね」
「そのようだな。ま、他の好物ならば目の前に用意されているからいいさ」
他の好物……ああ、私か。
ぴとりとくっつき、自分の胡座の上に座らせる時のように、後ろからぎゅうぎゅう抱き込んでくる杏寿郎さんに、腕を差し出してみる。
「食べる?」
「食べる!!」
「うわ返事はっや」
よだれ垂れそうだよ。一瞬で鬼の目になったよ。
「あ、いや、肉じゃない。鬼だから朝緋の肉を食べたいと思う時もあるが……、その……君をそういう意味で食べたい」
食べたい、と言いながら、すでに私の着物の中に侵入してきて肌をまさぐる手。熱くて冷たいという、矛盾した指を這わされるだけで、呼吸が乱れてくる。
「……ん、ぁ、……でもっ、杏寿郎さん……っ、しすぎじゃない、の?貴方、三日前も私のこと食べましたよ……」
「昨日ではなく三日前だぞ?それだけの期間、俺は我慢した。
俺のココはすぐに腹を空かすのだ。俺は毎日君を味わいたいというに。とろりとした甘い果実のような香りの君を食べたいというにだ」
かぷり、耳たぶを喰まれる。牙の先端と舌先とが攻めるように掠めてきて、ゾクゾクしてくる。
耳や肌に与えられる刺激にばかり集中していれば、ぐいぐいと腰の物を臀部に押し付けられた。熱い、熱い杏寿郎さんの塊だ。
「口吸いがしたい。顔をこちらに向けろ……、ああそうだ。良い子だな」
その姿勢のまま顔だけ杏寿郎さんの方に向けると、露わとなった首筋に視線が向いたのを感じとれた。熱き血潮がどくりどくりと流れる、首筋の血管。
杏寿郎さんは、血も飲みたいんだね。
舌をちゅく、ちゅくと絡め合って快感を得る中、首を凝視される視線には耐えられそうになかった。
「ん、んん、っふ……、血、飲みますか?、んはぁ、そんなに見つめてきて、……飲めばいい、のに、」
「確かに血もいただきたい。
だが、君は匂いも、味もたまらなく美味いからな……血だけではなく、朝緋の体も唇も全てが、俺は大好きだよ」
そのまま抱き上げられて移動。布団の上に押し倒された。同時に、上げていた髪が解かれ、敷布の上にばさりと広がる。
「先に食べたいのは朝緋のこちらだ。
血は……その時に少しもらえるならそれでいい。良いか?」
「もちろん。だって、私は、貴方のものだよ……?
どうぞお好きにお食べください」
杏寿郎さんを迎える準備はいつだって出来ている。こっちに来て、と手を広げて待つ。
ぐるると唸る喉。ギラギラ光る瞳が射抜いてきた。
「そんなことを言われると、君を抱き潰してしまいそうだ」
「いつものことでしょう?ただ、あまり痛くしないで欲しいけども……」
「善処する!」
「善処じゃ困、……っあ、」
そうやって幾度となく、毎夜のように私達は交わり続けた。
ただ、その行為は徐々にエスカレートしてきて。
鬼殺ではなく、杏寿郎さんから与えられて増えていく傷。血を吸われた穴。腕や足を押さえつけられてついた手の形の鬱血痕。
任務でついた傷なんて、ほとんどない。今私の体についた傷は、全て杏寿郎さんによる物だ。
そしてとうとうその日は来た。
「痛っ!?きょ、じゅろ、さ……、何、なんなの……、っ、痛いッッッ!!やだ、やだやだやだ、噛まないで、そんなに強く噛まないで!?」
いつもと同じ行為。いつもと同じ体勢。
それまでは普通に私のことを愛してくれていたのに。なのに杏寿郎さんが突然変貌して。
私の首を、腕を、食いちぎらんとして強く噛んできた。
ここ最近は普段から、血を飲むからと肌に小さく穴を開けて啜る行為は繰り返していた。
杏寿郎さんが理性を保つために必要な食事だから仕方ないと思っていた。
その一環で、遊びながら牙を立てて睦み合い笑い合うこともあった。
こんなことしてるのに。鬼なのに、鬼だと忘れていた。油断していた。
がじゅ、ゴリッ、ブチュン!
