四周目 捌
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煉獄家屋敷の中、言葉が漏れぬよう閉め切りの槇寿朗さんの部屋。
「まずはこれをお前達に返す」
そう言って差し出されたのは、綺麗に洗われ丁寧に折り畳まれた私と杏寿郎さんの炎の羽織。
千寿郎が洗ってくれたんだろうな……。
泣いていたというし、洗うのもつらかったろう。悪いことをした。
「ありがたく、また頂戴します」
「うむ。それを着て再び任務に励むように。杏寿郎も受け取れ」
「いえ……朝緋はともかく、俺は受け取れません。俺はもう炎柱では、」
「いいや、お前が炎柱だ。お前がそうやって人の心を持つうちは、炎柱は煉獄杏寿郎だ。鬼殺隊の柱だ。
無理に羽織らなくともいいから持っていろ」
まだ何か言いたそうにしてはいたけれど、杏寿郎さんも無事に羽織を受け取った。
「羽織は炭治郎……竈門君が届けに来たんですよね?その際、炎柱の書は見せましたか」
「そうだ。竈門君が届けにきた。朝緋が許可したと言われたから書の方も見せたよ。よもや、日の呼吸の使い手だとは思わなかったが」
「父上、ヒノカミ神楽です!日の呼吸ではありませんよ!」
「同じことだ」
「あの……炭治郎に暴力や暴言などは」
「?なぜそのような真似をする必要がある」
「あっ、ならいいんですけどね!」
『前』の槇寿朗さんとは違うというのに、失礼なこと言っちゃったなあ。思うところはあれども、そこまで日の呼吸に拘っていないのかも。
「彼は良い子だな。妹君の禰󠄀豆子君も良い子……いや、良い鬼だとわかる。千寿郎とも仲良くしてくれて。お前達のことで悲しんでいた千寿郎が笑顔を取り戻せたのも、彼らのおかげだ」
その光景は想像に難くない。
炭治郎も禰󠄀豆子ちゃんも、人の気持ちをよく考えられるとても良い子だもの。私は彼らに、精神面でたくさん助けられた。
「杏寿郎もまた、あの娘のように人間に優しい鬼になれればあるいは……と思うよ」
「はい!そうなれるよう、精進して参ります!まずは道場にて、素振りを一千回してきます!!」
「静かにやれよ」
素振りしてどうにかなるものなの?私と槇寿朗さんは、どこかズレた思考で道場へ行ってしまった杏寿郎さんを見送りながら、顔を見合わせて笑った。
「さて、今後のことについてだが。御館様からも話は聞いている。
もともとここはお前達の実家だからな、日が当たらぬ北側の部屋に好きなだけ居るといい。朝緋の部屋は今後はその隣の部屋だ。
万が一にも何かあれば、お前が対処するんだぞ。杏寿郎は杏寿郎だが、それでも鬼であることに変わりはないのだから」
「…………ええ、わかっています」
禰󠄀豆子ちゃんが理性を失い人に手をかけた時、まず初めに切腹するのは炭治郎なのだという。
それと同じだ。杏寿郎さんが理性を失うようなことがあれば、杏寿郎さんの頸をお前が斬るようにと、槇寿朗さんはそう言いたいのだ。
そうならないように気をつけねばならない。
部屋を移動してしばらく、杏寿郎さんが戻ってきた。うわ、汗もかいてない。
「一千回の素振りは終わったの?さすがにちょっと早くない?」
「鬼の力を持ってすれば、一千回など一瞬のことだ。こう……高速でぶんぶん振り回すのだ」
「何それ怖い」
今の動きの打撃力、恐ろしすぎない?部屋の中なのにぶわーって強風が発生したよ?
「父上に聞いたが、この部屋が俺達の過ごす部屋になったのだな」
「そ。北側で陽の光が入らない部屋だね。でも正確にはここが貴方の部屋で、私はお隣の部屋。実家なんだから遠慮せずずっといていいってさ」
「そうか……有難いな。鬼になってしまったというに、こんなにも心砕いて下さるとは……」
御館様に言われていても、実の息子だとしても、鬼相手に……。元柱だしかなり迷ったはずなのにね。それでも、槇寿朗さんは私達を選んでくださった。
「父様は優しいから。
……さあて、そろそろ寝ますか!杏寿郎さん、おやす、ん?この手はなぁに」
隣の部屋に行こうとした私の腕を取り引き留めてくる、杏寿郎さんの手。
「隣の部屋になど行く必要があるか?朝緋は俺の恋人だ。ここで共に過ごし、共に寝るのが正解だと思うが?」
「…………、だって今の貴方は鬼「鬼だからという言い訳はもう通用しない。荒屋でも借りた屋敷でも散々共寝をしたろう?君からそれを望む時もあった」……そう、だけど。でもここ、生家だよ。それに杏寿郎さん、鬼になってからというもの、一緒に寝るとほぼ確実に私のこと食べてくるじゃん。体が持たないよ」
「君が美味しいのが悪い」
好きで美味しくなったわけじゃないやい。
あ、杏寿郎さんは鬼だけど、食べてくるのは物理的にではない。
「朝緋は鬼殺隊でも屈指の実力者。この程度で根を上げるわけなかろう」
「そこまで強くないよ!鬼殺隊士だから平気だろう、で、何でも済ませるのやめて欲し……んっ、ふ……、…………ちょっと待っ、」
「ン、……待たない……。待っていては朝になってしまう…………」
「ンン゛ッ、ーー」
激しい口吸いから始まる行為。引き倒され、上に乗られ、着物を脱がされ、触れられて走る快感。
杏寿郎さんから与えられる一つ一つ。それが痛みであろうとも、私の体はすぐに快楽を拾うように作り変えられてしまっている。
じゅる、ちゅくっ、舌を吸われる度、牙が掠めて恐ろしく感じるのに。でも気持ちよくてふわふわしてきて。
いつものように思考が溶けてきた。
「朝になったら千寿郎が起きてくる。久しぶりに会う弟に、朝緋は乱れた姿を見せる気か?
