四周目 漆
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その後私は杏寿郎さんに指示され、炭治郎と伊之助のいる前方車両へと向かった。
……あっ!既に運転士は気絶させられている。えーと、伊之助にでも殴られた?顔腫れてるよ……?
でもこれで炭治郎がお腹を刺される心配はなくなったわけで。
鬼の血鬼術に翻弄されながら、三人で刃を振るう。私の炎の呼吸、伊之助の獣の呼吸、そして夜の闇の中で炭治郎のヒノカミ神楽・碧羅の天が輝きを放ちながら、鬼の頸を斬り落とす。
何度見ても美しい型だ。思わず感嘆の吐息すら漏れる。
ヒノカミ神楽には一体いくつの型があるのだろう。名前の通り、神楽舞に似たそれをぜひ一から見てみたい。今後炭治郎と任務が重なることがあれば、見せてもらおう。
でもとりあえず炭治郎は、水の呼吸とヒノカミ神楽を交互に使っても動けるようにならないとね。ヒノカミ神楽一つ放つだけで、これとは……かなり問題がある。
今、私達は列車の外にいる。
下弦の壱が討伐され、無限列車がいつもと同じで脱線したのだ。もうね、鬼が列車と融合する限り、倒されたら脱線は免れないと思うのよ。
列車が走行不可能になろうとも、命があるだけよかったと思うしかない。整備士のみなさん、ごめんなさい。
お腹は刺されなかったけど、投げ出された衝撃と、そしてヒノカミ神楽を駆使した影響で炭治郎は動けない。倒れ伏したまま、呼吸を必死に整えていた。
私は二つの呼吸を使って大丈夫なのかって?そりゃもう最初は動けなくて大変だったけど、鍛錬したので今では難なく動けるようになった。
強くなるには。呼吸を二つ使いこなすには。何事も鍛錬。修行。出来ることはそれしかない。結局のところ近道は一つもないのだ。
「大丈夫?」
「なんとか、だい、じょぶです……」
「うーん。炭治郎は鍛錬がまだまだ足りていないみたいだね。お互いの非番になったらだけど炎柱邸においで。私と杏寿郎さんが鍛えてあげる。私は階級もそこそこ高い方だし、もう一人は柱。二人の指導があれば、絶対に強くなれると思うの」
「ありがとう、ございます……ぜひ、行かせてもらいます」
嬉しそうに笑う炭治郎と会話していれば。
「その通りだ、竈門少年!」
「れ、煉獄さん!?」
「炎柱邸に来て鍛錬するといい!だが朝緋と必要以上に仲良くするのは禁止だっ!!」
嫉妬深き私の番が、私の腰を抱き寄せてそう言った。腰からお尻にかけてを撫でてくる動き!どう考えても痴漢のそれですね。杏寿郎さんじゃなかったらその手を斬っていたかもしれない。
「あのですねぇ師範?まず私の腰を抱きながら登場するその手癖の悪さはなんとかしてください。それと誰それ構わず嫉妬するのもやめてください」
「俺と朝緋が一心同体である限り無理な話だ!そして相手が男である限り、嫉妬しないでいるのも無理だ!!」
ん〜潔い回答〜!!狂気は孕みつつも、そのすっぱり言い切るところ好き〜〜〜。でも一心同体は違うと思うし、炭治郎にまで嫉妬されると修行つけてあげにくくなるから困る。
思い切り手の甲を抓る。そしたらその腕と体が離れた。不満そうな顔と共にね。
「ふむ、全集中の常中はできているようだな。常中は柱への第一歩だ。呼吸を極めればさまざまなことが可能にもなる、より呼吸を極め、高みを目指すのだ!さすれば昨日の自分より更に強くなれる!!」
「はい、がんばります!」
「だがまずはいつまでも寝ていないで、起き上がるように!この程度で倒れていては、俺達の修行についていくなど不可能だぞ!」
「ええっ!?」
炭治郎が水の呼吸に続き、ヒノカミ神楽を使うところを見ていない杏寿郎さんならそういうだろうねえ……。鍛錬に関することになると、杏寿郎さんはいつだって、体育会系だ。
「師範、炭治郎はたくさん活躍して疲れ切っています。あとはゆっくり休ませてあげてください。そんなキツイことを言うから、継子がいなくなっちゃうんですよ?」
「朝緋がいるから大丈夫だ。朝緋は俺の継子も、恋人もやめたりしないだろう?」
「うんまあそうですね私は継子も恋人もやめませんよでも他の隊士のことですこの手は何ですかお触り禁止です」
「俺の手のやつめやりおるな!何も見ずとも朝緋の尻を触るとはな!!」
さすがに殴っておいた。杏寿郎さんはなぜか嬉しそうにしていた……。
少し巫山戯ていて楽しいこんな雰囲気の中だけれど、警戒は怠ってはいけない。刀は抜いて置かねば不安で。
なぜならーー。
ーードンッ!!