「あれ?私の、腕……、食いちぎられ……?へ、ぁ?嘘、」
「ん、美味い……、美味いな……、」
腕の肉の一部が、抉り取られている。
ボタボタと血が下に落ちて、腕、体、布団を赤く染める。
上では杏寿郎さんが、血だらけの口を美味そうに動かして嗤っていた。
肉を食べたいと思う時もある、と言っていた杏寿郎さんが、とうとう私を喰らった。私の肉を口にした。
「あああっ、もが!?んっ、んっ、……」
痛みに耐えかねて脂汗と涙と叫びが漏れるも、肉と血の味のする口づけで叫びを封じ込まれた。
うえ、気持ち悪い……!
鬼の顔で笑う杏寿郎さんが、私の舌に牙を差し込む。舌先からも血を啜られ、意識まで持っていかれそうだった。
なのに許さんとばかりに意識を引き戻される。
痛みを我慢してジタバタ暴れ、逃げようとていたのに、手首を押さえつけられて縫い止められる。
ゴウ……チリチリチリ、ジュウウ、熱っ!熱い、杏寿郎さんに掴まれ拘束された手首が、燃えるように熱い!何これ、杏寿郎さんの血鬼術!?
まるで炎でできた縄が巻きついているかのように、手首を焼いた。
ガッ、グチャ……。
「っ、ぎっ、あああああっ!!」
「あーー、なぜ俺はこんなに美味い人間を喰うのを、我慢していたのだろうなあ……」
今度は肩口を食い破られた。広がる痛み、おびただしい出血とその香り。
目の前の鬼は、くちゃくちゃと咀嚼して、飲みくだして。クツクツ笑い続けている。
「やめて、やめへ……、ぁ゛っ、……た、助け……、」
「やめることなんて絶対にできない。しない。
君を俺のものに、俺の一部にするまで止まらん!君が俺の一部になれば、もう他の誰のものにもならなくてすむ!!ずっと一緒だなあ!?
なあ、朝緋!!」
ゴリゴリッ、ガツッーー。ぐちゃっ、ごく、ごくん。
喰われ、啜られる。
私がこんな苛烈な男に。苛烈な鬼にしてしまったのだろうか。
私を喰らい続ける、激しい炎を宿した鬼に。
普段の噛まれた、噛んでしまった、なんてどころの騒ぎじゃない。
腕が齧られている……肩も、お腹の一部も、太ももも食いちぎられちゃった。すっごく痛いや……回復の呼吸だけじゃ、我慢するのは大変だあ……。
血の匂いもすごい。この匂いじゃ、鬼は余計に大興奮しちゃうじゃない。稀血の匂いだーって。
ほら、杏寿郎さんも私の血で興奮してる。私のお肉、一心不乱に食べてる。血を舐め上げて喜んでいる。
なのに、腰の動きは一つも止まってくれなくて。
食べるかするか、どちらかにすればいいのに。
食欲も性欲もだなんて。欲張りさんだなあ。
私の体も、痛いのに気持ちいいだなんて言っていて、まるで被虐趣味があるみたいじゃない。
ごぶ、がぶ!ぐちゅり、ごきゅ。
痛い、痛いよ。声も出ない。意識だっていつ失うかわからない。血が流れすぎてくらくらしてきた。
でも、食べるのは仕方ないことだよね。だって、杏寿郎さんは鬼なんだもの。
ここまで持っただけ、すごいと思う。
いいよ、食べて。全部食べていい。
私の事、全部食べていいよ。杏寿郎さんになら、全部ぜーんぶあげる。
喜んで貴方の一部になります。
季節ごとの景色や草花を眺めながらの散歩は、それがたとえ夜の中でもとても素敵で綺麗で。繰り返される命のやり取りの中で、それは私達にとってかけがえない時間だった。
なのに今はそれもできない。夜に出歩くのは鬼だけにあらず。その鬼を狩る鬼殺隊士や柱とばったり!なんてことになれば大変だ。
だから煉獄家の中に、杏寿郎さんは缶詰め状態だ。
「夜しか歩けないのに、そのお散歩もできなくてちょっと寂しいですよね。ごめんね……」
「君は謝ってばかりだ。もう謝らなくていいと言っているのに。
煉獄家の生家の庭にも、君の植えた花がある。空には月が浮かんでいる。それだけでいい」
顔にはいつもの笑顔が浮かんでいる。けれどあとはただ黙り続けていて。
花を愛でるのとは違う。月を一心不乱に見つめているのとも違う。その瞳は花や月を見ているようで見ていない。
何かじっと耐えるようなその視線。
「ねぇ杏寿郎さん、もしかして機嫌悪い?
