四周目 漆
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見回りをしてみても、やはり下弦の壱は見当たらなかった。
どこに隠れているのだろう?列車全体のそこかしこからどろりとした鬼の気配は微妙に漂ってくるけれど、運転席の下辺りからも列車の上からも、鬼の気配は強く感じずにいた。全てが弱い気配。
どうなってるの?私の稀血を垂らしたら来る?ううん、あいつ警戒心の強い鬼だから来なさそうな気がする。
連結部分がむき出しの列車外。風で暴れようとする髪を耳にかけて押さえながら、月昇る空を見上げる。
まだ夜は始まったばかり。長く、そして恐ろしい運命の夜がまた始まる……。
「杏寿郎さん、そろそろおべんと食べ終わったかな」
戻ろう。踵を返し客車へ入ると、そこにはまだお弁当を口に運んで「美味い!美味い!」と声を上げる自らの愛しい人と。
それを若干ひきながら眺める、炭治郎と善逸、伊之助がいた。
「この前ぶりだね、炭治郎達」
「「朝緋さん!!」」
「キャラメル女!!」
「ぶっ!キャラメル……っ!?」
確かにキャラメルあげたけどキャラメル女か!『まだら』から呼び名が変わったねぇ、伊之助。君が呼びやすいなら何でもいいけどさ、文字数的にはまだらのがいいのでは?
「師範、見回り終わりまし「美味い!」うん、それはよーく知ってる」
隣の炭治郎もうんうんと頷いている。
「むっ!朝緋か!!見回りご苦労様だ!!」
「ありがとうございます。
また口の端にご飯粒ついてますよわざとでしょ自分でお取りくださいね」
「チッ。引っ掛かってはくれぬか……」
そう言って自分で取って食べている。やっぱり確信犯じゃないのさ。というかこの人今ちっちゃく舌打ちしたよね?
「それで、君は御館様の時の……」
「はい!この前は御館様のところでも、蝶屋敷で朝緋さんを迎えに来られた時も、きちんとご挨拶ができなかったので改めて。竈門炭治郎です。こっちはーー」
あー、あのあと炎柱邸に帰ってから、腰が使い物にならなかったっけ。夜には任務もあるのにどうしたものか、ってしばらく布団の中でうんうん唸ってたからよーく覚えておりますとも。
「お館様がお認めになったこと。今は何も言うまい。ただし、それは妹の鬼に関してだけだがな!」
「えっ、なんで怒っている匂いが……?
俺にだけ!?……あの、俺、何かしました?」
あれ?ちょっぴり剣呑な雰囲気が漂い始めたぞ……。
杏寿郎さんが怒っているという匂いを捉えた炭治郎が不安そうにちらりとこちらを見る。私を見ても何も出ないよ何もしてあげられないよ。
そして杏寿郎さんから発せられる音に善逸が怯える。これはいつも通り、かな。おっかない音がーっ!って『以前』も言っていたものね。
更には伊之助が何かを察知して全身の毛を逆立てている。毛といっても、腰巻の毛皮とか頭の猪頭なんだけど……それ皮膚と繋がってないよね?どうやって毛を逆立ててるんだろう。
「蝶屋敷で朝緋の手を握っていただろう!!それと匂いとは何のことだろうか!!」
「握った程度ででなぜ怒るんですか!?俺は人より鼻が利くだけです!!」
圧強めに言葉を放たれても怖気付くことなく、答えてるよ炭治郎……。さすが主人公。って、主人公関係ないよね。
「そもそもそれって朝緋さんからだったような……?」
「俺は特別にキャラメルをもらった男だ!」
善逸は杏寿郎さんの目の前で余計な事言わないで。伊之助は……微笑ましいから、またキャラメルあげる。
でも任務に支障をきたしても困るので、杏寿郎さんの怒りはさっさと鎮めるに限る。
「師範、いつまで嫉妬してるんですか」
「むっ!……む、むう……」