轟音と共に現れたのは、私の大嫌いな上弦の参・猗窩座だ。そう、この鬼が来るとわかっていたから。
ほんっと、いい加減にしてほしい。ここに来ないでほしい。どこかに行ってほしい。杏寿郎さんを傷つけないで。
そう思うのに、毎回毎回私と杏寿郎さんの元にこの鬼はやってくる。
そういう運命。そういう展開。そういう物語。この邂逅は、この世界に組み込まれている歯車なのだ。戦いは決して避けられない。
猗窩座が炭治郎に危害を加えるべく動いた。
「……傷つけさせないよ」
杏寿郎さんがそれに気がつくより更に先に、刀を振るう。この鬼に、杏寿郎さんの実力を見せないための措置だ。まあ、闘気とやらでバレっバレなんだろうけどさ……。
「いい刀ではあるが、俺が受けたかったのはお前の刀ではない。そこの『柱』の刀だ」
鬼が傷ついた腕を一瞬で治しながらぼやく。
やっぱり気がついているよね。彼が柱で、この中で一番の闘気を持ち、一番強いことに。
「そりゃすみませんね。だったら、最初からそっちを狙えばいいでしょ。なんで他の子から狙うのさ」
「ああ、全く理解できないな」
凄まじい鬼気と再生能力の高さを前に、刀に手を置きながら杏寿郎さんも鬼の様子をうかがっている。
相手は鬼だ。会話が好きそうでも、いつ何時襲ってくるかわからないからね。
「柱との話の邪魔になると思ったから、排除しておこうと思ったのだ」
「排除?なら私にも攻撃して来れば?
言っておくけど、私この人のマネージャーです。だから勝手に会話なんてさせませんよ事務所通してよね。事務所開いてるの朝九時から夕方五時までたけど。はい鬼だからいつ来ても無理ですね太陽に焼かれてこんがりローストまっずい焦げ焦げ消し炭決定。おとといきやがれカースドフォーエバー」
「朝緋君今なんて?横文字のようなものが多すぎて、言っていることが全然分からんのだが……」
「教える気はありませんし今は説明する暇ありません」
杏寿郎さんだけでなく、炭治郎までもが頭の上に疑問符を浮かばせている。
カースドフォーエバーとは、文字通り永遠に呪われていろ、だ。ずっと生きている鬼にぴったりな言葉よね。
本当はファッ●ユーまで追加したかったけど、意味を知らない人しかいなかろうと、お言葉が汚すぎる。使うのは止めておいた。
鬼の肌にピキピキと血管が浮いた。
「全くよくわからんが、なんとも腹の立つ女だ……。殺したいが、俺は女は殺さん主義でな。見逃してやるから、そこの小僧と共にどこかへいけ」
「はあ?どこかへ行くのはお前だよ上弦の参!」
「朝緋、あまりそうカッカするな」
「すみません……」
日輪刀をブンブン振り回して怒る私を、杏寿郎さんが肩に手を置いて諌める。
少しは冷静になれた。でもこの鬼を前にしている今、完全に落ち着くなんて不可能。
「俺と君が何の話をする。初対面だが俺は既に君が嫌いだ」
「俺が嫌いなのは弱者だ。見ていると虫唾が走る」
「……君と俺とでは物事の価値基準が違うようだな。話も噛み合わない」
杏寿郎さんに「お前嫌い」と言われているわけであり「お前が嫌いなものって何」と聞いているわけではない。なのに、自分が嫌いなものを話すのはおかしい。
……鬼は基本的に人の話を聞かない。
……あっ!既に運転士は気絶させられている。えーと、伊之助にでも殴られた?顔腫れてるよ……?