やっぱり、出歩けないから怒ってる?何か要望や、言いたいことがあるなら言って欲しいよ……」
杏寿郎さんを横から揺さぶり、その感情を吐き出させようとする。
あああ、こんな時炭治郎達みたいに、五感が発達していたらなぁ。その感情の一端が、少しでも理解できたろうに。
ぶんぶんと何度か続けて初めて、観念した杏寿郎さんが漏らした。
「その……空腹がひどくてな……。花より団子状態なんだ」
「…………………はなよりだんご。
……団子かあ!あはは、せめてお芋くらい食べられればいいのにね」
花を見るより月を見るより、食べ物とは杏寿郎さんらしいや。私もお腹が空くと機嫌悪くなるからその気持ちわかる。
「まったくだな。鬼になり何が悲しいかって、好物のさつまいもを食べられなくなってしまったことだな。君達が食べている姿をどんなに羨ましく思ったことか……」
「やっぱり食べたかったんだね」
「当たり前だろう?」
私達が焼き芋を食べている時は、そんな感情一切見せなかったのに。私にだけ本当の感情を見せてくれて嬉しい反面、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「ごめんね……」
「だから、謝って欲しいわけではないのだがな。……いや、余計なことを言ってしまった俺が悪い」
「ううん、私が……って、最近の私達は謝りあってばかりですね」
「そのようだな。ま、他の好物ならば目の前に用意されているからいいさ」
他の好物……ああ、私か。
ぴとりとくっつき、自分の胡座の上に座らせる時のように、後ろからぎゅうぎゅう抱き込んでくる杏寿郎さんに、腕を差し出してみる。
「食べる?」
「食べる!!」
「うわ返事はっや」
よだれ垂れそうだよ。一瞬で鬼の目になったよ。
「あ、いや、肉じゃない。鬼だから朝緋の肉を食べたいと思う時もあるが……、その……君をそういう意味で食べたい」
食べたい、と言いながら、すでに私の着物の中に侵入してきて肌をまさぐる手。熱くて冷たいという、矛盾した指を這わされるだけで、呼吸が乱れてくる。
「……ん、ぁ、……でもっ、杏寿郎さん……っ、しすぎじゃない、の?貴方、三日前も私のこと食べましたよ……」
「昨日ではなく三日前だぞ?それだけの期間、俺は我慢した。
俺のココはすぐに腹を空かすのだ。俺は毎日君を味わいたいというに。とろりとした甘い果実のような香りの君を食べたいというにだ」
かぷり、耳たぶを喰まれる。牙の先端と舌先とが攻めるように掠めてきて、ゾクゾクしてくる。
耳や肌に与えられる刺激にばかり集中していれば、ぐいぐいと腰の物を臀部に押し付けられた。熱い、熱い杏寿郎さんの塊だ。
「口吸いがしたい。顔をこちらに向けろ……、ああそうだ。良い子だな」
その姿勢のまま顔だけ杏寿郎さんの方に向けると、露わとなった首筋に視線が向いたのを感じとれた。熱き血潮がどくりどくりと流れる、首筋の血管。
杏寿郎さんは、血も飲みたいんだね。
舌をちゅく、ちゅくと絡め合って快感を得る中、首を凝視される視線には耐えられそうになかった。
「ん、んん、っふ……、血、飲みますか?、んはぁ、そんなに見つめてきて、……飲めばいい、のに、」
「確かに血もいただきたい。
だが、君は匂いも、味もたまらなく美味いからな……血だけではなく、朝緋の体も唇も全てが、俺は大好きだよ」
そのまま抱き上げられて移動。布団の上に押し倒された。同時に、上げていた髪が解かれ、敷布の上にばさりと広がる。
「先に食べたいのは朝緋のこちらだ。
血は……その時に少しもらえるならそれでいい。良いか?」
「もちろん。だって、私は、貴方のものだよ……?