ナニをしていたのか、父上にも全てバレてしまうぞ?父上は気がついているだろうがな」
千寿郎にも槇寿朗さんにも見られたくない、恥ずかしい。そう言いたいのに、蕩けた思考の前では考えもまとまらず何も言えず。
頬や首筋に這いまわり、時折牙を薄く立てながら徐々に下降していく杏寿郎さんの舌の愛撫を前に、わななく唇からはただひたすらに甘い吐息が漏れるだけで。
「ゃ、……っ、ん……、」
「相変わらずいい反応だ。明るくなってからでなく、今すぐ気持ちよくなりたいだろう?朝緋の体はそう言っている。ほら、」
「ヒ、ぁっ、」
杏寿郎さんは私よりも私の体に詳しい。
弱いところを鬼の長い爪でカリカリと引っ掻かれ、ビリビリとした何かが背筋を駆け上がり、目の前でチカチカ爆ぜる。
傷つきそうで怖い。なのに気持ちいい。もっと、もっとと強請って腰が動く。
口からははくはくと呼吸にならない息が漏れて、言葉を返すことすらままならない。
「さあて、熟れた桃のように芳しい香りを放つ君を、今宵もまた味合わせてくれ」
私の上で美しい鬼が私を喰わんと舌なめずりしている。
もう逃れられない。
「まずはこれをお前達に返す」
そう言って差し出されたのは、綺麗に洗われ丁寧に折り畳まれた私と杏寿郎さんの炎の羽織。
千寿郎が洗ってくれたんだろうな……。
泣いていたというし、洗うのもつらかったろう。悪いことをした。
「ありがたく、また頂戴します」
「うむ。それを着て再び任務に励むように。杏寿郎も受け取れ」
「いえ……朝緋はともかく、俺は受け取れません。俺はもう炎柱では、」
「いいや、お前が炎柱だ。お前がそうやって人の心を持つうちは、炎柱は煉獄杏寿郎だ。鬼殺隊の柱だ。
無理に羽織らなくともいいから持っていろ」
まだ何か言いたそうにしてはいたけれど、杏寿郎さんも無事に羽織を受け取った。
「羽織は炭治郎……竈門君が届けに来たんですよね?その際、炎柱の書は見せましたか」
「そうだ。竈門君が届けにきた。朝緋が許可したと言われたから書の方も見せたよ。よもや、日の呼吸の使い手だとは思わなかったが」
「父上、ヒノカミ神楽です!日の呼吸ではありませんよ!」
「同じことだ」
「あの……炭治郎に暴力や暴言などは」
「?なぜそのような真似をする必要がある」
「あっ、ならいいんですけどね!」
『前』の槇寿朗さんとは違うというのに、失礼なこと言っちゃったなあ。思うところはあれども、そこまで日の呼吸に拘っていないのかも。
「彼は良い子だな。妹君の禰󠄀豆子君も良い子……いや、良い鬼だとわかる。千寿郎とも仲良くしてくれて。お前達のことで悲しんでいた千寿郎が笑顔を取り戻せたのも、彼らのおかげだ」
その光景は想像に難くない。
炭治郎も禰󠄀豆子ちゃんも、人の気持ちをよく考えられるとても良い子だもの。私は彼らに、精神面でたくさん助けられた。
「杏寿郎もまた、あの娘のように人間に優しい鬼になれればあるいは……と思うよ」
「はい!そうなれるよう、精進して参ります!まずは道場にて、素振りを一千回してきます!!」
「静かにやれよ」
素振りしてどうにかなるものなの?私と槇寿朗さんは、どこかズレた思考で道場へ行ってしまった杏寿郎さんを見送りながら、顔を見合わせて笑った。
「さて、今後のことについてだが。御館様からも話は聞いている。
もともとここはお前達の実家だからな、日が当たらぬ北側の部屋に好きなだけ居るといい。朝緋の部屋は今後はその隣の部屋だ。
万が一にも何かあれば、お前が対処するんだぞ。杏寿郎は杏寿郎だが、それでも鬼であることに変わりはないのだから」
「…………ええ、わかっています」
禰󠄀豆子ちゃんが理性を失い人に手をかけた時、まず初めに切腹するのは炭治郎なのだという。
それと同じだ。杏寿郎さんが理性を失うようなことがあれば、杏寿郎さんの頸をお前が斬るようにと、槇寿朗さんはそう言いたいのだ。
そうならないように気をつけねばならない。
部屋を移動してしばらく、杏寿郎さんが戻ってきた。うわ、汗もかいてない。
「一千回の素振りは終わったの?さすがにちょっと早くない?」
「鬼の力を持ってすれば、一千回など一瞬のことだ。こう……高速でぶんぶん振り回すのだ」
「何それ怖い」
今の動きの打撃力、恐ろしすぎない?部屋の中なのにぶわーって強風が発生したよ?