でもこれで炭治郎がお腹を刺される心配はなくなったわけで。
鬼の血鬼術に翻弄されながら、三人で刃を振るう。私の炎の呼吸、伊之助の獣の呼吸、そして夜の闇の中で炭治郎のヒノカミ神楽・碧羅の天が輝きを放ちながら、鬼の頸を斬り落とす。
何度見ても美しい型だ。思わず感嘆の吐息すら漏れる。
ヒノカミ神楽には一体いくつの型があるのだろう。名前の通り、神楽舞に似たそれをぜひ一から見てみたい。今後炭治郎と任務が重なることがあれば、見せてもらおう。
でもとりあえず炭治郎は、水の呼吸とヒノカミ神楽を交互に使っても動けるようにならないとね。ヒノカミ神楽一つ放つだけで、これとは……かなり問題がある。
今、私達は列車の外にいる。
下弦の壱が討伐され、無限列車がいつもと同じで脱線したのだ。もうね、鬼が列車と融合する限り、倒されたら脱線は免れないと思うのよ。
列車が走行不可能になろうとも、命があるだけよかったと思うしかない。整備士のみなさん、ごめんなさい。
お腹は刺されなかったけど、投げ出された衝撃と、そしてヒノカミ神楽を駆使した影響で炭治郎は動けない。倒れ伏したまま、呼吸を必死に整えていた。
私は二つの呼吸を使って大丈夫なのかって?そりゃもう最初は動けなくて大変だったけど、鍛錬したので今では難なく動けるようになった。
強くなるには。呼吸を二つ使いこなすには。何事も鍛錬。修行。出来ることはそれしかない。結局のところ近道は一つもないのだ。
「大丈夫?」
「なんとか、だい、じょぶです……」
「うーん。炭治郎は鍛錬がまだまだ足りていないみたいだね。お互いの非番になったらだけど炎柱邸においで。私と杏寿郎さんが鍛えてあげる。私は階級もそこそこ高い方だし、もう一人は柱。二人の指導があれば、絶対に強くなれると思うの」
「ありがとう、ございます……ぜひ、行かせてもらいます」
嬉しそうに笑う炭治郎と会話していれば。
「その通りだ、竈門少年!」
「れ、煉獄さん!?」
「炎柱邸に来て鍛錬するといい!だが朝緋と必要以上に仲良くするのは禁止だっ!!」
嫉妬深き私の番が、私の腰を抱き寄せてそう言った。腰からお尻にかけてを撫でてくる動き!どう考えても痴漢のそれですね。杏寿郎さんじゃなかったらその手を斬っていたかもしれない。
「あのですねぇ師範?まず私の腰を抱きながら登場するその手癖の悪さはなんとかしてください。それと誰それ構わず嫉妬するのもやめてください」
「俺と朝緋が一心同体である限り無理な話だ!そして相手が男である限り、嫉妬しないでいるのも無理だ!!」
ん〜潔い回答〜!!狂気は孕みつつも、そのすっぱり言い切るところ好き〜〜〜。でも一心同体は違うと思うし、炭治郎にまで嫉妬されると修行つけてあげにくくなるから困る。
思い切り手の甲を抓る。そしたらその腕と体が離れた。不満そうな顔と共にね。
「ふむ、全集中の常中はできているようだな。常中は柱への第一歩だ。呼吸を極めればさまざまなことが可能にもなる、より呼吸を極め、高みを目指すのだ!さすれば昨日の自分より更に強くなれる!!」
「はい、がんばります!」
「だがまずはいつまでも寝ていないで、起き上がるように!この程度で倒れていては、俺達の修行についていくなど不可能だぞ!」
「ええっ!?」
炭治郎が水の呼吸に続き、ヒノカミ神楽を使うところを見ていない杏寿郎さんならそういうだろうねえ……。鍛錬に関することになると、杏寿郎さんはいつだって、体育会系だ。
「師範、炭治郎はたくさん活躍して疲れ切っています。あとはゆっくり休ませてあげてください。そんなキツイことを言うから、継子がいなくなっちゃうんですよ?」
「朝緋がいるから大丈夫だ。朝緋は俺の継子も、恋人もやめたりしないだろう?」
「うんまあそうですね私は継子も恋人もやめませんよでも他の隊士のことですこの手は何ですかお触り禁止です」
「俺の手のやつめやりおるな!何も見ずとも朝緋の尻を触るとはな!!」
さすがに殴っておいた。杏寿郎さんはなぜか嬉しそうにしていた……。
少し巫山戯ていて楽しいこんな雰囲気の中だけれど、警戒は怠ってはいけない。刀は抜いて置かねば不安で。
なぜならーー。
ーードンッ!!