どうぞお好きにお食べください」
杏寿郎さんを迎える準備はいつだって出来ている。こっちに来て、と手を広げて待つ。
ぐるると唸る喉。ギラギラ光る瞳が射抜いてきた。
「そんなことを言われると、君を抱き潰してしまいそうだ」
「いつものことでしょう?ただ、あまり痛くしないで欲しいけども……」
「善処する!」
「善処じゃ困、……っあ、」
そうやって幾度となく、毎夜のように私達は交わり続けた。
ただ、その行為は徐々にエスカレートしてきて。
鬼殺ではなく、杏寿郎さんから与えられて増えていく傷。血を吸われた穴。腕や足を押さえつけられてついた手の形の鬱血痕。
任務でついた傷なんて、ほとんどない。今私の体についた傷は、全て杏寿郎さんによる物だ。
そしてとうとうその日は来た。
「痛っ!?きょ、じゅろ、さ……、何、なんなの……、っ、痛いッッッ!!やだ、やだやだやだ、噛まないで、そんなに強く噛まないで!?」
いつもと同じ行為。いつもと同じ体勢。
それまでは普通に私のことを愛してくれていたのに。なのに杏寿郎さんが突然変貌して。
私の首を、腕を、食いちぎらんとして強く噛んできた。
ここ最近は普段から、血を飲むからと肌に小さく穴を開けて啜る行為は繰り返していた。
杏寿郎さんが理性を保つために必要な食事だから仕方ないと思っていた。
その一環で、遊びながら牙を立てて睦み合い笑い合うこともあった。
こんなことしてるのに。鬼なのに、鬼だと忘れていた。油断していた。
がじゅ、ゴリッ、ブチュン!
「あれ?私の、腕……、食いちぎられ……?へ、ぁ?嘘、」
「ん、美味い……、美味いな……、」
腕の肉の一部が、抉り取られている。
ボタボタと血が下に落ちて、腕、体、布団を赤く染める。
上では杏寿郎さんが、血だらけの口を美味そうに動かして嗤っていた。
肉を食べたいと思う時もある、と言っていた杏寿郎さんが、とうとう私を喰らった。私の肉を口にした。
「あああっ、もが!?んっ、んっ、……」
痛みに耐えかねて脂汗と涙と叫びが漏れるも、肉と血の味のする口づけで叫びを封じ込まれた。
うえ、気持ち悪い……!
鬼の顔で笑う杏寿郎さんが、私の舌に牙を差し込む。舌先からも血を啜られ、意識まで持っていかれそうだった。
なのに許さんとばかりに意識を引き戻される。
痛みを我慢してジタバタ暴れ、逃げようとていたのに、手首を押さえつけられて縫い止められる。
ゴウ……チリチリチリ、ジュウウ、熱っ!熱い、杏寿郎さんに掴まれ拘束された手首が、燃えるように熱い!何これ、杏寿郎さんの血鬼術!?
まるで炎でできた縄が巻きついているかのように、手首を焼いた。
ガッ、グチャ……。
「っ、ぎっ、あああああっ!!」
「あーー、なぜ俺はこんなに美味い人間を喰うのを、我慢していたのだろうなあ……」
今度は肩口を食い破られた。広がる痛み、おびただしい出血とその香り。
目の前の鬼は、くちゃくちゃと咀嚼して、飲みくだして。クツクツ笑い続けている。
「やめて、やめへ……、ぁ゛っ、……た、助け……、」
「やめることなんて絶対にできない。しない。
君を俺のものに、俺の一部にするまで止まらん!君が俺の一部になれば、もう他の誰のものにもならなくてすむ!!ずっと一緒だなあ!?
なあ、朝緋!!」
ゴリゴリッ、ガツッーー。ぐちゃっ、ごく、ごくん。
喰われ、啜られる。
私がこんな苛烈な男に。苛烈な鬼にしてしまったのだろうか。
私を喰らい続ける、激しい炎を宿した鬼に。
普段の噛まれた、噛んでしまった、なんてどころの騒ぎじゃない。
腕が齧られている……肩も、お腹の一部も、太ももも食いちぎられちゃった。すっごく痛いや……回復の呼吸だけじゃ、我慢するのは大変だあ……。
血の匂いもすごい。この匂いじゃ、鬼は余計に大興奮しちゃうじゃない。稀血の匂いだーって。
ほら、杏寿郎さんも私の血で興奮してる。私のお肉、一心不乱に食べてる。血を舐め上げて喜んでいる。
なのに、腰の動きは一つも止まってくれなくて。
食べるかするか、どちらかにすればいいのに。
食欲も性欲もだなんて。欲張りさんだなあ。
私の体も、痛いのに気持ちいいだなんて言っていて、まるで被虐趣味があるみたいじゃない。
ごぶ、がぶ!ぐちゅり、ごきゅ。
痛い、痛いよ。声も出ない。意識だっていつ失うかわからない。血が流れすぎてくらくらしてきた。
でも、食べるのは仕方ないことだよね。だって、杏寿郎さんは鬼なんだもの。
ここまで持っただけ、すごいと思う。
いいよ、食べて。全部食べていい。
私の事、全部食べていいよ。杏寿郎さんになら、全部ぜーんぶあげる。
喜んで貴方の一部になります。