「父上に聞いたが、この部屋が俺達の過ごす部屋になったのだな」
「そ。北側で陽の光が入らない部屋だね。でも正確にはここが貴方の部屋で、私はお隣の部屋。実家なんだから遠慮せずずっといていいってさ」
「そうか……有難いな。鬼になってしまったというに、こんなにも心砕いて下さるとは……」
御館様に言われていても、実の息子だとしても、鬼相手に……。元柱だしかなり迷ったはずなのにね。それでも、槇寿朗さんは私達を選んでくださった。
「父様は優しいから。
……さあて、そろそろ寝ますか!杏寿郎さん、おやす、ん?この手はなぁに」
隣の部屋に行こうとした私の腕を取り引き留めてくる、杏寿郎さんの手。
「隣の部屋になど行く必要があるか?朝緋は俺の恋人だ。ここで共に過ごし、共に寝るのが正解だと思うが?」
「…………、だって今の貴方は鬼「鬼だからという言い訳はもう通用しない。荒屋でも借りた屋敷でも散々共寝をしたろう?君からそれを望む時もあった」……そう、だけど。でもここ、生家だよ。それに杏寿郎さん、鬼になってからというもの、一緒に寝るとほぼ確実に私のこと食べてくるじゃん。体が持たないよ」
「君が美味しいのが悪い」
好きで美味しくなったわけじゃないやい。
あ、杏寿郎さんは鬼だけど、食べてくるのは物理的にではない。
「朝緋は鬼殺隊でも屈指の実力者。この程度で根を上げるわけなかろう」
「そこまで強くないよ!鬼殺隊士だから平気だろう、で、何でも済ませるのやめて欲し……んっ、ふ……、…………ちょっと待っ、」
「ン、……待たない……。待っていては朝になってしまう…………」
「ンン゛ッ、ーー」
激しい口吸いから始まる行為。引き倒され、上に乗られ、着物を脱がされ、触れられて走る快感。
杏寿郎さんから与えられる一つ一つ。それが痛みであろうとも、私の体はすぐに快楽を拾うように作り変えられてしまっている。
じゅる、ちゅくっ、舌を吸われる度、牙が掠めて恐ろしく感じるのに。でも気持ちよくてふわふわしてきて。
いつものように思考が溶けてきた。
「朝になったら千寿郎が起きてくる。久しぶりに会う弟に、朝緋は乱れた姿を見せる気か?
ナニをしていたのか、父上にも全てバレてしまうぞ?父上は気がついているだろうがな」
千寿郎にも槇寿朗さんにも見られたくない、恥ずかしい。そう言いたいのに、蕩けた思考の前では考えもまとまらず何も言えず。
頬や首筋に這いまわり、時折牙を薄く立てながら徐々に下降していく杏寿郎さんの舌の愛撫を前に、わななく唇からはただひたすらに甘い吐息が漏れるだけで。
「ゃ、……っ、ん……、」
「相変わらずいい反応だ。明るくなってからでなく、今すぐ気持ちよくなりたいだろう?朝緋の体はそう言っている。ほら、」
「ヒ、ぁっ、」
杏寿郎さんは私よりも私の体に詳しい。
弱いところを鬼の長い爪でカリカリと引っ掻かれ、ビリビリとした何かが背筋を駆け上がり、目の前でチカチカ爆ぜる。
傷つきそうで怖い。なのに気持ちいい。もっと、もっとと強請って腰が動く。
口からははくはくと呼吸にならない息が漏れて、言葉を返すことすらままならない。
「さあて、熟れた桃のように芳しい香りを放つ君を、今宵もまた味合わせてくれ」
私の上で美しい鬼が私を喰わんと舌なめずりしている。
もう逃れられない。