轟音と共に現れたのは、私の大嫌いな上弦の参・猗窩座だ。そう、この鬼が来るとわかっていたから。
ほんっと、いい加減にしてほしい。ここに来ないでほしい。どこかに行ってほしい。杏寿郎さんを傷つけないで。
そう思うのに、毎回毎回私と杏寿郎さんの元にこの鬼はやってくる。
そういう運命。そういう展開。そういう物語。この邂逅は、この世界に組み込まれている歯車なのだ。戦いは決して避けられない。
猗窩座が炭治郎に危害を加えるべく動いた。
「……傷つけさせないよ」
杏寿郎さんがそれに気がつくより更に先に、刀を振るう。この鬼に、杏寿郎さんの実力を見せないための措置だ。まあ、闘気とやらでバレっバレなんだろうけどさ……。
「いい刀ではあるが、俺が受けたかったのはお前の刀ではない。そこの『柱』の刀だ」
鬼が傷ついた腕を一瞬で治しながらぼやく。
やっぱり気がついているよね。彼が柱で、この中で一番の闘気を持ち、一番強いことに。
「そりゃすみませんね。だったら、最初からそっちを狙えばいいでしょ。なんで他の子から狙うのさ」
「ああ、全く理解できないな」
凄まじい鬼気と再生能力の高さを前に、刀に手を置きながら杏寿郎さんも鬼の様子をうかがっている。
相手は鬼だ。会話が好きそうでも、いつ何時襲ってくるかわからないからね。
「柱との話の邪魔になると思ったから、排除しておこうと思ったのだ」
「排除?なら私にも攻撃して来れば?
言っておくけど、私この人のマネージャーです。だから勝手に会話なんてさせませんよ事務所通してよね。事務所開いてるの朝九時から夕方五時までたけど。はい鬼だからいつ来ても無理ですね太陽に焼かれてこんがりローストまっずい焦げ焦げ消し炭決定。おとといきやがれカースドフォーエバー」
「朝緋君今なんて?横文字のようなものが多すぎて、言っていることが全然分からんのだが……」
「教える気はありませんし今は説明する暇ありません」
杏寿郎さんだけでなく、炭治郎までもが頭の上に疑問符を浮かばせている。
カースドフォーエバーとは、文字通り永遠に呪われていろ、だ。ずっと生きている鬼にぴったりな言葉よね。
本当はファッ●ユーまで追加したかったけど、意味を知らない人しかいなかろうと、お言葉が汚すぎる。使うのは止めておいた。
鬼の肌にピキピキと血管が浮いた。
「全くよくわからんが、なんとも腹の立つ女だ……。殺したいが、俺は女は殺さん主義でな。見逃してやるから、そこの小僧と共にどこかへいけ」
「はあ?どこかへ行くのはお前だよ上弦の参!」
「朝緋、あまりそうカッカするな」
「すみません……」
日輪刀をブンブン振り回して怒る私を、杏寿郎さんが肩に手を置いて諌める。
少しは冷静になれた。でもこの鬼を前にしている今、完全に落ち着くなんて不可能。
「俺と君が何の話をする。初対面だが俺は既に君が嫌いだ」
「俺が嫌いなのは弱者だ。見ていると虫唾が走る」
「……君と俺とでは物事の価値基準が違うようだな。話も噛み合わない」
杏寿郎さんに「お前嫌い」と言われているわけであり「お前が嫌いなものって何」と聞いているわけではない。なのに、自分が嫌いなものを話すのはおかしい。
……鬼は基本的に人の話を聞かない。