その手をこっそりと下の方で握れば、杏寿郎さんの怒りが止まる。
「嫉妬……。嫉妬の匂いって、こんな焼け焦げたような匂いがするんだな……魚を焦がして駄目にしてしまった時のような、もやもやする感じがある」
「そのもやもやが、煉獄さんが感じてる嫉妬の感情だと思うぜ」
「ああそういえば善逸も、たまに焦げ臭くなるな。玉子焼きの端を焦がしたみたいな……」
「意味はわかるけどまさかの玉子焼きの端!?女の子が焼いたやつなら焦げててもいいけどね!!」
「魚と玉子焼きだと!?食わせろ!!」
「伊之助は食い物の話じゃねーからぁ!!」
三人の会話が聞こえてきて、吹き出しそうになった。
コントみたいで面白い。
「貴方のその嫉妬はちゃんと私が散々……さんっざん!受け止めましたでしょう?解決したんですから、いい加減にしてくださいね」
「面目ない。そうは思うのだが、いざ目の前にすると少しばかり腹が立ってな」
パァン!!杏寿郎さんが自分の頬を自分で打ち、その空気を払拭した。
「よし!すまなかったな、水に流した!!」
やれやれ。
もう遺恨はないだろう。この人は元来、竹を割ったようなさっぱりした性格の人だ。
「君達、空いている座席に座るといい!朝緋も隣に座れ!!」
「はいはい」
『前』のように、座席をぽんぽん、ではない。自分の頬を打った時同様のバシバシ叩きで促された。
「あの、俺は聞きたいことがあるので、こちらにお邪魔してもいいですか?」
「もちろんだ!」
杏寿郎さんのお隣に私、お向かいに炭治郎と禰󠄀豆子ちゃんが眠る箱、違う座席に善逸伊之助だ。
その後、残しておいてもらっていたお弁当を三人に配り、炭治郎のヒノカミ神楽、杏寿郎さんの呼吸の話が始まった。
そして、列車の速さにはしゃぎ、窓から外に出ようとする伊之助に注意するお時間が来てしまった。
この任務の全容を杏寿郎さんが語り、善逸が恐怖に叫び出す。
四十名以上の人間が行方不明。送り込んだ数名の隊士も全員消息を絶った。だからこそ柱に任務が回ってきた、との話を。
ああもうすぐ車掌さんが切符を切りに来る。
どこに隠れているのだろう?列車全体のそこかしこからどろりとした鬼の気配は微妙に漂ってくるけれど、運転席の下辺りからも列車の上からも、鬼の気配は強く感じずにいた。全てが弱い気配。
どうなってるの?私の稀血を垂らしたら来る?ううん、あいつ警戒心の強い鬼だから来なさそうな気がする。
連結部分がむき出しの列車外。風で暴れようとする髪を耳にかけて押さえながら、月昇る空を見上げる。
まだ夜は始まったばかり。長く、そして恐ろしい運命の夜がまた始まる……。
「杏寿郎さん、そろそろおべんと食べ終わったかな」
戻ろう。踵を返し客車へ入ると、そこにはまだお弁当を口に運んで「美味い!美味い!」と声を上げる自らの愛しい人と。
それを若干ひきながら眺める、炭治郎と善逸、伊之助がいた。
「この前ぶりだね、炭治郎達」
「「朝緋さん!!」」
「キャラメル女!!」
「ぶっ!キャラメル……っ!?」
確かにキャラメルあげたけどキャラメル女か!『まだら』から呼び名が変わったねぇ、伊之助。君が呼びやすいなら何でもいいけどさ、文字数的にはまだらのがいいのでは?
「師範、見回り終わりまし「美味い!」うん、それはよーく知ってる」
隣の炭治郎もうんうんと頷いている。
「むっ!朝緋か!!見回りご苦労様だ!!」
「ありがとうございます。
また口の端にご飯粒ついてますよわざとでしょ自分でお取りくださいね」
「チッ。引っ掛かってはくれぬか……」
そう言って自分で取って食べている。やっぱり確信犯じゃないのさ。というかこの人今ちっちゃく舌打ちしたよね?
「それで、君は御館様の時の……」
「はい!この前は御館様のところでも、蝶屋敷で朝緋さんを迎えに来られた時も、きちんとご挨拶ができなかったので改めて。竈門炭治郎です。こっちはーー」
あー、あのあと炎柱邸に帰ってから、腰が使い物にならなかったっけ。夜には任務もあるのにどうしたものか、ってしばらく布団の中でうんうん唸ってたからよーく覚えておりますとも。
「お館様がお認めになったこと。今は何も言うまい。ただし、それは妹の鬼に関してだけだがな!」
「えっ、なんで怒っている匂いが……?
俺にだけ!?……あの、俺、何かしました?」
あれ?ちょっぴり剣呑な雰囲気が漂い始めたぞ……。
杏寿郎さんが怒っているという匂いを捉えた炭治郎が不安そうにちらりとこちらを見る。私を見ても何も出ないよ何もしてあげられないよ。
そして杏寿郎さんから発せられる音に善逸が怯える。これはいつも通り、かな。おっかない音がーっ!って『以前』も言っていたものね。
更には伊之助が何かを察知して全身の毛を逆立てている。毛といっても、腰巻の毛皮とか頭の猪頭なんだけど……それ皮膚と繋がってないよね?どうやって毛を逆立ててるんだろう。
「蝶屋敷で朝緋の手を握っていただろう!!それと匂いとは何のことだろうか!!」
「握った程度ででなぜ怒るんですか!?俺は人より鼻が利くだけです!!」
圧強めに言葉を放たれても怖気付くことなく、答えてるよ炭治郎……。さすが主人公。って、主人公関係ないよね。
「そもそもそれって朝緋さんからだったような……?」
「俺は特別にキャラメルをもらった男だ!」
善逸は杏寿郎さんの目の前で余計な事言わないで。伊之助は……微笑ましいから、またキャラメルあげる。
でも任務に支障をきたしても困るので、杏寿郎さんの怒りはさっさと鎮めるに限る。
「師範、いつまで嫉妬してるんですか」
「むっ!……む、むう……」
その手をこっそりと下の方で握れば、杏寿郎さんの怒りが止まる。
「嫉妬……。嫉妬の匂いって、こんな焼け焦げたような匂いがするんだな……魚を焦がして駄目にしてしまった時のような、もやもやする感じがある」
「そのもやもやが、煉獄さんが感じてる嫉妬の感情だと思うぜ」
「ああそういえば善逸も、たまに焦げ臭くなるな。玉子焼きの端を焦がしたみたいな……」
「意味はわかるけどまさかの玉子焼きの端!?女の子が焼いたやつなら焦げててもいいけどね!!」
「魚と玉子焼きだと!?食わせろ!!」
「伊之助は食い物の話じゃねーからぁ!!」
三人の会話が聞こえてきて、吹き出しそうになった。
コントみたいで面白い。
「貴方のその嫉妬はちゃんと私が散々……さんっざん!受け止めましたでしょう?解決したんですから、いい加減にしてくださいね」
「面目ない。そうは思うのだが、いざ目の前にすると少しばかり腹が立ってな」
パァン!!杏寿郎さんが自分の頬を自分で打ち、その空気を払拭した。
「よし!すまなかったな、水に流した!!」
やれやれ。
もう遺恨はないだろう。この人は元来、竹を割ったようなさっぱりした性格の人だ。
「君達、空いている座席に座るといい!朝緋も隣に座れ!!」
「はいはい」
『前』のように、座席をぽんぽん、ではない。自分の頬を打った時同様のバシバシ叩きで促された。
「あの、俺は聞きたいことがあるので、こちらにお邪魔してもいいですか?」
「もちろんだ!」
杏寿郎さんのお隣に私、お向かいに炭治郎と禰󠄀豆子ちゃんが眠る箱、違う座席に善逸伊之助だ。
その後、残しておいてもらっていたお弁当を三人に配り、炭治郎のヒノカミ神楽、杏寿郎さんの呼吸の話が始まった。
そして、列車の速さにはしゃぎ、窓から外に出ようとする伊之助に注意するお時間が来てしまった。
この任務の全容を杏寿郎さんが語り、善逸が恐怖に叫び出す。
四十名以上の人間が行方不明。送り込んだ数名の隊士も全員消息を絶った。だからこそ柱に任務が回ってきた、との話を。
ああもうすぐ車掌さんが切符を切りに来る。